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+ '08年04月14日(MON) ... 僕のおとうさんその2 +

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前に書いたのと同設定となります。

***
人が生きていく上では、現在の自分の有り様を決定していくターニングポイントというものに、幾度か遭遇するものだ。
14歳のクラウドのまだそんなに長くない人生を振り返ってみると、このターニングポイントらしきものは3つある。
一つ目はクラウドの記憶のない幼い頃。
血の繋がっていないエアリスと姉弟として暮らすことになった時であろう。
どうしてそうなったのかの成り行きなど幼すぎて何も覚えてはいない上に、クラウドは意思表示さえ出来なかったが。
三つ目はつい半年ほど前のこと。神羅軍の入隊を決意して、実際に入隊試験に臨んだことだ。
これは自分の意志で決めた。
この決断によって自分の人生がこれからどうなるのかは未知数だが、避けては通れない道なのだと十分に考え納得している。
だが二つ目のターニングポイントさえなければ、クラウドは神羅入隊という道など選択しなかったであろう。
クラウドが自身の人生において初めて自分の意志で迎えたターニングポイントは、それまで顔もあわせたことのない、名ばかりの義父であったセフィロスと共に暮らす決断をしたことであった。

それはいきなりのことだった。
それまでは貝の殻ように一対として生きてきた義姉エアリスが、もう戻ってこないと知らされたのは本当に唐突であったのだ。
もしかしたらクラウドがもっと大人であったのならば、何らかの前兆をかぎ取っていたのかも知れない。
でもクラウドは子供だった。その上世間などなにも知らされていない、純粋培養された子供だったのだ。
当時二人で住んでいた大きな屋敷は古かった。
歩くとギシギシときしむ廊下。見上げても届かない高い天井。ぶら下がっている照明器具は、今から思うととてもクラシカルなシャンデリアだった。
どんな良い天気の日でも外に出ることは許されずに、エアリスとクラウドは常に屋敷のはめ殺しの窓から、じっと外の世界を眺めているしか出来ない。
屋敷で暮らしているのは、厳密に言えばエアリスとクラウドの義姉弟だけではなかった。
幼い二人の世話をするべく、初老の女性が一緒に暮らしていた。彼女が実質二人の親代わりだったのだが、会話をしたという記憶はない。たぶん口が利けなかったのだろう。
その他にこれは入れ替わりとなっていたが、よく白衣の一団がやってきていた。
白衣の一団は年齢も様々で男女ともメンバーに含まれていた。
彼らはエアリスとクラウドにはとても友好的で、そのうちの数名が交代で教師となってくれたのだ。
どんな風に教えてもらったのかはもう朧気であるが、彼らはただの教師役だけではなかったと思う。たぶん授業の合間に何かの実験のようなテストをさせられていたのだろう。
初めは二人一緒に受けていた授業が、そのうちに個別となり、そしてある日クラウドは唐突に言われたのだ。
エアリスはもう一緒にはいられないのだ、と。

――どうして?
――なぜ?
何度問いかけてみても答えは返ってこない。
そしてクラウドにエアリスとの決別を告げた人〜白衣の一団の一人であったが〜も、引き離したのは良いが、これからクラウドをどう扱っていくべきなのか決めかねていたのだ。
そのうちに以前から見知っている人がやってくる。
白衣を着ている一団の中でも、その人はとても優しい人で、エアリスとクラウドがとても懐いているおじさんだった。
(クラウド君はこれから誰と暮らしたい?)
エアリス――と言いたいところだが、それがもう無理なのは幼いクラウドにも解っていた。
――エアリス以外で暮らしたい人なんて…わからないよ。
――エアリスはお姉さんだったのに…
家族だったのだ。それがたとえ義理の関係だとしても。
――義理…
クラウドは思い出す。
自分にはエアリス以外にも義理の家族がいることを。
美麗な容姿。長い銀髪がなびくその姿。
(…お義父さん)
(僕、お義父さんに会いたい)
優しいおじさんはクラウドの返事にとても驚いていた。
しばらく考え込んでから、
(わかった――話をしてみるよ)
優しいおじさんの顔が少し悲しげだったのは、記憶に強く残っている。

