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+ '08年07月15日(TUE) その02 ... ちょっと寄り道〜赤と白その3ラスト +

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こんばんは、びーこです。

まずY子さん、お誕生日おめでとうございます。
そして顔射イラの上にどっかりと失礼。

ではラストを貼り付けます。
挿入しておりますので、その覚悟でお読みください。

※※※
短い間であったが、あまりにも壮絶な快感に、セフィロスは気死していたようだ。
すでにペニスからの出血は止まっている。
荒い息が整ってくると、すぐ側で仰向けになっているクラウドの姿を認める。
唇の端に赤と白が残っていた。
「クラウド――」
いとおしさを滲ませて名を呼ぶと、濡れた青い眼差しがこちらを向く。
「セフィロス……お尻が熱いよう」
「ああ、解っている」
「今度は下から直接体の中に注ぎ込んでやろう」
セフィロスは慎重に少年の衣服を剥ぐ。
透き通るような肌はすっかりと上気して、指先までもがバラ色だ。
クラウドは痩せているが、貧弱な体つきではなかった。田舎の山育ちだからなのだろうか、ほっそりした肢体にはちゃんと幼いながらも筋肉がついている。
枯れ枝のような骨張った体つきではなく、細いながらも伸びやかですんなりとしたラインで構成されていた。
裸にされたのがそれでも恥ずかしいのだろう。下着までとるとクラウドは身体を丸めて胎児の姿勢をとった。
それが逆にセフィロスを煽ることになるとは、クラウドは思ってもいまい。
丸めた姿勢は尻が無防備だ。小さく丸い尻は遮るものもなく、セフィロスの目前で剥き出しとなっている。
まるい尻の間に見えるアナルは、無垢な筈なのにすっかりと充血していた。
物欲しげに小さな口がぱくぱくと開いている。その少し先に見える睾丸は、柔らかな袋をそれでも膨れあがらせていた。
クラウドのペニスは残念ながら見えないが、絶対に勃起しているに違いない。
入浴の折りに見たあの植物の鞘のような器官がどのように勃起しているのか。そう想像するだけでセフィロスは怒張してしまう。
セフィロスは二度射精したにも関わらず、すっかりと怒張してしまったペニスで、まろやかな少年の尻をつつく。
つついてきたペニスの大きさ、熱さ、硬さを感じてしまい、クラウドは悩ましげに身をよじる。
丸見えのアナルから透明な体液が滲んできた。セトラは糧を有効に喰らうために、アナルも濡れるように出来ている。これは興奮のバロメーターでもあった。
「早く食べたいのだろう、クラウド」
「すぐに俺のを挿れてやるからな」
身体を丸くしたままのクラウドの背中にセフィロスはぴたりと張り付く。
片手でクラウドの頬を撫でると、少年はすぐに唇を寄せてきた。長いセフィロスの指に、そのまま吸い付いてしまう。
そんなあどけなく淫らな仕草を己の目で確認したくて、セフィロスはクラウドの顔を覗き込んだ。
そんなセフィロスの気配を感じたのだろう。クラウドは指を吸いながらも、顔を背けようと抗う。
「どうした?恥ずかしいのか?」
目を閉じたままクラウドは素直に頷いた。
「顔を見られるのはイヤなのか?」
これも、頷く。
「そうか――ならばこちらを見せてくれないか?」
空いた手でクラウドの股間をまさぐった。
だが太股に力を込めて、クラウドは手の進入を許さない。
「ここも駄目なのか?」
これまた、頷く。
あれもイヤ。これも恥ずかしい。こんなクラウドの羞恥は可愛いものでしかない。
じゃれられているような気になって、セフィロスはむしろ歓んだ。
「ではクラウド――」
かちかちになったペニスに手の誘導は必要ない。
濡れて口を開いて待ちこがれているクラウドのアナルに、ペニスを近づけた。
さっきクラウドの牙に串刺しされた亀頭で、アナルをノックする。
「ああん…」
身悶えながらもクラウドは尻を突き出す。
クラウドの細い腰と比べても、セフィロスの怒張は巨大すぎる。
だが慎ましやかなアナルはすでに口を開いて、セフィロスのペニスを受け入れようとしているのだ。
「これを食べさせてあげるから、クラウドのを触らせてくれないか」
――恥ずかしいのだろう。見はしない。
セフィロスのささやきにクラウドは小さく首を振る。しかし尻は素直だ。ノックする位置のままで動こうとはしないペニスを求めて、セフィロスの方へと突き出されていく。
「な、クラウド。触るだけだ」
「俺の精液を下の口から直接食べさせてやるから」
「旨いぞ。俺のは」
さっき上の口でしゃぶっただろう。
「あれ以上に、旨いぞ」
セフィロスのささやきにより、さっきの“食事”を思い出してしまい、クラウドの身体は自然と開かれてしまう。
力を込めていた太股が緩んだ。その隙を逃さずにセフィロスの大きな利き手が、奥深くまでまさぐってくる。
そうして、セフィロスはやっとクラウドのペニスを捕まえた。
まだ大人の形になりきれていない可愛いペニスだが、しっかりと勃起はしている。
セフィロスの大きな手にすっぽりと収まってしまう大きさは、ちょうど握りやすいし扱きやすい。
まるでセフィロスの為だけに誂えたかのようだ。
「クラウド。さあご褒美だ」
可愛いペニスを握りしめながら、セフィロスはアナルに亀頭を沈めていく。
抵抗はほとんどない。ただやはり未開の処女地。狭くきつい。
セフィロスの挿入に合わせて。手の中にあるクラウドのペニスがひくひくと動く。
その素直な反応が愛しくて、セフィロスは挿入自体に感じてしまった。
長大な怒張が、徐々にではあるが小さな可愛らしい尻に収まっていく。
小さな尻に反して、クラウドの体内は狭いもののとても深かった。
どこまで挿入しても果てや限界がない。むしろどんどんと開いていくようだ。
セフィロスのペニスを受け入れて、無垢なる体内は小さかった口を精一杯に開き、侵攻してくる怒張を頬張っている。
「あ・あ・あ…」
もうクラウドは声もでない。
淡い唇を閉じられなくなって、端から唾液が流れた。頬ずりしながらセフィロスは舌を伸ばして舐め取る。
掌の幼いペニスが痙攣した。丸い尻にセフィロスの陰毛があたる。
とうとう根本まで収まったのだ。
「…っ!」
クラウドの身体が跳ねる。
その瞬間、幼いペニスはセフィロスの掌で爆発してしまった。
たぶんこれが生まれて初めての射精なのだろう。
己に込みあがってきた堪えようのない快感と、その結果訪れた射精と。
これらの初体験にクラウドは呆然としている。青い瞳から生理的な涙が零れた。
セフィロスはそのきれいな青に満足する。
――俺が生んだ、青だ。
同じ青でありながらも、明らかに清童の頃とは違っているであろうクラウドの瞳の色。
クラウドを最初の射精に導いたのはセフィロスだ。セフィロスが丹誠をして産み落とした、青。
――これでクラウドは俺だけのセトラとなったのだ。
混みあがってきてセフィロスを支配する甘美な感情は、やはり名付けるとすれば愛なのだろうか。それとも恋?
セフィロスはともかく行動に移した。クラウドの体内に収まったばかりのペニスを、引き抜き、強く押し込む。
痛みも快感も、そのどちらも余すことなく感じているのだろう。クラウドの身体が跳ねる。
腰の動きを大きくすると同時に、前に回している手で押さないペニスを愛撫した。
さっき放たれた精液を塗り込むようにして、生殖器全体を刺激する。
睾丸を転がしながら抑えると、クラウドのアナルがうごめく。
長大なセフィロスの怒張により、いっぱいに口開いているだろうに、この余裕はどこからやってくるのか。
クラウドのアナルはすでにセフィロスの巨大さに慣れたのか、押し開かれている一方だけだったのが、もうすでに喰らう動きとなっている。
一番奥から純に蠕動していき、アナル全体でねじり吸い取る動きだ。
体液もさかんに分泌され、中はもうべちょべちょだった。セフィロスが腰を動かし挿入するたびに、体液がペニスにまといつき濡れた音をさかんに立てる。
小さな尻が痙攣し、掌のペニスが震えた。クラウド二度目の射精に、アナルも激しくうごめく。
糧である精液を搾り取ろうとする動きに、セフィロスはかろうじて耐えた。
先にクラウドの口に精を放っていなければ、セフィロスとて危なかったであろう。
「欲しいか!」
「クラウド。俺の精液を喰らいたいか!」
ああああ、と途切れ途切れのあえぎ声を発しながらも、クラウドは小さく頷いた。
同時に口内を蹂躙しているセフィロスの、長い指を噛む。
できたての牙が指の関節に食い込んでいく。その感触すらもソルジャーたるセフィロスには媚薬だった。
指から流れる血をクラウドが快感と痛みに泣きながらすする。
セフィロスは血を与えながら、ペニスの動きを変えた。
アナルから抜け落ちそうな部分まで一気に引き抜くと、そのままアナルの一番奥まで力任せにねじ込んだ。
クラウドの幼い最奥までねじ込んだあと、ペニス全体でぐりぐりと内臓ごとえぐり込む。
「ひぃっ」
甲高く泣きながら、クラウドはセフィロスの掌で三度目の射精をする。
アナル全体が射精に合わせて、きつく引き締まった。
今度は堪えない。セフィロスは精液に飢えたアナルに向かってたっぷりと吐き出した。
吐き出した大量の精液は、全部クラウドの体内へと消化されていく。
上の口から血液を。
下の口から精液を。
どちらもたっぷりと与えられ、生まれて初めてセトラの糧で満たされたクラウドは、その満足感でまた感じてしまう。
背後から半分のしかかってきているセフィロスに押しつぶされながら、少年は水っぽいすっかりと薄くなった精液を、最後に僅かだけ吐き出した。


