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+ '08年04月12日(SAT) ... 僕のおとうさん +

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こんにちは、びーこです。
更新のお知らせの上にどどんと乗っかります。

タイトルは『僕のおとうさん』
なんとなく思いついた半分ギャグです。
義父セフィロスト義姉エアリスに挟まれた、クラウド君のけなげな日常。のつもりです。
気を抜いてお読みください。

***
乾燥機はもちろん備え付けてあるが、天気の良い日はなるべく戸外で洗濯物を干すのが、クラウドの習慣になっていた。
大都会ミッドガルの薄汚れた大気でも、日の光はさしてくるのだ。
乾燥機を使うよりも、やはり日の光で乾かした方が、乾き具合が断然違う。
少なくともクラウドはそう信じている。
もっともその考えがどこからもたらされたものであるのか、クラウド自身にもよくはわからないままなのだが。

クラウドは今年14歳になる。
家族は父親だけ。姉が一人いるが、10歳の頃から離れて暮らしているために、年に一度か二度顔を合わせるくらいだ。
実は父も姉も義理なので、本当の血縁ではない。
だから血縁という意味での家族は、たぶん誰もいないのだろう。

一番ふるい記憶を遡ってみると、すでにそこには一つ違いの姉エアリスの姿があった。
広い部屋の片隅にエアリスと二人でくっついている。
目の前には大きな画面のテレビ。そこから流れてくる音の記憶はすでに忘れてしまっていたから無声で無音。
たぶん今から考えると何かのニュース番組をやっていたのだと思う。
画面は小刻みに切り替わり、そこに一人の男性の姿が現れた。
男性と言ってもまだ若い。成人したばかりくらいの青年だろう。ただしその外見、容姿は信じられないほど類い希であったが。
エアリスが小さな声を上げる。
「クラウド。――アレ、お父さんだヨ」
長い銀髪。幼心にでもはっきりとわかる、端麗な容姿。
初めて目にする“父親”の姿は、クラウドの頭に観念としてインプットされている父親像とはかけ離れているではないか。
第一、 目の色も髪の色もクラウドのともエアリスのとも全然違っている。
不安げなクラウドなどエアリスにはお見通しだったのだろう。
彼女はとても大人びた表情で、
「戸籍の上でのお父さんなのヨ」
このときクラウドは初めて義父という言葉を知ったのだ。
血の繋がりはない書類上だけの関係。第一クラウドはこの“父親”とまだ会ったこともないのだ。
困惑するクラウドの前でエアリスは淡々と続ける。
「それにネ。わたしとクラウドも義理の姉弟なんだし」
義理の姉弟――この意味はこのときには解らなかった。
クラウドはずっとエアリスと一緒に暮らしてきた。厳密に言えば、エアリス以外の誰とも一緒にいなかったのだ。
だから家族という言葉が一番しっくりくるのは、エアリスしかいなかったのに。
――エアリスは、僕のお姉さんじゃないのかなあ…
それならば、もう一緒には暮らせないのだろうか。
幼い金色の頭でクラウドが必死に考えている様子に、エアリスはただ優しく微笑みかける。
そう言えば、記憶にあるエアリスは、一つしか年の差がないなんて信じられないくらい、大人びたところがあった。
今ではむしろ子供っぽいくらいなのに、当時のエアリスはクラウドの実質の保護者だったのだ。
「わたし、クラウド大好きだヨ」
「僕も…エアリスが好き」
「わたしたち、ずっと姉弟だからネ」
「――うん」
手を握りあって互いの体温を感じる。
当時たぶんクラウドは五歳くらいだっただろうか。
こうした二人きりの世界はクラウドが10歳になるまで続き、唐突に途切れることになる。
エアリスと切り離されて一人きりになったクラウドは、それまで会ったことすらもない義父と暮らすようになった。

