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クラファティマ話その1
'08/08/19 (TUE) びーこです。
やっとやり始めたよCC記念(我ながら遅し!) タイトル通りクラウドファティマ話を貼り付けます。 そんなに長くはなりませんが、数回は続きますのでよろしく。 ※※※ MH〜最強の兵器である。 最強の能力を持つ兵器でありながらも、操縦者の意志により移動できるため、戦略戦術面でも重要な役割を占める。 MHを最強たらしめんのは、その性能のみではない。 MHを操る操縦者のスキルにもよるのだ。 MHは選ばれた者のみが駆ることが出来る。 彼らは敬意と畏怖をこめて騎士と呼ばれる、人間以上の超人なのだ。 五つの星団はここ百年ばかり戦闘状態にあった。 だがこの戦争も緩やかに終わろうとしている過程にある。 五つの星団は主に3つの勢力に分かれている。 最大の勢力は神羅。主星ミッドガルを中心に五つの星団のうちの三つまでも、勢力下に納めていた。 豊富な資源。大量の物資。資本主義社会の権化たる強欲さは、敵味方関係ない。 戦争で一番利益を受けているのは紛れもなく神羅だろう。なにせ戦争状態にある敵にも、物資を供給しているからだ。 戦争とは大きなビジネスだ。神羅はビジネスの為に戦争を長引かせていると、まことしやかに囁かれているのも、まんざら見当違いではない。 敵味方関係なく、この星団で神羅に関わっていない者はいないだろう。 この神羅と敵対しているのがウータイだ。 五つの星団の辺境にあるひとつであるウータイは、歴史が古くこれまで一度たりとも他国の侵略を許したことがないのを誇りとしている部族だ。 すでに人種や種族というものが、個性のひとつの意味しかなくなって数世紀たつが、ウータイだけは頑なに己の血統を護り続けてきた。 これが頑なな鎖国に繋がっている。神羅に反する勢力は数多くあれども、どの勢力も面だってウータイの味方はしなかった。 鎖国をし続けているウータイに味方をしても、誰も何の利益も被らないからだ。 ウータイにも味方しない。かといって神羅の支配下にも積極的に入ってはいない。 これが第三の勢力となる。 神羅はウータイへの侵攻をますます激しくしている。 初めはウータイの予想外の健闘にもより、膠着状態にあったのだが、ここに戦況を左右する英雄が現れる。 彼の名はセフィロス。五つの星団最強の騎士。天位を持つ剣士でもある。 彼を英雄たらしめんのはそのずば抜けた強さだけではない。 その美貌である。血肉を感じさせない非人間的な容姿。手足の長い長身。無駄のない逞しい体つき。 銀色の長い髪は月光のごとく輝き。縦に裂けた翠の瞳は神秘的である。 “美しい”ことと“逞しい”ことと“強い”ことと“賢い”ことと。 この相反する要素をセフィロスはどれも遜色なく兼ね備えているのだ。 セフィロスは神羅軍を率いて、指揮を執り、もっとも激しい激戦では自ら先陣に立って闘っていった。 セフィロスが携わった戦闘での神羅軍は全戦全勝。 ウータイの三分の二は神羅によってもぎとられる。ウータイ軍もほぼ壊滅に誓い打撃を受けた。 これによってウータイはゲリラ戦を余儀なくされる。 英雄となったセフィロスではあるが、同じ騎士の間では彼の強さに尊敬をする者がいる一方で、こうも囁かれている。 「ファティマ殺し」――と。 セフィロスにはパートナーとなる、定まったファティマはいない。 いや、「いない」のではなく、厳密に言えば「いなくなってしまった」のだが。 セフィロスはこれまで数多くのファティマを、己のMH正宗に乗せてきた。 星団至上最高のスペックを有する正宗は、並大抵のファティマに扱うことは出来ない。 その上パートナーとなる騎士はセフィロスなのだ。 ファティマには己の備え持つ性能以上を常に求められてしまう。 銘を持つファティマがセフィロスを選んだ。だがそのファティマはどれも一年とは持たない。酷い時は僅か一度の戦闘で、ファティマは耐えきれなくなってしまう。 どれだけ名の通った有名なマイトのファティマであろうとも、それは変わらない。 少女型のファティマも、少年型のファティマも、成人型のファティマも、どれもファティマの耐用年数からは考えられない僅かの間で、クリスタルを崩壊させてしまい廃人となってしまう。 英雄のファティマ殺しの噂は騎士や関係者の間で広まっていく。 この噂を逆手にとろうと、ファティママイトとしての自分の名をあげるべく、セフィロスの元には、様々なファティマが送り込まれてきた。 ファティマ殺しで有名な、英雄のファティマの制作者ともなれば、それは星団最高のファティママイトであるとの証明になるからだ。 