惚れ惚れするほど長い足を組んだセフィロスは、まだ長いタバコの火を乱暴に消した。
押しつけられた銀色の灰皿で、悲鳴のような音と共に火は消え、長い紫煙がたなびいていく。
「よっ。エアリスがもうちょっと待ってくれってよ」
いかにも不機嫌なセフィロスに、様子を窺いに行っていたザックスがなんとか宥めようと試みる。
「まだ支度が出来ないのか」
「いやー。エアリスすっかり張りきっちまって」
「これでは時間に間に合わなくなる」
「そりゃわかってんだけど…」
本日はクラウドのセトラお披露目の日だ。
星中に散らばっているセトラの中で主だった者たちが、この忘らるる都に集まっている。
そこでクラウドは正式に紹介されて、セトラの一員としてこれから生きていくのだ。
セトラは純朴な種だ。まず着飾ることはしない。
だが初めからセトラらしくないクラウドの容姿に魅了されたエアリスは、事あるごとにクラウドの身の回りに構う。
今回のお披露目にもエアリスは張り切ってしまい、クラウドの衣装を用意させたのだ。
本番である本日は、朝からクラウドをセフィロスから取り上げてしまい、この都にいる他の女セトラを巻き込んで、クラウドの飾り付けの真っ最中。
パートナーであるザックスとて、エアリスの張り切りを止められないでいた。

セフィロスによって糧を得るのを覚えたクラウドは、驚くほどきれいな少年となっている。
初めからきれいな少年ではあったが、セフィロスに身も心も愛され、彼からの糧を充分に与え続けられて丹誠されているからだろう。
清楚さと無垢と、艶やかな淫らさが、過不足なく共存する、生きる宝石のようにまばゆい存在となってしまった。
宝石となったクラウドへのセフィロスの寵愛は際限がなく、ソルジャーにとっては共有すべきセトラでありながらも、少年はセフィロスの“例外”となってしまっている。
セフィロスは己の寵愛を隠すこともしないため、いくらきれいになろうとも、クラウドに手を出そうとするソルジャーはすっかりといなくなってしまった。

それほどまで深く寵愛するクラウドを、朝一番から取り上げられたセフィロスの機嫌は悪い。
付き合いの長いザックスでさえ、御免被りたい機嫌の悪さだ。
――カンベンしてくれよな…
などと心中で愚痴ってみるが、そもそもザックスのパートナーであるエアリスが原因なのだから、彼が被害を被るのも当然なのだろう。
セフィロスがまたタバコを取り出した。どうせすぐに消すのだろうが、と思いつつ、ザックスは話しを振る。
「そうだ。エアリスから聞いたんだけど、お前、ソルジャートップから降りるってホントか?」
ソルジャーのトップとは、単に強さだけのことではない。
セトラ狩りからセトラを護りつつ、星に散らばったセトラの安全も考える、実質の指揮官の役目である。
確かにセフィロスは権力や地位に執着をしない男ではあるが、これまでトップにいるのを嫌がることもなかったのに。
「ああ、降りるぞ」
セフィロスは淡々としたものだ。
火をつけたばかりのタバコから立ち上る紫煙をうるさげに手で払いながら、
「俺の後任はお前だ。ザックス」
「ええっ!?」
「どうした?なぜ驚く」
美麗な顔に皮肉でコーティグされた冷笑を刻んで、
「女王であるエアリスのパートナーがトップとなるのは当然だろうに」
「ちょっと待ってくれよ!」
「お前、俺がそーいうの苦手だって、解ってるだろ」
「苦手とか得意などは関係ない」
慌てふためくザックスなどシャットアウト。
「パートナーとして、お前が責任を持てば良いだけだ」
「どうしてだ!?」
「どうして…今頃…」
「これまで通り、セフィロスがやりゃいいだろっ」
「それこそ、無理な話だ」
「なんで!?」
「俺はもうセトラの為には動かない」
「はあ?」
「俺は――これからはクラウドの為だけに動く」
むしろ自慢げに言い切ったセフィロスは、やはり強く逞しく美しい。
セフィロスの美貌には免疫があるザックスでさえも、息を詰めて見惚れてしまった。
「俺はクラウドを他のソルジャーに任せるつもりは毛頭ない」
「クラウドの糧となるのは、俺だけだ」
――つまり、クラウドと離れたくないってことか…
いやあ、その気持ちはわかるけど。
でも、
――俺がソルジャートップになるっていうのは決定なのか!?

がくん、と頭と肩を落とすザックスの背後の扉が開かれた。
気落ちするパートナーとは対照的に、やけに晴れ晴れしたエアリスがやってくる。
「おまたせー」
「クラウド、とってもきれいで格好ヨク出来たのヨ」
「セフィロス、惚れ直すわヨ」
扉が大きく開かれる。
いつまで経っても人見知りが治らない少年は、恥ずかしさと誇らしさに頬を染めて、セフィロスを見ていた。
「クラウド――」
さっき点けたばかりのタバコを灰皿に押しつけながら、待ち焦がれたセフィロスが立ち上がる。
大股であっという間に距離を詰めると、人前だというのに愛する少年を抱きしめた。
がっくりしたままのザックスの前で、じゅっと火が消える音がする。

おしまい
※※※
拍手と♪、ありがとうございました。
読んでくださった印ですね。
いつも嬉しいです。


+ '08年07月15日(TUE) ... …。 +

mi.jpg (400x400..0.0kb) up

Y子です。


アタシ誕生日だっていうのに何してんだろう・・・・。

いろいろなパターンで描いたのですがイマイチ下品になってしまうので、逃げました。すみません。





+ '08年07月14日(MON) ... ちょっと寄り道〜赤と白その2 +

data/no.gif (x..kb)

こんばんは、びーこです。

すみません。今回で終わりませんでした。
あともう一回続きます。

今回はショタエログロ風味ですので、ご注意ください。
何度書いても「お○んちん」と打ち込むのは気恥ずかしいものですね。

ではスルースキルを発揮して、さあどうぞ。

※※※
少年はクラウドという名であった。
よほど村で大切にされてきたのだろう。クラウドは人見知りの激しい、でも素直な少年であった。
そういうところもセトラとは少し違っている。
容姿と同じく繊細なクラウドの性質を考えたエアリスは、少年がちゃんとセトラとして覚醒するまでお披露目を執り行わないことに決めた。
覚醒までの間、クラウドの身柄はセフィロスにゆだねられることになったのだ。
クラウドと出会いセフィロスは一変した。それは笑えるほどに、だ。
まるで親鳥のように、セフィロスはクラウドを庇い抱え込んで共に過ごす。
この場合“親鳥”というのは比喩だけに止まらなかった。セフィロスは本物の親鳥のごとくに、クラウドを保護したのだから。
着替えから食事。日常の事細かなことまでも、セフィロスは全て取り仕切る。
共に食事を摂り、共に風呂に入る。そして夜も例外ではない。
同じベッドに入り、クラウドが寝付くまで、いや、寝付いてからも少年の未発達な身体を抱きしめて過ごす。
溺愛――この言葉がぴったりとするくらいに、セフィロスはクラウドを庇護し、己の大きな羽根からクラウドを出さない。
普通ならばこんな状況に置かれ、あまりよく知らない他人から構われ続けるのは、うんざりするだろうが、これまでも村人から大切にされて来たクラウドの精神構造は、セフィロスの過保護はストレスにはならなかった。
少年は信じられないほど美麗でありながら、深く自分に愛情を注ぎ込んでくれるセフィロスに、すぐになつく。
「セフィロス――」
まだ声変わりもしていない澄んだ声で名前を呼び、控えめながら可愛らしい笑顔を向けてくるようになった。
そんな少年の愛らしい態度が、さらにセフィロスの溺愛を誘う。
「僕、父さんを知らないんだ」
クラウドの話しを総合してみるに、彼の父親がセトラだったようだ。
クラウドの容姿は人であった母親譲りらしい。
「だから、セフィロスといると、父さんってこんな感じなのかなあ、って思うんだ」
父親代わり。これまでのセフィロスならば誰かの代わりなど認めなかった。
だがクラウドだけは別だ。
セフィロスは美麗すぎる顔に、クラウドだけに向ける優しい笑みを浮かべる。
「クラウド。俺はクラウドが求める者ならば、なんでもなってやろう」
父親でも、兄でも弟でも友人でも。なによりも――恋人にでも。
低く甘く囁かれたクラウドは、無意識に頬を染めた。
セフィロスのささやきはセクシャルすぎる。クラウドはまだ幼いからはっきりとした精衝動など感じていないのだろうが、それでも疼くような感覚は覚えていた。
「クラウドは俺に父親になって欲しいのか?」
甘い問いかけはこれだけで充分な愛撫だった。
クラウドは頬を染めたままうつむき、セフィロスから距離を取ろうとする。
セフィロスの長い両腕が伸びてくる。優しくクラウドを包み込んで、セフィロスの元へと寄せてしまった。
膝に乗せられて至近距離から瞳を覗き込まれてしまう。これではとても逃げられない。
潤んだ青い瞳は魅力的だ。セフィロスは己の求めるがままに、宝石のような青い瞳をそっと舐める。
「いやあん…」
本人は自覚していないだろうが、セフィロスの膝の上で瞳を舐められて身体をくねらせながら発したクラウドの声は、欲情しきったあえぎ声にしか聞こえない。
「舐めないで……」
ぺろり。セフィロスの舌がつるんと舐めていく。
眼球だけではなく長い金色の睫毛にも触れて、くすぐったいとクラウドはさらに身をよじった。
「どうしてだ?なぜ舐めてはいけないんだ?」
「だってぇ…汚いよ」
「汚くない。クラウドはどこも汚いところなどない」
「でも、目なんて舐めるところじゃないでしょ」
「クラウド――」
「俺はクラウドの全部を舐め回したい」
――解っているだろうに。
セフィロスはこれ見よがしにため息をついて、
「クラウド。お前はセトラだ」
「そして俺はソルジャー」
「お前は俺を食べればいいんだ」
上気していたクラウドの顔が強張る。
セトラの糧はエナジー。ソルジャーの精液と血液を糧にすれば良いのだと、忘らるる都に来てから、クラウドは事あるごとにそう説かれた。
だが、どうしてもエナジーを喰らうセトラの本能を認められないでいる。
――血を吸うなんて!
それだけでも化け物のようなのに、
――精液なんて……
おぞましいと捕らえるべきか。それとも本能に身を任せるべきなのか。人と同じく、これまで通り普通の食事を摂っていくべきなのか。
クラウドにはどうすれば良いのか解らないのだ。判断のしようさえない。
戸惑うばかりのクラウドは、いくらセフィロスが促そうとも、エナジーを摂取出来ないでいる。
セフィロスとしてはクラウドを他のソルジャーに与えるつもりはない。
クラウドが摂取する初めての、そして唯一のエナジーは自分のものであって欲しい。
エナジーを摂取するという行為は、決して奇麗事だけではすまないのを、ソルジャーであるセフィロスは痛感している。
エナジーの摂取。それはイコール、セックスだ。
無垢なる少年クラウドの初めては、自分でなければならない。
父親として兄として、友人として、なによりも恋人として、彼の最初を自分だけの秘密にしてしまいたい。
このセフィロスの決意は固い。例え、クラウド自身の意志が定まっていなくとも。


