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びーこ > クラファティマその4
こんにちは、びーこです。 9月に入り不安定なお天気が続いていますね。 暑いんだったら暑い! 寒いんだったら寒い! にしてくれないと、ホントに疲れます。 Y子さんが拍手を新しくしてくれました。 早速たくさんの拍手をいただきました。ありがとうございます。 コメントもたくさんいただきました。 リンクミスへのご指摘、有り難いです。 修正しますまで、もう暫くご不自由をおかけしますが、お待ちください。 今回いただきましたコメントは全て返信不要のものばかりでしたが、 どれも嬉しいものばかりでした。 大切にさせていただきます。 では続きをば。 ※※※ 冬の訪れを象徴するような、凍えかかっている大気が、容赦なく全身にぶつかってくる。 呼吸を整え、人間以上の反射神経を駆使しながら、クラウドは引き金を冷静に引いていた。 幸運なことにニブル山を登り初めてすぐ、モンスターの群に遭遇。 吊り橋付近でズーと出会い頭になり、そのまま戦闘突入となる。 無事に倒し巨鳥の羽根を手に入れた。まずこれがこの日最初の収穫となる。 その後もニブルウルフの群と出会う。これも無事に倒すと狩人たちは軽い興奮状態に包まれた。 そして今、前方にいるのはドラゴン。滅多に出会えない極上の獲物だ。 倒せば珍しい火龍の牙が手にはいるとあって、巨大なドラゴンを前にしても、男達は怯まない。これまで以上に好戦的となり、俄然動きも良くなっていく。 クラウドは後方で援護射撃だ。男達とモンスターとの間合いを計りながら、特に攻撃の後、皆が後退する隙を作り出すべく弾を撃ち込む。 ドラゴンの急所は数少ない。ヒットする事はほんの稀にしか無いものの、顔面、特に眼球近くを狙えば、さしものドラゴンも動きが止まるのだ。 クラウドの仕事はそんな瞬間を作り出すこと。 強力なブレスを巧みに避けつつ、それでも男達の攻撃は緩まない。 クラウドからすれば、人でしかない男達の攻撃は児戯のようなもの。だが自分よりも遙かに強い相手にも怯まず、果敢に立ち向かいながら、仲間達を庇い互いの不足している部分を補っていくチームワークは、いつ見ても感心してしまうのだ。 自分もこのチームの一員に入っているのだと思うと、とても誇らしい。 闘うこと数十分後、奮闘の甲斐あってとうとうドラゴンが倒れる。 うおー。自然と男達の口から、勝利の雄叫びがあがった。 クラウドもほっと安堵しつつ警戒を解き銃口を下ろす。重い銃身と発砲の反動を抑えるために、肩からかけていたベルトを滑らせて、銃身を背後に立てた。 皆が緊張から解き放たれている中、ただ一人だけの様子がおかしい。 村人ではなく、神羅兵であるあの男だ。緊張から解き放たれるどころか、今がピークのような顔つきをしている。剛胆な兵には珍しい顔色の悪さだ。 ――なんだ? まさかまだ他にもモンスターがいるというのだろうか? それとも…もっと別の理由があるというのだろうか―― 目深なフードの下から様子を窺うクラウドの前で、兵はやはり挙動不審だ。 やはり、変だ。 クラウドは側に近づき、声を掛けようとしたその時、 「あれはなんだ!」 どよめきに釣られて空を見上げる。 瞬間、とてつもない魔力を感じた。脳髄に直接のしかかってくる魔力のプレッシャーに、クラウドは思わずこめかみを抑えながら、空を仰ぐ。 冬前のニブルの空。灰色の重苦しい雲がいつもと違い蠢いていた。 その中心に黒い焦気が固まっていく。まだ形らしい形などない。ただ黒い焦気はどんどんと膨れあがっていくのだ。 「モンスターなのか!?」 モンスターなのかは、はっきりとはまだ解らないが… ――逃げなければ! これだけの強い魔力を有しているのだ。ただごとではない。 差し迫った危機感に後押しされ、クラウドは叫ぶ。 「逃げろっ!」 「…クラウド?」 「魔力を感じるんだ。早くっ」 普段は無口で感情を滅多に表さないクラウドのこの必死さに、男達は切迫する事態を感じ取った。 リーダーが動揺する男達をまとめる。 「おい。荷物を持て。山を下りるぞ」 統制のとれた男達の動きは素早かった。リーダーの言葉を理解するやすぐに自分にあてがわれている荷物を持つ。 「重い荷は捨てていけ。惜しむな」 一番素早い男が先頭に立つ。当然のように殿になるリーダーの隣にクラウドは自ら並んだ。 