オーヴァチュア

OP/ZS/2006年にょろそろじー参加作品



no.3

―――なんだこりゃ?
金の粉が触れ消える瞬間、体の中に暖かいものを感じた。
―――なんか知らねぇけどこれ気持ちいいな。
気分がどんどん高揚してくる。
きっとさっきの酒がまだ残っているのだろう。サンジはそう考えると、粉が降り注ぐのに身を任せるように両手を広げ光の粉と戯れた。
光に解けるような感覚だった。
暖かくじんわりと体中を包み込み、全てを許され、受け入れられているような喜びが体の奥から込み上げてくる。母の羊水の中での記憶はないけれどきっとこんな感じなのだろう。
―――あれ、でもこれなんだ?
気持ちよくて気がつくのが遅れたが、サンジの体に光のようなものが纏い付いている。さっきまで踊るようにして螺旋を描いていた光る紐のようなものはサンジの体を囲み繭のように包み込もうとしていた。
そして先ほどまでの柔らかな喜びとは別の感覚を体に感じはじめていた。
何もしていないのに股間が疼いて仕方がない。
狂おしい程の射精感が襲ってきて自分自身で体の制御が利きそうもない。
こんな感覚ははじめてだ。
―――なんだよ。っく・・・なんだってんだよ。
「ゾロ!」
サンジはここにいる唯一の仲間に向かって声を上げた。
助けてくれなんて言うのは死んでも嫌だったが、どうにもこうにも混乱してた。
光る繭のように見て取れるそれは、良く見れば発光した細かな無数の触手が絡まり繭を作りながらサンジを取り込もうとしているようにも見える。
声に反応するかのように小屋の外に出たゾロは光の繭の中でもがくサンジを見つめ一瞬大きくを息を飲んだ後、舌打ちをひとつすると迷わずその中に飛び込んだ。
金色に輝く繭の中でサンジが情けない声を上げる。
「ゾロ!なんだよこれ」
「《にょろ》の受粉だよ」
「これがか?」
潤んだ瞳で問いかけるサンジにゾロは小さく息を吐く。
「だから、おれは出るなって言ったんだ」
サンジはゾロの言葉の意味がわからないのかただ呆然とゾロを見上げるだけだ。
「なに?なんで?って?っつ、うっ」
真っ赤に体中を火照らせながら身を丸くして喘いでいる。
「媚薬だよ。《愛の涙》ってやつだな。オメエはその原液浴びちまったようなもんだ」
「び・・・っ媚薬?うう・・・っあん。ちくしょーなんだよ」
ゾロは怒ったような困ったような表情をしてサンジが見たこともないような顔をしている。
「っあ・・・ん・・・っく・・・ちくしょー。見んなよ!クソマリモ!」
体の疼きに全てを委ねてしまいたくなるが、目の前にいるゾロに見られていると思うと理性がそれを押しとどめる。
油断すると漏れそうになる声を聞かせたくなくて唇をかみ締めながらゾロを睨み付む。
そんなサンジの気持ちをわかっていないのかゾロはサンジの股間に手を伸ばしてきた。
「うわっ!」
思わず漏れた声と同時に下穿きの中で暖かいものが弾け、漏れ出す感覚に戸惑った。
―――な、な、なんだよ。これ。ズボンの上から手が触れただけで・・・おれイっちまった?
情けなくて目尻に涙が滲んでくる。
悔しくて恥ずかしくて何かゾロに言ってやりたいのに、口を開いたら声が漏れてしまうからそれもできない。
「イっちまったか。気持ち悪ぃだろう?」
ゾロは淡々とした口調でサンジのズボンに手をかけると下着ごと一気に下ろした。
「っな何すんだよ!っうっあっん」
怒鳴りつけるつもりなのに甘い声が鼻をついて出てしまいどうしていいのかわからない。
それでもサンジが睨み付けると、ゾロは怒りでいっぱいの形相をしている。
―――なんでそんな怒ってんだよ。
「何ってしょうがねぇだろうがよ。ヤりたくてしょうがねぇんだろう?」
「っうっん・・・」
「可哀そうにな。苦しいんだろ?こりゃテメエのせいじゃねぇ。《にょろ》のせいだから気にしないで、我慢すんじゃねぇ」
顔はものすごく怒っているのに、あやすようなゾロの声も伸ばされた手の温もりも信じられないくらいに優しくて暖かい。
繭に包まれた時、最初に感じた暖かさと安心感と同じだ。
そう思うとサンジの体から力が抜けていく。
優しく頭を撫でられ、大きな手が体を包むように触れてくる。
「何も考えなくていい。こりゃ事故みてえなもんだ」
聞いたこともないような掠れた甘い声が、サンジの意識を攫っていく。
「テメエはおれに任せりゃいい」
唇にゾロの指がそっと触れてくると電流が走ったようにビクリと体がしなる。
「夢だと思ってろ」
さっきとは打って変わってゾロは苦しそうに、でも優しく呟くとサンジの唇に自分の唇を近づけた。
甘く重なる唇に一瞬なんでゾロとおれがキスしてんだ?と疑問が沸いてくるが、それもゾロの舌がサンジの口内に入り込んでくるまでの僅かな間だった。
「んっんんっ」
隙間なく押し付けられた唇に呼吸ができなくて、ゾロの胸を押し返そうといつの間にか抱きとめられた体の中で身を捩る。「なんにも考えねぇで感じとけ」
ゾロの低い声の振動が唇の上に伝わりくすぐったい。
意味のあることを考えられたのは多分ここまでだった。
サンジのペニスをゾロが戸惑うことなく包み込み、軽く撫でるだけでサンジは弾けてしまう。
「っああああああ」
「いいこだ」
口の中でゾロの声が聞こえるがあまりの大きな快感にサンジの意識はショートした。
 