セフィロスはクラウドを抱きしめたまま、諭す。
「エナジーを吸わねば、セトラは生きていけない」
セフィロスの言葉に、クラウドの小さな肩がぴくんと跳ねる。
クラウドのセトラとしての本能は、この事実をよく理解しているのだ。
だが人の血が本能を邪魔しているのか。
――クラウドを失うことは出来ない。
ソルジャーとしても。そしてセフィロス一個人としても。
セフィロスは抱きしめる腕に力を込める。ふんわりとクラウドを包むだけだった逞しい両腕は、たちまちクラウドを捕らえる情愛深い鎖となった。
「…っ」
驚いたクラウドが暴れようともがく。
力の差が歴然としているために、クラウドの抵抗はじゃれているのと同じだった。
むしろその怯えが愛らしい。
セフィロスは片手だけでクラウドを支えると、空いた手で尖った顎を捕らえる。
そして唇を合わせた。
それはキスと呼ぶには生々しい口接。クラウドのふっくらした唇はまだ誰の愛撫も知らない無垢だ。
その無垢をセフィロスの唇が侵攻していく。
唇を吸いながらしゃぶる。薄く開いた唇にセフィロスは唾液を注ぎ込んだ。
たまらずにクラウドの喉が動く。セフィロスの注ぎ込んだ唾液を飲んでいる。
ソルジャーの精液と血液はセトラの糧。それ以外にもソルジャーの唾液もエナジーとして、セトラは喰らうことが出来るのだ。
精液や血液と比べると唾液のエナジー成分は低いものの、それでもセトラの糧への本能を促すのには充分な呼び水である。
クラウドは人として育てられていたのだと言う。
セトラであった父親は、どうやら狩られたようだ。生まれ立てのクラウドと人であった妻を残して、星の循環の旅に出て、そのまま戻らなかった。
どんなに狩られると解っていても、その危険性を無視しても、ソルジャーを得ていないセトラは、星の為に旅をしなければならない。
クラウドの父もそんなセトラの宿命には、あらがえなかったのだ。
クラウドの父が戻ってこなくなり、セトラを崇める村人は、クラウドを護ることに決める。
村全体でクラウドを囲うように庇護して、ただの人の少年としてクラウドに刷り込んだ。
自分が人だと信じ込んでいたクラウドのセトラの本能は、無意識下の奥底ですっかりと眠り込んでいた。
それを、エアリスが己の血を与えることによって、意識下にまで押し上げたのだ。
あとは、覚醒するのみ。

セフィロスは舌を深く差し込みながら、己の唾液を与え続ける。
初めは口内に注がれた唾液が苦しくて、仕方なく飲み込んでいたクラウドだったが、そのうちにセトラの本能が発動してきた。
自ら求め、差し込まれたセフィロスの舌に吸い付いてくる。
自分のものとは違う、柔らかな舌が絡みついてくるのにセフィロスは歓ぶ。まるでねだるようだ。
舌と舌を絡みつかせるだけでは物足りなくなったのだろう。
ついにクラウドは、唇全体でセフィロスの舌を吸う。それはまるで疑似セックス。口と口で行う挿入である。
――そろそろ頃合いか。
唾液だけではとうてい物足りないだろう。
愛しい少年に己の体液を分け与えるばく、セフィロスは名残惜しく、それでいて次のステップへの期待をはち切れんばかりにしながら、舌を引っ込める。
「…あ」
離れていくセフィロスにクラウドは無意識のまま縋り付く。
言葉にこそならないが、少年の表情はあからさまに恍惚としている。
――なんで離れるの。
――もっとちょうだい。
淫らなのにあどけないクラウドの仕草に、セフィロスの肉体は激しく反応する。
セフィロスは縋り付くクラウドの前で、引き裂くように己の服を脱いだ。
美麗すぎる顔、明晰すぎる頭を支える身体は、そのどちらにも劣らない完成された男の象徴である。
広い肩幅から分厚い胸板へ。腹はきれいに腹筋が割れている。腰は引き締まりくっきりと浮き出た腰骨から尻へのラインは絶妙であった。
そして――隆々とそびえ立つペニス。
クラウドの無垢なる媚態にすっかりと興奮したペニスは、すでに天に向かって勃起している。
セフィロスの身体の中心にそびえるペニスは、美麗すぎる彼の身体の中で唯一肉という欲望を剥き出しにした器官であった。
セフィロスは少年に見せつけるべく、ペニスを握りしめる。
奥深くにかいま見えるだけだった睾丸がはっきりと現れた。すでに睾丸も通常よりも硬くなり膨れあがっている。
睾丸は精液を製造する場所。クラウドの青い眼差しはより一層淫らになり、セフィロスの股間から目が離せない。
全身が震える。とうとう立っていられなくなり、クラウドは力無く床に座り込んでしまった。
頭の中はぐちゃぐちゃだ。
セフィロスのペニスと睾丸のことだけしか、考えられない。
――ああ…
――大きい。
そしてあのふくれた睾丸。
あそこにはどれだけの精液が詰まっていることやら。
――おちんちん…すごい。
村を離れここに来てから、ずっとセフィロスは優しかった。
クラウドだけを見つめて、クラウドだけに惜しみない愛情を注いでくれる。
クラウドはセフィロスが大好きだ。誰よりもきれいで強くて格好イイ。
セフィロスのやることならば、クラウドにとっての間違いにはならないと、素直に信じていられるくらいに。
大好きなセフィロスにペニスを突きつけられても、クラウドはそれがきっと正しいのだろうと信じており、反抗する気も、ましてや気持ち悪いと軽蔑する気も湧いてこない。

