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+ '08年05月23日(FRI) ... 僕のおとうさん番外 +

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こんにちは、びーこです。
ふと思いついたので書きました。
笑って流せる方だけお読みください。

僕のおとうさん設定の番外です。
おとうさんも息子も名前のみの登場となります。
誤字脱字変換ミスはスルーしてください。

※※※
これはクラウドがミッドガルにやってくる少し前のお話。

神羅は企業だ。神羅カンパニーという巨大企業であり、すでにこの世界の実験を握っている。
さて巨大になればなるほど、トラブルはつきもの。
よって神羅は軍をもった。世界で一番巨大で最も強い私設軍隊である。
だがトラブルを解決するのには軍隊だけではとうてい充分ではない。
よって神羅はある部署を作った。神羅カンパニー総務部調査課という名称だけ聞いていれば何を職務とするのか定かではないこの部署は、いわば神羅の影を取り仕切っている。
通称タークス。特殊任務を取り仕切る精鋭部隊であった。

ツォンの前に、タークスの精鋭が並んで命令を待っている。
三人の男女達。一番目立つのは、なんといってもルードだろう。
2メートル近い巨体にスキンヘッドとサングラス。耳にはピアス。それもひとつやふたつではなく、左耳の耳朶に行儀良く連なっている。
目立つのはルードでも一番目を惹くのはレノに違いない。
ルードほどではないが細身の長身のスタイルは、粗野にならないぎりぎりのバランスで着くずしているスーツがよく似合う。
何よりその赤毛。燃えるように真っ赤、炎の色だ。
目立つ赤毛を緩く縛っているため、やる気や責任感のない、享楽主義者の典型にようにも見える。
だがよく見るとその顔立ちは非常に整っており、レノがこういう自堕落なスタイルを気取っていなければ、この美貌はもっと硬質なものとなっていたであろう。
そう、セフィロスのような。
残りが紅一点、イリーナだ。ブロンドを顎のラインで切りそろえ、背筋をまっすぐ伸ばして立つ様子は、タークスというよりも婦警さんだ。
タークスでの経歴は彼女が一番若い。
今回の指令を担当するのがこの三名。ツォンは部下達をゆっくりと見回すと、感情を排除したビジネスライクな口調で話しを始めた。

まず取り出したのは一枚の写真。
「彼の名はクラウド・ストライフ。10歳になった少年だ」
まずレノが写真を手に取り、次の瞬間自堕落なポーズが一気に崩れる。
そんなレノの手からルードを乗り越えて写真を取り上げたのがイリーナ。だが彼女も目を見開いて固まってしまった。
二人の同僚の態度に不信を覚えたルードは、力の抜けたイリーナの手からそっと写真を取り上げて、ショックを受ける。
――天使だ!
そこには天使がいた。
混じりけのない見事な金髪に抜けるような青い瞳。
肌はあくまでも透き通るように白く、はにかむように微笑んだ頬はバラ色。
髪型だけが少々難解であるものの、そこだけを除けばルードが幼い頃聞いた物語に登場する天使そのものだった。

半ば放心状態のレノもルード同様、写真の中にいるクラウドに天使を見いだしていた。
クラウドを目にした瞬間に甦ってきたのは、血筋は良いが育ちが悪かったレノの記憶にうっすらと残っているフレスコ画だ。
そう輝く金髪と青い瞳の天使が戯れている場面だった。
ドーム型の屋根に描かれていたフレスコ画は、少年だったレノには遠くて遠くて、首がおれるほど見上げたものだ。
――あの天使だ…

イリーナは「きゃー」と叫びたい欲求を抑えるのに必死だった。
――天使みたい!
背中に白い羽根をつけたら、どんなに似合うだろうか。
あのふっくらとしたバラ色の頬、突っついてみたらどんな感じなのか。
母性本能もヨコシマ本能も充分に刺激してくれる天使。

