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+ '08年08月29日(FRI) ... 更新しました +

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SWパロの拍手掲載分を更新しました。
ということで拍手は新しいSWパロのお話が上がっています。
(ずいぶん前にもらっていたのですが、なかなか更新出来ずごめんなさいでした)
拍手更新は特に履歴には掲載していないのですが、今回はB子さんがタイトル募集して〜〜〜誰かつけて〜〜ということでしたので、
よかったらつけてくださいとお願いです。

ではB子さん遅くなってすみませんでした。
金銀のファイルも待ってますv

最後になりましたが拍手も♪も毎度楽しみに拝見しています。いつもありがとうございます。

●しばらくラクガキもしていなかったのでまずはリハビリです。(SWの二人)



+ '08年08月27日(WED) ... クラファティマその3 +

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びーこです。

たくさんの拍手&♪、ありがとうございます。
読んでいただいているんだなあ、と嬉しいです。

続きです。

※※※
その後暫くしてガスト博士はセフィロスの前から姿を消す。
セフィロスは十代で天位を得て、名実共に星団最高の騎士となった。
ガスト博士との約束は、未だ果たされていない。
セフィロスにはパートナーであるファティマはいないし、ガスト博士が約束してくれた“その子”にもまだ会っていない。

――もし本当にクラウドがファティマだとすれば…
ガスト博士が約束してくれた“その子”だとすれば。
あの様子では自らファティマだと申し出ることはないだろう。
彼がどういう意図を持っているのかは定かではないが、ニブルヘイムの村人の一員として生きていくつもりならば、余程のことがない限り彼は“人”として生きていくに違いない。
セフィロスが強引に手をとって、ファティマだと認めさせても、それではセフィロスが望む解決にはならないだろう。
なにせセフィロスが選ぶのではない。
ガスト博士が言ったではないか。セフィロスの方こそが彼に選ばれるのだから。
――さて、どうすれば良いか…
まずは本当にクラウドがファティマなのかを見定める必要がある。
今セフィロスにあるのは限定された状況による推測のみ。これでは真偽は計れない。
明らかな証拠を得なければならない。
――仕掛けてみるか。
ガスト博士がセフィロスのために造ったファティマを、紹介される前に知り合っておくのも悪くはない。
セフィロスはそんな自分の考えに、満足した。



朝目覚めるとまず母親に挨拶をする。
顔を洗い、ぼんやりとした古い鏡を覗くと、そこに映るのはいつもと変わらない昨日と同じ自分だ。
クラウドはこの顔が嫌いだ。美醜はともかく、この繊細すぎる顔立ちは、庇護されながらも献身的に主に仕える証としか思えないから。
苛つきながらせめて髪だけでもどうにかしようと弄ってみるが、見事に奔放にまとまってしまっている金髪は、どうしようもならない。
それでもささやかな抵抗に奮戦していると、優しい母の声が聞こえてくる。
「クラウド。朝ご飯にしましょう」
この一瞬にクラウドはめまいがしそうだ。
優しい母。決して裕福ではないが、穏やかな生活。
本当ならどれだけ望んでも得られなかった時間。
この時間が今にも壊れそうなひび割れたガラスの上に成り立っているとしても、クラウドは最後まで護りきろうと決めている。
庇護されるのではなく、クラウドが護るのだ。
「母さん、今行くよ」
髪との戦いを放棄すると、クラウドはリビングに向かった。
狭い家なのだ。部屋数も少なければ、その一部屋一部屋が狭い。
クラウドがリビングに現れた時、クラウドの母ストライフ夫人は、パンを切り分けている最中。クラウドとよく似た金髪と碧眼。小さな手に無骨な包丁はそぐわないものの、長年主婦をやっているだけあって、とても手慣れている。
「これ、運ぶね」
「ええ、お願い」
ストライフ夫人とクラウドを見て、誰しもが親子だと思うだろう。
髪と目と肌質と。あとどちらも山奥の田舎に相応しくない繊細な容貌をしている。
だがそんな相似も、実はよく観察してみれば微妙な違いがあるのだ。
髪の色も目の色も、肌質さえも“よく似ているだけ”でしかなく、根本は別である。
なによりあくまでも人であるストライフ夫人に比べ、クラウドのほうが遙かに生活感がなく人形めいているのだが。
二人分の朝食の用意など簡単なことだ。
二人は向かい合わせにテーブルにつく。
食事前には簡単な祈りの言葉。宗教的な要素は薄く、日々の糧に対する感謝のものだ。
ニブルヘイムは信仰の厚い村ではない。むしろ自然が厳しいこの土地では、信仰の対象は自然そのものなのだ。
「クラウド。今日は猟の手伝いをする日だったわよね」
こう確認するストライフ夫人は憂鬱そうだ。
そうだと解っているからこそ、クラウドはあえて明るく振る舞ってみせる。
「そうだよ、母さん」
「雪でニブル山に入れなくなる前に、食料を仕入れておかないと冬にお腹が空いちゃうからね」
村人が主に狩猟の場として重宝しているのが、村のすぐ側にそびえるニブル山である。
かなりレベルの高いモンスターの生息地であるのだが、それだけ価値の高い狩猟ができた。
毛皮は売って貴重な現金収入になるし、肉は貯蔵して厳しい冬季の糧とする。
冬本番がすぐそこにまで差し迫っているこの時期、村人は総出で冬支度に入るのだ。
女は衣服や寝具などの防寒を整える。小さな畑の収穫に励む。小さな子供達はその手伝いだ。
男は猟に出る者、村中の家を冬に備え手直しする者、薪などを用意する者に別れる。
村長がそれらを取り仕切り差配して、村人全員が無事に冬を越せるようにするのだ。
「今年はニブルウルフの群があまり姿を見せなかったからね。もう一度くらいは狩りに出ないと」
「クラウド――猟に行かないで母さんの手伝いをしてちょうだい」
ストライフ夫人の青い瞳の焦点が拡散する。
その酷く曖昧な眼差しは狂気を孕んでいた。
クラウドはそんな母にうろたえもせず、むしろゆっくりとかみ砕くように言葉を続ける。
「母さん、一緒に猟に行くって約束したんだよ」
「危ないことはしないから」
「ほら、オレの銃の腕前がいいの、知ってるだろ」
「みんなの後ろから銃で狙って撃つだけだから――」
「大人達が前に出てくれるし、これまでだって危ない目になんかあったことないんだ」
母の手を握りしめて、クラウドは静かに諭す。
その光景は見ようによっては、年齢の離れた恋人達の睦言のようにうつるだろう。
落ち着いてあくまでも穏やかな物言いとは裏腹に、クラウドは必死だった。
母が完全に狂気の世界に行ってしまわないように。
クラウドの母で有り続けてもらえるように。
「クラウド、クラウド!」
夢を見るのよ――母はそういって息子に縋り付く。
身長が僅かだけ息子が高い以外は、母と息子の体格はほとんど同じだった。
年の離れた姉弟にさえ思える。
「お前が……胸から血をいっぱい溢れさせるの……――」
血に濡れる金髪。今すぐ側にいてくれる息子の髪とは、違うような気がするけれども。
「クラウド!お前がいなくなるなんて」
「母さん――それは夢だよ」
「オレはここにいるよ」
「本当!?」
「本当に…母さんの側にいてくれるのね!」
「ああ…あたしのクラウド」
暫く寄り添っているうちに、ストライフ夫人の瞳から狂気が拭われていく。
そのうちに時間となった。戸外で男達が猟の準備に集まっているのが、小さな家の中まで伝わってくる。
その気配にストライフ夫人は息子からそっと離れ、
「クラウド。気をつけて行ってらっしゃい」
「…はい。母さん」
やっと落ち着いた母に後押しされて、クラウドは猟へ行く支度を手早く整えた。


