オーヴァチュア

OP/ZS/2006年にょろそろじー参加作品



no.3

小屋の小さな窓から明るい日差しが降り注ぐ。
キッチンで鼻歌交じりに鍋を掻き回すサンジは視線を感じて笑いながら振り向いた。
「匂いにつられたか?寝腐れマリモにしちゃずいぶんお早いお目覚めじゃねぇか」
ふふんと鼻を鳴らしながらお玉を上げると寝起きで機嫌が悪いのかゾロがむっつりとした様子で起き上がる。
「なんか昨日は先に潰れちまったみてぇで悪かったな」
ベッドも占領しちまったみてぇだし・・・バツが悪そうな顔をしてサンジが謝るのをゾロは眺めると、いっそう不機嫌な顔で乱暴に椅子を引くと音を立てて座り込んだ。
「そんなに怒らねぇでもいいだろう?」
「怒ってねぇ」
「その面で?」
「煩せぇな」
「ま、昨日は世話になったみてぇだし、その口の利き方も許してやるけど、もちっと可愛い面見せろよ」
「あん?可愛い面ってなんだ?テメエ頭沸いてんのか?」
「おう。沸いてるな。沸きっぱなしだ」
サンジは顔をゾロの鼻先まで近づけると、ゾロに息をかけながらゆっくり言う。
「なんで突っ込まなかった?」
「テメっ!覚えて・・・」
「やっぱり夢じゃなかったか」
「カマかけやがったのかよ」
真っ赤な顔をして怒鳴るゾロにサンジは口元を緩めると、忘れるわきゃねぇだろうよと呟いた。
「で、なんで入れなかった?」
「・・・それは・・・・」
言葉を捜して動揺しまくっているゾロの様子にサンジは噴出すと、その首にするりと手をかけた。
「テメエ可愛いな」
「バカ野郎。寄るな、離れろって」
「ここは離れて欲しくなさそうだぜ」
からかうようにサンジがゾロの股間を握り込む。
「朝っぱらから何サカってやがんだ」
「なんで突っ込まなかったか言ったら放してやるよ」
耳朶に触れるくらい近くに唇を寄せるとサンジはしつこく同じ問いを繰り返した。
だってコイツの手は優しかった。
いくら媚薬の力だったとはいえ、本当に嫌いな奴に触られて気持ちいいわけはないのだ。
サンジだってそこまでだらしなくはない。
あの繭の中でサンジはゾロが欲しくて、欲しくてしかたなかった。
そして自分の気持ちもわかってしまったのだ。
だからハッキリ覚えている。
ゾロが欲しいのに、ゾロはサンジの中に入ってこなかったことを。ゾロの股間だって熱く硬く滾っていたはずなのに。
絡めた腕に力を込めぎゅうっとゾロに抱きつきながら返事を待つ。
きっと余裕の口ぶりとは裏腹にサンジの耳まで赤いのがゾロには見えるだろう。
これだけ体を寄せているんだから、サンジの鼓動もゾロと同じように早く打っていることだってバレバレのはずだった。
「嫌だったんだよ」
やっぱり男に突っ込むのは嫌だったか?と思うと聞き返す声は掠れてしまう。
「何がだよ」
「昨日のテメエは媚薬でイッちまってた。おれはそんなテメエに突っ込むような真似はしたくねぇ」
「なんでだ?ヤリたくなかったのかよ?」
声が震える。
「違う。惚れてっから」
「え?」
「だから、惚れてっから嫌だったんだよ」
怒鳴るようにそう言いながらサンジの腕を振り解き、逆に抱きしめる。
「オメエ性質悪ぃぞ」
情けない声を出しながら、サンジの後ろの髪を掴むと思い切り唇を押しつけて来た。
「ン・・・・っちょ・・・んんんん」
心臓が大きく跳ねる。
昨夜のキスだって気持がちがよかった。
なにしろサンジは媚薬漬けだったのだから、何処を触られても見られても感じた。
でもこのキスはそんなのとは違うのに、心臓が押しつぶされそうに苦しい。
そして苦しいのに気持ち良くて嬉しい。
ゾロの肉厚な舌が器用にサンジの口内を舐め上げる。
戸惑うサンジの舌をねっとりと絡め取りながらチロチロ舌先で刺激してくる。
「っふん」
鼻先から甘い声が漏れるとゾロの目が笑うのが見えた。
「犯るぞ」
口の中でゾロが動いて、サンジは答えるようにゾロの舌を吸った。
何故かゾロは小さくチクショーと言いながらサンジを押し倒した。