「見なさい。クラウド」
セフィロスは己のペニスを、ぼうっとしゃがみ込んでいるクラウドにつきつける。
太く逞しい長大なペニスは、すっかりと怒張しているため、凶器のようにグロテスクであった。
血管が浮き出て亀頭は充血している。
童貞であるクラウドなのに、怖いとは思わなかった。
吸い付くように視線が離れない。
――欲しい!
クラウドに芽生えたのは激しい衝動。
――食べたい!
――美味しそうだ。
太くて、てらてら光っている。
血管が浮き出て動いている。そしてあの膨れあがった亀頭。
ふらふらとクラウドの身体が揺れた。
糧を前にした本能がクラウドを動かそうとしている。
「さあ、クラウド。喰らうがいい」
「これはお前だけのごちそうだ」
「僕が……食べていいの?」
「そうだ。牙を立てて血を吸うがいい」
「熱くて濃い精液をお前に注ぎ込んでやろう」
クラウドは弾けた。セトラの糧を求める本能だけに支配される。
小さな手でいきり立つペニスを持つと、躊躇いもなく唇を寄せたのだ。
セフィロスのペニスは長大すぎて、クラウドの小さな口にはとても入りきらない。
クラウドの小さな手はペニスの竿をさすり、口を最大限にまで開いて亀頭にしゃぶりつく。
舌を突き出すと、ぺろぺろと舐め回した。
小さな口。花弁のように淡い唇が己の醜いほどに興奮しきった怒張を飲み込むべく開く。
ピンクの舌がペニスに戯れるたびに、セフィロスはかつてない快感に呻いた。
「クラウド…」
無垢な青い眼差しは快感に煙るようだ。
その視線だけでセフィロスは射精してしまいそうになる。
「ああん…美味しいよ…」
「旨いか…」
「セフィロスのおちんちん、美味しい」
たまらなかった。
セフィロスはこの淫らな一言で、耐えきれなくなる。
クラウドの小さな金色の頭を固定すると、汚れを知らなかった口に己の怒張を突っ込んだ。
「うう、――あぁ」
壮絶な快感であった。セフィロスはクラウドの口に精を注ぎ込む。
だがその間も視線はクラウドからそらさない。無垢なる少年がうっとりとした面もちで、口内に放たれる己の精液を飲み干していく様子を愛でた。
クラウドは夢中で精液を啜っている。これがセトラの本能なのだろう。やはり精液はセトラの大切な糧なのだ。
粘つく生臭い白濁液を、クラウドは歓んで啜る。
かなり大量の精液を啜ったのに、それでもまだクラウドは足りない。
名残惜しく射精したばかりのペニスを舐め回す。性器の独独の臭いでさえ、クラウドを夢中にさせるエッセンスにしかならない。
「これ、大好き」
怒張を愛しげに頬ずりまでするクラウドに、セフィロスの勃起は萎えない。
一層大きくはしたなく膨らむ。
「嬉しい。またセフィロスのおちんちんが大きくなった」
「クラウド…」
――なんと淫らで可愛い。俺のセトラ。
エアリスとしか交わりたくないというザックスの気持ちが痛いほど解る。
クラウドに向ける大きな愛情が、更にセフィロスのペニスを逞しくしていくのだ。
「もっと飲ませてぇ」
「ああ…もっと飲ませてやる」
クラウド。
「次は牙を立ててみろ」
――え?
「血を吸ってくれ」
「お前の牙を突き刺してくれ」
「…――痛くないの?」
「痛みなどない」
「セトラの牙は快感なのだ」
クラウドの真っ白な指が、セフィロスのペニスに浮き出ている血管を撫でる。
――そうだ。
――それでいいのだ、クラウド。
「今触っているところを囓ってみなさい」
「ココ…――?」
「そうだ。そこだ」
セフィロスの怒張は巨大すぎて、クラウドの小さな口では飲み込むことなど出来ない。
ちょうど竿の部分にあたる血管にかじり付くために、クラウドは横笛を吹くようにして、象牙色の歯をあてた。
どくり――歯から怒張に走る血管の鼓動が伝わってくる。
激しく熱い血潮を実感して、クラウドの牙が伸びた。
そしてそのまま、血管に牙を立てる。
「ぐうぅむ!」
クラウドの牙が血管を破る。その感覚にセフィロスは痛みを伴う麻薬のような快感に翻弄されてしまう。
セフィロスはこれまで幾人ものセトラにエナジーを与えてきた。
ソルジャーにとってセトラは媚薬だ。
だが、これほどまでに強烈な快感は知らない。
吹き出す血を吸われるのと同時にこみあがってくる射精感に、セフィロスはかろうじて堪えるが、快感は次々と襲ってくる。
クラウドがペニス全体に牙を立て始めたからだ。噛んで吸って、歯形をつけて、すぐに別の血管にかみつく。
長い竿を噛みまくりすっかりと血だらけにしてしまうと、クラウドは最後に亀頭を狙う。
小さな牙がセフィロスの尿道口を串刺しにする。
肉を切り開かれる痛みと、上回る快美。これにはさしものセフィロスも堪えきれない。
「おおおおおう」
大きく吠えると、セフィロスは腰が抜ける勢いで射精したのだ。
尿道口から血と精液がおびただしく溢れ、クラウドの口に勢いよく注ぎ込まれる。
恍惚とした青い眼差しのままで、クラウドは淫らな赤と白を喉を鳴らして飲み干した。
※※※
今回はここまで。
残りは本番シーンとなります。

ついつい考えてしまうコト:
一人全裸となってショタクラウドの前に、おのれのブツを突きつけて悦にいるセフィロスってどうよ!
立派な変態でんがな。


+ '08年07月13日(SUN) ... ちょっと寄り道〜赤と白 +

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金銀の寄り道で思いつきました。
ある意味吸血鬼ネタだけど、金銀とは関係ない世界観です。
全体的にエログロ。
後半は特にその傾向が強くなります。
今回は前半だけで説明文みたいなもの。
セフィクラ。ショタ警戒警報、特に後半発令。
スルースキルをあげて、さあどうぞ。

※※※
永遠の忠誠を誓うセトラの女王、エアリスの帰還の知らせにセフィロスは動きを止める。
鍛錬に振るっていた愛刀を、滑るように鞘へと戻すと、無言のまま女王の元へと向かう。
セフィロスはソルジャーだ。しかも1st、2nd、3rdとランクづけされているソルジャーのトップ。
永遠にセトラへと仕えるべき存在であるセフィロスだが、彼は女王の騎士であるロマンチシズムとは無縁の男であった。
月光のような銀髪に縦に裂けた翠の瞳。美麗すぎる容貌を支えるのは、一際高い長身にしなやかで逞しい戦士の身体。
彼はセトラを護るためのソルジャーなのだ。

セトラとはこの星に生きる最も古い種族である。
星の声を聞き自然を愛して、この星を豊かにしてきたのはセトラだ。
そういう意味ではセトラはこの星の守り手であり、光の存在であるともいえよう。
だが強い光は強い闇を産む。反剋。ネガとポジ。
光と闇は反するものにも思えるが、その実背中合わせに立っているだけのひとつなのだ。
セトラとは闇の存在でもあったのだ。
いわく――糧。
セトラは普通の食事を摂らない。
セトラのエネルギーは精気〜エナジー〜である。
自分たちが育てた花や木々、そして人からセトラはエナジーを吸って己の糧とするのだ。
エナジーとは生物の体内に循環するライフストリームである。
手や唇で触れただけでもエナジーは摂取出来るが、セトラが好む濃厚なエナジーは精液と血液からであった。

またセトラは非常に長命である。エナジーを糧としているからなのか、そもそも寿命というものがないのだ。
マテリアを扱い魔法もよく出来、病からも老いからも無縁のセトラであったが、だからと言って敵がないのでもない。死とも無縁ではない。
まずセトラはモンスターから狙われていた。食物としてのセトラが人や動物よりも美味であるのもあろうが、星の正規の循環から外れたいびつな存在であるモンスターにとって、星のライフストリームを正常にさせるセトラはやはり敵なのだろう。
モンスターはセトラを選んで襲い、髪の一筋までも好んで喰らった。
だがモンスターと敵対しているものは、この星のほとんど全てである。セトラにとってモンスターは驚異ではない。
魔法により身を守る術を心得ているセトラが、モンスターに喰われることはほとんどないのだ。
それよりも遙かに驚異の敵は残念かな一部の人間であった。
セトラの卓越した能力を前に、人間の反応は大きくふたつに分かれる。
敬意をもつ者と悪意とする者だ。
前者はセトラを崇めた奉ってきた。神と同じだけの神聖な存在であると考えたのだ。
それに比べ後者は惨いものである。彼らはまずセトラの能力をねたみ羨んだ。
そうしてどうにかしてセトラの能力を我が物にできないかと考えたのである。
セトラの能力はあくまでも血統の成せる業。そうだと解っていても人は諦めなかった。
彼らは集団となりセトラを狩る。偽りの優しさでセトラをおびき寄せ、捕らえると様々な実験を施したのだ。
ある者は不老不死を求め。ある者は魔法を求める。
だがそのどちらも帰結するところは、セトラの虐殺でしかなかった。
セトラがエナジーを糧とすると解っていたからなのか、セトラの能力が普通の方法ではどうやっても我が物にならないと悟ると、人はセトラの生き血を飲み干し肉を喰ったのだ。
まるでモンスターのように。
長寿ということは生殖能力が低いということ。元々個体数の少なかったセトラだったが、長い間人に狩られてしまい、種族としてはほぼ滅亡状態となる。
星はこの事態を深く憂いた。
星にはセトラが必要だったのだ。セトラだけが星の声を聞き、星を正常に機能させることが出来る唯一。
星はセトラを護るべくジェノバと呼ばれている、全く異質の生命体を呼んだ。
そしてジェノバと星は交わり、ソルジャーを生み出す。
セトラの為だけの最強の戦士。セトラの血統だけに忠誠を誓う不滅の騎士を。
ソルジャーの出現によって、セトラは絶滅の危機から救われる。

