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+ '08年06月28日(SAT) ... 金銀Bその5 +

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こんにちは、びーこです。
梅雨らしいといいますか、うっとうしい日が続いていますね。
先日来より家人からもらった咳が抜けません。
こういう季節は身体の抵抗力もなくなってくるのか。
それとも私がババアだからなのか。
と一層鬱陶しくてなりません。

と、せんのない繰り言はさておき、続きです。

※※※
それからあの事件が起こるまでの数日間、ティファはストライフ家で過ごした。
クラウドと共にベッドこそ違え同じ部屋で眠り、同じ時間に目覚める。
同じ物を食べて、共に過ごした。
あの不吉な雲は益々濃く広大に、さらに厚味を増していき、上空いっぱいに覆われたニブルヘイムは昼間でも完全な暗闇のままとなってしまう。
すでにニブル山も上半分は雲に飲まれた。
子供達はこれまで遊びのテリトリーだった村の広場や山では遊ばなくなり、一歩も家の外からでなくなってしまったのだ。
だが大人はそうもしていられない。
畑を持つ者は畑に出て、狩猟を生業としている者は村近くの外へと向かう。
それでも作業はほんの短時間だけにとどめ、みんな最低限の用事さえ済ませると背中を丸め、不吉な雲から逃れるように足早に帰途につく。
帰ってきた大人達は夕方になるとこぞって集会場へと向かうのだ。
この毎夜の集会を呼びかけているのは、ティファの父、村長であるロックハートとその師ザンカン。
ティファやクラウドを含め村の子供達は、具体的に大人達がどういう用件で夜ごとに寄り集まってどんな風に話が進められて、また何をしているのかは知らされていない。
この件に関しては大人達は皆一様に口が堅く、全く漏らさないのだ。
でも子供達は生き物としての本能で感じ取っている。
これは全てただならぬ事態が起こる前兆であるのだ、と。
そんな感覚が精神だけではなく、皮膚を通してひしひしと押し迫ってきている。
そう。――きっととてつもなく良くないことが起きるのだ。
その大きな原因であり良くないことが起きるという印なのが、この村をすっぽりと覆い尽くしてしまっている不吉な雲だ。
今となっては果てさえも見えないほど広がった雲に対する恐れは、クラウドや子供達だけではなく、村人全てが同じ恐怖を抱いている。
こうして頭上一面に恐怖の元凶を仰ぎつつ、ニブルヘイムの村人たちは異様な緊迫感のただ中に置かれていたのだ。
そしてついに時はやってくる。恐れていた事件が起こったのだ。
地獄の扉が開いたのだ。