ファティマ達は皆、騎士としては最高であるセフィロスを選ぶ。 セフィロス自身にはこれといって不足はないため、希望するファティマ達は皆セフィロスのファティマとなり、そしてすぐに使い物にならなくなっていくのだ。 さすがのセフィロスもこのような事態ばかりが続くのは本意ではなかったのだろう。 彼はそのうちにエトラムル、無形人工頭脳のみのファティマを搭乗させるようになった。 エトラムルならば安易に使い捨てが出来るからだ。 いくらファティマが人工生命体であろうとも、可愛らしい少年や少女の形をし自らの意志を持つ者を使い捨てては寝覚めが悪い。 その点、エトラムルならば無用の感情など持つこともない。 だがもちろんエトラムルには大きな欠点がある。 やはり性能がファティマよりも劣るというところだ。エトラムルは単純にプログラムされた機能を正確に果たすだけであり、セフィロスの細かな癖や、彼自身無自覚なポイントを補うことは出来ない。 不足の事態や突発的な行動にも弱く、星団最強の騎士であるセフィロスにも、また星団最高のMHである正宗にも、相応しくはなかった。 セフィロスには彼に相応しい優秀なファティマが必要なのだ。 セフィロスの為だけに造られた、特別なファティマが。 セフィロス自身自分専用となるファティマの必然性を痛切に感じており、天才マイトとして名高い、神羅の科学者宝条にファティマ制作を依頼。宝条は何体かのファティマをセフィロスに提供したが、どれもセフィロスと正宗を満足させることはない。 このような時節に、セフィロスは単機にて正宗を駆りミッドガルを出発した。 軍事行動ではない。彼はすでに伝説と化している天才マイトを求めて旅立つ。 目的地はアイシクルエリア。神羅支配地域で一番寒い氷の惑星であった。 漆黒に銀。MH正宗は見る者に恐怖を与えてしまう外見をしている。 これは高みからおしつけられる類の“恐怖”ではなく、心の奥底からわき上がってくるもっと原始的なものだ。 セフィロスは英雄視されている己の存在というものを、殊更隠そうとはしない。 どのような評価を得ようとも、どのように特別視されようとも、セフィロスは意に介さないのだ。 有り体に言いきってしまえば、セフィロスは何事にも関心が薄い。 己自身に関しても、また他者に関しても、セフィロスにとっては取るに足らない些細な出来事にしか過ぎないのだ。関心の対象にもなりはしない。 正宗を駆ったセフィロスは、アイシクルエリアの中継点としてニブルエリアに到着した。 ここはエリアの規模としては小さいものの、神羅の軍基地がある。 基地に正宗を預けて、セフィロスは身一つだけでアイシクルエリアに向かう予定なのだ。 軍基地にいる全ての軍属と関係者の注目を一身に浴びながらも、セフィロスの態度は平然としたもの。 まさしく一挙手一投足まだをも注目されているというのに、セフィロスにとっては他者からの重苦しい関心でさえ、どうでも良いのだ。 そよ風ほども感じていないのだろう。 注がれる多くの憧憬にも妬みにも全く反応を示さずに、堂々たる所作であくまでも事務的に行動する様は、別の世界のステージに立っているかのよう。 正宗の管理だけ言葉短く伝えると、セフィロスはすぐに基地を出ていく。 基地に接する場所にある小さな村で、アイシクルエリアへの装備を揃えるつもりなのだ。 ニブルヘイムは本当に小さな村だ。 古くから何世代にも渡りくらしている村人が、今も頑なに村を護り続けている。 軍基地さえなければ、この村は閉鎖的なままであっただろう。 軍基地の側にあり、神羅軍の恩恵を受けている今でも、村人達は幹線に軍基地には依存していないのが、何よりの証。 村に一軒しかない雑貨屋で寒冷地への装備を調える。 村の雑貨屋にしては、品物の種類が豊富で、村人だけではなく軍関係者達も多く立ち寄っていた。 その間を抜け、セフィロスは品物を選ぶ。 いつものように注目の焦点がセフィロスにだけ集まってくる。いつもは気にもならずに黙殺するだけなのに、今回はなぜだか気に掛かった。 なぜか、――と考えて、ふと気がつく。 憧憬や嫉妬ではない。張り合おうとするようなものでもない。 もっと違う…これは、 ――警戒だ。 セフィロスは警戒されている。 軍関係者ではない。ニブルヘイムの村人に、だ。 この店にいる村人たちは、セフィロスに対して無関心に振る舞いながらも、鋭く警戒しているのだ。 しかもこの警戒心はただごとではない。 明確な理由があり、セフィロスを警戒しているとしか思えないのだ。 そうだ。これは敵が警戒している様子によく似ている。 セフィロスは差し迫ってくる違和感を覚え、気取られないよういつも通りの落ち着き払った動きで辺りをチェックしてみた。 