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+ '08年09月16日(TUE) ... クラファティマその5 +

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こんにちは、びーこです。

Y子さんからのサイト運営に関するお知らせをまだ読んでいらっしゃらない方は、
ひとつ前↓の記事に目を通してくださいませ。
よろしくお願いします。

では少し間が空きましたが、前回の続きです。

※※※
たった一瞬の邂逅で、そこまで理解してしまった英雄の存在を、クラウドは意識的に閉め出すのに必死だった。
もう二度と会わないと。
もし会ってしまえば――自分はこのままでいられなくなる。
心地よく何の変哲もない村での日常から、離れなければならなくなる。
そう、あの優しい母からも離れなければならない。
それなのに、
――あの男!何を考えているんだ。
ごあああああ。
その時天空にいる竜王が、天地を揺るがせる咆吼をあげた。
びりびりと大気が振動する。大気だけではない。立っている地面からも響いてくる。
クラウドもリーダーも、クラウドに襟首を捕まれている兵も、一斉に空を仰ぎ全身を強張らせる。
「まさか…召還獣を呼び出すだなんて!?」
兵の叫びはもっともだ。
普通ならば召還獣を、しかもバハムートなどをこんな場所に呼び出したりはしない。
だがクラウドは常識として兵の言いたいことも解る一方で、召還獣まで呼び出したセフィロスの行動も理解していた。
何せ彼は完全なるスタンドアローンなのだ。
何物も必要とはせずに、何物からも本当の意味で必要とはされていない。
そんな彼に常識など関係あるまい。
竜王は咆吼の余韻の中、上空から見下ろしている。クラウドだけを。
――やはり、目的はオレか。
クラウドは竦んだままのリーダーへと向き直る。
片手で兵の襟首を締め上げたままだが、自分よりも遙かに体格の良い男を、華奢な少年が片手だけで振り回している異常さも、竜王出現に比べれば大したものではないようで、リーダーも兵自身も気づいていなかった。
「おい。この男を連れて早く山を下りろ」
クラウドの一言によりハッと我に返ったリーダーは、きょとんとした顔つきで、
「……クラウド?」
「いいから。早く行け」
「それは……クラウド、ダメだ」
それでも頑なにクラウドを気遣ってくれているリーダーを見て、クラウドは少しだけ余裕が生まれた。
「あの竜王の目的はどうやらオレらしい」
「だから、早くここから離れてくれ」
「クラウド!目的がお前だっていうのなら、なおさら――」
リーダーを遮って、
「いいや。だからこそ、オレ一人にしてくれ」
固い決意を含んだ言葉に、それ以上は何も言えなかった。
「必ず、――村に帰ってこいよ」
「…ありがとう」
不器用な少年の、それでも応じてくれるはにかんだ答えに、リーダーはこんな時なのに穏やかな気持ちになった。
こうと決まれば素早く動かなければならない。
リーダーは兵の背中を荒っぽく叩く。
「逃げるぞ」
「いや…、でも……」
バハムートを前にして、少年一人きり残しておくというのか。
狼狽する兵に、
「あいつは大丈夫だ」
それよりも、
「クラウドの足手まといにならないうちに行くぞ」
もう後ろは振り向かなかった。兵を乱暴に促しながら、リーダーはニブル山を下っていったのだ。