だがこの星に散らばるセトラの個体数はまだまだ少ない。
現在セトラを納めているのはエアリスという。セトラの証ともなる栗色の髪と緑の瞳を持つ少女だ。
もっとも少女なのはあくまでも外見だけのこと。
人の年齢で当てはめたとするならば、エアリスはすでに人の数世代分は有に生きている。
ある時エアリスはこう言ったのだ。
――セトラ、見つけた。
と。
エアリスは優秀な魔導師だ。特に白魔法はセトラ随一である。
だがそうだと解っていても、セフィロスはエアリスの言葉をまず疑った。
セトラの血統は太古から管理されている。セトラの能力はセトラの血統しか出ないため、セトラと他の種族〜人間だが〜の血が交わらないようにされてきたのだ。
ソルジャーにとってセトラの護衛と共に、血統の管理も重要な使命のひとつ。
よってソルジャートップであるセフィロスは、セトラの血統については全て知り尽くしている筈なのに…
――でも、いたの。
――わかるの。
エアリスはこの意見を曲げなかった。
挙げ句の果てにソルジャーの供を一人だけ連れて、そのセトラを迎えに出ていってしまったのだ。
そして、今日、この忘らるる都にやっと戻ってきたと言う。

エアリスが呼びつけてきたのは公式の間ではなく、客間であった。
エアリスの私室にも近いその客間は、外交上の賓客だけではなく本当に近しい者を泊める場所である。
このことからも連れて帰ってきたというセトラにエアリスがどれほど大きな期待をかけているのがわかるというもの。
エアリスがセトラだと認めているのだから、連れ帰ってきた者がセトラなのは間違いない。
だがだからこそセフィロスはその者について詳しく知らねばならない。
セフィロスが静かにノックすると、応答はすぐにあった。
「どうぞ」
エアリスだ。
重々しいドアを開けるとまずこの客間のリビングが広がっている。
この星の自然をこよなく愛するセトラの住む場所は、どこも共通点があった。それは自然物をふんだんに取り込んで、加工の手をあまり加えないことだ。
この客間もそうだった。
太古は海であった忘らるる都のエアリスが住むこの城は、海の生物が結晶化した貝の形をしている。
内部も鉄やコンクリートではなく、驚くほど丈夫で耐久性と魔法防御に優れた海の生物の化石で出来ていた。
部屋の窓枠から滑るように張り出している部分が、そのままリビングのテーブルとなっている。カーテンなどの布類も色調を合わせた淡く白く青い海の色。
どこまでも淡い海の世界の中で、女王エアリスは立っていた。
セトラという種は元来素朴で純真だ。それは容姿にも現れている。
エアリスは年若い娘の姿をしている。女王として身に付いた気品と威厳は滲むものの、外見だけしてみればただの可愛らしい娘としか映らないだろう。
単純な美醜だけで計るならば、セフィロスの方がエアリスよりも遙かに美しい。
それでもやはりエアリスはセトラの女王だ。セトラに忠誠を誓うという本能が、セフィロスを惹き付けてやまない。精神的なものだけではなく、肉体的にも、だ。

星はソルジャーを創造する際、セトラとソルジャーが運命を共にするべく、ある仕掛けを施した。これによってどれだけ狩られようが、人との接触をしてしまうセトラの弱味を克服したと言えよう。
すなわちセトラの糧の問題である。
セトラはエナジーを糧とする。生物からでもエナジーは搾取出来るが、もっとも好む濃厚なエナジーは精液と血液。それは人の精液と血液なのだ。
セトラは美味なる糧を入手するべく、人と肉体的な交わりを持つ。
セックスの最中にセトラは人に牙を立てるのだ。セトラにエナジーを搾取されるのは、すさまじい快感を人にもたらす。それはどのようなセックスでも到達できない、精神と肉体が感じられる最高の極致なのだ。
陶酔の最高潮に押しやられ、人は血液だけではなく精液をセトラに捧げる。
人とは快楽に弱い。セトラ狩りが広まったのも、このセトラでしか為し得ない最高の極致を欲したのも一因であろう。
またセトラも狩られると解っていながらも、糧を求め人と交わることになる。
どれだけ強い魔力を有していようが、セックスの際にはセトラとて無防備となってしまう。ここを人に狩られてきたのだ。
星はセトラの糧となる運命をソルジャーに与えたのだ。ソルジャーの精液と血液はセトラにとってのごちそう。
またセトラという種自体が、ソルジャーにとっての媚薬とした。
よってセトラは数多くのソルジャーと交わり、糧を得る。
ソルジャーも求められれば歓んでセトラと交わってきた。
需要と供給の関係はあくまでも情が介在しないシビアなもので、多くのセトラは特定のソルジャーを指定せずに、食事を日替わりに楽しむように数多くのソルジャーと交わっている。
セトラにとってソルジャーとは、あくまでも下僕なのだ。
同様にソルジャーにとってもセトラとは、仕えるべく主でしかなく、特定の誰に忠誠を誓うのではなく、セトラという種自体に仕えてきた。
特にセトラの数が減ってしまってからは、セトラはソルジャー皆の共有財産であるのだが――例外とはどこにでもあること。


セフィロスは例外の片割れである女王へと頭を垂れる。
セフィロスの苦々しい心中など見通しているエアリスは、殊更純真そうな笑顔を作って応じた。
「ただいま、セフィロス」
「ご無事のお戻り、なによりです」
セフィロスのフラットすぎる態度に、エアリスは心中舌を出す。
――きっと驚くヨ。
この鉄面皮なセフィロスが、どれほど驚喜するか。
想像するだけでエアリスは楽しくてたまらない。
「エアリス様。セトラを連れ帰ってきたと聞きましたが」
「うん。そうだヨ」
「わたしの血を与えたから、今は眠ったままなの」
「エアリス様の血をお与えになったのですか」
うん。
「だってあの子、ずっと人間として育てられてきたんだもの」
セトラを敬虔に信仰している山奥の小さな村に隠されていた少年。
彼はセトラの血統を強く引きながらも、人として生きていたのだ。
セトラ狩りを知った周囲から、人として育てられることで護られてきたのだ。
少年は自分がセトラであることは知らずにいた。
そこにエアリスが現れたのだ。少年を護ることに不安を抱えていた村人は、エアリスの登場に安堵し、女王に少年を託す。
だがセトラであることすら自覚のなかった少年には、この状況の変化についていけない。
そこでまずエアリスは、もっとも濃い己の血を少年に与えたのだ。セトラとしての覚醒を促すべく。
血を与えた時、エアリスは見た。
「あの子、わたしと同じ」
セフィロスが翠の目を細める。
「わたしと同じ、ハーフセトラだヨ」
セトラと人が恋に落ちることは、ままある。
エアリスもそうだった。母イファルナは人である父ガストと恋に落ちる。
セトラと人の混血は生まれないとされているのだが、その実稀に、天文学的な確率、つまり奇跡の確率で出来ることがあるのだ。
エアリスもそうであった。出来ないとされていたガストの子供をイファルナは身籠もる。
そしてエアリスが生まれた。
セトラと人との混血は素晴らしく高い能力を有している。
エアリスは生まれながらに強い魔力を持ち、セトラの女王となったのだ。
セフィロスもむろんこの事実を知っている。
「――それでは…お連れになったセトラも…」
「わたしと同じか、もっと強い力を持っているのヨ」
「しかも、あの子、男の子だしネ」
「男…――」
セフィロスの鉄面皮が崩れる。
セトラはどうしてだか、男に恵まれない種なのだ。男と女の比率がアンバランスで、女200に対して男1。ただでさえ子供に恵まれないというのに、これではどうしようもない。
セトラの種が衰退する大きな内因であったのだ。
「男の…ハーフセトラが――」
「すごいでしょ」
「…はい」
セフィロスは未だ夢がさめやらぬ面もちだ。こんな顔のセフィロスを、エアリスは初めてみる。
――あの子を見たら、セフィロスもっと驚くヨ。
「寝室で眠ってるから、見に行けば」
「良いのでしょうか」
「ザックスが側にいるから、彼と交代してくれれば助かるヨ」
ザックスはエアリスだけのソルジャーなのだから、出来れば他のセトラの側には置きたくはない。
「わかりました。では失礼いたします」
「あの子、目覚めたら教えてね」
「はい」
長い足を早く動かして、セフィロスはあっという間に寝室に向かっていった。
突進、とも言えるその行動に、エアリスはついに笑いが堪えきれなくなってしまったのだ。