猟へ向かう人員はクラウドをいれて10名。その中で一人だけ村の人間ではない者が交じっている。
彼は神羅に所属する兵士だ。猟が好きらしく、こうして非番の日には時折参加してくれている。すでに村人には馴染みの顔だった。
いつものように顔がほとんど隠れるくらい目深にフードを被っているクラウドは、集まっている皆に小さく頷くだけの挨拶をする。
村人はだれもがそれを不遜だとも無愛想だとも受け取らない。
むしろ親しげに、
「おう、クラウド頼むぜ」
「頼りにしてるからな」
口々に狩猟をする男ならではのしぶとい笑いを見せながら、少年の小さな肩と背中を親しみを込めて叩いていく。
こういう荒っぽい信頼を初めて向けられた時、どうして良いのかわからなかった。
戸惑うことすら出来ず、無反応だったクラウドに、そのまま飾ることなどしなくて良いのだと教えてくれたのも、この無骨な男達だった。
そんな様子に男達の強さを感じる。単なる能力だけを言えば、男達の誰よりもクラウドは強い。
力も、速さも、比べるまでもなく、クラウドが上だ。
だがそれはそう造られているだけでしかなく、男達のような広く懐の深さはない。
これこそが本当の強さなのだと知った時、クラウドはこの村で暮らして行こうと決めたのだ。ストライフ夫人の息子、クラウドとして。
ふと視線を感じて顔を上げる。そこにはクラウドも見慣れている神羅兵の厳つい顔があった。どんな凶悪なモンスターを前にしても、楽しんでいるタフな男が、どうしたのだろうか、やけに不安げだ。
どうしたのか?と声を掛けようかと一瞬過ぎったが、結局クラウドは何も言わなかった。
兵士も言いたげではあったが何も言わなかった。
「よし!出発だ」
リーダーの声に男達は隊列を組んで、ニブル山へと歩き始めた。
※※※


+ '08年08月22日(FRI) ... クラファティマ話その2 +

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びーこです。

ミッションばかりいってストーリーが進まない私のCC。
でもいいんです。
セフィとクラのDMW発動に胸をときめかせつつ、
じっくりと楽しんでいきたいです。
楽しいことはなるべく長く反芻しながら続けるのが、
私のやり方ですので。