残ったのはバハムートを見上げるクラウドと、クラウドを見下ろすバハムートと。
そして、
「いつまでそこで隠れているつもりだ」
ミニマムで隠し持っていた剣を取り出しながら、クラウドは上空の竜王ではなく、違う方向へと厳しい視線を向ける。
「――わかっていたのか」
クラウドのよりも太く低く、どこか愉しんでいるような声が応じた。
「当たり前だろう」
「気配も隠さずに、ずっと見ていたくせに」
――悪趣味。
神羅の英雄にも容赦なく、クラウドは鋭く睨む。
冬枯れしている木々の間から、銀色のシルエットが現れた。
銀髪に黒革のコート。どちらもセフィロスでなければ長いシルエットがサマにならず、相当みっともなくなっていただろう。
彼のずば抜けた長身と、見事な黄金率の体躯だからこそのこの完璧さだ。
セフィロスという男は、自分の美麗なる容姿がどれだけ他者に大きく作用するのか、考えたことがあるのだろうか。
自分の美しさを計算しているのかと思わせる優雅さで、長い足を使いむしろゆったりと近づいてきた。
歩く度に銀髪が揺れ、セフィロスの神秘的な美しさを増大させる。
絶世の美しさ故の感嘆と、威厳あるプレッシャーを同時に感じさせる男。
こんな男は、英雄という称号を除いても、他には存在し得ないであろう。
長身が歩いてくる姿は、ゆっくりと優雅に見えた。なのに動作は速い。
神秘的な翠の瞳を意識するよりも先に、セフィロスはすでにクラウドのすぐ前に立っていた。
長身を畳み込むようにして、革手袋をはめたままの長い指先で、尖ったクラウドの顎を掬う。
とっさに無礼な手を払おうとしたが、あまりにもその手つきが優しすぎて、それが意外で、クラウドの動きは止まってしまった。
ハッと思う間もなく、鼻先を擦れあわせんばかりの至近距離に、端正で美麗な顔がある。
これだけ近距離なのに、どこにも足らないところがない。
完璧な美貌は非の打ち所が鳴く硬質すぎて、生きているという精気が感じられないのに、ただ一点だけその双眸だけがセフィロスという男の確固たる意志を写し取っているようだ。
こうして見ると彼はとても珍しい瞳をしている。
色ではない。その形だ。
セフィロスの瞳孔はきれいに縦に裂けていた。
こんな瞳孔、ファティマでもあり得ない。
禍々しいほどに神秘的だ。確かに美しい。だがこの美しさは賞賛される類のものでもなければ、どのような豊楽をも含んではいない。
クラウドはそこに絶対的な深淵を認める。
彼は本当に独りなのだ。彼はたった独りで成り立っている。そしてこれからも――
騎士を前にしたファティマの、本能としての献身ではなく、もっと別な何かがクラウドをセフィロスへと突き動かそうとする。
殊更、特別な何かは必要ない。いつも彼の側にいて、声を聞いて、名を呼んで、呼ばれて応じるだけでも、彼はきっとクラウドによって少なくともこの孤独という深淵からは救い出せるのだろう。
小さく尖った顎を愛撫するかのように、手袋に包まれたセフィロスの手が動く。
「外見はずいぶんと可愛らしく出来ているのに――」
「まるでファティマではないような鋭い目つきだな」
ファティマ――この言葉にクラウドは過敏に反応してしまう。
セフィロスから距離をとろうと、身体が勝手に動く。首を振り顎に手を掛けたままの大きな手から逃れようと抗った。
だがそのような反射的な動きは、英雄と呼ばれる騎士にとってなんというものではない。
「動くな」
「お前の目が見たい」
かえってより一層顔が近くなる。
「青だな」
「アイカバーの色ではない、本当の瞳の色だ」
セフィロスの値踏みは瞳の色だけには止まらない。
「遠目でみるともっと小柄なようにうつるが、しっかりと鍛えられている体をしている」
「細い眉。形の良い鼻。そして混じりけのない金髪」
「ファティマは男性形も女性形も皆美しいものだが――」
「お前のは少し違っている」
男でもなく、女でもなく。また人でもファティマでもない。
「確かにお前はただのファティマなどではないな」
「俺の所有すべきファティマとは、こういうモノだったのか」
こうして観察してみて、セフィロスはクラウドがガスト博士の作品であると確信した。
彼はやはり、ガスト博士がセフィロスの為に用意してくれた、パートナーなのだ。
くくく、セフィロスは口だけで笑う。他の者がすれば下卑た嗤いになるだろうが、セフィロスがすれば驚くほどにノーブルだ。振動が直に伝わってきて、クラウドにやっと現実が追いついてきた。
顎に手を掛けられたまま、鋭く睨む。
「…あんた……どういうつもりなんだ」
「どういうつもり、とは?」
「ふざけんなっ!」
セフィロスは明らかにクラウドとのやりとりを愉しんでいる。
自分に向けられているクラウドの怒りさえも、だ。
「どういう理由で何のために、バハムートなんて召還したのかって聞いてんだよ」
「お前を試すために決まっているだろう」
「試す――?」
――そうだ。
「見かけは合格だ」
「俺は触るだけで折れそうな貧弱なファティマなど必要ないからな」
「“ハイ。マスター”しか言えんような人形もいらん」
「お前はちょうど良い」
「見た目よりも頑丈に出来ているようだ」
――心も、身体も。
「ガスト博士は俺に約束をした」
「お前に相応しいファティマを造ってやろうと」
「こうも言っていた」
「ただしそのファティマは俺に選ばれるのではなく――」
「ファティマこそが、俺を選ぶのだと」
「だから試す」
「お前が俺を選ぶのに相応しいかどうか」
至近距離のまま、クラウドの青い瞳に教え込むように囁く。
「クラウド。バハムートを倒してみせろ」
「もしお前がこの竜王を倒せたのならば、俺はお前を認める」
「お前にパートナーたる騎士として選ばれるように、土下座もしてみせよう」
縦に裂けた瞳孔が、鋭く尖っていた。