事件当日はその瞬間まで前日と変わりない時間が流れていた。
不吉な雲の下で村人達は短時間だけそれぞれに働く。その後すぐに大人達は集会場へと集まり、前日と同じように何かを行動をしていた。
大人達の集会だが、最初の幾日かは活発な意見交換を繰り返しながら、何かを話し合っていたようだ。
だがそのうちに何らかの意見の統一を果たしたのだろう。話し合いが落ち着くとザンカンと村長ロックハートの指図の元計画を立てて行動を進めていた。
この行動はどうやら佳境に入っているらしく、大人達の帰宅は日に日に遅くなっている。
「…戦うんだわ」
ティファはそんな大人達を見てこう断言する。
この年頃の女の子は、同年代の男の子よりも遙かに鋭い。
特に幼い頃に母を亡くしたティファは、どうしても早く大人になりたがっている傾向にあった。
よってクラウドと同じものを見ても、更に深く掘り下げて未来にまで目を向けようとする。
「戦い」と聞いてクラウドはすっかりと落ち着かなくなってしまう。
臆病だとクラウドを攻めるのは筋違いだ。まだ子供だから仕方ないと考えるべきものでもない。
なぜならばクラウドは解っていたのだから。
この状況でティファが指す戦いの相手とは、闇の一族であるのは間違いないのだと。
つまりこれからニブルヘイムの村人たちは、人間以上である闇の一族と戦わなければならないのだ。
「村長さんがはっきりそう言ってたの?」
闇の一族を敵にするのだと。
「ううん――父さんは何も言わないけれど…」
けれど、わかるの。
「解るってどういうコト!?」
ティファを信じていないのではない。
でもこれから村や、そして母や自分が闇の一族と戦わねばならなくなるというのは――怖い。
人が無意識に暗闇を恐れてしまうのと似た原始的な恐怖がクラウドを襲ってきて、怖くて、怖くて。
そんな幼なじみの少年の心中を悟ったのだろうか。ティファは具体的な話しを始める。
「お師匠様はたくさんのマテリアと武器を持ってきていたの」
「そして持ってきたマテリアや武器を村の人たちに配っているみたい」
もちろんただ配っているだけではなく。
「魔法が使える人には、お師匠様が持ってきた武器にそのマテリアを装備させて戦いの練習をさせているみたいなの」
まるでティファは見てきたように語る。クラウドの知らないことばかりを。
「待って。どうしてティファがそんなことを知っているの?」
村長である父親から教えてもらっているのでもなく、ましてやティファは現在四六時中クラウドと一緒なのだ。
クラウドの知らないことを、どうしてティファだけが知っているのか。
クラウドのこの疑問は当然であると言えるだろう。
ティファの返答は明快であった。
「覗いたのよ」
「どこを?」
「集会場よ」
「いつ!」
「クラウドが眠った後…」
「それって……夜中ってこと!?」
それがどれほど危険な行為なのか。
クラウドはすっかりと驚いてしまい、言葉さえ出ない。
「これでも私、強いのよ」
「ティファ!」
そうしう問題ではないだろう。と、語気が強くなってしまうクラウドに、
「――怒らないで」
「だってとても知りたかったの」
今いったい村に何が起こっているのか。大人達は、父やお師匠様は何をしようとしているのか。
僅かな手がかりだけでも良いから、事実を知りたかったのだ。
もとよりティファは少女にしては強い。
性格も強く精神も強い。ザンカンの教えを受け、肉体的にも修行で鍛えているのもあり、自分の強さには自信を持っているのだ。
だからといって夜中に家を出ていくのは無謀である。ティファ自身もそれは解っている上でのこと。
今更起こってしまった過去をクラウドが責めても効果があるとは思えない。
ティファは無謀だと解った上で、やってしまったのだから。
金色の細い眉を寄せて複雑な表情を作ると、まだ幼い少年の容貌はとても繊細な憂いとなる。
その表情にティファが怯む。彼女はどれだけ強く叱られるよりも、クラウドにこんな表情をされる方が一番辛いのだ。
「ごめん…――クラウド」
俯いてしまう少女に、
「何回くらい夜中に家を抜け出したの?」
「2回くらい……」
回数を口に出しながら、クラウドを窺う。
少年の青い眼差しは憂いを保ったままだ。
ティファの嘘を見抜くように。
「4回は行ったと思う――…」
すっかりと語尾が弱くなり、普段の気丈さを無くしてしまったティファに、やっとクラウドは表情を緩めて許しを与えた。
こうでもしないとティファは己を過信して、いつ何時取り返しのつかない事態に陥るかも知れないのだ。
特に今はこんな異常な時。クラウドはティファに傷ついて欲しくなどない。ましてや死ぬなど。
クラウドは一緒にいると約束したのだから。
「ティファ、――もう駄目だよ」
「…うん。もう行かない」
素直に頷いてくれたティファにクラウドは安堵する。
※※※
ここまで。
ではみなさま良い日曜日を!