♪に拍手、ありがとうございます。
では続きを。

※※※
基地に戻り兵達に話を聞いてみた。セフィロスの質問に兵は疑問を差し挟むよりも前に、答えるだけで精一杯だったのが幸いする。
誰もセフィロスがどうしてそのような、村人について尋ねるのか、疑問には思わなかったのである。
そうしてフードの人物の情報を手に入れたセフィロスは、様々な考察に没頭する。
彼は少年だった。村はずれに母親と二人で暮らしている。
名はクラウド。親しく会話を交わしていた兵はいなかったが、それでも表面だけはわかった。
クラウドはまだ十代半ばの少年でしかないが、狩りにはかなりの才能を持っているようだ。
ハンターと共にニブル山に入り、モンスターを狩って、それを慎ましい生計の足しにしているらしいと言う。
無口な少年でいつもフード付きのマントを着ている為、兵のほとんどは彼の姿形を知らなかった。
ただ一人だけ、偶然にクラウドの顔を目にしたことがあったそうだ。
兵の中でも特にニブルヘイムの村人と親交が深いそうで、ハンターの大がかりな狩りに同行したのだと言う。
(あのフードをとっても顔の半分以上を覆うデカいゴーグルを掛けているんですけどね…)
だから狩りの間ははっきりと顔が見えなかったそうだ。
同行した兵も、それ以上特に少年の素顔に関心はなく、ハンター達と共に狩りを楽しんでいたのだが、
(もうくたばっちまってるって思ってたモンスターが急に起きあがりまして)
死んでいるのが当たり前の致命傷を受けたのにも関わらず、まさしく死力を振り絞り、最後の抵抗を示したのだ。
その場には数名のハンターがいたが、皆すでに銃口を下げてしまっている。
ただ一人だけ、少年が銃を構えたままだった。そこに目掛けてモンスターが襲い掛かっていく。
(ダメかと、一瞬ヒヤりとしたんですが)
自分目掛けて襲いかかってくるモンスターを目前にしても、少年は怯まない。
しっかりと照準を合わせ、一発必中へと挑む。
そして、銃が轟音を立てた時、
(見事にモンスターの額を打ち抜いてまして)
熟練の兵である男の目から見ても、それは見事な手腕であった。
無駄のない、しかも流麗な動作は、人の反射神経の限界を超えてさえいた。
モンスターはそれで事切れたのだが、死力を振り絞った最後の一撃は、少年のゴーグルを破壊していた。
(いやー、そりゃあ目が覚めるようなキレイな顔でした)
見事な金髪に相応しい蒼穹の青。二つの青をはめ込んだ瞳は、非の打ち所のない絶妙のラインを描いていた。
(俺も騎士のファティマを見たことはありますが)
(あそこまでキレイな顔は、ファティマでもありませんぜ)
輝いていた――と、対して語彙もない無骨な兵はそう言って、セフィロスの前だというのにうっとりとした眼差しを空へと投げる。
きっとその時の少年の顔を思い出しているのだろうが、セフィロスはそんな兵がやけに不快だった。
セフィロスは普段よりも無機質な音声で、続きを促す。
兵は慌てて我に返るが、そこからは大した話はないのだと言う。
(それがね、ゴーグルが壊れたのが解ったとたん、その場にいたハンター達が駆け寄ってきて)
兵から少年の顔を隠したのだという。
次に少年を目にした時には、すでにフードを深く被っていた。
だから、素顔を見たのはほんの一瞬だったのだ、と。
――やはりそうか…
ハンター達は少年の存在を、村の外の人間に隠そうとしているのだ。
セフィロスはその部分の詳細を兵に求めたが、彼の答えはシンプルなものでしかなく、セフィロスの求めている確信とはズレていた。
(隠してる!?)
(そりゃあそうでしょうよ)
(あんなキレイな男の子、下手したら襲われちまいますからな)
ニブルヘイムという村は、閉鎖的な風土が根強い。軍の基地が建設され、軍関連の施設も側にあるというのに、村の気質は以前の通り辺境にある小さな村そのままなのだ。
村人たちは皆知り合いで、父母祖父母どころか村人同士ならばご先祖までもが知人なのだ。
血も複雑に絡み合っており、根元まで紐解けば、村人は皆血縁関係にあると断言しても過言ではない。
そんな環境が当たり前の村において、あんなに奇麗な子ならば、例え男の子だろうが村全体で庇うのは当然ではないか。
これまで幾度となく村の閉鎖性を目の当たりにしてきた兵の、これが実感であった。

セフィロスがこの基地に属しているのではないからなのだろうか。
それとも、村の閉鎖性というものを知らないからなのか。
やはりセフィロスにはどう考えてみても、少年を庇う村人の真意は、兵が言うような単純な問題ではないのだとしか納得出来ない。
短く事務的なねぎらいの言葉を兵に与えてから、セフィロスは考え込む。
手慰みにタバコに火をつけてみるが、吸う気は一向に起こらない。
ただ紫煙だけを目で追っていて、ふとある言葉が過ぎる。
さっき兵が何の気なしに言った、ある単語。
――…そうだ!ファティマだ!
これは騎士であるセフィロスだから感じたことなのかも知れない。
はっきりとした感覚ではなかったために、ちゃんとした形にはなっていなかったが、他の騎士よりも数多くのファティマを目にしてきたセフィロスは、確かにあのフードの人物を前にした瞬間、感じたのだ。
それはファティマを前にしたのと同じ感覚だった。
セフィロスはリアリストだ。勘や感覚など閃いた経験すらない。
でも今回だけは違っていた。思い出せば思い出すほど、考えれば考えるほどに、閃きは頑強になる。騎士としての本能が、彼こそファティマなのだと、強く訴えかけてくるのだ。
あのほっそりとした、触れれば折れてしまいそうな体つきといい、どこにも歪みや癖がないあの動きのバランスといい、天才マイトが手がけたファティマにそっくりではないか。
それに少年の素顔はファティマ以上の美しさだったという。
――もし、クラウドという少年がファティマだとすれば…
あそこまで人と遜色ない、いや人以上のファティマを創り出せるのは、星団広しといえどもほんの一握りしかいない。
しかもセフィロスの知る限り、それほどまで高名なマイトの作品で、あの少年に当てはまるファティマは存在していない。
何よりそこまで高名なマイトが、このような騎士もろくにいない辺境になど住んでいないのだ。
天才レベルのマイトで――
ニブル近辺に住んでいて――
作品が知られていなくてもおかしくはなくて――
一人のマイトの名が、脳裏でわんわんと響く。
――ガスト博士…
それは今回のセフィロスの旅の目的となる人物である。


