こんにちは、びーこです。
タイトルを読んでもらえばなんとなく解っていただけると思うのですが、 ま、そういう逆転な話です。 僕の〜とは違い、シリアスになってしまいました。 設定としてはACですね。あの話の後くらいですか。 見直していませんので、誤字脱字変換ミスはスルーしてください。
※※※ 発熱してから二日目。あと一日もあれば熱は引くだろう。 そして今この高熱以上の苦しさをセフィロスにもたらしている関節痛も、その頃にはかなり収まっているはずだ。 数ヶ月に一度こうやってふいに襲ってくる高熱を伴った関節痛は、普段己の痛みにも他人の痛みにも無頓着なセフィロスを、泣きわめかせる容赦のなさだ。 だがこれは病気ではない。 ただの成長痛なのだと医者は言う。 この医者の言葉を裏付けるように、高熱と痛みが去った後のセフィロスは、身長が10センチ近く一気に伸びているのだ。 確かに子供の成長期というものは、多かれ少なかれ身体の変化に悩まされるものだが、それでも自分の成長が異常なことをセフィロスはすでに理解していた。
――どうして俺は、他人とは違うのだろう。 たとえは身近な例で言うと、デンゼルとマリンだ。 デンゼルは少年。マリンは少女。二人はセフィロスの義父の知人が引き取っている子供達で、その保護者である知人女性と同様に、義父をとても慕っている。 セフィロスは自分の正確な年齢を知らないが、だいたいデンゼルやマリンと変わらないくらいだと考えていた。 女の子であるマリンはともかく、デンゼルはセフィロスト同じ男だ。 成長の度合いも、個人差こそあれども、そうは変わらないだろうに…それがどうだ。セフィロスの知る限りデンゼルは高熱を伴った成長痛に襲われることもなければ、一晩で一気に数センチも身長が伸びることもない。 おかげでセフィロスはデンゼルよりも頭一つほど身長が高くなり、もう少しで義父を追い越してしまうだろう。 ――俺は異常だ。 高熱にうなされ関節痛に苦しみながら、セフィロスはいつも声もなく叫ぶ。 ――俺は普通ではない。 身長だけではない。 たとえば五感。セフィロスは人の視覚が捕らえられない遠いものも見定め、人が聞こえない音も聴く。 鼻も耳もそうだ。セフィロスは人のゲージを振り切ってしまっている。 そして運動能力も。力もそうだ。走ったり飛んだりもそう。 身体能力と同じく知能もけた外れだったセフィロスは、ずっと自分という存在を疑問視してきたのだ。 義父の存在さえなければ、セフィロスはとうに狂っていたに違いない。
――義父さん… 義父を思い出すと痛みが軽くなったような気がする。 思えば義父の存在こそセフィロスにとっての聖域。 義父はセフィロスの異常である秘密の理由を知っているのだろう。 己の養い子の異常な発達にさえ彼は驚かなかった。 ただ静かに当事者であるセフィロスよりも辛い顔で、彼は養い子を抱きしめてくれる。 (セフィロス…痛いか) セフィロス。――と義父に名を呼ばれるのはとても誇らしい。 何より義父はセフィロスが知り限り、ただ一人セフィロスに匹敵する異常な身体能力を有しているのだ。 義父がいる限り、自分はただの異常者ではなくなる。 きっと義父と自分は遺伝子的になんらかの繋がりがあるのだろう。 直接の血縁関係にはどうやらないらしいが、きっと同じ細胞を有しているのに違いない。 義父と同じになるのであれば、――この痛みも耐えてみせよう。 ――義父さん…義父さん… 今回の痛みが去れば、義父と同じ大きさに成長しているかも知れない。 もしそうなっていたら、義父も自分を一人前に扱ってくれるだろうか。 そう扱ってくれたとしたら、セフィロスにも義父の仕事を手伝わせてくれるかも知れない。 ――そうしたら、ずっと一緒にいられる。 実現すればどんなに素晴らしいだろうか。 セフィロスは自分が義父に抱いている想いをすでに受け入れてしまっているのだ。 あの真面目で物堅い義父は、自分の想いを知ればとても驚くだろう。 セフィロスから逃げ出そうとするかも知れないが、セフィロスは彼を逃がしてやる気はない。 ――義父さん。俺の義父さん。 今仕事で家を空けている義父が帰ってきたとき、自分はどのくらいまで成長しているだろうか。 もし義父よりも大きくなっていたらこうしよう。 義父を名前で呼ぶのだ。もう二度と「とうさん」なんて呼ばない。 ――覚悟していろよ、クラウド。 セフィロスの愛するきれいな戦士。
