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+ '08年10月17日(FRI) ... B子さんお疲れさまですv +

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携帯でドキドキしながら読んでいましたY子です。
ネット落ち期間がどうやら長くなりそうです。
エッジで無理矢理繋いでメールチェックだけはしているのですが、電話回線で繋ぐより遅いのでタイムアウトの戦いで…。ここは何処の辺境?
と涙ぐみながら携帯に頼る日々(サイトをいざという時のために携帯仕様にしていてよかったな)

そんな感じなので皆様にもB子さんにもしばらくご迷惑おかけしますが、すみません。

多分メモ連載一番楽しみしているのは自分なんじゃないかって思うY子でした。

B子さんのお話の上にすみませ〜〜ん。


+ '08年10月15日(WED) ... クラファティマラスト +

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こんにちは、びーこです。
クラファティマ、ラストになります。

※※※
暫くしてからクラウドもニブル山を下っていく。
麓への入り口で、共に猟に出た男達と遭遇した。男達はクラウドを助けにニブル山へと登ろうとしていたそうだ。
相手がバハムートだと解っていながらも、それでもクラウド一人だけに闘わせる訳にはいかない。そんな優しい男達に、クラウドは考える。
男達と共に村へと戻った時、一番に迎え出てくれたのはストライフ夫人であった。
「クラウド……どこもケガはない?」
愛で見えている分だけでは納得出来ないのだろう。
彼女はクラウドの腕や背中を自分の手でさすって、息子の無事を確かめる。
特に腹部。彼女の手が何度も何度も、無事だと確かめた筈なのにまた腹へと戻っていくのを実際に感じながら、クラウドはセフィロスの言葉の正しさを痛感した。
彼女の息子は腹に大きな傷を負って死んだのだ。
ストライフ夫人のは、本当の自分の息子の死を、完全に忘れているのではない。
――ソープオペラ…
クラウドがストライフ夫人の息子を演じることによって、ストライフ夫人本人も必然的にソープオペラの出演者と定められてしまっているのだ。
幾度も幾度も腹に触れてくる母の手は、死んでしまった息子を悼んでいるのだろう。
これがどんなにストライフ夫人にとって残酷なことか――
脳裏にガスト博士の顔が浮かぶ。
彼はファティマとしてはまだまだ経験の浅いクラウドを、それでも手元から送り出してくれた。
内心はとても心配であっただろう。だが自分の心配を隠して、クラウドを独り立ちさせてくれたのだ。
これはガスト博士からクラウドへ向ける信頼であるとしか考えようがない。
――母さん。
彼女が望むならば、ずっと最後まで側にいて“息子”で有り続けたかったが、やはり彼女の息子は生きていても死んでしまっていても、一人しかいない。
そしてそれは、クラウドではない。
――母さんごめん。
そして、
――ありがとう。