ガスト博士――神羅軍に属する宝条を超えるであろう、この五つの星団最高の天才マイトである。
いや、あったと言うべきか。
ガスト博士は今から十年ばかり前に、消息不明になったのだ。
それは突然だった。ある日、何の前触れもなく、まさしく消えてしまったのだ。
当時、ガスト博士は神羅に所属していた。宝条博士の上司として、神羅化学部門を統括していたのだ。
無論セフィロスもガスト博士と面識がある。いや、セフィロスとしては、ガスト博士との関係は、“面識がある”程度では済まされないものがあるのだ。
幼い頃からすでに騎士として覚醒していたセフィロスは、ガスト博士とある約束を交わしていた。
自身がファティマのような美麗な少年。ただし人形のように存在そのものが無機質。
感情の乏しい――いや、感情などなかったセフィロス。己にも己を取り巻く環境、この世界そのものすら、セフィロスにはなんの感慨もなかった。
だから小さな事柄でも、大きな…そう漠然とした運命のようなものにも、セフィロスは無関心という以前に、関心というものすら判別できなかったのだ。
騎士という、超人の中でも特に飛び抜けて優れている自分の能力にさえも、セフィロスは何も感じてはおらず、ただ与えられたカリキュラムを淡々とこなしているだけだったのだ。
他者から注がれるの畏怖も、賛美も、好意的な感情もその反対のものも、セフィロスにはどうでも良かった。
そんなセフィロスに初めて感情という発露を手助けしてくれたのが、ガスト博士。
(セフィロス…君はとても優秀な騎士だ)
銀色の髪をそっと撫でて、顔を近づけてくれた人。
(ファティマを知っているかい?)
セフィロスは機械的に頷く。
すでに幾人もの神羅に所属する騎士を見知っていたセフィロスは、出会ったの騎士と同じ数だけのファティマも知っていた。
ファティマは人工生命体。男型と女型があるが、どちらもとても美しい。
だがセフィロスは「美しい」と実感することもなければ、それ以上の感情も怒らないまま。
当時のセフィロスにとってファティマとは、皆が思うような優れた存在でも特別な宝物でもなかったのだ。
(ファティマというのはとても不思議な生き物だ)
セフィロスはこの言葉に初めて反応を示す。
(博士。ファティマは人工生命体です)
(そうだよ、セフィロス。君の言うとおりだ)
だがね、
(ただの人工生命体ではないのだよ)
(私はファティママイトだ。これまで多くのファティマを手がけてきた)
だからこそ、そう思うのだ、と。
(博士。私には博士のおっしゃる意味がわかりません)
(いいんだよ――)
(セフィロス。君はまだわからなくて当たり前なんだ)
(約束をしよう)
(いつか君にファティマを見せよう)
(博士のファティマですか?)
いくら騎士としての才能が優れているとしても、高名なマイトに対するにはあまりにも不遜なセフィロスであったが、ガスト博士は怒るどころかむしろ面白がった風に、言葉を続ける。
(そうだよ)
(だが、これまで私が手がけたことのない、誰も見たことのないような素敵なファティマを君に見せたいんだ)
ファティマを見せたい――この意味をセフィロスは推し量る。
(私にそのファティマを娶れとおっしゃっているのですか?)
騎士にファティマと言えば、それしか考えられない。
だがガスト博士はゆっくりと首を振る。
(それは違うよ)
(私のファティマをもし君が気に入ったのならば、君がその子を口説くといい)
(セフィロス――)
(君はこれからも多くの人に望まれるだろう)
君が何もしなくても。そうだと思わなくても。
良い意味にも、悪い意味にも、セフィロスの美麗さと才能はあまたの人を魅了するに違いない。
(でもセフィロス)
(私のその子だけは違うよ)
(君がその子を欲しいのならば、君が努力してその子に選んでもらわなければならない)
ガストのファティマだけは、違うのだ、と。
(セフィロス。約束しよう)

(君がこれまでもこれからも見たことのない、一目見て君が素晴らしいと欲しくなるような、そんなファティマを造ってあげよう)
(いいね――約束だよ)
これはセフィロスにとって生まれて初めての約束であった。
※※※
今回はここまで。