寝室には天蓋のついた大きなベッドがひとつだけある。
このベッドも天蓋も、すべて淡く白く青い海の色だ。
セフィロスが入室すると、天蓋の内側から一人のソルジャーが出てきた。
ソルジャーザックス。女王エアリスの例外。
彼はソルジャーでありながら、エアリスとしか交わらない。またエアリスもザックスの血しか吸わない。
セトラとソルジャーでありながら、彼らは恋仲。例外なのだ。
セフィロスに上背こそ劣るが、逞しさは遜色ない。実力もかなりのもので、魔法を使わない戦闘だけならば、セフィロスをもしのぐ。
「よお」
気安い態度のザックスなど今のセフィロスの眼中にはなかった。
「お姫様はまだお休みだぜ」
「姫様…?」
「男だと聞いたが…」
「そーそー。確かに男の子だな」
でもな、
「エアリスよりもずっとお姫様みたいなんだよなあ」
ま、見てみろって。
ザックスは天蓋をめくると、セフィロスをベッドの側へと導いた。
大きなベッドの中央で、すやすやと眠っているその姿を認めて、セフィロスは衝撃に打たれる。
――これは!?
透き通る白い肌。血管や骨でさえ透けてしまいそうだ。
ふっくらしたバラ色の頬に、花弁のような淡い唇。眠っているというのにその繊細な容貌は疑いようのない美であった。
産毛の一本一本までもがかぐわしい。
セトラはこんな隅々まで、こんなにきれいに出来てはいないのに。
男でもなく、女でもない。名前を付けることさえ出来ない。そんなとても特別な何かに思えた。
ただ大きな目にびっしりと生えている長いまつげも、作り物のようにととのった眉も、なによりも髪も、どれもセトラにはあり得ない色、金だったのだ。
セフィロスは無意識のうちに身を乗り出してしまう。
そんなセフィロスの行動などザックスにとっては当然であった。
セフィロスの驚愕はザックスの驚愕でもある。ザックスとて初めてこの少年を目にした時、驚きで死ぬかと思うほどの衝撃を受けたのだから。
少年の外見はセトラとは似てもにつかずに、きれいだ。
それなのに彼は確かにセトラなのだ。ソルジャーが永遠の忠誠を誓っている媚薬、セトラを間違える筈などない。
だがそれでもしばらくは信じられなかったのだから。
「目の色もスッゲーぜ」
ザックスは一拍おいて、
「緑じゃねえ。――青だ」
「青みがかった緑じゃねえ。緑がかった青でもない。本物の、濁りのない青だった」
それはそれは美しい、青。
「そのような…セトラなのに」
信じられないとセフィロスは力無く首を振る。
「ハーフセトラだからか知らねえが、この子は特別だな」
すやすやと眠る少年。年の頃は10代半ばだろうか。もっともセトラだ。外見と実年齢がイコールであるとは言えないが。
「エアリスに血を与えられたからすぐに眠ちまったから、俺もあんまり動いてるとこ見てねえが――」
ザックスはこの男にしては珍しくこっそりと、
「怯えてる様子なんか、めちゃくちゃ可愛かったゼ」
エアリスに血を与えられた瞬間の少年の様子は、舐め回したいくらい壮絶に愛らしかった。びくびくと震えすっかりと怯えて、それでも最後はセトラの本能によって、血を吸ってしまう。エアリスの例外であるザックスでさえ、惑わされそうになったくらい、この子は強烈な媚薬である。
「ザックス、――お前…」
「これ、エアリスには内緒な」
ザックスはそう言うと、少年の額に掛かった金髪を指先で払う。
セフィロスはそんなザックスの行動に強い不快感を覚えた。手でむんずとザックスの手首を捕まえると、彼が文句を言うよりも先に、
「気安く触れるな」
「なんで?セトラはソルジャーみんなの大切な主だろ」
確かにザックスの意見は正しいのだが、この少年に限りセフィロスはその理屈を認めることなど出来ない。
「触るな。お前はエアリスでも好きなだけ触っていろ」
「ええー!触るくらいいいだろ」
「なにもセックスするって言ってるんじゃないんだし」
「それでも駄目だ。この子は俺が面倒をみる」
「おいおい!それは聞き捨てならねえな」
ザックスが言葉を続けようとしたその時、不意に寝室を流れている風が変わる。
ソルジャー二人はぴたりと言い合いを止めると、眼差しをベッドへと向けた。
少年の薄い瞼が揺れる。
そしてゆっくりと目が開いていく。
ザックスの言う以上に美しい、それは生まれたての青であった。
※※※
あんまり長くしないように、次くらいでおしまいです。


+ '08年07月12日(SAT) ... 金銀Bその9 +

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こんばんは、びーこです。
続きです。

※※※
村の集会場はそう立派なものではない。
クラウドやティファが生まれるよりもかなり前に造られた集会場は、簡素だが村人全員が集まれるだけの広さは充分にあった。
木と石の組み合わせで出来た造りは、村にある他の家の大差はない。
ただそれでも有事に備えて、家よりは頑丈に造られてはあった。
この場合想定されていた有事とは、主にモンスターの来襲を指す。
過去幾度か、ニブルヘイムはモンスターの驚異に晒されたことがあったのだ。
数百年に一度やってくる大寒波の年のこと。あまりにも寒すぎて、獲物が捕れなくなったモンスターの群が村を襲ってきたのだ。
そういう時、村人はこの集会場に立てこもり、モンスターと対抗したのだと言う。
だがそれも遠い昔の話し。
今生きている村人達で、そんな昔話を体験した者はいない。
ましてや誰が闇の一族と闘うなど想像したであろうか。
辺境の小さな村でしかないニブルヘイムなのに、今正に人知を越えた異常事態が起ころうとしているなどと。

クラウドやティファが飛び込んだ時、すでに集会場には村人のほとんどが集まっていた。
元から集会場にいた大人達の他にも、家で待っていた老人や子供も、クラウドやティファのように迎えによって連れてこられていたのだ。
皆着の身着のままの格好で、一塊りとなっている。
「ティファ!」
村長ロックハートは、愛娘の姿を認めて駆け寄ってきた。
気の強いティファも父に向かって素直に飛びつく。村で一番逞しい大柄の父に抱きしめられて、ティファの姿はすっかりと見えなくなってしまう。
父と娘は短いが充分に親愛のこもった抱擁を交わしていた。
その光景を前に、クラウドはずっと無意識に詰めていた息を吐く。
「クラウド……」
集会場の一角に備え付けられている台所から、ストライフ夫人が顔を覗かせてきた。
どうやら他の主婦達と共に、台所で作業を行っていたらしい。
ゆったりとした簡素な服の上につけたエプロンはいつもの見慣れたもので、クラウドはこんな時なのに酷く安心してしまう。
「…母さん」
小走りでやってくる息子を母は柔らかく抱き取ってくれた。
こうして見てみると、ストライフ母子はよく似ている。
混じりけのない見事な金髪も、他の村人とは違う透き通る白い肌も、そして不思議なほどに澄み切った青い瞳も。どれをとってもこんな辺鄙な村には似つかわしくない容姿だ。
クラウドの父が何者なのか村の者は誰も知らない。
そもそも母ストライフ夫人の父、クラウドから言えば祖父が何者であるのかも、村の者は知らないのだ。
クラウドの祖母は村の者で、彼女は村人と代わらない容姿の持ち主であったのだから、クラウド母子は身も知らない祖父の血を強く引いているのだろう。
自分の父が何者か知らないで育った少女は、皮肉なことに自身も同じように父の知らない息子を産んだのだ。
それでも村人はストライフ夫人が、クラウドの父である人物をまだ想っているのだけは、よくわかっていた。
今から約13年ほど前、ストライフ夫人は独り身籠もった状態でこの故郷の村に戻ってきたのだが、身重でも良いからと彼女に求婚する男は村の内外を問わずに数多くいた。
どんな良い条件の求婚であろうと、彼女は決して首を縦に振らないまま、クラウドを産み落としたのだ。
辺境の狭い村の世界の中で、これといった確たる後ろ盾のないストライフ母子は、口さがない村人達に心ない仕打ちも受けてきたが、ストライフ夫人は常に堂々と暮らしてきた。
その姿は知らず知らずのうちに、村にはびこる偏見を和らげてきたのだ。
よってストライフ母子は、村人達の中では浮いた存在ではあるものの、爪弾きにされてはいない。むしろ一目置かれた立場となっているのだ。
クラウドにとって親しいと呼べる友人はティファしかいないが、それは決して他の子供達がクラウドを私生児だと嫌っているからではない。
自分たちのがさつな手で触れてしまえば、今にも汚してしまいそうな、そんな容姿のクラウドにどう接して良いのか解らなかっただけなのだ。
ティファのように近づきたいものの、どうしても側には近寄れず、距離をとった場所から様子を窺うしか出来なかった。

この場もそうであった。
村人達はよく似た奇麗な母子が行っている、村長親子に比べると控えめな抱擁を盗み見るしか出来ないでいる。
ストライフ夫人は美しい顔を息子へと近づける。
「ケガはないわね、クラウド」
「うん」
「ティファと二人きりで怖かったでしょうね」
でもね、
「もう心配はいらないわ」
「助けてくれる人がやってくるまで、ここでみんなで過ごしましょうね」
ストライフ夫人はそっと息子の細い肩を抱く。
いきなりあのようなおぞましいものが、空から現れたのだ。ティファと二人きりで家にいたクラウドは、さぞや恐ろしい思いをしたのに違いないが、少なくとも今確かめる限りでは、クラウドの心に大きなダメージはない。
ストライフ夫人は、そんな息子を頼もしく感じる。
――やはりこの子も男なのだわ。
自分の産み育てた息子が頼もしく感じられるのは、誇りである。
ストライフ夫人は、クラウドに役目を与えることにした。
彼女はほっそりした身をかがめ、息子に話しかける。
「クラウド――」
集会場の隅に集まっている、老人とクラウドよりも幼い子供を指し示す。
「あの人達のお世話を手伝ってくれないかしら」
聡明な青い眼差しが、母をひたりとみあげる。
「何をすればいいの?」
「食事の支度をするから、運んであげてほしいの。その他にも身の回りのこととか、何かお困りだったら力になってあげてちょうだい」
このような異常事態の中においても、表面上はいつもの日常と変わらない母の様子に、クラウドにも余裕が生まれてくる。
もっとも余裕と言っても本当のものではない。
開き直りに例えた方が正しいのだろうが、これまでの人生において、村の社会から常に浮いてきたこの母子は、村人の誰よりも日常への依存度が低いのだ。
異常事態や突発事態に対応する能力が高い。
このことは母の精神を強靱にし、息子を年齢以上に賢くさせてきた。
今回もそうだ。クラウドは控えめながら聡明な眼差しを、不安に怯える村人に向けてから、
「わかった。何でも手伝うよ」
「そう、ありがとう。クラウド」
母の優しい手が奔放な息子の金髪を優しく撫でていく。