高熱でいつのまにか意識が途切れていたようだ。 人よりも並はずれた感覚が、家の中に自分以外の他人の匂いをかぎ取って、セフィロスはぼんやりと覚醒する。 他人の気配は二人あった。一人はセフィロスの嫌いな女のものだ。 「…驚いたわ。予定より早く戻ってくるんだもの」 彼女は義父の幼なじみだそうだ。その特権を利用して、彼女はいつも義父の側にくっついていて、昔からセフィロスには迷惑な女だった。 そしてあと一人は、 ――クラウドだ… 漏れ聞こえてくる、ごとり、と重い靴の音も、足の運び方も、全て愛する義父のものだった。 義父はどうやら予定よりもかなり早く戻ってきたらしい。 「依頼人の予定が変更になったんだ。ジュノンから引き返してきたんだが…」 ――引き返してきて良かった。 クラウドは確かにこう言った。 愛しい人の言葉は、セフィロスの痛みを和らげていく。 「すまなかったな、ティファ。セフィロスの様子を見てくれてたんだろ」 「まあね。と言っても病気じゃないんだから、何にも出来ないんだけどね」 「それでも助かった。セフィロスも一人だと心細いだろうしな」 まさか!と、ティファは皮肉たっぷりに言い切る。 「セフィロスにそんな感情なんてないわよ」 「ティファ、わかってくれ――」 「――セフィロスはまだ子供なんだよ」 「子供なのはクラウドの前だけよ」 本当に不快な女だ。クラウドの前だと言うのに辛辣な上に、おまけに正しい。 「そうだとしても――今のセフィロスはオレの息子なんだ」 「オレはセフィロスを養育する責任がある」 二人の間を過去という重苦しい沈黙が包む。 いつもこうだ。クラウドとティファの間には、セフィロスが存在する限り互いに相容れない溝がある。 そしてこの沈黙に負けるのはいつもティファ。 「――…きっと前みたいにセフィロスはクラウドを連れていっちゃうんだろうね」 今度こそ私の手の届かない。遠い遠いところに。 「……ティファ」 呼び止めるクラウドの声を無視して、ティファの気配はなくなっていった。
次にセフィロスが覚醒した時には、クラウドがいた。 ベッドの側に椅子を置いて、クラウドは静かにセフィロスを見つめている。 「――起きたか?」 「熱は下がったが、痛みはどうだ?」 そう言えば痛みもすっかりとなくなっていた。 感じるのは急激な成長でぎくしゃくした身体のバランスの悪さだけだ。 クラウドに答えようとしても声帯はまだ上手く機能しない。 「…あっ、うぅ」 あえぎ声しかでないセフィロスをクラウドはやんわりと制して、 「水を飲め。もう少し元気になったら何か旨いものでも作ってやる」 グラスに水を注いで差し出してくれた。 グラスを握るクラウドの手。あれほどの大剣を巧みに操るのが信じられないほどに、クラウドは末端まで繊細に出来ている。 グラスを受け取ろうとして、己の手を伸ばして気がつく。 グラスを握るクラウドの手と、伸ばしているセフィロスの手の大きさが逆転している。 つまりセフィロスはクラウドのサイズを越えたのだ。 「…――く、クラ、ウ…ド」 もつれる舌と言うことをきかない声帯を必死で働かせて、セフィロスは愛しい人の名を初めて呼ぶ。 「…?」 いぶかしげなクラウドに構わず、セフィロスはクラウドの手ごとグラスを握った。 「ク、らうド…」 まだ上手くいかない。 「…クラウ、ド――」 三回目の呼びかけで、やっとまともに名を呼ぶことが出来た。 握りしめているクラウドの手は細かに震えている。表情はすっかりとなく、かなり動揺しているのがはっきりと伝わってきた。 そして――名を呼んだセフィロスへの返答はない。 クラウドが今どう感じているのかセフィロスは知らない。 自分とクラウドの間にある“過去”というのが何であるのか、セフィロスはわからない。 でも嬉しかった。 クラウドの名を呼べて、幸せだった。 そうとても――幸せだった。 ※※※
拍手ありがとうございます。 すでに拍手数が先月を越えてしまいました。 嬉しいです。
13日13時のRさま> ブッダなキャラ達にウハウハしてもらって、ありがとうございます。 クラウドモデル阿修羅は、かの有名な興福寺のものです。 ずばり上半身裸の少年像。 あの姿はクラウドならばピッタリだと確信しています。
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Y子
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B子さんへ私信ですが・・・
このネタ好きです。 埋もれそう。 埋もれそうだぁ〜〜保存してますか?
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05/15(THU)07:49:04
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びーこ
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ばっちり保存していますので、ご安心ください。
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05/15(THU)16:21:43
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