+ '08年08月19日(TUE) ... クラファティマ話その1 +

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びーこです。
やっとやり始めたよCC記念(我ながら遅し!)
タイトル通りクラウドファティマ話を貼り付けます。
そんなに長くはなりませんが、数回は続きますのでよろしく。

※※※
MH〜最強の兵器である。
最強の能力を持つ兵器でありながらも、操縦者の意志により移動できるため、戦略戦術面でも重要な役割を占める。
MHを最強たらしめんのは、その性能のみではない。
MHを操る操縦者のスキルにもよるのだ。
MHは選ばれた者のみが駆ることが出来る。
彼らは敬意と畏怖をこめて騎士と呼ばれる、人間以上の超人なのだ。

五つの星団はここ百年ばかり戦闘状態にあった。
だがこの戦争も緩やかに終わろうとしている過程にある。
五つの星団は主に3つの勢力に分かれている。
最大の勢力は神羅。主星ミッドガルを中心に五つの星団のうちの三つまでも、勢力下に納めていた。
豊富な資源。大量の物資。資本主義社会の権化たる強欲さは、敵味方関係ない。
戦争で一番利益を受けているのは紛れもなく神羅だろう。なにせ戦争状態にある敵にも、物資を供給しているからだ。
戦争とは大きなビジネスだ。神羅はビジネスの為に戦争を長引かせていると、まことしやかに囁かれているのも、まんざら見当違いではない。
敵味方関係なく、この星団で神羅に関わっていない者はいないだろう。
この神羅と敵対しているのがウータイだ。
五つの星団の辺境にあるひとつであるウータイは、歴史が古くこれまで一度たりとも他国の侵略を許したことがないのを誇りとしている部族だ。
すでに人種や種族というものが、個性のひとつの意味しかなくなって数世紀たつが、ウータイだけは頑なに己の血統を護り続けてきた。
これが頑なな鎖国に繋がっている。神羅に反する勢力は数多くあれども、どの勢力も面だってウータイの味方はしなかった。
鎖国をし続けているウータイに味方をしても、誰も何の利益も被らないからだ。
ウータイにも味方しない。かといって神羅の支配下にも積極的に入ってはいない。
これが第三の勢力となる。

神羅はウータイへの侵攻をますます激しくしている。
初めはウータイの予想外の健闘にもより、膠着状態にあったのだが、ここに戦況を左右する英雄が現れる。
彼の名はセフィロス。五つの星団最強の騎士。天位を持つ剣士でもある。
彼を英雄たらしめんのはそのずば抜けた強さだけではない。
その美貌である。血肉を感じさせない非人間的な容姿。手足の長い長身。無駄のない逞しい体つき。
銀色の長い髪は月光のごとく輝き。縦に裂けた翠の瞳は神秘的である。
“美しい”ことと“逞しい”ことと“強い”ことと“賢い”ことと。
この相反する要素をセフィロスはどれも遜色なく兼ね備えているのだ。
セフィロスは神羅軍を率いて、指揮を執り、もっとも激しい激戦では自ら先陣に立って闘っていった。
セフィロスが携わった戦闘での神羅軍は全戦全勝。
ウータイの三分の二は神羅によってもぎとられる。ウータイ軍もほぼ壊滅に誓い打撃を受けた。
これによってウータイはゲリラ戦を余儀なくされる。

英雄となったセフィロスではあるが、同じ騎士の間では彼の強さに尊敬をする者がいる一方で、こうも囁かれている。
「ファティマ殺し」――と。
セフィロスにはパートナーとなる、定まったファティマはいない。
いや、「いない」のではなく、厳密に言えば「いなくなってしまった」のだが。
セフィロスはこれまで数多くのファティマを、己のMH正宗に乗せてきた。
星団至上最高のスペックを有する正宗は、並大抵のファティマに扱うことは出来ない。
その上パートナーとなる騎士はセフィロスなのだ。
ファティマには己の備え持つ性能以上を常に求められてしまう。
銘を持つファティマがセフィロスを選んだ。だがそのファティマはどれも一年とは持たない。酷い時は僅か一度の戦闘で、ファティマは耐えきれなくなってしまう。
どれだけ名の通った有名なマイトのファティマであろうとも、それは変わらない。
少女型のファティマも、少年型のファティマも、成人型のファティマも、どれもファティマの耐用年数からは考えられない僅かの間で、クリスタルを崩壊させてしまい廃人となってしまう。
英雄のファティマ殺しの噂は騎士や関係者の間で広まっていく。
この噂を逆手にとろうと、ファティママイトとしての自分の名をあげるべく、セフィロスの元には、様々なファティマが送り込まれてきた。
ファティマ殺しで有名な、英雄のファティマの制作者ともなれば、それは星団最高のファティママイトであるとの証明になるからだ。
ファティマ達は皆、騎士としては最高であるセフィロスを選ぶ。
セフィロス自身にはこれといって不足はないため、希望するファティマ達は皆セフィロスのファティマとなり、そしてすぐに使い物にならなくなっていくのだ。
さすがのセフィロスもこのような事態ばかりが続くのは本意ではなかったのだろう。
彼はそのうちにエトラムル、無形人工頭脳のみのファティマを搭乗させるようになった。
エトラムルならば安易に使い捨てが出来るからだ。
いくらファティマが人工生命体であろうとも、可愛らしい少年や少女の形をし自らの意志を持つ者を使い捨てては寝覚めが悪い。
その点、エトラムルならば無用の感情など持つこともない。
だがもちろんエトラムルには大きな欠点がある。
やはり性能がファティマよりも劣るというところだ。エトラムルは単純にプログラムされた機能を正確に果たすだけであり、セフィロスの細かな癖や、彼自身無自覚なポイントを補うことは出来ない。
不足の事態や突発的な行動にも弱く、星団最強の騎士であるセフィロスにも、また星団最高のMHである正宗にも、相応しくはなかった。
セフィロスには彼に相応しい優秀なファティマが必要なのだ。
セフィロスの為だけに造られた、特別なファティマが。
セフィロス自身自分専用となるファティマの必然性を痛切に感じており、天才マイトとして名高い、神羅の科学者宝条にファティマ制作を依頼。宝条は何体かのファティマをセフィロスに提供したが、どれもセフィロスと正宗を満足させることはない。