月が変わってすぐ、軍基地で暇をもてあましているセフィロスの元に来客があった。
待ち焦がれていた来客に、セフィロスの機嫌は久しぶりに上昇してしまう。
もっとも、その機嫌の良さを外に出すことはしないのが、セフィロスのセフィロスたるところなのだが。
「よく来たな、クラウド」
仕官用の休憩スペースでセフィロスとクラウドは再会した。
クラウドの青い眼差しが、素早くセフィロスの全身を観察して、
「あんた…そんな格好もするんだな」
「俺もいつも軍用コートという訳ではない」
本日のセフィロスは私服である。光沢のあるドレスシャツから覗いている逞しい胸元と、嫌みとしか考えられない長い足に、クラウドはあからさまにイヤそうな顔になった。
ファティマだから仕方がないのだが、クラウドは密かに己の発育不全な少年体型が不満なのだ。
その外見がどれだけファティマとして価値があるのかについては、無自覚なのだろう。
「それよりもクラウド、やっと俺のファティマとして娶られる決意が出来たのだな」
「あんた、やはり頭がおかしいんだろう」
「俺はあんたに娶られるつもりはない」
さすがはコントロールされていないファティマだ。
騎士にこのような口をきくとは、
――なかなか愉しませてくれるな。
「ほほう。ではお前は何をしに俺に会いに来たんだ」
クラウドの視線が一度伏せられた。金色の長い睫毛の作る影が、少年ファティマに似合わない色香を与える。
そんな風情を鑑賞する暇もなく、クラウドは再び視線をきっと上げ、
「オレは…やはりファティマなんだ」
「いつまでも人の真似は出来ない」
「――村を出る」
「そうか――」
元よりセフィロスに異存はない。
こうしてここにクラウドが現れたということは、ストライフ夫人の息子という役の、後始末もちゃんとついたのだろう。
――さて、問題はここからだな。
戦いというものはいつも先手をとらなくてはならないものだ。
先手必勝という言葉は、あれは正しい。そうして戦場を支配した者が常に勝利者となる。
――クラウド、今のお前につけ込ませてもらうぞ。
「クラウド。知っているとは思うが、マスターのいないファティマの扱いは酷いものだ」
「……――知ってるよ」
ファティマは人ではない。よって人権は認められていない。
マスターのいないファティマはロスト(はぐれファティマ)として扱われる。
ロストの扱いはそれは酷い者だ。人以上の能力を持つファティマだが、その力を己を護る為には行使出来ない。
よって人からどんな理不尽な扱いを受けようとも、抵抗は禁じられているのだ。
つまり美しいファティマが犯されようとも、暴力を振るわれようとも、売買されようとも、ファティマは抵抗すら出来ずに、甘んじて受け続けなければならない。
これまでのクラウドはずっと人として振る舞ってきた為に、そのような暴力を心配することもなかった。
だがこれからファティマに戻るということは、必ず身の危険に遭遇するということだ。
クラウドとて充分承知しているのだろう。その表情は硬い。
「ならば話は簡単だな――」
「俺はお前をそのような目には遭わせたくない」
「…あんた」
「形だけでも良い。暫くの間、俺をマスターとしておけ」
「英雄のファティマならば、誰も文句のつけようもないだろうしな」
クラウドの瞳がいっぱいに見開かれる。
ただでさえ大きな瞳が更に大きくなり、小作りな顔にある様は、本当にこぼれ落ちそうだ。
その瞳に自分が映し出されているのを確認して、セフィロスは優越を覚える。
「あんた、それでいいのか?」
「オレはあんたを、マスターだと認める気はないんだぞ」
「お前が犯されて売られるのに比べれば、このくらい容易いものだ」
それに、
「クラウドはこれからガスト博士の元に戻るつもりなんだろう?」
「そうだけど…――」
「ならばちょうど良い」
「俺もガスト博士に会いに行く途中だったんだ」
クラウドと共にガスト博士の前に現れたのならば、博士はさぞや驚くだろう。
我ながら良い考えだと、セフィロスは自然と微笑する。
皮肉が交じった微笑みでも、達観したり突き放したりしたような笑みでもなく、心の底から出た自然な笑顔であった。
その笑顔にクラウドは引きよせられてしまう。
――こいつ、こんな顔も出来るんだ。
つんと澄ましたイヤな顔しか出来ないんだと思っていたのに。
ざわめいて、手足が熱い。なんだかやたらとドキドキする。
慌ててクラウドは視線を逸らした。
その頬がうっすらと上気しているのを、セフィロスは見逃さない。
セフィロスがファティマを娶る日は、かなり近い未来かも知れなかった。

おしまい

※※※
色っぽいシーンが全然なかったですねえ。
これってひょっとして強気受けというヤツか!?

なにはともあれ、最後までお付き合いくださいまして、
ありがとうございました。


+ '08年10月08日(WED) ... クラファティマその8&御礼 +

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こんにちは、びーこです。

開店休業状態になっておりますY4ですが、
毎日拍手&♪をいただいており、嬉しい限りです。
また、クラファティマへのコメントもいただいております。
本当にありがとうございます。