それからどうなったのか、数日後クラウドは見上げるほど高いマンションの最上階にいた。連れてきてくれたのは黒いスーツを着ている、クラウドの知らない人だ。
その人は入り口ロックを解錠すると、だだっ広い室内にクラウドを入れる。
そして一言、
(ここで待つように)
とだけ告げると去っていった。
見知らぬ場所で一人っきりで「待て」と言われても、クラウドはそんなに怖くはなかった。待つのは慣れ親しんだこと。あの古い屋敷の中では待つのは当たり前だったのだ。
エアリスを待つ。食事を待つ。朝がくるのを待つ。夜がやってくるのを待つ。
毎日がそれの繰り返しだったのだから、今更どうってことない。
クラウドは静かに座って待った。
そのうちに日が沈む。夜がやってきた。
お腹が空いてきたのを感じた時には、すでに日はとっぷりと暮れていた。
だが外は全然暗くはない。派手でけばけばしいネオンの洪水が、辺り構わずミッドガルの夜を照らしていたのだ。
立ち上がり室内を探検してみたが、食物となるべきものは何もない。
果物もなければレトルト食品もないのだ。失礼だとは思いつつ冷蔵庫も覗いてみた。クラウドなど三人分は収まってしまいそうな大きな冷蔵庫の中はやはり空っぽで、かろうじて入っているのはアルコールだけだ。
蛇口をひねると水は豊富に出るので、クラウドは飢えを水で押さえることにする。
トイレに行くのと眠る以外、クラウドは水を飲みながらひたすら待った。
待って待って、それでも誰も来ない。
でも不思議と寂しくはなかった。この室内は希薄ではあるものの、人が住んでいる気配はあったのだから。
どういう仕組みなのかテレビも電気も点かない。ネオンの灯りをぼうっと眺めながら、クラウドは床の上で眠りにつく。
――エアリス…
僕、初めて外に出たんだよ。
外には人がいっぱいいたよ。
車にも乗ったよ。
怖くなかった。いつも「恐がりね」ってエアリスに言われていたけど、外は怖くなかったんだ。
心配しないで、エアリス。
僕は今も怖くない。だって待っていれば良いだけなんだから。

金髪の頭がひょこひょこと動く様子は、すでにこの部屋では当たり前のものだ。
もうすぐ自分の手元から巣立っていく義理の息子からセフィロスは目が離せない。
ずっとクラウドを凝視しているから、朝食はすでに冷めてしまった。
と、クラウドがセフィロスを見る。
「セフィロス!早く食べないと遅刻だよ」
「遅刻してもかまわない…」
「駄目だよ。ちゃんと食べて」
ため息混じりでクラウドが促す。
渋々とフォークを手に取ったセフィロスだったが、視線は未練がましくクラウドから離れない。
だだっ子のようなセフィロスにクラウドは苦笑してしまう。
「オレが寮に入っても、ちゃんと食事はとれよな」
「――面倒な」
ぼそりと零れた本音にクラウドは声を上げて笑ってしまう。
だって、
「食事は大事だよ」
「ほら、覚えてる?」
――オレが初めてここに来た時のことを。
「ああ…」
――もちろん、覚えている。
「俺がミッションから帰ってきたら、お前が床の上で寝ていたんだ」
「寝ていたんじゃないよ。空腹のあまり気絶してたんだよ」
クラウドは面白そうにしゃべるが、あの時のクラウドは笑い話に出来るような状態ではなかった。
空腹のあまり気絶していたのではなく“餓死”しかかっていたのだ。
クラウドをこの部屋に連れてきたタークスは、セフィロスの予定に変更があり、しばらく家主が帰ってこないとは知らなかったのだ。
もし知っていればここにそのまま置き去りにはしなかっただろう。
結局クラウドは四日もの間水だけで生活をして、餓死寸前までとなる。
ミッションから戻ってきたセフィロスがクラウドを神羅研究室まで運ばなければ、そのまま死んでいたに違いない。
「こんなに広い部屋なのに、食べ物はなんにもなかったんだもんな」
果物もなければレトルト食品さえもない。
もちろんお菓子の類もなければ、甘いものもない。
当時セフィロスはこの部屋に寝に帰っていただけだった。食事などとったこともなかったのだ。