「っひゃっ・・・気持ち悪ぃ」
やっぱ無理だ。絶対に無理だってと続けるサンジを睨み付けながらゾロは押し入れた指を三本に増やした。
「大丈夫だ」
「なにが大丈夫なんだよ」
「昨日かなり解してっから、ほらもう三本飲み込んだ」
「っな!」
羞恥で赤くなるサンジと違って実にゾロは自然だ。
それが余計にサンジの勘に触る。
「いいかげんにしろよ。いつまでもこんな格好させてんじゃねぇ」
うつ伏せで尻をゾロの顔の方に高く上げた状態でサンジは恥ずかしくて憤死しそうだった。
「もうちょっとだからな」
ゾロはサンジの尻をあやすように撫で上げ、こっちも弄ってやるからと前に手を伸ばしてきた。
「っひゃ」
ぎゅっと握られ思わず声が出る。
「うおっ締めんな」
「んな。わかんねぇよ」
色気もクソもない会話なのに、サンジの心臓はドキドキしすぎて息をするのも辛い。いったいこのまま触られていたらどうなってしまうんだろう。

「っあ・・・・っあああああ・・・っも・・・むり」
無理だと言いたいのにガクガクと体は跳ね意味のある言葉なんか吐き出す余裕もない。
「まだ無理だろう」
言いながらゾロはまだサンジに入ろうとせずに前を扱く手に力を込める。
「いいから・・・いいから入れろよ」
涙目になりながらサンジが大きく体を捩ってゾロを振り返ると、赤鬼のように真っ赤な顔をしたゾロがゴクリと唾を飲み込むのがハッキリ見えた。
コイツも興奮してるんだ。
「っはっ・・・早くっ・・・」
言葉にした瞬間に熱く硬い塊が遠慮もなく突き立てられた。
「あああああああああああ」
獣のような叫び声が遠くに聞こえたような気がする。それが自分の出している声なんだとサンジはしばらく気がつきもしなかった。
本能のみで突き上げてくるような塊がサンジの体の中味まで引き摺り出すようにスライドしていく。その度に芯から痺れるような感覚が震える程気持ち良くて昨夜の比ではない。
涎を垂らした犬のように、はっはっはっと息をする音、後ろから抱きかかえられ肩を齧られ、それすら気持ち良く仰け反ると空いた首筋に吸い付かれる。
「面見せろ」
掠れきった声でゾロは言いながら尻を支点にいきなりサンジを回転させる。
「ひゃああああ」
回された拍子に思わぬところが刺激され空いた手でゾロにしがみ付いたその時、温かいものがどくどくと体の中に出されるのを感じた。
「オマエもイケ」
最後の一滴まで搾り出すようにビクビクと腰を動かしているゾロが器用にサンジの鈴口を弾いた。
「っあっうああああ。イっちまう!」
前も後ろもどろどろにしながら大きく肩で息をして、ゾロの鼻先に顔をつける。
「ありえねぇくれぇに気持ち良かった」
息も絶え絶えにそれだけ言うと、抜かれていないゾロのペニスがどくりと大きくなるのを感じた。
「え?」
「エロすぎだ」
悔しそうな顔をしてゾロは呟くと、サンジの体を抱え、大きく突き始める。
「ひゃっっと、まった・・・まだ・・・」
「誘うのが悪りぃ。も一回するぞ」
ニヤリと笑いながらゾロがサンジの鼻先にキスをする。
「お手柔らかに」
笑いながら見上げると、ゾロがサンジに齧りついた。