予定は未定となりますので、あまり大きなことは言えませんが、
週一回でも覗いていただければ、
少なくともこのメモは動いている状態をキープしていきたいです。

私びーこ一人では不十分でしょうが、
これからもY4と遊んでいただければなあ、と思います。

では続きです。
※※※
クラウドは蒼い大剣を一振り、何かを振り払う仕草をする。
今やバハムートの名残となった、淡い煌めきは、その一振りで霧散してしまった。
セフィロスの持つ召還マテリアが熱を持つ。竜王バハムートが現世から、マテリアで繋がれた異世界に戻ってきた証だ。
召還獣は現世において、生き物と同じ意味での死は存在しない。
元より本当ならば現世に実体のない存在。切り刻まれようが焼き尽くされようが、儚く消えてしまうだけで消滅という死はないのだ。
クラウドは蒼剣を構えたままで、無造作にセフィロスへと歩み寄る。
きつく睨み付けてくる眼差しは、従順なだけのファティマにはあり得ない輝きだった。
自分よりもずっと高い位置にあるセフィロスの喉元へ、クラウドは剣先をあてがう。
「さあ、竜王は倒した」
次はお前の番だ。
「オレの目の前から消えろ」
そうやって挑まれているのに、セフィロスにあるの好奇心だけ。
「さっき、バハムートはなぜ消えたのだ?」
「召還獣は異世界の住人」
「普通の攻撃などでは消えることなどない」
喉元にある剣先にも構わず、セフィロスはクラウドへと迫ってくる。
白い喉元に切っ先が食い込みそうになり、これにはクラウドが面食らう。剣先を僅かに引くが、それすらも気にならないのか、セフィロスは更に身体を前へと乗り出してきた。
ぶつり。表皮が破れる手応えが伝わってきた。青みのある白い喉元に剣先が潜る。
大して力を入れていないから、傷は浅い。だがそれでも血が滲んできた。
僅かに喉元に刺さった剣先を取り巻くようにして、血が沸いてくる。
まさか英雄と呼ばれるこの男が、このような無謀な行動をとるとは――予想外の展開に、クラウドは気圧されてしまう。
「答えろ――なぜバハムートは消えた?」
「どのような攻撃をしたんだ?」
「…アルテマウェポンは、力を喰らうことが出来る――」
気圧されてしまったクラウドは、セフィロスの疑問に素直に答えていた。
「アルテマウェポン?」
「それがその蒼い大剣の名か?」
「そ、そうだ」
「アルテマウェポンは竜王の放ったメガフレアを喰ったんだ」
「喰ったメガフレアを竜王の体内で爆発させてやった…」
――そうか!
メガフレアが蒼剣に吸い込まれたかのように見えたのは、間違いではなかったのだ。
蒼い大剣、アルテマウェポンはメガフレアを文字通り喰った。
そうして自らの内に納めたメガフレアのエネルギーを止める。クラウドが竜王に剣を突き刺したその時に、アルテマウェポンは、止めて置いたメガフレアのエネルギーを、竜王の身体の内側で放ったのだ。
メガフレアは竜王バハムートが放つ必殺技。そのエネルギーは普通のこの現世に有り得るものではない。
「確かに――」
「それならば竜王が消えたのも納得出来るな」
頷こうとしたセフィロスの動きが止まる。不審セフィロスの眼差しが自分の喉元へと注がれた。
頷こうとしたが、喉元に刺さっている大剣によってその動きが止まってしまった、というところだろう。
己の喉元から血が滲んで、すでに胸元にまで届いているというのに、この男、自身の痛みには相当鈍感であるようだ。
騎士とは確かに超人だ。ケガの治りも早い。小さな傷ならば瞬く間に再生してしまうものだが、だからと言ってここまで鈍感なのも問題だろう。
クラウドはそこにセフィロスの精神にある“歪み”を見いだす。
そこに、
「クラウド、お前は今何を思った?」
考えていた当の本人に問われ、クラウドは眉をひそめる。
まさか「あんたのことだ」などとは口が裂けても言えない。
なのに、
「俺のことだろう」
「――!」
セフィロスは確信している口振りで続ける。
「お前は俺のことを考えている」
そうだろう、クラウド。
「俺が傷ついているのを考えている」
「喉に刺さった剣先を、俺が気にとめてもいないことを考えている」
「肉体の傷など、大したものではない」
セフィロスはここでやっと喉元に刺さっている剣先を掴んで、無造作に引き抜いた。
剣先が突き刺さっている部分は、小さいものの穴が空いている。
白い喉にぽかりと空いた肉色の空洞は、この無機質な男からは考えられないくらい、やけに艶めいて見えた。
そこに、内側から血が盛り上がってくる。
「傷など、どうでも良いのだ――」
それよりも、
「俺のことを考えていたお前の顔、そちらの方が余程重要だ」
――俺の、顔!?
「俺のファティマになれクラウド」
「いいや、ファティマとして扱われるのがイヤならば、それでも良い」
とにかく、
「俺の側にいろ」
「俺の隣に立つんだ――」
「その、蒼剣を持って」
「な…、なんで俺が!」
やや掠れた自分の声が、とても頼りなく感じ、クラウドは大きく息を吸う。
「竜王と闘ったら、あんた、俺の目の前から消えるって…」
「それはお前が勝手に言っただけのこと」
「俺にはそんなつもりはない」
「あんた!」
激高しそうになるクラウドを前に、セフィロスはむしろ悠然と続ける。
「お前はずっとこの村にいるつもりか?」
「こんな小さな村で、ずっと“ストライフ夫人の息子”の役を演じるつもりなのか?」
「あんた…知ってるのか!?」
ああ、
「ストライフ夫人の息子は死んだのだな」
不幸な事故だったのだ。
彼は自分の母親の目の前で死んでしまった。
父親はすでにいなかった。母と息子。ずっと二人だけで肩を寄せ合って生きてきたのに。
かけがえのない息子の死を前にして、ストライフ夫人は狂う。
最初は小さな歪みだけだったのに、歪みは日を増すごとにだんだんと大きく深くなっていき、ついには永遠にゆがんだ世界から戻れないだろうと危ぶまれたその時、彼女の前にクラウドが現れたのだ。
彼の息子と同じ色同じ髪の、そして名前さえ同じ少年が。
ストライフ夫人は、辛い現実から目を背けるのは簡単だった。
髪と瞳の色以外は似ていないというのに、クラウドを自分の息子「クラウド」だと認識し、そのように振る舞い始めたのだ。
周囲の村人は皆困惑する。もちろん当の本人となったクラウドでさえも。
だがゆく宛などなく、ファティマという自分の存在に疑問を感じていたクラウドにとって、例え狂っていても優しい母であるストライフ夫人は、とても魅力的だった。
「私のクラウド」と呼ばれることは、新鮮な歓びであったのだ。
結局この魅力にクラウドは従うようになり、村人もストライフ夫人の安定を優先してしまい、そのままクラウドはストライフ夫人の息子となった。
そうしてそのまま今日まで来ている。