このような時節に、セフィロスは単機にて正宗を駆りミッドガルを出発した。
軍事行動ではない。彼はすでに伝説と化している天才マイトを求めて旅立つ。
目的地はアイシクルエリア。神羅支配地域で一番寒い氷の惑星であった。


漆黒に銀。MH正宗は見る者に恐怖を与えてしまう外見をしている。
これは高みからおしつけられる類の“恐怖”ではなく、心の奥底からわき上がってくるもっと原始的なものだ。
セフィロスは英雄視されている己の存在というものを、殊更隠そうとはしない。
どのような評価を得ようとも、どのように特別視されようとも、セフィロスは意に介さないのだ。
有り体に言いきってしまえば、セフィロスは何事にも関心が薄い。
己自身に関しても、また他者に関しても、セフィロスにとっては取るに足らない些細な出来事にしか過ぎないのだ。関心の対象にもなりはしない。
正宗を駆ったセフィロスは、アイシクルエリアの中継点としてニブルエリアに到着した。
ここはエリアの規模としては小さいものの、神羅の軍基地がある。
基地に正宗を預けて、セフィロスは身一つだけでアイシクルエリアに向かう予定なのだ。
軍基地にいる全ての軍属と関係者の注目を一身に浴びながらも、セフィロスの態度は平然としたもの。
まさしく一挙手一投足まだをも注目されているというのに、セフィロスにとっては他者からの重苦しい関心でさえ、どうでも良いのだ。
そよ風ほども感じていないのだろう。
注がれる多くの憧憬にも妬みにも全く反応を示さずに、堂々たる所作であくまでも事務的に行動する様は、別の世界のステージに立っているかのよう。
正宗の管理だけ言葉短く伝えると、セフィロスはすぐに基地を出ていく。
基地に接する場所にある小さな村で、アイシクルエリアへの装備を揃えるつもりなのだ。
ニブルヘイムは本当に小さな村だ。
古くから何世代にも渡りくらしている村人が、今も頑なに村を護り続けている。
軍基地さえなければ、この村は閉鎖的なままであっただろう。
軍基地の側にあり、神羅軍の恩恵を受けている今でも、村人達は幹線に軍基地には依存していないのが、何よりの証。
村に一軒しかない雑貨屋で寒冷地への装備を調える。
村の雑貨屋にしては、品物の種類が豊富で、村人だけではなく軍関係者達も多く立ち寄っていた。
その間を抜け、セフィロスは品物を選ぶ。
いつものように注目の焦点がセフィロスにだけ集まってくる。いつもは気にもならずに黙殺するだけなのに、今回はなぜだか気に掛かった。
なぜか、――と考えて、ふと気がつく。
憧憬や嫉妬ではない。張り合おうとするようなものでもない。
もっと違う…これは、
――警戒だ。
セフィロスは警戒されている。
軍関係者ではない。ニブルヘイムの村人に、だ。
この店にいる村人たちは、セフィロスに対して無関心に振る舞いながらも、鋭く警戒しているのだ。
しかもこの警戒心はただごとではない。
明確な理由があり、セフィロスを警戒しているとしか思えないのだ。
そうだ。これは敵が警戒している様子によく似ている。
セフィロスは差し迫ってくる違和感を覚え、気取られないよういつも通りの落ち着き払った動きで辺りをチェックしてみた。
己を取り巻く世界において、常に“他”を排除してきたセフィロスは、どのような場面においても尊大であった。
他に無関心なだけで、尊大と例えるに相応しいであろうに、彼を英雄と呼ぶ者たちは尊大ではなく、それこそが英雄の風格であると言う。
またセフィロスの非人間的なまでの圧倒的すぎる美貌に心奪われた者たちは、彼の存在こそが“美”なのだと崇める。
他人が己に下す評価など気にもならないセフィロスであるが、今回はこんな無関心な様子が役に立つ。
品物を吟味している動きそのままで、視線すらも動かさずに、セフィロスは村人達の警戒心の行き着くところを探った。
ミッドガルの大きく華やかな店舗に比べると、狭くてこぢんまりとしている。
店内の装飾はあくまでも素朴。飾り付けやディスプレイはされていない。
木で立てられている店内は、アロマの香りではなく、そのまま木の匂いだ。
店への入り口はひとつだけ。奥まった一角に仕切られたカウンターの向こうに、武器などの高額商品が、それでもガラスケースの中に納められている。
かなり良い商品なのに、ミッドガルと比べると無造作な扱いなのは、ここがニブルだからだろう。
ニブルはモンスターもレベルが高いものが多い。よって強い武器というものは、この地での生活必需品なのだ。
入り口右手側にはごちゃごちゃとした雑貨が。ポーションなどもここに並んでいる。
左手側には装備が、無造作に並べられていた。
カウンターの向こうに中年の女性がおり、愛想良い笑顔を浮かべながらレジをしている。
店の主人であろう男性は、軍関係者であろう客と装備の説明をしている最中だ。
レジの女性は如才なく客と世間話をしながら。店の主人は細かな説明を加えながら。だが双方ともに本当の関心は客には向いていない。
店内にいる他の村人もそうだ。店内を物色したり、くだらない雑談に興じているフリをしながらも、鋭い警戒心をしきりと払っている。
この警戒心の行き着く先。一方はもちろんセフィロスだ。
そしてもう一方は――
セフィロスは一人一人を吟味していく。
そして、
――あれか!?
店の隅で立ち話をしている小柄な姿。フードつきのマントで顔はおろか、足下までよく見えない。
立ち話をしていると言っても、小柄な人物は先ほどからほとんど喋っていなかった。
村のハンターなのだろう。大柄な男が陽気に話しているのに、数少ない相づちをうつ程度。
それもハンターの大声にかき消されており、セフィロスの聴力をもってしても、まだ透き通った子供の声だとしかわからなかった。
セフィロスは関心の焦点を当てる。

