こんばんは、びーこです。
4日23時のRさま> いつも素敵なコメントをありがとうございます。
では、続きです。 ※※※ クラウドとティファ。二人の幼なじみの役回りは決まっていた。 ティファが話を多少強引に押し進めてしまい、早く結論を得たがるのに対し、クラウドはひとつひとつをじっくりと吟味していき、疑問を提示していく。 ティファだけでは、結論を急ぎすぎるあまりに、間違った答えを導き出すだろうし、クラウドだけならば吟味に時間がかかり考え込んでしまうだけで終わってしまう。 ちょうど二人で考えるのが一番なのかも知れない。 「だったら上位と下位の一族の姿は違うのかしら?」 「下位のはモンスターに似ているって言うよね」 だとすると、 「モンスターには似ていない…」 モンスターに似ていなければ―― 二人の頭に同じ答えが浮かぶ。 「…人間――…」 こう口に出したのはティファだ。 だが音にしたティファはもとより、聞いているクラウドにも怖気が走った。 この怖気の根元を、二人の本能は考えることを避ける。 二人は推理を止め、口を閉じて互いを不安に窺う。 自然と二人の間隔は近づいていき、こっそりと肩がぶつかったそのタイミングで、音がした。 ばちん。 とも。 ぱちん。 とも。 目に見えない限界ぎりぎりにまで膨れあがっていた何かが、切れた合図であった。 “音”と行ったが、本当の聴覚で捕らえられる音ではない。 それはニブルヘイム一帯の大気を揺るがせる振動であった。 魔法や結界に詳しい者が聞いたならば、この音の正体はすぐに思い当たるだろう。 これは目では決して捕らえられない、魔力が造り出した“力場”が、更に大きな魔力によって、無理矢理引き千切られた証だったのだ。 これこそが闇の一族が作り出す地獄が始まる合図だった。
音ではない、“力場”となっている大気の破裂する振動を肌で感じたクラウドとティファは、何事が起こったのかとまず顔を見合わせる。 ――あの雲だ! 二人が互いの顔から導き出した答えは同じであった。 ストライフ家の窓際に駆け寄ると、窓を開いて飛び出すように空を見上げる。 雲――幾重にも層を成した、禍々しい蛇を二人は仰ぎ見る。 この行動は本能であり反射でもあった。 この村で今何事かが起こるとすれば、この雲以外に異変の原因はないのだと、幼い二人にもわかっているのだ。 そしてこれは正しい。 仰ぎ見た雲は、それぞれの層が別の生き物のように、何重にも重なり合ってとぐろを巻いている。 よく見るとそのとぐろは動いていた。 巨大な蛇が獲物を締め上げるような残酷な緩慢さで、雲はじりじりと動いているのだ。 そして雲の中心部分らしきところが、徐々に口を開いている。 「…あっ――」 声を上げたのは、クラウドだったのかティファだったのか、それは本人たちにすら定かではない。 口は見る見るうちに大きく開いていくのだ。 虚無のような深淵が、こちらからもはっきりと窺える。 ――来る! 予感などという生やさしいものではなかった。 これは絶対の確信である。 来る、と閃いてすぐ、口の虚無を通路として、何かが降りてくる。 それは巨大でいびつな縄に思えた。さらにじっと目を凝らしていると、いびつな縄に思えるものは、様々な何かが雑多に絡み合っているものだということに気がつく。 何かとは――青い目をいっぱいに、クラウドは息をのむ。 少しだけ遅れてティファもそれが何なのかがわかった。
それらは生き物であった。 いや、クラウドが知る“生き物”にはカテゴライズされないが、たぶん…生き物なのだろう。 この地上にある生き物とは似ていても非なるもの。もちろんモンスターとも全く別。一見似てはいても違う。 これこそが、この星に住む生き物とは根本から異なり別種である、闇の一族なのだ。 よく観察してみると、蛇に似ている一族もいる。モンスターのミッドガルズオルムを彷彿とさせるが、やはり根本がねじ曲がっていた。 あるいは狼に似ている一族も見える。カームファングに似ているようで、やはり明確に違う。 ドラゴンを思わせる一族。 昆虫を思わせる一族。 どこが手やら足やら、判別すら出来ない形の一族。 ともかくそれら全てが何の法則もなく捩れあい、共食いにも似た絡み合いを繰り返して、一本の太い縄を成しているのだ。 吐き気が込みあがってくるいびつな光景でありながらも、どうしてだか視線がそらせない。 ※※※ 毎日暑い日が続いています。 もう身体がとけそうです。
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