※※※
英雄殿…ちょっと変態か


+ '08年09月12日(FRI) ... お知らせ +

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こんにちはvサイト管理担当のY子です。
まずはリンクミスのお知らせありがとうございました。
遅くなりましたが修正しました。

さてサイトトップでもお知らせしましたようにY子のサイト管理の方がコンスタントに出来なくなってしまいました。
来月からプロバイダが決まるまでの間はサーバにもあがれなくなります。
裏技はありますがあまりに重いのでよほでないと使えないと思います。

ですので、お知らせしましたように、しばらくはメモにてB子さんの萌えを供給していただき、サイトアップの方はしばらく待っていただく形にさせていただこうと思います。
B子さんの方には問題はありませんので、拍手やメールなどへの対応や通販への対応の方は問題ありませんので
今まで通りによろしくお願いします。

しばらくご迷惑をおかけすると思いますが生暖かい目で見守っていただけたらと思います。


Y子よりお知らせでした。


+ '08年09月05日(FRI) ... クラファティマその4 +

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こんにちは、びーこです。

9月に入り不安定なお天気が続いていますね。
暑いんだったら暑い!
寒いんだったら寒い!
にしてくれないと、ホントに疲れます。

Y子さんが拍手を新しくしてくれました。
早速たくさんの拍手をいただきました。ありがとうございます。
コメントもたくさんいただきました。
リンクミスへのご指摘、有り難いです。
修正しますまで、もう暫くご不自由をおかけしますが、お待ちください。
今回いただきましたコメントは全て返信不要のものばかりでしたが、
どれも嬉しいものばかりでした。
大切にさせていただきます。