大柄なハンターに隠れてしまい、全身像は窺えない。
その上フードつきのマントはすっぽりと身体を覆っているため、正確な身体のラインを辿ることも難しい。
ただ足下から覗くブーツのサイズは小さそうだ。小柄で小作りな体つきらしい。
年齢もまだ幼いのだろうが、それにしては不相応な落ち着きがある。
ハンターの言葉に頷き、時折小さく応じている様を強く凝視していると、フードの人物がこちらを見た。
さすがにセフィロスの強すぎた視線に気がついたのだろう。
フードを上げることはしなくて、セフィロスへと顔を向ける。
大きなフードは顔の半分以上を隠していた。セフィロスから見えるのは、透き通った白磁のような白い肌と、尖った小さな顎。淡い色合いのふっくらとした唇であった。
唇がきゅっと引き締められる。
その光景にセフィロスは震えた。これまでに遭遇したことのない、恐ろしくも歓喜なる、甘美な戦慄である。
だがこの邂逅もほんの一瞬。セフィロスのただ事でない反応に気がついたハンターが、フードの人物をさり気なく促す。店を出ようとしているのだ。
セフィロスは慌てて後を追いかけようとするが、ハンターに促されているフードの人物とセフィロスの間に村人が数名割って入ってきた。
商品を選んでいるような素振りをしているものの、セフィロスから見れば邪魔をしているようにしか思えない。
だからといって騎士の力で邪険にすることも出来ず、セフィロスは完全に引き留める出鼻をくじかれてしまったのだ。
店をでていってしまう小さな背中を追いかけたいのはやまやまであるが、さすがに今そのような暴挙は出来なかった。
なにせセフィロスはこの村にとっては異邦人。
今ここでむやみに追いすがるのは、賢くはない。
――基地に戻り情報を手に入れるのだ。
はやる気持ちを宥めながら、セフィロスはいくつかの防寒用具を整えた。
入ってきた時と同様の無表情さで、静かに店から出ていく。ただし、その翠の双眸はかつてない渇望を讃えていたとは、本人とて知らない。
※※※
とりあえずここまで。




+ '08年08月10日(SUN) ... 赤白〜短い話 +

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こんにちは、お久しぶりのびーこです。

先月終わりから素敵なコメントをいただいております。
返信不要なのがもったいないくらいの、ありがたいコメントでした。
本当にありがとうございます。
本来ならば不要というご指定でしたので、必要ないのですが、一言だけ。
連載はまだつづきます。
あそこでぶっちぎりということもありませんので、
その点だけはご安心くださいませ。
ただ予定は未定というのが、辛いところなのですがね。

もうすぐ夏祭りですが、私のように遊びに行けない方、避ければ暇つぶしにどうぞ。
赤白の短い話です。

※※※
忘らるる都を出てサンゴ谷を抜ける。
クラウドとセフィロスはボーンビレッジへと歩いていた。
忘らるる都から侵入者を拒むためにある眠りの森も、セトラの血をひくクラウドにはあくまでも優しい。
一歩踏み出すごとに木々や草花が、子守歌を歌うようにざわめく。そんな小さな歌の一節ごとに、クラウドは目を輝かせるのだ。
その様子はとても愛らしく、側にいるセフィロスをも楽しませる。
今鳥が梢から飛び立った。偶然などではない。クラウドの視線を充分計算しての、見せる為の動きだ。
きらびやかな羽根を持つのでもないただの鳥であったが、クラウドは鳥の飛ぶ先へと小走りになる。
その小さな背中に、セフィロスは思わず声をかけた。
「クラウド。あまり走るな」
「大丈夫。転ばないから」
ちょっとだけ、と言いながら、クラウドは鳥の軌道を追うべく、上を見ながら走る。
元より山育ち田舎育ちのクラウドだ。運動神経はかなり発達していた。
上を見上げながら走っても、足下がおぼつかなくなることなどない。
だがそうだと解っていても、心情とはそんなにあっさりときれいに割り切れたりしないもの。
セフィロスは自然とクラウドの後を追いかけていった。

