こんにちは、びーこです。
まずは拍手レスから。 14日0時のSさま> お読みいただきまして、ありがとうございます。 男の子と女の子が仲良しで、女の子がお姉さんぶっている関係というのが大好きです。 今回のティファは星を救った戦士ではありませんので、 こんな感じになりました。 今回はコメントありがとうございました。
では続きです。 注意事項はその1と同じです。 いろいろスルーしてもらえれば有り難いです。 ※※※ 闇の一族とは捕食者である。吸血鬼とも吸精鬼とも言われていた。 動植物から人までをも、彼らは餌として喰らうのだ。 この星の歴史を紐解けば、まだ文字のない伝承のみの時代からも、常に闇の一族の存在は認知されてきた。 各土地によって形は違えども、古くからの神話やおとぎ話となってその土地に根付いている。 獣、半獣、モンスターに似た生き物、はたまた整った人の姿をとって、そうやって現れた闇の一族は、動植物や人を喰らい、時にはエナジーを吸い尽くして殺していったのだ。 人も動物も何度も抵抗を試みたものだ。だが闇の一族の力は圧倒的で、追い払うことは出来ても勝利することはない。 ただ闇の一族とはこの世とは別の理を持つ存在であるらしい。 幸いなことに、彼らは好きな時にこの世界にやってきて、餌を思う存分喰らっているのではなく、偶然が重なり何らかの条件が満たされてやっと僅かな数だけがこちらにやってこられるのだ。 特に一族の貴族、支配者階級のこちらでの出現率は極めて低い。 結果闇の一族は恐ろしい力を持つ捕食者であれども、一族に遭遇しその被害に遭うのは滅多となかったのだ。 人だけで言えば、一族に喰らわれ殺されるのよりも、事故や病気での死亡率の方が圧倒的に高い。 だからこそ人は今ほど繁栄してこられたのだろうが。
クラウドももちろんこの星に住む者の一人として、幼い頃より闇の一族の恐ろしさについては懇々と聞かされてきた。 一族についてはそれなりに承知している。 どのような場所に出現しやすいのか。 また、万が一遭遇した時には、どのように対処すれば生き残る可能性が高いかも知識としては持っている。 闇の一族についての知識は、この世界に住む者皆が持っているのが当然なのだ。 それをわざわざティファが「知っているか」と問うてくるのだから、その真意は単純に知る・知らないだけではないのだろう。 クラウドは慎重に考えると、YesともNoとも答えずに、じっと次のティファの言葉を待つ。 「私、お師匠様と父さんの会話をこっそりと聞いたんだけど…」 「いくつかのエリアで闇の一族がこれまでとは違う現れ方をしたんだって」 「それどういうこと?」 さあ、――詳しくはわからないけど。とティファは力無く項垂れる。 「ただお師匠様は地図を持っていて、それを父さんに見せて言ったの」 「――ニブルヘルムにも、もうすぐ現れるってこと?」 ニブルヘルムは北の外れのエリアでありながら、これまで闇の一族からの影響はごく僅かに抑えられていた。 この土地だけで言えば、一族よりもモンスターの被害の方が深刻で重大である。 そのニブルヘイムに闇の一族が現れるという。 無論現れるだけでは済むまい。 ――ニブルヘイムが一族に襲われるっていうことか? 遠い遠い場所にある、怖くて恐ろしいお話。 これまで闇の一族とはそういうものでしかなかった。 確かに存在してはいるのだろうが、あくまでもクラウドからは遠い手の届かないところで起こっていることでしかなかったのに。 それが現実となるなんて、クラウドにはやはりピンとこない。 「その……どうしてティファのお師匠様は、ニブルヘイムに一族が来るなんて言うの?」 確証があるというのだろうか。 クラウドの質問にティファは思案顔で外へと視線を向けた。 いつも村から窺えるニブル山の山頂部分は、あのまがまがしい雲にすっかりと覆われている。 「それはわからないけど…――でも父さんは納得していたから」 だからこそ村長ロックハートは今日集会を開いたのだ。 「やっぱりあの地図だと思う」 「あの地図には父さんが納得するだけのことが書いてあったのよ」 私にはよくわからないけど。――ティファは力無く俯く。 いつもははち切れるほどのパワーを発揮している、元気で前向きな幼なじみが初めて見せる、花がしおれたような儚い様子に、クラウドは悪夢のまっただ中に迷い込んでしまったようになる。 ――どうしてこんなことに… 幼い心で漠然と思う眼差しは、自然と窓から外に向けられていた。 幾重にもとぐろを巻いた灰色の重い雲は、ニブルヘイムを村ごと頭上から押しつぶさんばかりだ。 ――そうだ。この雲だ。 とてつもない邪悪な何かが〜闇の一族だが〜ニブルヘイムを狙っているのだと、この雲が証明しているではないか。 クラウド自身もティファも。 村長であるロックハートも。 一人残らず集会場に集まっている村人たちも。 この不吉な雲があるからこそ、ザンカンの言葉を笑い飛ばせず、心のどこかで信じているのだろう。 否、信じるしかなかったのだ。 ※※※
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