いびつではあるが、なま暖かい、ここは繭の世界。
そんな繭の世界をセフィロスは打ち壊そうとしている。
現実という動かしがたくシビアなものを、クラウドに突きつけて。
「死んだ息子のフリをするのは楽しいのか?」
本当に、心底イヤな男だ。
「きっと楽しいのだろうなあ…――俺にはわからんが」
「オレは、楽しいなんて思っていない!」
「本当にそうか?」
――ウソをつくな。
「楽しいからやっているのだろう」
「そんなにファティマであるのは不満なのか」
「いいや!不満なんかじゃない!」
父親となってくれたガスト博士には、何の不満もない。
ただ…ただちょっとだけ――立ち止まってみたかっただけなのだ。
「ほう。ならば、こんなソープオペラいつまで続けるつもりなのだ」
猿芝居。確かにそう評されても仕方がないだろう。
「そんな…ソープオペラだなんて」
「そうではないか」
「お前と村人達は、皆でよってたかって息子を失った女をだましているだけなんだ」
安っぽく薄っぺらい親切心と同情でコーティングしながら。
とんだお涙ちょうだいの物語だ。
「いつまで続けるつもりなのだ?」
「女が死ぬまでか?」
「…」
「だが覚えておけ」
「お前が息子のフリをし続けている限り、女は死んでしまった息子の死を悼むことが出来ないままなのだと」
「全ては止まったままだ――」
「止めたままで時間だけは無為に過ぎていく」
「お前は女にそんな残酷な時間を、どこまで過ごさせるつもりなのだ」
「解っている……そんなコト、あんたに言われるまでもない」
解っている。クラウドはちゃんと解っているのだ。もちろん村人だって。
ストライフ夫人は死んでしまった息子の墓にまだ一度も参っていない。
それは当然だろう。なぜならば、彼女の「クラウド」はまだ生きているのだから。
生きていて、ストライフ夫人と共に生活しているのだから。
でも、それは間違っている。間違っているのだと…
「解っているのならば、間違いは早く訂正すべきだ」
「訂正をしろ。そして女を狂った世界から、普通の世界へと戻してやれ」
「なま暖かいだけの世界しか認められないのならば、その者に生きている意義などない」
「あんた……酷い男だ」
「そうか。お前達よりも俺の方が、ずっと女の人生を考えてやっていると思うがな」
「あんたが嫌いだ」
「それはそれは――」
セフィロスを嫌いだと言い、そっぽを向いてしまいファティマの、頬のラインが愛おしい。
「俺はこんなに惚れていると言うのにな」
「いい加減にしろっ」
剣ではなく、拳を振り上げる。
そんなクラウドに、セフィロスは彼を手に入れられると確信する。
だが、さすがにマゾではない。いくら気に入っている相手にでも、むやみと殴られるのは趣味ではない。まあ別のシチュエーションならば、少しくらい手荒いのも良いエッセンスとなり、それなりに興味深くなるだろうが。
セフィロスは拳を軽く交わして、
「俺は神羅の軍基地に滞在している」
「一度訪ねてこい」
「なんで?」
「なんで、俺があんたに会いに行かなくちゃならないんだ」
「俺のファティマになるにしろならないにしろ、俺の愛機を見ておいても良いだろうが」
「あんたのMHか!」
やはりファティマだ。MHと聞いただけで目の色が変わる。
「正宗という。星団一のMHだ」
セフィロスは英雄だ。英雄の愛機の噂はクラウドも耳にしていた。
噂を総合すれば、星団一だと自称するのも頷ける。決してセフィロスの誇張ではなかった。
ファティマにとって優秀なMHとはとてつもない魅惑だ。そもそもファティマとは、騎士を補佐しMHを操縦する為に創造された、人工生命体なのだから。
「しばらくは滞在している」
「必ず訪ねて来い」
――いいな。
あっという間だった。セフィロスの冷たい唇がクラウドの額に押し当てられる。
――キスされた!?
我に返る間もなかった。
セフィロスは結局言いたいだけ言ったままで、悠然とニブル山を下っていったのだ。
※※※
次回でおしまいです。