母の信頼を得てうっとりするクラウドに、ティファは見守るだけではいられなくなる。
父の抱擁を抜け出して、クラウドの側に近づく。
この時のティファの心中は、とても複雑であった。もちろん自身にすらその正確なところは把握出来ていない。
彼女はクラウド母子の絆に嫉妬もしている。自分がどんなことをしても、クラウドをこんなにうっとりなどさせられない。
自分こそがクラウドの一番でありたいのに――ここから根ざすストライフ夫人への悋気。
自分と同じ片親でありながらも、自分と父の間の絆とはまた別である強い結びつきに対する不快感。
また母にならば容易く全てを明け渡してしまう、クラウドへの苛立ち。
同じ片親の関係といえども、父と娘のと母と息子の関係はやはり違っている。
個人差はあれども、女の子が早く大人になって精神的に父親から独立してしまうのに引き替え、母と息子の結びつきは一種の疑似恋愛でもある。
まだ幼いながらもティファの“女”の部分が、ストライフ母子を妬ましく思わせるのだ。
ティファ自身、まだ定かではないものの。
ティファは生来の勝ち気さを全面に押し出して、クラウドを呼ぶ。
「クラウド――」
――こっちを向いて。私を見て。
ティファの思いは伝わった。
クラウドは母から幼なじみへと視線を移す。
こんな異常事態での父との再会でさすがのティファも気が緩んだのだろう。大きな黒い眼差しはいつもより濡れていた。
「私も手伝うわ」
「無理しなくてもいいんだよ」
あくまでもクラウドはティファに優しい。
だが今回はこの優しさが他人行儀に感じられて、ティファはもどかしかった。
「ううん。無理なんかしてないの」
それに、
「何かしていないとかえって落ち着かなくて…――」
それが、怖いの。と続けて口に出すことはティファには出来なかった。
口に出して形にしてしまえば、全てが現実になってしまいそうだったから。
こんなティファの怯えをクラウドはくみ取ってしまう。
「そうだね。ティファと一緒なら僕も助かるよ」
母の側から離れ、クラウドはティファに寄り添う。
※※※
今回はここまで。

みなさま、良い日曜を!


+ '08年07月09日(WED) ... 金銀Bその8 +

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こんばんは、びーこです。
♪、毎回押してくださってありがとうございます。
読んでいただけた印ですね。
嬉しいです。

注意:ちょっとグロっぽい表現あり。

※※※
魂が吸い込まれたように、一心にこの異様な縄を見つめていたクラウドの手に、不意に痛みが走る。
原因はティファだった。彼女がクラウドの手をきつく握りしめながら、小刻みに震えている。
彼女の眼差しは、灰色の不吉な雲を突き抜けて、降りてくるいびつな縄へと注がれていた。
大きく限界まで見開かれた黒い瞳は血走っている。目を背けたくとも、自分の意志では背けられないのだ。
こんなに禍々しい光景など、見たくもないのに。
闇の一族が絡み合い、血と肉で形作っている“縄”は、異質のまがまがしさで出来ている。
このまがまがしさは死すらでもない。
もっともっとおぞましいものだ。
クラウドやティファを初めとする、この星に生きる物では想像すら出来ないものだ。
凄惨で酸鼻なこの“縄”を編むのに、いったいどのくらいの数の一族がいるのか、クラウドには考えもつかない。
ただはっきりしているのは、ニブルヘイムの村はおろか、このエリア近辺に住む人々を全て集めても、これほどの縄は編めないだろうということだけだ。

おぞましさと恐怖に魅入られている幼い二人の目の前で、縄から枝がにょっきりと生えてきた。
遠目からでもわかる、ぬらりとした質感を持つ“枝”は、ぐるりと円の軌道を描くと、その先端を幼い二人の方向へと向けてくる。
と、いきなり枝の先端に“目”が生まれた。
初めは点の大きさでしかなかった目は、どんどんと巨大になる。ついには枝の先端全てが巨大な目となった。
――ひっ!
ティファが喉奥で息を詰めるのが伝わってくる。
悲鳴を発してしまわないのが不思議なくらいだ。さぞや思いっきり叫びたいだろう。
だが…もし叫んだとしたならば、大きな声を上げたとしたら、どうなるのか――
ティファがぎりぎりのところで耐えていられるのは、この恐怖のせいであったのだ。

巨大な目の巨大な眼球は、ぐりぐりと辺りを観察する。
観察しながら目は、再び様子を変えた。
巨大な目の中に、更に小さな疣のような目がわき上がってきたのだ。
巨大な目の中に出来た、ランダムな大きさの疣は、見る見るうちのその数を増やしていく。
「…――!」
手を握りしめてくるティファの爪がきつく立てられる。
そのうちの一本が、柔らかいクラウドの皮膚を破った。僅かではあるものの、血がじんわりと滲んでくる。
この血臭をかぎ取ったのか。巨大な目に宿る無数の疣となった目が、一斉にクラウドとティファを捕らえる。
最後に巨大な眼球もこちらを見た。
焦点が向けられて、確かに巨大な眼球はにたりと笑ったのだ。


巨大な眼球の内にある、疣のような無数の目。
ひしめきあったそれらの間から、粘液が滲み、垂れてきた。
いくつもの筋となった粘液は、ニブルヘイムの村に向かって垂れ下がってくる。
人の、いや、生き物の本能としてあらかじめ備わっている、原始的な嫌悪感を否応なく掻き立てる光景だ。
愛すべき故郷の土地が、今巨大な眼球から滲む粘液で汚されようとしている。しかもクラウドやティファは、この汚らわしい光景を凝視するしかなく、阻む術などもっていない。
ねちゃり、と垂れ下がってくる粘液だったが、ふと落ちてくる動きが止まり、そのまま滑るように横の方向へと流れてしまう。
それは一筋だけのことではない。ニブルヘイムを汚そうとしていた、全ての粘液がそうなのだ。
まるで目では見えない、村全体をすっぽりと覆う透明な何かに弾かれたかのように。
無数に落ちてくる粘液だったが、どれもその見えない何かにふさがれて、流れていってしまう。一滴たりとも村へは滴ってこない。
「…――ウソ…」
思わず声となったのだろう。
ティファが喘ぐように呟く。
これが合図となり、クラウドの脳裏にまともな思考が甦ってきた。
――なぜ?
――どうして?
――どうやったんだ?
悩むまでもない、答えなどひとつしかない。
――村の大人達だ!
毎夜集会を開いて戦いの準備をしてきたという大人達。
彼らがザンカンの力を借りて、この目に見えない仕掛けを用意したのだ。
「ティファ!」
「集会場へ行こう」
幼なじみの少年の言葉に、ティファも賛成する。
彼女も同じ考えに至っていたのだから。

安全な日常に囲われていた家から自ら出ていくのは勇気が必要だった。
二人は手をしっかりと繋ぎあい、気力を振り絞ってストライフ家のドアを開く。
禍々しい雲は上空を支配したままだ。この雲により、村が昼夜の区別を失ってから数日は経つ。
家を飛び出した瞬間から、二人はひしひしと感じていた。
あの眼球が、自分たちをじっと観察しているのを。
吐き気がしそうな恐怖を、繋いだ手の温もりで耐え、二人は気力を振り絞って走り続ける。
クラウドもティファも周囲を一切構わずに、集会場だけを目指す。
二人にはとてつもなく長い時間に感じたが、実際はほんの数分しか走っていなかっただろう。
必死な二人の耳に、唐突に聞き知っている声が飛び込んできた。
「おおい」
二人はハッと顔をあげ、声の方向へと向ける。
そこにいたのは村人の一人だ。狩猟の上手い初老の男で、クラウドやティファよりも年上の子供をもっている。
男は二人を見ると、安心したように手を差し伸べてきた。
どうやら彼は二人を迎えに来てくれたようだ。
そう言えば、とやっと辺りを気にしてみると、大人達がそれぞれの家に残っている子供たちを迎えにやってきているではないか。
迎えに来ているのは全て男で、しかも皆手に武器を携えている。
立ち止まってしまった二人を、彼はせき立てた。
「早く集会場に行くんだ」
二人の返事も聞かず、彼はクラウドの空いている方の手を掴む。
ティファのとは正反対の、大きくて分厚いがさついた手だ。
「いいか。走るぞ」
彼はそのままクラウドの手を掴んで走り出す。
大人の男の力に引きずられるようにして、二人は再び集会場へと向かって走り出した。
※※※


