こんにちは、びーこです。
17日23時のRさま> 淡々とした感じで続きますが、最後までお付き合いいただければ嬉しいです。 コメントありがとうございました。
※※※ ねえ。 「クラウド、――私たち…ううん、この村のみんなはどうなっちゃうんだろ」 幼なじみの少女の黒い瞳は、これからやってくる未知への恐怖でいっぱいだ。 大丈夫だよ。――と、安易には言えない。 そんな口先だけで済む容易い事態ではないのだと、子供心にもわかっているのだから。 すっかりと乾ききった口内でクラウドは大きく深呼吸する。 そうすると母が作って置いてくれたスープの匂いが鼻腔から流れ込んできた。 鼻から気管を通り肺へと。肺から血管を走って手足の末端までも。 この優しい匂いのおかげで、クラウドは闇の一族という呪縛から今回は解き放たれる。 「ティファ……僕はどんなことがあってもティファと一緒だよ」 せめてひとりぼっちにはならないのだと。 そして独りでさえいなければ、きっとどうにかなるのだという願いを込めて。 ――クラウド… 「…私が困ってたら、助けに来てくれる?」 「うん」 クラウドはティファよりも腕力では劣る。 だがそうだと解っていても、自分を助けてくれるのだというクラウドにティファは胸を熱くする。 クラウドはいつもこうだった。 どんな時でも己の心を曲げない少年。 安易に集団におもねるよりも、孤独であるのを選ぶ、不器用な幼なじみ。 素直なくらいに頑固で、繊細なのに不器用な彼は、どうして村の子供達みんながクラウドについ構ってしまうのか、きっとホントのところには気がついていない。 ティファはクラウドは村の子供達からしつこく干渉を受ける理由を知っている。 どうして村のみんながクラウド母子を無視出来ないのかも解っている。 本当は村の人はみんな、クラウド母子の特別になりたいのだ。 だからついつい反応が欲しくて、色々と手や口を出してしまう。 ――みんな、ホントは好きなのよ。 こんなにきれいな母子、とても無視など出来ない。 でもまともに好意を向けるには、この母子はきれい過ぎて恥ずかしいのだ。 閉鎖的な田舎の小さな村人には、自分たちでさえ把握出来ない感情の機微を上手く伝えられる術などない。 ティファはそうだと解っているのだが、このホントは絶対にクラウド母子には教えてあげない。 ――だってクラウドを一人占めにしておきたいもの。 この村の中で唯一友人でいてくれる自分は、クラウドにとってのたった一人の特別なのだ。 クラウドの特別でいられる間は、絶対に黙っておこうとこの大人びた少女は決めている。
ティファは椅子から立ち上がると、クラウドの手を引っ張って暖炉の前までやってきた。 ティファの家にあるものと比べると劣るものの、そこには大ぶりのラグマットが敷いてある。 暖炉の前でくつろげる、これはニブルヘイムにはどこの家庭にも見られるものだ。 「座ろう、クラウド」 肩をピッタリと寄せ合って、二人は座る。 恐ろしい風の音が聞こえてきた。考えるまでもない。この風はあの禍々しい雲からやってきたものだ。 ティファは自分のよりも華奢なクラウドの手を握り込む。 かなりの力を込めて握っているのに、クラウドは痛いとも言わない。 代わりにティファが握るのと同じ強さで、しっかりと握り返してくれたのだ。 こうして二人は互いの存在で、恐怖から身を守ったのだ。 ※※※ ちょっと短いですが、キリがいいのでここまで。
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