+ '08年09月30日(TUE) ... クラファティマその7 +

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びーこです。
続きです。どうぞ。

※※※
掌で握りつぶせるほど小さな人の予想外の逆襲に、竜王の怒りが強く掻き立てられる。
翼が大きく動く。風圧で周りの木々がたわんだ。
クラウドから一気に距離をとる。
普通の人ならば立っていられない強い風の中で、クラウドは青い清冽なる眼差しを、ひたりとバハムートに向けて、瞬きさえしていない。
天高くニブル山の頂上に迫るまでに飛び上がったバハムートは、翼を大きく広げ、天を覆ってしまう。
胸を前へと突き出す。鱗に似た硬い皮膚の下から、発達した胸筋が大きく膨れあがっていった。
胸の内部から何かが込みあがってこようとしている。
その何かは胸を通り喉元へと。首が、喉が膨らむ。
閉じられている牙の間から光が漏れてきた。首までせり上がってきたその何かは、光を発しているのだ。
青とも金ともつかない強い輝きは、うっすらと煙るようだ。
ブレスだ。しかもただのドラゴンの放つブレスではない。
メガフレア――竜王バハムートのみが発する、強力なフレアである。
バハムートは胸うちから押しあがってきたエネルギーを吐き出すように、大きく口を開く。
カッと限界まで開かれた口に、光が集まってくる。内側からせり上がってきたものだけではない。大気から空間から、遙かなる高みにある宇宙から、竜王はメガフレアのエネルギーを集めているのだ。
そのような膨大なエネルギーが発射されれば、被害は絶大であろう。
クラウドのみの消滅では済むまい。ニブル山が、いやニブルヘイムだけではなく、このエリア一帯が消し飛ぶのは間違いない。

竜王が放とうとするメガフレアのエネルギーは、クラウドにもびしびしと伝わってきていた。肌が焼けるようだ。これほどまで凄まじいエネルギーに遭遇するのは初めて。
だがクラウドに恐怖はない。
バハムートのメガフレアの高まりに呼応するかのように、クラウドも自身の身の内から押しあがってくる力を感じていた。
全身が力に満たされていく。びりりと全身が震えてきて、止められない。
クラウドの体に渦巻く力は、腕と手と指先とを通り掌から握りしめる大剣へと伝わっていった。
――ぎゃわー。
クラウドの手の中で、大剣が声もなく鳴いた。
これは真の力を発揮できるという、歓びの雄叫びだ。
(クラウド。この剣をあげよう)
蒼剣、アルテマウェポン。ガスト博士が与えてくれた、クラウドの為にだけある剣だ。
ミスリルのケースに収められた大剣を手に取った瞬間、クラウドは理解する。
――生きている!
この剣は生き物なのだと。
マルテマウェポンには明確な意志がある。意志というには原始的な、もっと本能に近いものであろうが、それでもアルテマウェポンは求め欲していた。
敵と、闘いを。
だが闘いに身を置かず、ただの人として生きてきたクラウドに、アルテマウェポンを存分に振るうだけの機会はなかった。
人目に触れない場所での鍛錬は続けてきたが、本当の意味でアルテマウェポンの欲求はずっと満たされていなかったのだ。
それが今、偉大なる竜王を敵として、満たされようとしている。
メガフレアを前にして、アルテマウェポンは歓喜しているのだ。

アルテマウェポンの歓喜は柄を握っている掌を伝って、クラウドにも伝わってくる。
セフィロスが現れなければずっと隠されたままであっただろう、クラウドの闘争本能がアルテマの歓喜と共に燃え立った。
――逃げるのは止めだ。
クラウドは腰を落として、真っ向から挑む。
アルテマの本当の力が解放されたことはないが、この剣ならば竜王にも立ち向かえるであろうと。
いや、そこまで考えていたのではない。
クラウドの闘争本能が、アルテマの歓喜が、真っ向勝負を選んだのだ。
それしかなかった。
己の身体の正面にアルテマを出す。
今やアルテマは大剣としての仮の姿をかなぐり捨てていた。
鈍い金属の輝きに似た蒼剣は、クラウドの手の中でぶるりと震える。これは恐れではない。歓喜の震えだ。
震えながらもアルテマは質量を変えていった。形としてはそっくりそのままではあるが、明らかに一回り以上大きく成長している。更に巨大な剣となったのだ。
こうなると持ち主であるクラウドよりも、アルテマの方がはっきりと大きい。
その時大気を圧するメガフレアが、竜王より放たれた。
真っ直ぐに。クラウドへと。
肉や骨どころか、クラウドという存在さえ焼き尽くしてしまわんばかりの勢いで放たれるメガフレアを、竜王の召還主たるセフィロスは止めない。
庇おうとも思わない。
なぜならば、
――クラウドならば。
クラウドならば、メガフレアの一撃も耐え抜くであろう。
さてどうやってメガフレアを払うのか。あの不可思議な大剣で斬るのか。それとももっと別の戦い方を選ぶのか。
――その様がみたい。
あのきれいなファティマがどう戦い抜き、勝つのか。
その様子を誰にも、己自身すら邪魔されずに、充分に堪能したい。
セフィロスの唇が自然と笑いの形をとった。
それは本人も自覚のない、驚くほど豊かな笑みである。