+ '08年06月25日(WED) ... 金銀Bその4 +

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こんにちは、びーこです。

拍手&♪、ありがとうございます。
24日13時Rさま>
いつもコメントをありがとうございます。
嬉しいです。

※※※
クラウドの母ストライフ夫人と、村長であるティファの父ロックハートが集会を終えて戻ってきた頃には、すでに日はとっぷりと暮れており一層ニブルヘイムの上空を覆う雲は不気味であった。
いったん自宅に戻り書き置いてあったティファからのメッセージを読んだのだろう。ロックハートはストライフ夫人と共にやってきた。
戻ってきた大人達の形相はすさまじいばかりだ。
その凄まじさにクラウドもティファも、やっと親が帰ってきてくれたのだと安堵することさえ出来ない。
二人はより一層身体をくっつけあう。
ティファの父ロックハートは、そんな子供二人の怯えにも構わずに、ずかずかと近づいてくるといきなり娘の腕をとった。
「帰るぞ」
「…っいやあ」
そのまま力ずくでティファの身体を引っ張り上げてしまう。
ティファを深く愛しているロックハートにしては、いつもと違いやり方が乱暴すぎる。
それはティファにも充分に伝わった。
彼女はいつもと違う父親の乱暴さに怯えを深くして、なんとか逃げようともがく。
彼女が助けを求めたのは、さっきまで共に恐怖から身を守っていた大切な少年だ。
「クラウド!」
幼なじみの少年の名を叫びつつ、ティファは抵抗をやめない。
この時ティファにとって絶対の味方であると、心底から無垢なる信頼を向けられたのは、いつもとは様子が違う父親ではなく、さっきまで共にあった少年しかいなかったのだ。
クラウドもそうだ。いつもならば村長であるロックハートに反抗などしない少年が、懸命にティファへと手を差し伸べようとする。
「クラウド…っ」
「私、クラウドと一緒にいる!」
どうにかして自分に差し出されているクラウドの手を取ろうと、ティファの抵抗は激しくなった。
この抵抗は単純なNOというものではない。
娘の必死さに頭に血が上っていたロックハートも驚く。
驚いてかえって冷静になったようだ。娘を拘束する力が抜けていった。
このタイミングを見計らいながら、ストライフ夫人が父娘の間に穏やかに割って入っていく。
幼なじみの少女に向かって、伸び上がりながら必死で手を差し出している息子の肩をそっと抱いて、
「村長さん。これから何かとお忙しいでしょうから、その間ティファちゃんはウチでお預かりするっていうのはどうでしょうか?」
美しい女性の柔らかな態度に、ロックハートも聞く耳を持つ。
「だが…それは…」
それでもやはり愛娘をそう簡単には手放せないもの。例えそれが隣家であったとしても。例えこれから村長として忙しくなる自分を考えると、ティファにとっても自分にとってもその方が都合良いのだと解っていても。
そんなロックハートの心中は、ストライフ夫人にとっては予想内であったのだろう。
彼女はあくまでも穏やかな物腰のままで、ロックハートを追いつめていく。
「村長さんには村のみんなを守ってもらわなくちゃいけません」
「家を留守にされることも多くなるでしょう」
「そんな時ティファちゃん一人では可哀想ですわ」
「――……」
その通りなのだ。
ストライフ夫人の言葉通りだ。
これからロックハートは村長としての責務を全うしなければならない。
「ティファちゃんの顔が見たくなったら、いつでもいらしてくださいね」
どうせお隣なんですから。そう言って微笑むストライフ夫人の美しい顔に、ロックハートは従うしかなかったのだ。
※※※
今回はここまで。


+ '08年06月21日(SAT) ... きんとぎんのぎん +

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こんばんはY子です。
きんクラウドと対で描いたぎんセフィロスです。
が…やっぱりセフィロスを描くのは難しい。
あのセクシーな筋肉のラインが難しいです。まっちょじゃないけど華奢じゃない。でもクラウドよりは逞しい…。
むつかしいいいいい。


+ '08年06月20日(FRI) ... 金銀Bその3 +

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こんにちは、びーこです。

17日23時のRさま>
淡々とした感じで続きますが、最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
コメントありがとうございました。