では続きをば。

※※※
冬の訪れを象徴するような、凍えかかっている大気が、容赦なく全身にぶつかってくる。
呼吸を整え、人間以上の反射神経を駆使しながら、クラウドは引き金を冷静に引いていた。
幸運なことにニブル山を登り初めてすぐ、モンスターの群に遭遇。
吊り橋付近でズーと出会い頭になり、そのまま戦闘突入となる。
無事に倒し巨鳥の羽根を手に入れた。まずこれがこの日最初の収穫となる。
その後もニブルウルフの群と出会う。これも無事に倒すと狩人たちは軽い興奮状態に包まれた。
そして今、前方にいるのはドラゴン。滅多に出会えない極上の獲物だ。
倒せば珍しい火龍の牙が手にはいるとあって、巨大なドラゴンを前にしても、男達は怯まない。これまで以上に好戦的となり、俄然動きも良くなっていく。
クラウドは後方で援護射撃だ。男達とモンスターとの間合いを計りながら、特に攻撃の後、皆が後退する隙を作り出すべく弾を撃ち込む。
ドラゴンの急所は数少ない。ヒットする事はほんの稀にしか無いものの、顔面、特に眼球近くを狙えば、さしものドラゴンも動きが止まるのだ。
クラウドの仕事はそんな瞬間を作り出すこと。
強力なブレスを巧みに避けつつ、それでも男達の攻撃は緩まない。
クラウドからすれば、人でしかない男達の攻撃は児戯のようなもの。だが自分よりも遙かに強い相手にも怯まず、果敢に立ち向かいながら、仲間達を庇い互いの不足している部分を補っていくチームワークは、いつ見ても感心してしまうのだ。
自分もこのチームの一員に入っているのだと思うと、とても誇らしい。
闘うこと数十分後、奮闘の甲斐あってとうとうドラゴンが倒れる。
うおー。自然と男達の口から、勝利の雄叫びがあがった。
クラウドもほっと安堵しつつ警戒を解き銃口を下ろす。重い銃身と発砲の反動を抑えるために、肩からかけていたベルトを滑らせて、銃身を背後に立てた。
皆が緊張から解き放たれている中、ただ一人だけの様子がおかしい。
村人ではなく、神羅兵であるあの男だ。緊張から解き放たれるどころか、今がピークのような顔つきをしている。剛胆な兵には珍しい顔色の悪さだ。
――なんだ?
まさかまだ他にもモンスターがいるというのだろうか?
それとも…もっと別の理由があるというのだろうか――
目深なフードの下から様子を窺うクラウドの前で、兵はやはり挙動不審だ。
やはり、変だ。
クラウドは側に近づき、声を掛けようとしたその時、
「あれはなんだ!」
どよめきに釣られて空を見上げる。
瞬間、とてつもない魔力を感じた。脳髄に直接のしかかってくる魔力のプレッシャーに、クラウドは思わずこめかみを抑えながら、空を仰ぐ。
冬前のニブルの空。灰色の重苦しい雲がいつもと違い蠢いていた。
その中心に黒い焦気が固まっていく。まだ形らしい形などない。ただ黒い焦気はどんどんと膨れあがっていくのだ。
「モンスターなのか!?」
モンスターなのかは、はっきりとはまだ解らないが…
――逃げなければ!
これだけの強い魔力を有しているのだ。ただごとではない。
差し迫った危機感に後押しされ、クラウドは叫ぶ。
「逃げろっ!」
「…クラウド?」
「魔力を感じるんだ。早くっ」
普段は無口で感情を滅多に表さないクラウドのこの必死さに、男達は切迫する事態を感じ取った。
リーダーが動揺する男達をまとめる。
「おい。荷物を持て。山を下りるぞ」
統制のとれた男達の動きは素早かった。リーダーの言葉を理解するやすぐに自分にあてがわれている荷物を持つ。
「重い荷は捨てていけ。惜しむな」
一番素早い男が先頭に立つ。当然のように殿になるリーダーの隣にクラウドは自ら並んだ。
「クラウド。お前は先頭だ」
クラウドは大きく首を横に振った。
目深にしていたフードを跳ね上げて、青い眼差しでリーダーをじっと見つめる。
黒い焦気はどんどん大きくなり、すでに塊となっている。クラウドからすれば魔力の塊だ。
モンスターのハンティングには慣れている男達でも、魔力の戦いは不慣れだ。
クラウドはこの時確信していた。列の中程にいる兵は、この自体をあらかじめ知っていたのだろう、と。
歴戦の兵のあの色のない表情。何よりクラウドの予想が外れていなければ、あの魔力の塊はとんでもないモノだ。
――絶対に誰も傷つけさせはしない。
クラウドにとって自分をストライフ夫人の息子として受け入れ扱ってくれている村人たちは、すでにただの他人ではない。護るべき大切な人たちだ。
特にこの猟にでる男達は、クラウドにとって大きな家族。
自分の身に替えてでも、護るべきだ。
こんなクラウドの決心が伝わったのだろう。なにせクラウドは言葉よりも眼差しの方が雄弁なのだ。
「…――わかった、頼むぞ」
リーダーは村人の中でもクラウドをよく知っていた。
見かけ通りの少年でないことも知っている。逡巡は一瞬だけ。
「おうい!早く歩け」
割れんばかりの怒声を発すると、殿の位置をクラウドに預けたのだ。