+ '08年07月05日(SAT) ... 金銀Bその7 +

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こんばんは、びーこです。

4日23時のRさま>
いつも素敵なコメントをありがとうございます。

では、続きです。
※※※
クラウドとティファ。二人の幼なじみの役回りは決まっていた。
ティファが話を多少強引に押し進めてしまい、早く結論を得たがるのに対し、クラウドはひとつひとつをじっくりと吟味していき、疑問を提示していく。
ティファだけでは、結論を急ぎすぎるあまりに、間違った答えを導き出すだろうし、クラウドだけならば吟味に時間がかかり考え込んでしまうだけで終わってしまう。
ちょうど二人で考えるのが一番なのかも知れない。
「だったら上位と下位の一族の姿は違うのかしら?」
「下位のはモンスターに似ているって言うよね」
だとすると、
「モンスターには似ていない…」
モンスターに似ていなければ――
二人の頭に同じ答えが浮かぶ。
「…人間――…」
こう口に出したのはティファだ。
だが音にしたティファはもとより、聞いているクラウドにも怖気が走った。
この怖気の根元を、二人の本能は考えることを避ける。
二人は推理を止め、口を閉じて互いを不安に窺う。
自然と二人の間隔は近づいていき、こっそりと肩がぶつかったそのタイミングで、音がした。
ばちん。
とも。
ぱちん。
とも。
目に見えない限界ぎりぎりにまで膨れあがっていた何かが、切れた合図であった。
“音”と行ったが、本当の聴覚で捕らえられる音ではない。
それはニブルヘイム一帯の大気を揺るがせる振動であった。
魔法や結界に詳しい者が聞いたならば、この音の正体はすぐに思い当たるだろう。
これは目では決して捕らえられない、魔力が造り出した“力場”が、更に大きな魔力によって、無理矢理引き千切られた証だったのだ。
これこそが闇の一族が作り出す地獄が始まる合図だった。


音ではない、“力場”となっている大気の破裂する振動を肌で感じたクラウドとティファは、何事が起こったのかとまず顔を見合わせる。
――あの雲だ!
二人が互いの顔から導き出した答えは同じであった。
ストライフ家の窓際に駆け寄ると、窓を開いて飛び出すように空を見上げる。
雲――幾重にも層を成した、禍々しい蛇を二人は仰ぎ見る。
この行動は本能であり反射でもあった。
この村で今何事かが起こるとすれば、この雲以外に異変の原因はないのだと、幼い二人にもわかっているのだ。
そしてこれは正しい。
仰ぎ見た雲は、それぞれの層が別の生き物のように、何重にも重なり合ってとぐろを巻いている。
よく見るとそのとぐろは動いていた。
巨大な蛇が獲物を締め上げるような残酷な緩慢さで、雲はじりじりと動いているのだ。
そして雲の中心部分らしきところが、徐々に口を開いている。
「…あっ――」
声を上げたのは、クラウドだったのかティファだったのか、それは本人たちにすら定かではない。
口は見る見るうちに大きく開いていくのだ。
虚無のような深淵が、こちらからもはっきりと窺える。
――来る!
予感などという生やさしいものではなかった。
これは絶対の確信である。
来る、と閃いてすぐ、口の虚無を通路として、何かが降りてくる。
それは巨大でいびつな縄に思えた。さらにじっと目を凝らしていると、いびつな縄に思えるものは、様々な何かが雑多に絡み合っているものだということに気がつく。
何かとは――青い目をいっぱいに、クラウドは息をのむ。
少しだけ遅れてティファもそれが何なのかがわかった。

それらは生き物であった。
いや、クラウドが知る“生き物”にはカテゴライズされないが、たぶん…生き物なのだろう。
この地上にある生き物とは似ていても非なるもの。もちろんモンスターとも全く別。一見似てはいても違う。
これこそが、この星に住む生き物とは根本から異なり別種である、闇の一族なのだ。
よく観察してみると、蛇に似ている一族もいる。モンスターのミッドガルズオルムを彷彿とさせるが、やはり根本がねじ曲がっていた。
あるいは狼に似ている一族も見える。カームファングに似ているようで、やはり明確に違う。
ドラゴンを思わせる一族。
昆虫を思わせる一族。
どこが手やら足やら、判別すら出来ない形の一族。
ともかくそれら全てが何の法則もなく捩れあい、共食いにも似た絡み合いを繰り返して、一本の太い縄を成しているのだ。
吐き気が込みあがってくるいびつな光景でありながらも、どうしてだか視線がそらせない。
※※※
毎日暑い日が続いています。
もう身体がとけそうです。


+ '08年07月02日(WED) ... 金銀Bその6 +

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続きです。

※※※
それから改めてティファの話を聞いてみたが、やはり大人達は戦いの準備をしているようだ。
詳しく聞けば聞くほど、そうとしか思えない。
そしてその相手こそ、予想通りの闇の一族であり、しかもどうやら一族のうちでも上位の階級ではないかと考えられた。
闇の一族〜吸血鬼〜といえども様々である。
文字通りに人の生き血やエナジーを吸い取り糧とするのは、闇の一族でもかなり上位の階級であるらしい。
下位に行けば行くほど、人ではなく獣の形をとる。糧も生き血やエナジーだけではなく、むしろ死肉を好むのだ。
クラウドが幼い頃から聞かされてきたのは、下位の一族達だった。
こいつらはいわばモンスターの亜種であるとも言えるだろう。よって戦う方法もモンスターのそれとそう変わりはない。
ニブルヘイムは辺境の地だけあって、レベルの高いモンスターが住んでいる地である。
村人達もモンスターとの戦い方は、よく心得ているのだ。
下位の一族相手に戦うのならば、夜ごとに大人達が集団で集まり、大勢でわざわざ準備をすることもない。
こう考えてみると、大人達が敵として想定しているのは、一族の上位であるとするのが自然だろう。
特にその目で実際に戦いの準備しているところを目撃したティファは、はっきりとこう言い切ったのだ。
「下位じゃないわ」
下等な獣の一族ではないのだと。
「だって下等の一族ならば、村のみんなが持っている装備で充分じゃないの」
「わざわざお師匠様がやってくるのもおかしいし、ましてやマテリアや装備を渡すのなんてヘンだわ」
下位の一族ならばよほど大量に襲いかかられるのでもない限り、村中が力を合わせさえすれば対処出来ないものでもない。
実際一族の下位と戦い、生きて帰ってきた者は幾人もいる。
ティファの父村長ロックハートともその一人だ。高名な武闘家の弟子であるロックハートは、彼の拳で幾たびもの危機を乗り越えてきたと言われている。
クラウドやティファは直接には知らないが、下位の一族と闘ったこともあるそうだ。
「じゃあ上位の一族が村に襲いかかってくるってコト!?」
――闇の一族の上位ってどんなだろうか…
上位に関する情報はほとんどなく、その姿形は記録には残っていないのだ。
誰もはっきりとは目にしたことのない上位の一族たち。闇の一族そのものが遠い遠い存在なのに、その上位ともなれば夢物語か恐ろしげなおとぎ話としか思えない。

首を傾げるクラウドの心中に、ティファも同じであるとばかりに代弁する。
「上位ってどんなのかしら?」
「ティファ、なにか知ってる?」
「知らないに決まっているでしょ」
クラウドは?
「僕も知らないよ…」
「――そうよねぇ……」
ティファは少女らしく可愛らしいため息を吐き、
「もしかしたら世界中の人たちのうちで、一人か二人くらいは会っているのかも知れないけど――」
「ニブルヘイムでは誰も会ったこともないもんね」
ニブルヘイムは本当に田舎なのだ。普段から親しく他の村との交流はない。
それはこの村を取り巻く自然環境のせいもあるだろう。
雪深く寒さに厳しいこの村では、冬がとても長い。
他の土地よりもずっと早くから冬がやってくると、村はすぐに雪で覆われてしまう。
村へと続く街道もすぐに雪で埋もれてしまう。レベルの高いモンスターが出現することもあって、他の土地からは誰も入ってこなくなるのだ。村は正に雪で閉ざされてしまう。
一年の半分ほどの期間、ニブルヘイムこうして雪で閉ざされてしまい、村人だけの狭い世界の中だけで暮らしていくのだ。
こんな狭い村に、他のエリアの情報などほとんど入ってこないのは当然。
ザンカンや稀にやってくる商人、もしくはニブル山で狩猟するハンター達ぐらいが、本格的に雪が積もる前の短い期間にやってきて、他の土地での話しを落としていくだけで。
ましてやクラウドもティファもほんの子供だ。他の土地での出来事など全く知らないに等しい。
二人は想像力を精一杯駆使する。
「上位の一族ってどんな姿なのかしら?」
「下位のとは違うのかなあ…やっぱり」
「じゃあモンスターみたいな姿じゃないってコトなのかしら?」
姿形で上位と下位の区別がつくのだろうか。
しばらく考え込んでいたクラウドが口を開く。
「そうだよなあ。上位と下位の姿が似ていたとしたら…――おかしくないかな?」
「おかしいって?」
「たとえば上位と下位の一族の外見が同じだったら。これまで現れていた一族の中に、もしかしたら人間には区別がつかなくて解らなかっただけで、上位もいたってことも考えられるんだよね」
「でも上位の一族はこれまでやってきたことはない、って…これは絶対とされているんだよね」
外見がそっくり、もしくは同じだということは、見た目だけでは見分けがつかないという意味だ。
ならばこれまでの人間の長い歴史の中で、外見だけでの見分けがつかないまま、下位だと思って上位の一族とも闘っていた。なんてことも有り得た可能性は高い。
でも未だ人の世界に上位の一族が登場したことがないというのは、くつがえされない定説となっているのはなぜか?
クラウドの疑問はここの集約されている。
ティファは長い黒髪を邪魔そうに掻き上げた。
幼い頃からずっとのばし続けてきた黒髪は、ティファの亡くなった母にそっくりだ。
※※※
やおいのやにもかすらなくてすみません。
この話は淡々と続きます。



※イラスト追加しました(Y)


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