ヨコシマ本能が働いている分、三名の中でイリーナの立ち直りが一番早い。
ルードのごつい手から写真を取り上げると、上司に突きつけて、
「この子がどうしたんですか!」
悪名高きタークスは、いったいこの天使に何をしようとしているのか。
(許さない。こんな可愛い子が悪者な訳ないじゃないの)
ナイトメアからパル○エ王国を守らなくちゃ。ピン○ーキャッチュで変身よ。と有らぬ方向に考えが飛んでいるイリーナは、自分もタークスの一員であることも、ましてやタークスは正義の味方ではなく、あくまでも神羅カンパニーの利益の為だけに活動していることも忘れかけているのだろう。
だがこのイリーナの声にレノとルードも我に返る。
いろいろと脳内妄想に走るイリーナとは違い、男共の思考回路はいつも物騒だ。
「犯罪に巻き込まれているとか…」
ネガティブなルードの想像に、レノは鼻の頭に皺を寄せ、
「そんなの容赦しねえぞ、と」
こうなるとレノはまるきり悪人面だ。
冷酷殺人鬼とはきっとこんな目つきなのだろう。
だがレノの相棒ルードも悪人面では負けてはいない。
スキンヘッドの大男の全身から、物騒なオーラが立ち上ってくる。
こちらは無表情なだけに恐ろしい。
レノとルード。まるで阿吽像だ。

さしものツォンもいきなり変わった空気の剣呑さに慌てた。
どこかヒステリックなイリーナもおかしいが、もっとおかしいのはレノとルードだ。
容赦のない殺気がビシバシと当たってくるのに、内心ツォンは焦る。
昨年3分の1を切除した胃がシクシクと痛む。
嗚呼、哀しや中間管理職。部下は暴走気質だし。上司は世間知らずのアナーキーなわがままお坊ちゃんだし。
(やはりあの本を購入するべきだった…)
先日ネットショップで見つけたベストセラー本の第二段。
第一段の『織田信長に見るリーダー革命学』は、ツォン自身がどう考えても織田信長にはなれないので、購入しなかったのだ。
だが第二段は『徳川家康で学ぶリーダーのカリスマ』なのだ。
徳川家康の人生はつらつらと考えてみるに、ツォンとよく似ているのではないのか。
幼い頃より人質扱いを受け、耐えて耐えて堪え忍んだ家康は、部下にも上司にも恵まれない自分ともっとも共感出来る戦国武将だ。
(自宅に戻ったら絶対に購入しよう)
決心しつつツォンは上司の仮面を被り、指令を与える。
「彼は3歳の頃より戸籍上セフィロスの養子となっていた」
セフィロスの名前に暴走部下達が反応する前に、ツォンは早口で言葉を続ける。
「もっとも養子といえどもあくまでも戸籍だけのことだった」
「顔も合わせたこともなかったのだが、――」
「来月よりこの少年はミッドガルのセフィロスの元で暮らすことが決まったのだ」
ここまで息継ぎ全くなし。タバコを吸わないツォンの肺は、胃と違い健康なのだ。

ピキン。確かに凍り付いた空気にヒビが入った音を、ツォンは聴覚ではなく脳幹で聞いた。
(マズい……)
こんな窮地、徳川家康はどのようにしてしのぐのか。
(やはりあの本を購入しておくべきだった)
と激しく後悔するツォンは、マニュアル本マニアである。
スピリチュアルに転ばないだけマシなのだろうが。
もしツォンにスピリチュアルな能力があれば、前世診断をするよりも前に、部下三名からの負のオーラに卒倒していたであろう。
そのくらい三名は“セフィロス+クラウド少年”という方程式に怒っていたのだ。
秒針が三周を越えてから、
「…エリンギ……」
悪人面のレノが平坦な声でつぶやく。
エリンギ…?あのキノコのことか!????
とツォンが呆気にとられている間に、次はルードだ。
「糸こんにゃく…――」
糸こんにゃく???なんだそれは?
この阿吽像は何を言っているのか!?
「――あれは俺が治安維持部門にテロリストの情報を押さえに行った時のことだった…」
「英雄様がいたんだぞ、と」
レノはあの屈辱を忘れない。遠目では何度も見た神羅の英雄が、その場にいたのだ。
惚れ惚れするような長い足を組み、無感情にレノを睥睨していた。
内心焦りながらも、テロリストについての情報を得ていると、ぼそりと英雄がつぶやいたあの言葉。
(エリンギ――)
誰に向けられたのでもなく、レノに向けられたのだとは意味不明で信じられない。
無論意味不明だったのも信じられなかったのも、レノだけではなかった。その場にいた数名の者もどう反応して良いのか考えあぐねた挙げ句に、じっと英雄を窺うしかない。
(お前、そこのお前だ)
え!?俺かな、と。
(そうだお前だ。お前、エリンギに似ているな)
(だがエリンギは赤くはないから、俺はお前を赤エリンギと名付けてやろう)
いやいや。レノはおかしなあだ名が欲しいが為に、この治安維持部門までやってきたのではない。
第一、
――エリンギってなんだぞ、と?
根本的に意味がわからないレノを差し置いて、他の者達はエリンギなる意味がわかったようだ。
一斉に吹き出して笑いこける。
ゲラゲラと涙さえ流して笑う皆を放置しておいて、英雄は、
(赤エリンギ。またな)
とだけ言い捨ててとっとと行ってしまう。
その後すぐレノはエリンギがいかなるものかを知った。
ちなみに今でも治安維持部門でのレノをさす隠語として“赤エリンギ”は健在である。
「あのクソ英雄め!俺様をきのこ扱いしやがって」
「誰が初対面の相手をきのこ扱いするんだぞ、と」
レノのプライドは大いに傷つけられたのである。