黒い焦気は頭上を覆い尽くさんばかりとなる。今や発せられる魔力は、肌をびりびりと痺れさせてきていた。
さすがに男達もこの異常なほど強力な魔力を感じ取っていた。
皆強張った表情で血の気をすっかりと失ってしまっている。
足は自然と速くなり、全力疾走寸前だ。この異常な状況下に疲れは感じないものの、足をもつれさせないので必死だ。
男達の荒い息づかいと、硬い足下を踏みしめる靴音が続く中、ぽきりと枯れ木を踏みしめる音がする。
と、クラウドははっきりと感じた。
足をとめて頭上を仰ぐ。
そうしているうちに、走る男達との距離どんどんと開いていった。
心を許している男達の背中を見送るのは少し寂しい気もするが、今はそんな感傷に浸っている時ではない。
むしろ男達はいない方が、闘うには都合良いだろう。
すっかりと姿が視界から消えてしまい、ただクラウドの発達した聴覚に足音だけが遠ざかる距離まで開いたのに、どうしたことか、足音のひとつが戻ってくるではないか。
息も切らさずに巨体で駈けてくるのは、リーダーだった。
――どうして戻ってきたんだ。
そんな理由など考えるまでもない。クラウドの身を案じてのことだと呼びかける心配げな声ですぐに証明だれた。
「――クラウド?」
こんな厳つい男が出せるのかと疑うくらいに、それは繊細な呼びかけであった。
だが、今はそんな優しさが邪魔だ。
「速く…!先へ行け」
リーダーはクラウドだけを残すことに躊躇うが、それも次に起こった光に遮られる。
光は頭上からだった。あの黒い焦気の塊がいきなり強い光となり輝き始めたのだ。
光はみるみるうちにしっかりとした形となる。シルエットがどんどんと巨大となっていった。
するすると伸びた光は大きな翼となる。羽毛の整った羽根ではない。
は虫類的な翼だが先端には鋭いかぎ爪がついている。
羽毛の代わりに気流を掴む薄い皮膚は、漆黒に限りなく近い色味だ。何かを確かめるように数度羽ばたくうちに、翼は完成されていった。
次に身体。濃紺とも濃紫とも判別できない色味の全身は、紛れもなく硬質化されている。
腹の部分だけやけにはっきりとした黄色が覗いていて、それがやけに威圧的だ。
――ドラゴン…か?
あのシルエットは見間違えようなくドラゴンだ。
それに間違いはない。間違いはないが、今焦気の塊から光と共に現れたドラゴンは、クラウドやハンターたちがよく知るドラゴンとは決定的に違っていた。
モンスター特有の邪悪さは感じられない。むしろ威厳と品格さえ発しながら、クラウドたちをじっと見下ろしている。
「なんだ…こりゃあ……――」
唖然とするリーダーの背後から、答えがやってくる。
リーダーのように仲間から戻ってきた、あのずっと様子がおかしかった神羅兵であった。
「まさか…バハムートを出すとは……」
バハムート――語るまでもない、伝説の召還獣だ。
「俺はこんなの聞いてねぇぞっ」
やはり、兵は何かを知っている。
クラウドは低い位置から、自分よりも遙かに高い位置にある襟元をひっつかむ。
「どういうことだ。話せ」
戦いに慣れた兵でさえ、思わず怯む力の強さであった。
白く小さな華奢な手に、どれだけの力が秘められているというのか。
兵は自分の身体が、少年の力により浮き上がりそうになっているのを感じた。
「話せ!」
峻烈な青い眼差しに従うしかない。
「…何も、聞かされてなんかいなかったんだ」
「バハムートだなんて――」
「クラウド…お前のことをやたらしつこく聞いてきて」
「次に狩りに出る時は同行するようにって言われてな…」
「絶対になんかヤラかすんだろうとは思っていたんだが…――」
つまりは、兵も利用されただけということか――こう判断したクラウドは兵の襟首を掴んでいる力を僅かに緩め、
「それは誰なんだ」
「セ・セフィロス…だ」
クラウドの脳裏に、長髪の美丈夫の姿が浮かぶ。