※※※
ねえ。
「クラウド、――私たち…ううん、この村のみんなはどうなっちゃうんだろ」
幼なじみの少女の黒い瞳は、これからやってくる未知への恐怖でいっぱいだ。
大丈夫だよ。――と、安易には言えない。
そんな口先だけで済む容易い事態ではないのだと、子供心にもわかっているのだから。
すっかりと乾ききった口内でクラウドは大きく深呼吸する。
そうすると母が作って置いてくれたスープの匂いが鼻腔から流れ込んできた。
鼻から気管を通り肺へと。肺から血管を走って手足の末端までも。
この優しい匂いのおかげで、クラウドは闇の一族という呪縛から今回は解き放たれる。
「ティファ……僕はどんなことがあってもティファと一緒だよ」
せめてひとりぼっちにはならないのだと。
そして独りでさえいなければ、きっとどうにかなるのだという願いを込めて。
――クラウド…
「…私が困ってたら、助けに来てくれる?」
「うん」
クラウドはティファよりも腕力では劣る。
だがそうだと解っていても、自分を助けてくれるのだというクラウドにティファは胸を熱くする。
クラウドはいつもこうだった。
どんな時でも己の心を曲げない少年。
安易に集団におもねるよりも、孤独であるのを選ぶ、不器用な幼なじみ。
素直なくらいに頑固で、繊細なのに不器用な彼は、どうして村の子供達みんながクラウドについ構ってしまうのか、きっとホントのところには気がついていない。
ティファはクラウドは村の子供達からしつこく干渉を受ける理由を知っている。
どうして村のみんながクラウド母子を無視出来ないのかも解っている。
本当は村の人はみんな、クラウド母子の特別になりたいのだ。
だからついつい反応が欲しくて、色々と手や口を出してしまう。
――みんな、ホントは好きなのよ。
こんなにきれいな母子、とても無視など出来ない。
でもまともに好意を向けるには、この母子はきれい過ぎて恥ずかしいのだ。
閉鎖的な田舎の小さな村人には、自分たちでさえ把握出来ない感情の機微を上手く伝えられる術などない。
ティファはそうだと解っているのだが、このホントは絶対にクラウド母子には教えてあげない。
――だってクラウドを一人占めにしておきたいもの。
この村の中で唯一友人でいてくれる自分は、クラウドにとってのたった一人の特別なのだ。
クラウドの特別でいられる間は、絶対に黙っておこうとこの大人びた少女は決めている。

ティファは椅子から立ち上がると、クラウドの手を引っ張って暖炉の前までやってきた。
ティファの家にあるものと比べると劣るものの、そこには大ぶりのラグマットが敷いてある。
暖炉の前でくつろげる、これはニブルヘイムにはどこの家庭にも見られるものだ。
「座ろう、クラウド」
肩をピッタリと寄せ合って、二人は座る。
恐ろしい風の音が聞こえてきた。考えるまでもない。この風はあの禍々しい雲からやってきたものだ。
ティファは自分のよりも華奢なクラウドの手を握り込む。
かなりの力を込めて握っているのに、クラウドは痛いとも言わない。
代わりにティファが握るのと同じ強さで、しっかりと握り返してくれたのだ。
こうして二人は互いの存在で、恐怖から身を守ったのだ。
※※※
ちょっと短いですが、キリがいいのでここまで。


+ '08年06月19日(THU) ... きんぎんクラウド +

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こんにちはY子です。
拍手とか拍手とか♪とかありがとうございます。

ちょっと原稿ヒキで潜っていたら金銀キターー。
わ〜〜い♪
小さいクラウドと迷って大きい子の方で!
(わたしの脳内金銀クラウドは入れ墨しているんです)


えっと6月の29日のシティに別サークルで参加します。
メモ連載の金銀の大人版が読みたいなって方がいらっしゃいましたらメールでもくださ〜〜い。
お持ちしますv
(27日までに連絡いただけたら折り返せます)

ではB子さんっ!
続き楽しみにしていま〜〜す。
(しつこいですが本編も首長くして待っています<ヲイ)


+ '08年06月17日(TUE) ... 金銀Bその2&拍手レス +

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こんにちは、びーこです。

まずは拍手レスから。
14日0時のSさま>
お読みいただきまして、ありがとうございます。
男の子と女の子が仲良しで、女の子がお姉さんぶっている関係というのが大好きです。
今回のティファは星を救った戦士ではありませんので、
こんな感じになりました。
今回はコメントありがとうございました。