すっかりと乾ききった洗濯物を取り入れるのは、本当に気持ちがよい。
皺を伸ばして丁寧に取り込むと、次はアイロンだ。簡単にプレス出来る機械があるので、そう手間はかからない。
義父と暮らすようになってから早4年。
この四年間、クラウドはハウスキーパーの腕をめきめきと上達させてきた。
料理を筆頭に掃除や洗濯物、細々な雑用に至るまで、この家を切り盛りさせているのは、クラウドなのだ。
神羅という会社の軍隊に所属している義父は、ある意味生活無能力者だった。
軍人としては際だって有能であるが、日常においては無頓着すぎる。
彼がクラウドを引き取ってくれたのは幸運だったが、滅多に帰ってこない彼の元でクラウドが健全に生活していくためには、家事を覚えるしかなかったのだ。
クラウドが来る前は相当酷い生活を送っていたのだろう。
家はだだっ広いだけで、食料もなければ生活用品すらも揃っていない。
服さえもまともにないのには困り果てた。
人見知りが激しかったクラウドだったが、生き抜くためには自己主張を通すしかなく、常識離れした義父に様々な要求を通したのだ。
――だって服の畳み方も知らなかったんだもんなあ。
昔を思い出しながらもスムーズにプレスしていくクラウドの視界を、いきなり銀色の輝きが覆う。
すぐに耳元で、
「何を笑っている――」
はっきりと通る大人の声。
「ひゃあっ」
耳朶に直接響く音声に、クラウドは首をすくめる。
振り返らなくとも解っている。この家に暮らすのはクラウドとあと一人、義父だけなのだ。
「もうっ」
驚きで火照る頬を押さえながら、クラウドは振り向く。
「いきなり話しかけてくるなって何度も言ってるだろっ」
一般人がソルジャーの気配など、そう容易く読めるはずがないのだ。
しかもただのソルジャーではない。ソルジャーの中のソルジャー1st。神羅の英雄と言われているセフィロス相手に、子供でしかないクラウドが勝てる訳がないだろうに。
そうだと解っていて、この義父はこういう悪戯を繰り返してくる。
驚き怒るクラウドの反応で楽しんでいるのだ。
まったくタチが悪い。

クラウドが振り向ききる前に、逞しい腕がクラウドを背後から抱いた。
「何を笑っていた」
また耳元に囁かれる。
クラウドは動揺を必死で押さえながら、
「なんでもない」
「父親に言えないことか?」
「あんたは父親じゃない。義理の父だろう」
「戸籍上では立派な父親だ」
明らかに拗ねている口調に、クラウドに怒りは静まっていく。
このところ、そうクラウドが神羅軍に入隊すると決めてから、ずっとこうなのだ。
セフィロスはあくまでもクラウドの入隊に反対の立場をとってきた。
結局はクラウドの意志が尊重されて、セフィロスもしぶしぶではあるが納得してくれたのだが、やはりどうにも割り切れないままでいるらしい。
一回り年下の義理の息子であるクラウドをここまで大切に想ってくれているのは、素直に有り難いのだが、クラウドにはクラウドの考えがある。
「セフィロス――オレ、あんたの力になりたいんだ」
そう。庇護されているだけの子供ではいたくない。
エアリスの次に家族になってくれたセフィロスの役に立ちたい。
そのためにクラウドは入隊を志したのだ。
「わかっている…――」
だが、
「理解したくはない」
クラウドを拘束する腕の力が強まった。
お気に入りのおもちゃを手放さない、まるで子供みたいだ。
「入隊すれば新兵は寮住まいだ」
「セフィロス、週末には帰ってくるから」
「俺がミッドガルにいるとは限らない。離ればなれになるだろう」
「一年くらいだけだよ。そうセフィロスも言ったじゃないか」
「一般兵までは俺の目は届かない」
「オレももう14だ。自分のことは自分で出来る」
それは解っている――こう囁く声はため息だ。
「お前はしっかりしている。どんな困難でもうち破るだろう」
だが、
「耐えられないのは俺だ…」
クラウドがやってくる前は、一人でいるのが日常だったのに。
今ではこの家にクラウドがいないなんて、想像もしたくない。
「…しばらくの間だけだから。オレ、絶対ここに帰ってくるから」
「当然だ。俺から離れるなんて言ったら、永遠に閉じこめてやるからな」
「セフィロス…あんた、子供みたいだなあ」
「寮の部屋が決まったらすぐに教えろ」
「教えないって言ったら?」
「俺の権限ですぐに解ることだ」
あ〜あ。きっと寮までセフィロスはやってくるのだろう。
神羅の英雄の義理の息子だって、隠していてもすぐにバレるんだろうなあ。
――でも嬉しい。
オレと離れて寂しいって言ってくれて。
オレを家族だって言ってくれて。
「寮に来てもいいよ、セフィロス」
「本当か?」
「訓練の邪魔さえしなければ、いつでも来ればいい」
素直には言えないけれど、セフィロス、オレもあんたと離れるのは寂しいから。
身体を素直に預けると、頬にセフィロスのキスが落ちてきた。

セフィロス――神羅の英雄と呼ばれる彼には、ほかにも様々な呼び名がある。
敵からは冷酷な銀鬼とも、死に神とも呼ばれ。
比類のない強さ故に、味方からも一目置かれる圧倒的な存在である。
だがセフィロス自身は他人から押しつけられた価値観など認めてはいない。
彼が認めているのは、クラウドの義父であるという自身だけなのだ。
***

とりあえず、おしまい。


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