たった一度だけ、しかも僅かな時間の邂逅でしかなかった。
視線を交わしたのはほんの一瞬だけ。
それでもあの英雄と呼ばれる男の存在は、クラウドにも強烈だった。
五つの星団に暮らす者たち全てにとって、神羅の英雄でありあの美麗なる容貌を持つセフィロスは特別であっただろう。
こうやって思い出すだけでも戦慄するのは、他の者がセフィロスに抱く諸々の感情とは、性質を異にしている。
縦に裂けた翠の眼差しを知った瞬間、クラウドは全てを知ってしまった。
いや、知ると言うよりは理解してしまったと表現した方が正しいのだろう。
この村に来る前のことだ。クラウドを造りだしてくれた、優しい“父親”が話してくれたこと。
(クラウド。お前はいつの日か選ばなければならない)
(ファティマとしてのリミッターを外した存在。それがクラウド、お前だよ)
(なぜ私がお前をそのように造ったのか、選ぶべき騎士に出会えれば、お前はきっとすぐに解るだろうよ)
(クラウド――私が造る最後の“息子”よ)
(選ぶ、選ばないはお前の勝手だ)
(そうだと解っていても、私は願うのだよ)
(あの寂しい子供が、お前を得て本当の充足をしることを)
優しい“父親”だった。内向的な性格なのに、気は強く負けず嫌いなクラウドを、本当に可愛がってくれた。
クラウドがニブルヘイムで暮らすのを決めた時も、何も言わずに送り出してくれた。
“父親”からはたくさんの、数え切れない大切な、クラウドを構成する全てを与えられている。身体も、知識も、魂も。
自分がただの人形でないと信じられるのは、あの“父親”のおかげだ。
その敬愛する“父親”がクラウドと誰が添うべきだと考えているのか――
“寂しい子供”が果たして何者なのか――
セフィロスとの瞬間の邂逅で、クラウドは理解してしまったのだ。
――セフィロス…だったのか……
五つの星団に暮らす者、誰もがまさか神羅の英雄を“寂しい子供”などと想像するだろうか。
クラウドも英雄の噂を聞いている時は、何も感じなかったしどうとも思わなかった。
いかなる類の感慨もなかった。
が、こうやって実際に邂逅してすぐに、言葉も交わすことすらなく、理解してしまったのだ。
セフィロスは特別だった。
これまで五つの星団に存在した、また存在しているどんな騎士ともまるで違っている。
どこまでも強く、あくまでも美しく、しかるべく賢い。おおよそ人が求める理想の最上級にいるのだ。
セフィロスは独立している。
五つの星団広しといえども、どこを探しても、彼をカテゴライズする場所はない。
彼は神羅の英雄と呼ばれながらも、神羅からも独立している。
彼は神羅という組織を必要とはしていない。
騎士というのにカテゴライズするのも少し違う。
彼は騎士というものに、殊更意味を見いだしていないからだ。
騎士の価値にも無頓着であり、騎士である自分を誇らしいとも感じていない。
セフィロスはまさしく、この五つの星団の中たった一人きりで存在しているのだ。
完全なるスタンドアローンとして。こんな寂しい存在が他にあるだろうか。
誰も彼を理解しない。誰も彼を知ろうとはしていない。利用はしても心を寄せようとも思われてはいない。本当の意味で、彼は誰にも“セフィロス”という個を必要とはされていない。
彼は生き神のように、崇められて敬われて、敬遠され畏怖され唾棄されるべきだと、無意識のうちにそうされている。
その寂しい英雄の隣にいて、彼に添い続けられるのは――クラウドただ一人だけ。
※※※
今回はココまで。


+ '08年08月29日(FRI) ... 更新しました +

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SWパロの拍手掲載分を更新しました。
ということで拍手は新しいSWパロのお話が上がっています。
(ずいぶん前にもらっていたのですが、なかなか更新出来ずごめんなさいでした)
拍手更新は特に履歴には掲載していないのですが、今回はB子さんがタイトル募集して〜〜〜誰かつけて〜〜ということでしたので、
よかったらつけてくださいとお願いです。

ではB子さん遅くなってすみませんでした。
金銀のファイルも待ってますv

最後になりましたが拍手も♪も毎度楽しみに拝見しています。いつもありがとうございます。

●しばらくラクガキもしていなかったのでまずはリハビリです。(SWの二人)



+ '08年08月27日(WED) ... クラファティマその3 +

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びーこです。

たくさんの拍手&♪、ありがとうございます。
読んでいただいているんだなあ、と嬉しいです。

続きです。

※※※
その後暫くしてガスト博士はセフィロスの前から姿を消す。
セフィロスは十代で天位を得て、名実共に星団最高の騎士となった。
ガスト博士との約束は、未だ果たされていない。
セフィロスにはパートナーであるファティマはいないし、ガスト博士が約束してくれた“その子”にもまだ会っていない。