では続きです。
注意事項はその1と同じです。
いろいろスルーしてもらえれば有り難いです。
※※※
闇の一族とは捕食者である。吸血鬼とも吸精鬼とも言われていた。
動植物から人までをも、彼らは餌として喰らうのだ。
この星の歴史を紐解けば、まだ文字のない伝承のみの時代からも、常に闇の一族の存在は認知されてきた。
各土地によって形は違えども、古くからの神話やおとぎ話となってその土地に根付いている。
獣、半獣、モンスターに似た生き物、はたまた整った人の姿をとって、そうやって現れた闇の一族は、動植物や人を喰らい、時にはエナジーを吸い尽くして殺していったのだ。
人も動物も何度も抵抗を試みたものだ。だが闇の一族の力は圧倒的で、追い払うことは出来ても勝利することはない。
ただ闇の一族とはこの世とは別の理を持つ存在であるらしい。
幸いなことに、彼らは好きな時にこの世界にやってきて、餌を思う存分喰らっているのではなく、偶然が重なり何らかの条件が満たされてやっと僅かな数だけがこちらにやってこられるのだ。
特に一族の貴族、支配者階級のこちらでの出現率は極めて低い。
結果闇の一族は恐ろしい力を持つ捕食者であれども、一族に遭遇しその被害に遭うのは滅多となかったのだ。
人だけで言えば、一族に喰らわれ殺されるのよりも、事故や病気での死亡率の方が圧倒的に高い。
だからこそ人は今ほど繁栄してこられたのだろうが。

クラウドももちろんこの星に住む者の一人として、幼い頃より闇の一族の恐ろしさについては懇々と聞かされてきた。
一族についてはそれなりに承知している。
どのような場所に出現しやすいのか。
また、万が一遭遇した時には、どのように対処すれば生き残る可能性が高いかも知識としては持っている。
闇の一族についての知識は、この世界に住む者皆が持っているのが当然なのだ。
それをわざわざティファが「知っているか」と問うてくるのだから、その真意は単純に知る・知らないだけではないのだろう。
クラウドは慎重に考えると、YesともNoとも答えずに、じっと次のティファの言葉を待つ。
「私、お師匠様と父さんの会話をこっそりと聞いたんだけど…」
「いくつかのエリアで闇の一族がこれまでとは違う現れ方をしたんだって」
「それどういうこと?」
さあ、――詳しくはわからないけど。とティファは力無く項垂れる。
「ただお師匠様は地図を持っていて、それを父さんに見せて言ったの」
「――ニブルヘルムにも、もうすぐ現れるってこと?」
ニブルヘルムは北の外れのエリアでありながら、これまで闇の一族からの影響はごく僅かに抑えられていた。
この土地だけで言えば、一族よりもモンスターの被害の方が深刻で重大である。
そのニブルヘイムに闇の一族が現れるという。
無論現れるだけでは済むまい。
――ニブルヘイムが一族に襲われるっていうことか?
遠い遠い場所にある、怖くて恐ろしいお話。
これまで闇の一族とはそういうものでしかなかった。
確かに存在してはいるのだろうが、あくまでもクラウドからは遠い手の届かないところで起こっていることでしかなかったのに。
それが現実となるなんて、クラウドにはやはりピンとこない。
「その……どうしてティファのお師匠様は、ニブルヘイムに一族が来るなんて言うの?」
確証があるというのだろうか。
クラウドの質問にティファは思案顔で外へと視線を向けた。
いつも村から窺えるニブル山の山頂部分は、あのまがまがしい雲にすっかりと覆われている。
「それはわからないけど…――でも父さんは納得していたから」
だからこそ村長ロックハートは今日集会を開いたのだ。
「やっぱりあの地図だと思う」
「あの地図には父さんが納得するだけのことが書いてあったのよ」
私にはよくわからないけど。――ティファは力無く俯く。
いつもははち切れるほどのパワーを発揮している、元気で前向きな幼なじみが初めて見せる、花がしおれたような儚い様子に、クラウドは悪夢のまっただ中に迷い込んでしまったようになる。
――どうしてこんなことに…
幼い心で漠然と思う眼差しは、自然と窓から外に向けられていた。
幾重にもとぐろを巻いた灰色の重い雲は、ニブルヘイムを村ごと頭上から押しつぶさんばかりだ。
――そうだ。この雲だ。
とてつもない邪悪な何かが〜闇の一族だが〜ニブルヘイムを狙っているのだと、この雲が証明しているではないか。
クラウド自身もティファも。
村長であるロックハートも。
一人残らず集会場に集まっている村人たちも。
この不吉な雲があるからこそ、ザンカンの言葉を笑い飛ばせず、心のどこかで信じているのだろう。
否、信じるしかなかったのだ。
※※※


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