空間自体を焦がしながら放たれたメガフレアは、クラウドへと向かっていく。
障害物はなにもない。
クラウドはメガフレアが迫っているにも関わらず、その場から動こうともしなかった。逃げようともしていない。
ただ青く澄んだ眼差しをひたりと向け、蒼剣アルテマウェポンを静かに構えているだけで。
一直線に放たれたメガフレアは、その膨大なエネルギーでクラウドを制圧するかのようだ。
どんどん近づいていき、今にもクラウドを飲み込もうかと思われたそのタイミングで、クラウドが大剣を動かす。
大きな動きではない。
噴!クラウドの華奢な身体に気が集中されたのがわかった。
メガフレアにより赤く、青く染まっていくクラウドの肢体が、一瞬膨れあがったかのように見える。
両手で握っている蒼剣がくるりと小さな円を描く。
――なんだ?
疑問はほんの僅かのこと。
次にセフィロスは驚くべき光景を目にする。
蒼剣がまた形を変えたのだ。しかも大きくなったとか、変化したとかそういうレベルのものではない。
あの蒼剣はやはり生き物であった。
セフィロスは見た。巨大な蒼剣が蠢く様を。
蒼剣は蠢きながら、剣としての体裁を捨て去った。
そして、
――口があるのか!?
ぐにゃりと蠢いた蒼剣が、くわっとばかりに広がった。
それはどう考えても“口”だとしか見えない。
大きな空間が蒼剣に出来た。果てもそこも知れない深淵の口だ。
その口にメガフレアがぶつかった。そのままメガフレアのエネルギーが吸い込まれていく。
まるで大きな黒い口が、メガフレアを丸飲みしているようだ。
しかもその口には容量に際限がないのか。吐き出すこともなく。また溢れることもなく、どんどんと飲み干しているのだ。
そしてついに、――メガフレアのエネルギーはただの輝きだけを残して、全てが蒼剣に吸い込まれてしまった。
メガフレアの漂う余韻だけを残して、蒼剣の口が静かに閉じてしまう。
後に残るのは、剣を構えたクラウドだけ。
きしゃああーーー。己の必殺技メガフレアを、しかも吸い込まれて避けられたと知った竜王は、天高くにて怒りに震えている。
炯々とつり上がったバハムートの目が、静かに立つクラウドへと怒りで注がれ、次の瞬間に竜王はクラウドに向かって滑降していった。
――クラウドを喰らう気か…
自分の口と牙で、クラウドを屠ってしまうつもりなのだ。
――さてどうするのか。
メガフレアは避けた。だがそれはクラウドの力と言うよりも、あの蒼剣の力。
クラウドが早く動けるのはさっき目にした。
バハムート相手にも怯まない強靱さも、見た。
ならば次はどれだけあの蒼剣を使いこなしているのか、そんなクラウドの戦いが見たい。
しっかりと見定めることさえ出来ない高速で滑降してくる竜王に向かって、クラウドは腰をすっと落とすと次の瞬間、跳んだ。
逃げたのではない。今正に自分を喰らいに向かってきている竜王に、自らが跳んだのだ。
金色の一筋となって、クラウドは竜王に挑む。
両者がぶつかる寸前、クラウドが剣を大きな動作で構える。右後方へと剣先を引くと、そのまま真っ直ぐ前方に剣を突き刺したのだ。
クラウドの突き出した前方、そこに見事なタイミングで向かって滑空してきた、竜王バハムートの頭部がぶつかってくる。
勝負は一瞬。バハムートの鼻筋部分に、クラウドの蒼剣が突き刺さっていく。
硬い硬い大砲の弾丸でさえも拒む竜王の皮膚が、驚くほど易々と蒼剣に貫かれてしまう。
あぎゃあああー。
柄部分まで深く突き刺さった蒼剣が、竜王の貫かれている内部ごと膨らんだ。
ごおおおぉぉぉ。大気が振動する音の後。蒼剣に貫かれたままでいる、竜王の内部はどう変化しているのか。
竜王の巨体は悶えながら苦しんでいる。
と、膨らんでいる内部に輝きが生まれた。
そして、――
ばんっ。大きな破裂音と共に、竜王の頭部が文字通り弾けた。
――!
身を乗り出し息をのむセフィロスにも、はっきりとした事の次第は解らない。
ただ竜王はクラウドに敗れたのだ。残っていた胴体部分も薄く儚くなっていき、召還獣竜王バハムートは、この現世から霞のように消えてしまった。