本来野生の鳥とは、自分の巣を隠すもの。だがこの森の鳥たちは違うようだ。
一羽の鳥を追いかけるクラウドの前に、我もと言わんばかりに他の鳥が現れてくる。
ちちち、と高く鳴きながら、クラウドを誘うのだ。
クラウドの関心が、そちらに注がれる。
それが気に入らないのか、クラウドを誘っていた鳥が舞い戻ってきた。
クラウドの側にまで降りてきて、羽根を見せつけるように羽ばたかせる。
「うわあ」
側近くのこのパフォーマンスに、クラウドは歓声を上げる。
手を伸ばそうとしたとき、また別の場所から鳴き声がした。
ちっちち、と鳴く鳥は、また別の鳥だ。
こうやって鳥は次々と現れては、クラウドの関心をひこうと様々なパフォーマンスを繰り返す。
――まったく、いつからこの森に住む生き物はこうなったんだ。
鳥だけではない。木々も草花もクラウドの関心をひくのに必死だ。
木々は枝を振るわせて、キラキラと輝く木漏れ日を演出する。
確かに星に近い生き物であればあるほど、セトラに敬意を払い特別視するものだ。
セトラという種は、それだけ星に愛されているということか。
だが、今目の前で起こっていることは、いくらセトラ相手だとしても、やりすぎなのではないのか。
本来ならば微笑ましいであろう、セトラと生き物たちの交流なのに、自然と眉間に皺がよっていくのは、これがクラウドを取り巻いて行われていることだからなのか。
――つまり、
――俺は森や鳥たちに嫉妬しているということなのか…
セフィロスの秀麗な口元に、微苦笑が浮かぶ。

木々は木漏れ日を演出し、草花は心地よいざわめきを歌っている。
小鳥たちは数多く集まり、クラウドの周りで踊っているようだ。
その中心にいる少年、クラウドは白い滑らかな頬を上気させて、自分に対する好意に歓声をあげるばかり。
ずっと閉鎖的な村で、大切にはされてきたが隠されてきた少年にとっては、このような好意が嬉しくてしかたないのだろう。
セトラとして認められたばかりの少年の繊細な心は、はっきりと訴えてこないだけ根深いのだ。
――クラウド…
――俺のセトラよ。
クラウドにもセフィロスにも、時間はたくさんある。
これから二人ずっと共に過ごして、たくさんのことを体験させてやろう。
クラウドがこれまで知らなかった、嬉しいことや楽しいことを、セフィロスが見せてやろう。
クラウドの金色の髪が木漏れ日を弾く。細かなプリズムのように乱反射した輝きは、青い瞳に吸い込まれていくようだ。
クラウドが声を上げて笑う。滅多と聞けない朗らかな笑い声に、セフィロスの心が和んだ。
同時に、見せつけたくもなる。
どれだけ森の生き物がクラウドの関心をひこうとしても、セトラのパートナーはソルジャーなのだと。
セトラであるクラウドのパートナーは、ソルジャーの中でも自分しかいないのだと主張したくなるのだ。
「クラウド、――おいで」
名を呼ばれて素直にクラウドが反応した。
少年の視線が自分に向けられているのを確認するように、セフィロスはことさらゆっくりと動く。
己の右手を上げる。口元へと持っていき、右手の人差し指の一部を自らの歯で噛み千切った。
肉が覗いたのはほんの一瞬だけ。見る見る血が盛り上がってくる。
盛り上がった血は重力に作用によって、大地にしたたり落ちていった。
その様子を凝視するクラウドが変化する。さっきまでの無邪気な少年の顔が消えて、淫らで貪欲な発情しきったセトラのものへと。
セトラの食欲と性欲を満たせるのは、ソルジャーのみ。
「クラウド――お腹が空いただろう」
――おいで。
低く甘く囁くと、クラウドの世界には、もうセフィロスと彼の血しか存在しなくなってしまう。
小鳥のさえずりも、草花の音楽も、木々の演出も、意味を成さなくなるのだ。
自分に寄せられる好意を全部振り切って、クラウドが歩いてくる。その歩みがどこかおぼつかないのは、欲情しているからに違いない。
「…セフィロス……」
「良い子だ。クラウド」
「さあ、口を開けなさい」
少年のふっくらとした唇が開く。
粒の揃った真っ白な歯。その中にある一対の鋭い牙に、うごめく舌の赤い色味が鮮やかだ。
まだ血の止まらない指をそっと近づける。
ぽたり。と滴った血が舌にこぼれ落ちていく光景にセフィロスも酔う。
我慢できなくなったのだろう。クラウドの両手がセフィロスの右手を捕らえる。
強い力だ。そして同じくらいの強さで、セフィロスの傷口が吸われる。
血が体内から抜け出る感覚に、セフィロスは激しく勃起した。
※※※


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