「解さねぇと辛いだろうがよ。っちくしょー。繭ん中に入っちまったら、どうにもなんねぇのに、クソっ」
ゾロが何か話しているがサンジには音を言葉として認識することもできなくなっている。
ただ気持ちが良くて、幸せで、大きな腕が誰のものなのかも関係なく、気持ちがよくてよくて仕方ない。
「っあん。あああ」
ゾロが触れる度にそこは発火しそうに熱く疼く。
じわじわと体を溶かし侵食してくる熱にただ翻弄されるだけだ。
何故こんなに体が疼くのかとか、どうしてゾロの指が、体温が、こんなにも気持ちいいのかも理由なんか考えることもできない。
「っあ、おれ・・・うん」
「絡まってくんな。いいから任せておけ」
尻を出せと言われ素直に腰を上げる。
「ったく、なんだってこんなに利くんだよ。おれの方こそ罰ゲームだってんだ」
ぶつぶつと文句を言うわりにその手が優しい。
そっと、繊細なガラス細工に触れるかのように、サンジの尻に手をかけると、ぬるりとしたものを入れこんだ。
「ああああああああん」
自分ですら触れたことのないまっさらな窄みにウネルように蠢く冷たい感触にサンジの嬌声が響いた。
ガクガクと体を跳ねさせて、あまりの衝撃に口もだらしなく開いてしまう。
内臓を剥き出しにされたような感覚。
全てを探られているような不快感の中に感じたことのない感覚が引き摺り出される。
「っや・・・・なに・・・っあん・・・動く。動いて・・・っあーーー」
「大丈夫だ。いいから楽にして、力を抜け」
はっはっはっと荒い息を繰り返しながら必死に声に従おうとするが、どうしても体がいうことを利かない。
あやすように優しく暖かい指先がサンジの頬を撫でる。
「大丈夫だから」
何度も繰り返される言葉に緊張が解けてくる。
「うううん。あん」
「そうだ。ゆっくり力を抜け。今《にょろ》がオマエの体を解してる。もうちょっとの辛抱だからな」
サンジに言葉が届いているのかもわからないのに、その声は優しく響く。
体を委ねた瞬間にサンジのペニスが跳ねまた白い抹消を飛び散らせた。
どくどくとペニスが震えながらたらたらと液をしたたらせているのにも関わらずサンジのペニスは張り詰めたまま萎えることを知らない。
気持ち良過ぎて苦しくて仕方ない。
「ゾロ・・・っあん・・・おれ・・・っ」
なんとかして欲しくて、どうにかして欲しくて、ただゾロが欲しくて、縋る様に涙を浮かべた瞳をゾロに向けると、ゾロの表情が強張った。
「っクソったれ」
言いながら怒ったようにサンジをぎゅうぎゅうと抱きしめゾロも苦しそうにしている。
ゾロの股間も張り詰め硬くなり、押し付けられたサンジにもハッキリとその形がわかるのに、ゾロはサンジに入ろうとはしない。
「っあんっ・・・なんで?ぞ・・・ゾロ・・・?」
苦しくて体を押し付けて布に当たった刺激だけでサンジはまたイッてしまう。
でも足らなくて、欲しくて仕方ないのに、何故ゾロはサンジに入らないんだろうか?
ゾロだって苦しそうなのに。
「いくらでも触ってやっから、辛抱しろ」
何かを堪えるように押し殺した声で、でも優しい顔をしてゾロが笑う。
サンジはゾロが欲しくて仕方なくなっていたが、その笑顔が優しくて嬉しかったから素直に頷くと甘えるようにゾロに唇を寄せた。


何度も絶頂の限りを尽くして限界まで絞り取られるようにしてサンジは意識を飛ばした。
薄れる意識の中、優しい手が汗で額に張り付いた髪を何度も撫で付けているのをうっすらと感じた。
「全部夢だ。起きたらオメエは何も覚えてねぇ」
切ない声を聞きながらサンジは眠りの中へと落ちていった。



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