――もし本当にクラウドがファティマだとすれば…
ガスト博士が約束してくれた“その子”だとすれば。
あの様子では自らファティマだと申し出ることはないだろう。
彼がどういう意図を持っているのかは定かではないが、ニブルヘイムの村人の一員として生きていくつもりならば、余程のことがない限り彼は“人”として生きていくに違いない。
セフィロスが強引に手をとって、ファティマだと認めさせても、それではセフィロスが望む解決にはならないだろう。
なにせセフィロスが選ぶのではない。
ガスト博士が言ったではないか。セフィロスの方こそが彼に選ばれるのだから。
――さて、どうすれば良いか…
まずは本当にクラウドがファティマなのかを見定める必要がある。
今セフィロスにあるのは限定された状況による推測のみ。これでは真偽は計れない。
明らかな証拠を得なければならない。
――仕掛けてみるか。
ガスト博士がセフィロスのために造ったファティマを、紹介される前に知り合っておくのも悪くはない。
セフィロスはそんな自分の考えに、満足した。



朝目覚めるとまず母親に挨拶をする。
顔を洗い、ぼんやりとした古い鏡を覗くと、そこに映るのはいつもと変わらない昨日と同じ自分だ。
クラウドはこの顔が嫌いだ。美醜はともかく、この繊細すぎる顔立ちは、庇護されながらも献身的に主に仕える証としか思えないから。
苛つきながらせめて髪だけでもどうにかしようと弄ってみるが、見事に奔放にまとまってしまっている金髪は、どうしようもならない。
それでもささやかな抵抗に奮戦していると、優しい母の声が聞こえてくる。
「クラウド。朝ご飯にしましょう」
この一瞬にクラウドはめまいがしそうだ。
優しい母。決して裕福ではないが、穏やかな生活。
本当ならどれだけ望んでも得られなかった時間。
この時間が今にも壊れそうなひび割れたガラスの上に成り立っているとしても、クラウドは最後まで護りきろうと決めている。
庇護されるのではなく、クラウドが護るのだ。
「母さん、今行くよ」
髪との戦いを放棄すると、クラウドはリビングに向かった。
狭い家なのだ。部屋数も少なければ、その一部屋一部屋が狭い。
クラウドがリビングに現れた時、クラウドの母ストライフ夫人は、パンを切り分けている最中。クラウドとよく似た金髪と碧眼。小さな手に無骨な包丁はそぐわないものの、長年主婦をやっているだけあって、とても手慣れている。
「これ、運ぶね」
「ええ、お願い」
ストライフ夫人とクラウドを見て、誰しもが親子だと思うだろう。
髪と目と肌質と。あとどちらも山奥の田舎に相応しくない繊細な容貌をしている。
だがそんな相似も、実はよく観察してみれば微妙な違いがあるのだ。
髪の色も目の色も、肌質さえも“よく似ているだけ”でしかなく、根本は別である。
なによりあくまでも人であるストライフ夫人に比べ、クラウドのほうが遙かに生活感がなく人形めいているのだが。
二人分の朝食の用意など簡単なことだ。
二人は向かい合わせにテーブルにつく。
食事前には簡単な祈りの言葉。宗教的な要素は薄く、日々の糧に対する感謝のものだ。
ニブルヘイムは信仰の厚い村ではない。むしろ自然が厳しいこの土地では、信仰の対象は自然そのものなのだ。
「クラウド。今日は猟の手伝いをする日だったわよね」
こう確認するストライフ夫人は憂鬱そうだ。
そうだと解っているからこそ、クラウドはあえて明るく振る舞ってみせる。
「そうだよ、母さん」
「雪でニブル山に入れなくなる前に、食料を仕入れておかないと冬にお腹が空いちゃうからね」
村人が主に狩猟の場として重宝しているのが、村のすぐ側にそびえるニブル山である。
かなりレベルの高いモンスターの生息地であるのだが、それだけ価値の高い狩猟ができた。
毛皮は売って貴重な現金収入になるし、肉は貯蔵して厳しい冬季の糧とする。
冬本番がすぐそこにまで差し迫っているこの時期、村人は総出で冬支度に入るのだ。
女は衣服や寝具などの防寒を整える。小さな畑の収穫に励む。小さな子供達はその手伝いだ。
男は猟に出る者、村中の家を冬に備え手直しする者、薪などを用意する者に別れる。
村長がそれらを取り仕切り差配して、村人全員が無事に冬を越せるようにするのだ。
「今年はニブルウルフの群があまり姿を見せなかったからね。もう一度くらいは狩りに出ないと」
「クラウド――猟に行かないで母さんの手伝いをしてちょうだい」
ストライフ夫人の青い瞳の焦点が拡散する。
その酷く曖昧な眼差しは狂気を孕んでいた。
クラウドはそんな母にうろたえもせず、むしろゆっくりとかみ砕くように言葉を続ける。
「母さん、一緒に猟に行くって約束したんだよ」
「危ないことはしないから」
「ほら、オレの銃の腕前がいいの、知ってるだろ」
「みんなの後ろから銃で狙って撃つだけだから――」
「大人達が前に出てくれるし、これまでだって危ない目になんかあったことないんだ」
母の手を握りしめて、クラウドは静かに諭す。
その光景は見ようによっては、年齢の離れた恋人達の睦言のようにうつるだろう。
落ち着いてあくまでも穏やかな物言いとは裏腹に、クラウドは必死だった。
母が完全に狂気の世界に行ってしまわないように。
クラウドの母で有り続けてもらえるように。
「クラウド、クラウド!」
夢を見るのよ――母はそういって息子に縋り付く。
身長が僅かだけ息子が高い以外は、母と息子の体格はほとんど同じだった。
年の離れた姉弟にさえ思える。
「お前が……胸から血をいっぱい溢れさせるの……――」
血に濡れる金髪。今すぐ側にいてくれる息子の髪とは、違うような気がするけれども。
「クラウド!お前がいなくなるなんて」
「母さん――それは夢だよ」
「オレはここにいるよ」
「本当!?」
「本当に…母さんの側にいてくれるのね!」
「ああ…あたしのクラウド」
暫く寄り添っているうちに、ストライフ夫人の瞳から狂気が拭われていく。
そのうちに時間となった。戸外で男達が猟の準備に集まっているのが、小さな家の中まで伝わってくる。
その気配にストライフ夫人は息子からそっと離れ、
「クラウド。気をつけて行ってらっしゃい」
「…はい。母さん」
やっと落ち着いた母に後押しされて、クラウドは猟へ行く支度を手早く整えた。