吐き捨てるレノの後を相棒であるルードが重々しく続ける。
「まだいいじゃないか」
「俺など…ハゲは目障りだから糸こんにゃくを食えって言われたんだぞ」
しかも公衆の面前でだ。
あれは忘れもしない。副社長の護衛についた時のことだ。
ルーファウスとセフィロスは本社ビルで偶然出会った。
すれ違うついでの二人は全く友好的ではない挨拶を、ごく事務的に交わしていた。
その時に英雄はルーファウスの背後に控えているルードを見つめたのだ。
そしていきなり鞘に収まったままではあるが、あの正宗を突きつけてきて、
(お前に足りないのは糸こんにゃくだ)
(俺はハゲは目障りだ)
(糸こんにゃくでハゲを治せ)
唖然とした後、湧いてきた怒りは、ルーファウスの馬鹿笑いで更に加速された。
今でも思い出すと怒りで目の前がくらむ。
「俺は糸こんにゃくがなんであるのか知らなかったんだ…」
だからその時とっさに反応出来なかったのだ。
それに相手は神羅の英雄。こちらはしがないタークスの一員。
英雄様にどうやって逆らえるというのか。
ルードはその後糸こんにゃくおよび、こんにゃくについて詳細に調べた。だがどんな文献にもどんな料理本にも、糸こんにゃくが発毛を促進するとは書いていない。
そんなもん喰ってどうやってハゲが治るというのか。
それともカツラの代わりにかぶれとでも言うのか。
それに、
「俺はハゲではない。この頭は剃っているだけなんだー」
上司の前でルードは吠えた。

――ああ…
ツォンは頭を抱えてしまう。
それは何もレノとルードが英雄に受けた仕打ちを疑っているのではなく、
――やはりセフィロスには問題がありすぎる。
対人関係やコミュニケーションといったものが、セフィロスは破綻しているのだ。
文字通り破れてほころびきっていて、どうにも修正できないところまできている。
かくいうツォンとて、英雄にはどんな酷い目にあってきたことか。
――これでは指令が出せない…
セフィロスの元に引き取られるクラウド少年が、ミッドガルで円滑に生活していけるサポートを命令するつもりだったのだが…
頭を抱え込んだツォンはイリーナを盗み見た。
――イリーナ…お前も何か言われたのか。
セフィロスは相手の性別で手加減は加えない男だ。
戦いでも、毒舌でも。その破綻したコミュニケーション能力でも。