己を取り巻く世界において、常に“他”を排除してきたセフィロスは、どのような場面においても尊大であった。 他に無関心なだけで、尊大と例えるに相応しいであろうに、彼を英雄と呼ぶ者たちは尊大ではなく、それこそが英雄の風格であると言う。 またセフィロスの非人間的なまでの圧倒的すぎる美貌に心奪われた者たちは、彼の存在こそが“美”なのだと崇める。 他人が己に下す評価など気にもならないセフィロスであるが、今回はこんな無関心な様子が役に立つ。 品物を吟味している動きそのままで、視線すらも動かさずに、セフィロスは村人達の警戒心の行き着くところを探った。 ミッドガルの大きく華やかな店舗に比べると、狭くてこぢんまりとしている。 店内の装飾はあくまでも素朴。飾り付けやディスプレイはされていない。 木で立てられている店内は、アロマの香りではなく、そのまま木の匂いだ。 店への入り口はひとつだけ。奥まった一角に仕切られたカウンターの向こうに、武器などの高額商品が、それでもガラスケースの中に納められている。 かなり良い商品なのに、ミッドガルと比べると無造作な扱いなのは、ここがニブルだからだろう。 ニブルはモンスターもレベルが高いものが多い。よって強い武器というものは、この地での生活必需品なのだ。 入り口右手側にはごちゃごちゃとした雑貨が。ポーションなどもここに並んでいる。 左手側には装備が、無造作に並べられていた。 カウンターの向こうに中年の女性がおり、愛想良い笑顔を浮かべながらレジをしている。 店の主人であろう男性は、軍関係者であろう客と装備の説明をしている最中だ。 レジの女性は如才なく客と世間話をしながら。店の主人は細かな説明を加えながら。だが双方ともに本当の関心は客には向いていない。 店内にいる他の村人もそうだ。店内を物色したり、くだらない雑談に興じているフリをしながらも、鋭い警戒心をしきりと払っている。 この警戒心の行き着く先。一方はもちろんセフィロスだ。 そしてもう一方は―― セフィロスは一人一人を吟味していく。 そして、 ――あれか!? 店の隅で立ち話をしている小柄な姿。フードつきのマントで顔はおろか、足下までよく見えない。 立ち話をしていると言っても、小柄な人物は先ほどからほとんど喋っていなかった。 村のハンターなのだろう。大柄な男が陽気に話しているのに、数少ない相づちをうつ程度。 それもハンターの大声にかき消されており、セフィロスの聴力をもってしても、まだ透き通った子供の声だとしかわからなかった。 セフィロスは関心の焦点を当てる。 大柄なハンターに隠れてしまい、全身像は窺えない。 その上フードつきのマントはすっぽりと身体を覆っているため、正確な身体のラインを辿ることも難しい。 ただ足下から覗くブーツのサイズは小さそうだ。小柄で小作りな体つきらしい。 年齢もまだ幼いのだろうが、それにしては不相応な落ち着きがある。 ハンターの言葉に頷き、時折小さく応じている様を強く凝視していると、フードの人物がこちらを見た。 さすがにセフィロスの強すぎた視線に気がついたのだろう。 フードを上げることはしなくて、セフィロスへと顔を向ける。 大きなフードは顔の半分以上を隠していた。セフィロスから見えるのは、透き通った白磁のような白い肌と、尖った小さな顎。淡い色合いのふっくらとした唇であった。 唇がきゅっと引き締められる。 その光景にセフィロスは震えた。これまでに遭遇したことのない、恐ろしくも歓喜なる、甘美な戦慄である。 だがこの邂逅もほんの一瞬。セフィロスのただ事でない反応に気がついたハンターが、フードの人物をさり気なく促す。店を出ようとしているのだ。 セフィロスは慌てて後を追いかけようとするが、ハンターに促されているフードの人物とセフィロスの間に村人が数名割って入ってきた。 商品を選んでいるような素振りをしているものの、セフィロスから見れば邪魔をしているようにしか思えない。 だからといって騎士の力で邪険にすることも出来ず、セフィロスは完全に引き留める出鼻をくじかれてしまったのだ。 店をでていってしまう小さな背中を追いかけたいのはやまやまであるが、さすがに今そのような暴挙は出来なかった。 なにせセフィロスはこの村にとっては異邦人。 今ここでむやみに追いすがるのは、賢くはない。 ――基地に戻り情報を手に入れるのだ。 はやる気持ちを宥めながら、セフィロスはいくつかの防寒用具を整えた。 入ってきた時と同様の無表情さで、静かに店から出ていく。ただし、その翠の双眸はかつてない渇望を讃えていたとは、本人とて知らない。 ※※※ とりあえずここまで。 |
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