※※※
今回はココまで。
あともうちょっとでおしまいです。
最後までお付き合いいただけますと嬉しいです。


+ '08年09月24日(WED) ... クラファティマその6 +

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こんにちはびーこです。
ちょっと間が空いてしまいました。すみません。
では続きをば。

※※※
このある意味一世一代のセフィロスからの告白とも言える言葉に、クラウドの反応はひたすら鈍かった。
赤面どころか、魂までもとろけるような美貌を前にしたまま、むしろうっとうしそうに金色の眉をひそめると、
「――……あんた、どっか悪いのか…?」
「――悪い、とは?」
さすがに動じないセフィロスも、聞き返してしまう。
「だってそうだろ」
「第一、 オレはファティマなんかじゃない」
「少なくとも、あんたのファティマなどでは、絶対にない!」
「次にオレを試すからという理由で、こんなところに竜王を召還するなんて、あんた、普通じゃない」
――だがな。
と、クラウドは両腕で己の顎を取ったままのセフィロスの腕をはたく。
下から上へと、まるでセフィロスの腕を吹き飛ばすような動きは、素早く切れがあった。
セフィロスの手が顎から放れていってしまう。
黒革のグローブ越しではあったものの、まだまだ柔らかい肌の下に感じた、尖った骨の感触はあっという間に遠ざかってしまった。
セフィロスは名残惜しく、感触を逃さぬように指を掌に抱え込む。
セフィロス自身自覚していなかったが、“名残惜しい”というのは、彼が初めて遭遇する感情であった。

そんなセフィロスの目の前で、クラウドはミニマムにして携帯していた剣を取り出す。
解除をさせると、掌に収まっていた剣は、瞬く間にクラウド自身よりも巨大な大剣となった。
重量も質量も、明らかにクラウドよりもある。
どう考えても手に余る大剣を、クラウドは片手だけで滑らかに扱ってみせる。
ファティマの性能をよく理解しているセフィロスでさえも、クラウドの大剣を扱う手並みには唸った。
なぜならば彼が大剣を扱っている動きは、人以上の力を持つファティマの動きではなく、戦士たる剣士としての洗練された無駄のない動きだったからだ。
――ファティマではなく、この剣捌きは騎士のそれだ。
しかしそれも、
――望むところだ。
セフィロスは見てくれが美しい鑑賞用の人形が欲しいのでもなければ、高性能のダッチワイフが必要なのでもない。
マスターの行動に盲従するだけのペット人形など飽き飽きだ。
戦闘能力においても、剣技においても、自分と肩を並べるだけのパートナーが欲しいのだ。
この条件さえクリアしていれば、極端なところ、クラウドがファティマでなくともセフィロスは別に構わないのだから。
セフィロスから一定の距離をとったクラウドは、青い眼差しをきりりとあげて、じっとたたずむ英雄を睨む。
「バハムートとは闘ってやろう――」
ただし、
「条件がある」
「オレが勝てば、もう二度とそのツラをオレの前に見せるな」
言い放つクラウドの周囲が変化する。
彼は大剣を華奢な肩に、無造作に担いだ。
クラウドが本格的な戦闘態勢に入ったのだ。