「先輩達はまだいいじゃないですか――」
私なんて、
「私なんて…踏んづけられたんですよ!」
あれはイリーナがタークス所属になってすぐのことだった。
イリーナはその日、初めて至近距離で英雄と遭遇するチャンスに恵まれたのだ。
――あれが英雄!セフィロスだわ。
ポスターや各種広報物で何度も目にしたことがある麗しい姿が、実物として自分の側を通り過ぎようとしているではないか。
――なんてキレイなのかしら。
美麗という形容がこれほどピッタリな男はいまい。いや、女でもここまでの完璧さはないだろう。
うっとりするイリーナはすでに夢見心地であった。
知らず知らずのうちに身体は動き、イリーナは英雄の進路に飛び出してしまったのだ。
そこは神羅本社ビルの廊下であった。廊下といっても狭い場所ではない。
いくらセフィロスの体格がいいからといえども、セフィロス一人が歩いただけで廊下がいっぱいになるはずもなく、イリーナが進路に出たとしても、セフィロスが避けるだけのスペースは充分にあったのに…
セフィロスは避けなかった。それどころか彼は、
「そのまま踏んだんですよ、――私を」
英雄はどんどん近づいてくる。美麗なアップにイリーナはうっとりして、気がついたらセフィロスの靴の裏が顔面に迫ってきていた。
まるで石ころか砂利のように、そのままセフィロスはイリーナの顔面を踏んで歩いていってしまったのだ。
足も止めず。それどころかセフィロスはイリーナを踏んだことにすら気がついていなかったのだ。
無視ではない。それ以下のこと、つまりはセフィロスにとってイリーナなど感知するほどのモノではなかったのだ
イリーナの足と顔面にセフィロスの靴痕が残り、数日間消えなかったのには、涙もでない。
「踏まれたんですよ…」
「年頃の女の子を足蹴にしたんですよ」
「謝るどころか、気がつきもしないなんて」
私ってちょっとイケてる!と自負していたイリーナにとって、これは大ショックであった。

――あ〜あ。神羅の内にも外にも敵を作って。
――しかも敵を作ったという自覚もいっさいなくて。
あの英雄様はいったい何を考えているのか。
(何も考えてなどいないのだろうな…)
とにかく、とツォンは上司の仮面を被りなおして、
「命令だ」
「セフィロスと同居することに決まったクラウド君が、ミッドガルで不自由のないように暮らすサポートを君たちにしてもらいたい」
言い切ってからどんな反論や不満がやってくるかとツォンは身構えた。
が、レノ、ルード、イリーナの三名は身動きさえしない。
そしてしばらくたってから、
「ききき」
「けけけ」
「かかか」
不穏な呪いの笑い声が三名から漏れた。
――え!?狂った??
身体が引けてしまったツォンの前で三名は不吉な笑顔を浮かべ、
「それならば簡単だぞ、と」
「そうですよ〜、主任」
軽い物言いの割にはドス黒いオーラが見えるのは、決してツォンの思いこみではない。
その証拠にルードはボソリと、
「英雄などいなければいい」
――はぁ!?
「そうですよ〜、先輩の言うとおりですよぉ」
「セフィロスなんかと同居したらそれだけでクラウド君は可哀想ですよぉ」
だから、
「同居するのを阻めば良いんですよぉ」
それは本末転倒どころか、命令の主旨がすり替わってしまっているではないか。
「おいっ」
焦るツォンをきれいに無視して、タークスの精鋭三名はセフィロス抹殺計画に本気だ。
「天使ちゃんを困らせる英雄はいらないぞ、と」
「手始めにミッションの妨害からやってみよう」
英雄と呼ばれている男だ。そんじょそこらの妨害工作で死ぬことはないだろうが、それでもミッドガルへの帰還を遅らせるくらいは可能であろう。
神羅関係者としては見過ごせない危険な計画を、嬉々として練り上げる部下を目の前に、ツォンは己の不幸を痛感するしかない。
――金のひょうたんキーホルダー…
そうだ。ビッグ○ゥモロウの裏表紙に通販の案内があったではないか。
幸運を呼ぶ金色のひょうたんキーホルダー。
風水でも黄色は幸運を呼ぶと言うしな。
――そういえば、この子も黄色い髪をしている。
写真で笑っている少年にツォンは祈る。
――どうか幸せに。英雄を見放さないでくれますように。


タークス精鋭三名の計画は失敗に終わり、クラウドはセフィロスと同居するようになった。
奇跡的なことに、ツォンの祈りは叶えられたのだ。
養子となったクラウドと養父セフィロスとの仲は円満。
だがそれでも英雄に関するツォンの悩みに終わりがないのは、きっとこれがツォンの運命なのだろう。
※※※


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