「クラウド。お前は先頭だ」 クラウドは大きく首を横に振った。 目深にしていたフードを跳ね上げて、青い眼差しでリーダーをじっと見つめる。 黒い焦気はどんどん大きくなり、すでに塊となっている。クラウドからすれば魔力の塊だ。 モンスターのハンティングには慣れている男達でも、魔力の戦いは不慣れだ。 クラウドはこの時確信していた。列の中程にいる兵は、この自体をあらかじめ知っていたのだろう、と。 歴戦の兵のあの色のない表情。何よりクラウドの予想が外れていなければ、あの魔力の塊はとんでもないモノだ。 ――絶対に誰も傷つけさせはしない。 クラウドにとって自分をストライフ夫人の息子として受け入れ扱ってくれている村人たちは、すでにただの他人ではない。護るべき大切な人たちだ。 特にこの猟にでる男達は、クラウドにとって大きな家族。 自分の身に替えてでも、護るべきだ。 こんなクラウドの決心が伝わったのだろう。なにせクラウドは言葉よりも眼差しの方が雄弁なのだ。 「…――わかった、頼むぞ」 リーダーは村人の中でもクラウドをよく知っていた。 見かけ通りの少年でないことも知っている。逡巡は一瞬だけ。 「おうい!早く歩け」 割れんばかりの怒声を発すると、殿の位置をクラウドに預けたのだ。 黒い焦気は頭上を覆い尽くさんばかりとなる。今や発せられる魔力は、肌をびりびりと痺れさせてきていた。 さすがに男達もこの異常なほど強力な魔力を感じ取っていた。 皆強張った表情で血の気をすっかりと失ってしまっている。 足は自然と速くなり、全力疾走寸前だ。この異常な状況下に疲れは感じないものの、足をもつれさせないので必死だ。 男達の荒い息づかいと、硬い足下を踏みしめる靴音が続く中、ぽきりと枯れ木を踏みしめる音がする。 と、クラウドははっきりと感じた。 足をとめて頭上を仰ぐ。 そうしているうちに、走る男達との距離どんどんと開いていった。 心を許している男達の背中を見送るのは少し寂しい気もするが、今はそんな感傷に浸っている時ではない。 むしろ男達はいない方が、闘うには都合良いだろう。 すっかりと姿が視界から消えてしまい、ただクラウドの発達した聴覚に足音だけが遠ざかる距離まで開いたのに、どうしたことか、足音のひとつが戻ってくるではないか。 息も切らさずに巨体で駈けてくるのは、リーダーだった。 ――どうして戻ってきたんだ。 そんな理由など考えるまでもない。クラウドの身を案じてのことだと呼びかける心配げな声ですぐに証明だれた。 「――クラウド?」 こんな厳つい男が出せるのかと疑うくらいに、それは繊細な呼びかけであった。 だが、今はそんな優しさが邪魔だ。 「速く…!先へ行け」 リーダーはクラウドだけを残すことに躊躇うが、それも次に起こった光に遮られる。 光は頭上からだった。あの黒い焦気の塊がいきなり強い光となり輝き始めたのだ。 光はみるみるうちにしっかりとした形となる。シルエットがどんどんと巨大となっていった。 するすると伸びた光は大きな翼となる。羽毛の整った羽根ではない。 は虫類的な翼だが先端には鋭いかぎ爪がついている。 羽毛の代わりに気流を掴む薄い皮膚は、漆黒に限りなく近い色味だ。何かを確かめるように数度羽ばたくうちに、翼は完成されていった。 次に身体。濃紺とも濃紫とも判別できない色味の全身は、紛れもなく硬質化されている。 腹の部分だけやけにはっきりとした黄色が覗いていて、それがやけに威圧的だ。 ――ドラゴン…か? あのシルエットは見間違えようなくドラゴンだ。 それに間違いはない。間違いはないが、今焦気の塊から光と共に現れたドラゴンは、クラウドやハンターたちがよく知るドラゴンとは決定的に違っていた。 モンスター特有の邪悪さは感じられない。むしろ威厳と品格さえ発しながら、クラウドたちをじっと見下ろしている。 「なんだ…こりゃあ……――」 唖然とするリーダーの背後から、答えがやってくる。 リーダーのように仲間から戻ってきた、あのずっと様子がおかしかった神羅兵であった。 「まさか…バハムートを出すとは……」 バハムート――語るまでもない、伝説の召還獣だ。 「俺はこんなの聞いてねぇぞっ」 やはり、兵は何かを知っている。 クラウドは低い位置から、自分よりも遙かに高い位置にある襟元をひっつかむ。 「どういうことだ。話せ」 戦いに慣れた兵でさえ、思わず怯む力の強さであった。 