猟へ向かう人員はクラウドをいれて10名。その中で一人だけ村の人間ではない者が交じっている。
彼は神羅に所属する兵士だ。猟が好きらしく、こうして非番の日には時折参加してくれている。すでに村人には馴染みの顔だった。
いつものように顔がほとんど隠れるくらい目深にフードを被っているクラウドは、集まっている皆に小さく頷くだけの挨拶をする。
村人はだれもがそれを不遜だとも無愛想だとも受け取らない。
むしろ親しげに、
「おう、クラウド頼むぜ」
「頼りにしてるからな」
口々に狩猟をする男ならではのしぶとい笑いを見せながら、少年の小さな肩と背中を親しみを込めて叩いていく。
こういう荒っぽい信頼を初めて向けられた時、どうして良いのかわからなかった。
戸惑うことすら出来ず、無反応だったクラウドに、そのまま飾ることなどしなくて良いのだと教えてくれたのも、この無骨な男達だった。
そんな様子に男達の強さを感じる。単なる能力だけを言えば、男達の誰よりもクラウドは強い。
力も、速さも、比べるまでもなく、クラウドが上だ。
だがそれはそう造られているだけでしかなく、男達のような広く懐の深さはない。
これこそが本当の強さなのだと知った時、クラウドはこの村で暮らして行こうと決めたのだ。ストライフ夫人の息子、クラウドとして。
ふと視線を感じて顔を上げる。そこにはクラウドも見慣れている神羅兵の厳つい顔があった。どんな凶悪なモンスターを前にしても、楽しんでいるタフな男が、どうしたのだろうか、やけに不安げだ。
どうしたのか?と声を掛けようかと一瞬過ぎったが、結局クラウドは何も言わなかった。
兵士も言いたげではあったが何も言わなかった。
「よし!出発だ」
リーダーの声に男達は隊列を組んで、ニブル山へと歩き始めた。
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