しなやかな肢体から放たれる闘気に、セフィロスはとっさに大きく飛んだ。
同時にバリアを張ると、クラウドへと全神経の焦点を当てる。
セフィロスの目前で、クラウドは高く飛んだ。その背に羽根が生えていないのがおかしなくらい、軽々と飛ぶ。
一方の竜王バハムートは、己目掛けて飛んでくる小さな金色の人に僅かに動揺したようだ。
ごご、と牙を剥き出しにしながら、そのものが太い凶器である腕を一閃させる。
竜王の放った一閃。人では交わしようのないスピードに、クラウドは為す術もなく吹き飛ぶかのように見えた。
セフィロスは目と感覚をこらす。
――いた。あそこだ。
クラウドは竜王の腕をかいくぐっていた。
正に人以上のスピードと反射神経の成せる技だと言えよう。
この動きによってクラウドは何よりも雄弁に、自分が人ではなくファティマなのだと証明したに等しい。
だがファティマであるとしても、クラウドの動きはセフィロスの目からみても卓越したものであった。
何よりも思い切りが良い。戦いへの迷いがないのだ。
バハムートの一閃を巧みに交わしたクラウドは、そのまま思い切りよく竜王の懐に飛び込んでいる。
普通避けるのならば、横か後ろへと逃げてしまうのが防衛本能というものだ。
クラウドというファティマは本能までもコントロールしているのか。彼は更に前へ、敵の側近くへと進んでいる。
あっという間にクラウドはバハムートの鼻先まで迫った。
その位置で大剣を構えたところに、バハムートの爪が再び襲う。
こうなると逃げ場の少ないクラウドが不利だ。竜王の鼻先まで迫ったことで、クラウドが自由に身動き出来る空間は限られてしまっているからだ。
前に進めば竜王の口が、その尖った牙が待っている。
斜め上から背後にかけては、竜王の太い腕とクラウドなど一撃で引き裂いてしまう、鋭い爪が襲ってくる。
ガギっ!硬いものと硬いもの。鋼と鋼が真っ向からぶつかる音が大気に重く響く。
クラウドの大剣は飾りではなかった。
クラウドは逃げていない。彼は襲ってきた鋭い爪に真っ向から勝負を挑んだのだ。
右肩に背負った大剣をクラウドは鮮やかに翻す。
と言ってもその動きは高速である上に、あくまでも最小限のみにとどめられたものであった。
背負っているポーズそのままで、右手だけで握っていた柄に左手も合わせて、両手持ちにする。
両手持ちになった瞬間、大剣の角度が変わった。クラウドの右肩に刃先があたらないように添わしていたものが、肩から必要なだけ浮き上がり、刃先を立てたのだ。
そうしてそのまま竜王に背を向けた格好で、大剣をそのまま肩口から上空へと跳ね上げる。
それらは全て、バハムートの攻撃を完全に計算しての行動であった。
大剣が跳ね上がってすぐ、鋼がぶつかる音がした。
バハムートの爪と見事なタイミングと角度でぶつかったのだ。
爪とぶつかり合っただけでは、クラウドの大剣は止まらない。
渾身のものではないにしろ、竜王の爪にまともにぶつかった筈の大剣は、勢いそのままにバハムートの爪と腕を弾いた。
ただの大剣ではない。大きく重いだけの、鉄の塊ではないのだ。
そうでなければ、たとえクラウドがどれほど剣技に長けていようとも、ファティマとしての能力がけた外れのゲージであろうとも、竜王の一閃をこれだけあっさりとは弾けまい。
セフィロスは騎士の視覚を大剣にこらす。
――あれか!
大剣の表面に何かが動いている。波間にたつさざ波のような、そんな動きだ。
現れては消え、次に現れる時には、別の部分へと移動している。
大きく現れたり、小さな部分にだけ現れたり。動きはランダムで予想も出来ず、またいかなる法則にも則っていないかのようだ。
よってクラウドの大剣は時折うねってさえ感じられる。
それは何か生き物にも見えた。指ほどの小さな生き物が数匹、大剣に巣くっていて、あちこちへと移動しているようにも思えたのだ。
だがその実は、
――あれは内側からだ。
竜王の腕と爪の一閃を弾いたクラウドの大剣は、その勢いのままに竜王の鼻先を襲う。
剣先が竜王に届くかに見えた時、大剣の表面にさざ波が現れた。
じっと焦点を当てて凝らしていたセフィロスには、その動きがはっきりと見える。
生き物なのは、確かに生き物〜少なくとも生きてはいるのだろう〜に思えた。
ただし通常の生き物のカテゴリーではない。
内側、つまり大剣の内部から、その動きは現れているのだ。
もちろんいくら大きな剣であるといえども、所詮剣は剣。中になんらかの生き物が閉じこめられるような空間はない。
――あの剣がどこか異空間に繋がっているとも考えられにくい。
――召還とも違っているな…
鼻先への一撃を竜王はその巨体に似合わない動きで避けた。
避ける竜王の動きを計算しつくして、さらにクラウドは大剣を振るう。
巨大な翼をはばたかせて、バハムートは遙か上空へと、クラウドの大剣から逃れようとする。
竜王のはばたきの力は凄まじく、クラウドの剣先は遙かに届かない筈だったのに――
――!?
セフィロスは目撃する。
――伸びた、のか…
絶対に届かない距離を、大剣は自ら形を変えることによって飛び越えた。熱せられたガラスが自在に形を変えるのに似て、大剣はうねりながら剣先を伸ばしたのだ。
剣先が見事に届き、バハムートの翼を切り裂く。
致命傷にはほど遠い傷ではあったが、クラウドの大剣が届いたのだ。
バハムートが怒りの咆吼を上げる。

※※※
本日はここまで。


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