白く小さな華奢な手に、どれだけの力が秘められているというのか。 兵は自分の身体が、少年の力により浮き上がりそうになっているのを感じた。 「話せ!」 峻烈な青い眼差しに従うしかない。 「…何も、聞かされてなんかいなかったんだ」 「バハムートだなんて――」 「クラウド…お前のことをやたらしつこく聞いてきて」 「次に狩りに出る時は同行するようにって言われてな…」 「絶対になんかヤラかすんだろうとは思っていたんだが…――」 つまりは、兵も利用されただけということか――こう判断したクラウドは兵の襟首を掴んでいる力を僅かに緩め、 「それは誰なんだ」 「セ・セフィロス…だ」 クラウドの脳裏に、長髪の美丈夫の姿が浮かぶ。 たった一度だけ、しかも僅かな時間の邂逅でしかなかった。 視線を交わしたのはほんの一瞬だけ。 それでもあの英雄と呼ばれる男の存在は、クラウドにも強烈だった。 五つの星団に暮らす者たち全てにとって、神羅の英雄でありあの美麗なる容貌を持つセフィロスは特別であっただろう。 こうやって思い出すだけでも戦慄するのは、他の者がセフィロスに抱く諸々の感情とは、性質を異にしている。 縦に裂けた翠の眼差しを知った瞬間、クラウドは全てを知ってしまった。 いや、知ると言うよりは理解してしまったと表現した方が正しいのだろう。 この村に来る前のことだ。クラウドを造りだしてくれた、優しい“父親”が話してくれたこと。 (クラウド。お前はいつの日か選ばなければならない) (ファティマとしてのリミッターを外した存在。それがクラウド、お前だよ) (なぜ私がお前をそのように造ったのか、選ぶべき騎士に出会えれば、お前はきっとすぐに解るだろうよ) (クラウド――私が造る最後の“息子”よ) (選ぶ、選ばないはお前の勝手だ) (そうだと解っていても、私は願うのだよ) (あの寂しい子供が、お前を得て本当の充足をしることを) 優しい“父親”だった。内向的な性格なのに、気は強く負けず嫌いなクラウドを、本当に可愛がってくれた。 クラウドがニブルヘイムで暮らすのを決めた時も、何も言わずに送り出してくれた。 “父親”からはたくさんの、数え切れない大切な、クラウドを構成する全てを与えられている。身体も、知識も、魂も。 自分がただの人形でないと信じられるのは、あの“父親”のおかげだ。 その敬愛する“父親”がクラウドと誰が添うべきだと考えているのか―― “寂しい子供”が果たして何者なのか―― セフィロスとの瞬間の邂逅で、クラウドは理解してしまったのだ。 ――セフィロス…だったのか…… 五つの星団に暮らす者、誰もがまさか神羅の英雄を“寂しい子供”などと想像するだろうか。 クラウドも英雄の噂を聞いている時は、何も感じなかったしどうとも思わなかった。 いかなる類の感慨もなかった。 が、こうやって実際に邂逅してすぐに、言葉も交わすことすらなく、理解してしまったのだ。 セフィロスは特別だった。 これまで五つの星団に存在した、また存在しているどんな騎士ともまるで違っている。 どこまでも強く、あくまでも美しく、しかるべく賢い。おおよそ人が求める理想の最上級にいるのだ。 セフィロスは独立している。 五つの星団広しといえども、どこを探しても、彼をカテゴライズする場所はない。 彼は神羅の英雄と呼ばれながらも、神羅からも独立している。 彼は神羅という組織を必要とはしていない。 騎士というのにカテゴライズするのも少し違う。 彼は騎士というものに、殊更意味を見いだしていないからだ。 騎士の価値にも無頓着であり、騎士である自分を誇らしいとも感じていない。 セフィロスはまさしく、この五つの星団の中たった一人きりで存在しているのだ。 完全なるスタンドアローンとして。こんな寂しい存在が他にあるだろうか。 誰も彼を理解しない。誰も彼を知ろうとはしていない。利用はしても心を寄せようとも思われてはいない。本当の意味で、彼は誰にも“セフィロス”という個を必要とはされていない。 彼は生き神のように、崇められて敬われて、敬遠され畏怖され唾棄されるべきだと、無意識のうちにそうされている。 その寂しい英雄の隣にいて、彼に添い続けられるのは――クラウドただ一人だけ。 ※※※ 今回はココまで。
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