ゾロは毎日《にょろ》を選別する。
そしてサンジは食事の用意をするとのんびりとその様子を眺めに出かける。
こうなってみるとあの気色悪かった《にょろ》も可愛く感じてくるから不思議だ。
緑の頭を飽くことなく眺めながら普段のゾロのように微睡み、ナミに言われたようにのんびりと過ごす。
夜は覚えたての遊びに夢中な餓鬼のように睦みあった。
そうして一週間。
サンジは綺麗に掃除をし終えた小屋の扉を閉めた。


「サンジくん。ご苦労様。ゾロあんたも最高よ。見て見てこのスペシャルボーナス」
羊船のキッチンで久しぶりに賑やかな食事を終えた後、ナミがベリー目になって浮かれている。
「ナミ何がそんなに凄いんだ?」
チョッパーの素朴な疑問にナミが言葉を続けた。
「ゾロがね《にょろ》を繁殖させたのよ。それもかなり特別な繁殖だったらしくて、《愛の涙》より更に貴重な幻の媚薬を抽出できたんですって、おかげでお手当てが増えたってわけ」
へーそりゃ凄いなぁと沸く仲間たちから少し離れた場所でサンジは首の後ろまで真っ赤になっている。
そんなサンジにゾロは人の悪い笑みを浮かべながら軽く手招きをして扉の外を指差した。
「ひゃーなんか冷えてきたな」
両腕を組んで夜風に凍えるサンジにゾロはそっと小瓶を差し出した。
「ん?なんだそりゃ」
「《愛の涙スペシャルバージョン》だ。ちょろっとガメてきた」
嬉しそうな顔をしてサンジの前で小瓶を振ると黄金色した液体がとろりと動く。
「今度使おうぜ」
ニコニコしながら耳元で囁くゾロにサンジはわなわなと震えながら煙草に火を灯す。
ゆっくりと肺まで煙を吸い込みふーと吐き出すと、脚を大きく掲げ渾身の力でゾロを蹴り下げた。
「クソ野郎!」
「うげっ」
脳天にヒットし悶絶するゾロが痛みと怒りで見上げると あの一週間は夢だったのかと思う程あっさり今までのサンジに戻って口汚くゾロを罵っている。
だが、態度はまったくいつも通りでも、サンジは夜目にもわかる程に頬を赤らめて、瞳も潤ませているのがわかった。
「天邪鬼」
痛んだ頭をさすりながらゾロは起き上がり、すれ違いざまに耳元で囁くと、サンジは更に大声で怒鳴り散らす。
煩いからいいかげんにしなさいとキッチンからナミの怒鳴る声が聞こえ、途端にサンジは言い訳をしに扉に手をかける。
後ろでゾロが不気味なオーラを発していたが知ったことではない。ナミの機嫌のが、今のサンジには大事だ。
きっとゾロはくねくねしたサンジの様子に思い切り不機嫌な顔をしているだろう。でも二人きりになったらサンジも少しは素直になってもいいかなと思う。なにしろ、恋しちゃっているのだ。
いちゃいちゃするのが嫌なのではないのだ。
扉の閉まる瞬間サンジは後ろを振り返ると、口を大きくあけた。
「あ と で な」
音にならない声を出すと下手なウィンクまでオマケしてやる。
媚薬を握り締めて真っ赤になりながらガッツポーズしてるゾロにサンジはくすくすと声を出して笑いキッチンの扉を閉めた。
二人の恋はまだはじまったばかりだ。

  

                        おしまい


にょろそろじーに参加させていただいた作品でした。
なので「にょろ」は必須項目でした。
再録許可ありがとうございました&とても楽しかったです

topmainback‖“