目の前でやたらと楽しげな義理の息子に、セフィロスは心中で語りかける。
――覚えているかだと!?
忘れるはずなどないというのに。
とんだアクシデントに振り回されたセフィロスが、やっと解放されて自宅に戻ってきたのは予定よりも四日後のことだった。
いつものようにセキュリティを解除すると、静脈照合をする。
こうやってこの部屋の住人だと認めさせなければ、電気は点かない仕組みになっているのだ。
皓々と照らされた室内は普段と同じく、見慣れたまま。
重苦しい革の戦闘服を脱ごうとした時、セフィロスは違和感を覚える。
辺りを見渡してみても、何も変わりない筈なのに――どこか、何かが変化している気がしてならない。
リビングから私室へ。私室からベッドルーム、バス、トイレまで見て回るが、やはりどこも変わっていない。
だがそれでもセフィロスから違和感は拭えない。
――気配がするな…
自分以外の誰かの匂いのようなものがする。
再びリビングに戻って、セフィロスはやっと発見したのだ。
大きなソファの後ろに丸まっている小さな塊を。
金色の頭をした小さな塊は、まったく動こうとはしない。
しばらく観察して、セフィロスはこの塊が少年なのだと知った。同時によみがえるのは、ミッションに出る前にガスト博士から頼まれたこと。
(クラウドを覚えているかね)
クラウド――と名前を出されても、最初はピンとこなかった。
戸籍上のことだと養子にした子供の存在など、セフィロスは忘却の彼方に押しやって久しかったのだから。
実はセフィロスは画像でクラウドに会っていたのだ。
その時見せられたクラウドの姿は、まだ本当に幼く、形自体がやたらと丸かった印象しかない。
その印象に比べると目の前で塊となっているのは、やたらと細い。
――もっと丸々していたよな。
成長するのだとはセフィロスだとて解っているが、あの幼い丸みを帯びたままで、手足が長くなるのだと思っていた。
その想像から比べると、目の前の少年はずっとしなやかだ。
セフィロスは少年に手を伸ばす。クラウドだと解れば、このまま寝かせておく訳にもいかない。
とりあえず起こそうと伸ばした先にある感触は、溶けて消えてしまいそうに淡い。
――っ!?
これ以上触れれば壊してしまいそうで、セフィロスは躊躇してしまう。
そしてしばらくの間、セフィロスは塊となっているクラウドの側に座り込み、しげしげと初めて遭遇する実物の義理の息子を観察していたのだ。

「――可愛かったな…」
「え!?」
やっと朝食に手をつけはじめたかと思ったら、急に真顔になったセフィロスが発した言葉に、クラウドはついていけない。
「可愛かったと言っている」
「何が?」
縦に裂けた翠の眼差しが、正面からクラウドをとらえた。
「お前だ――」
「ソファの後ろで丸くうずくまっていた姿は見飽きなかったな」
――ソファの後ろで丸くうずくまっていたって!?
――そうか…最初会った時のことだ。
クラウドが餓死しかかっていた時のこと。
その後いくら経っても目覚めず、ろくに身動きもしないクラウドに異変を感じたセフィロスが、神羅の研究室に運んでくれたのだ。
処置を受けている最中にクラウドの意識が戻った。
そこでやっとセフィロス〜義父〜に会えたのだ。
テレビで見たのよりもずっと美しい義父だったが、どうしてだかクラウドはその無表情の下に流れている、確かな感情を察知する。
――この人がお義父さんで嬉しいな。
素直に伸ばした手は、そっと包まれた。その温もりは待っているだけの価値が十分にあるものだ。クラウドにはそう信じられた。

クラウドは頬に血が上ってくるのを感じる。
このところずっとこうだ。セフィロスに見つめられると身体がふわふわしてくるのだ。
気を取り直すと、わざと声を大きくして、
「早く食べろよ。ザックスが迎えにくるぞ」
セフィロスは渋々と食事を再開する。
「セフィロス、今日は早く帰って来れるのか?」
「もちろんだ」
クラウドと過ごせるのは、あと少し。
その大切な時間は誰にも邪魔させるつもりはない。無理にでも仕事は終わらせる気だ。
「じゃあとびきりのごちそう作るから、食べないで帰って来いよ」
生意気そうにそう言った義理の息子を、セフィロスはこの世でもっとも尊いと感じた。

***
とりあえずおしまい。

びーこ 拍手&♪、ありがとうございます。

下からですみませんが、拍手レスです。

12日22時、僕のおとうさんについてくださった方>
反応ありがとうございます。
義父は排他的なところがあるので、自分の影響については認知外だと思われます。
また義息子も世間知らずですので、英雄である義父についてどれだけのものかは、
客観的には判断出来ていません。
ですので二人ともああいう発言を平気でするのですが、
本当に義父が寮に訪問したらとんでもない騒ぎになり、
義息子はその時になって初めて頭を抱えるハメになるのでしょう。
今日も貼り付けてみました。
良かったらお楽しみください。

13日22時Rさま>
五つ星パロをお読みいただきまして、ありがとうございます。
どちらをファティマにするべきなのか、正直悩みました。
どちらでもファティマになれるだけの容姿なのですからね。
この話もたぶん続きますが、よかったら最後までお付き合いください。
04/14(MON)19:59:48  [3-602]


+ '08年04月12日(SAT) ... 僕のおとうさん +

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こんにちは、びーこです。
更新のお知らせの上にどどんと乗っかります。

タイトルは『僕のおとうさん』
なんとなく思いついた半分ギャグです。
義父セフィロスト義姉エアリスに挟まれた、クラウド君のけなげな日常。のつもりです。
気を抜いてお読みください。

***
乾燥機はもちろん備え付けてあるが、天気の良い日はなるべく戸外で洗濯物を干すのが、クラウドの習慣になっていた。
大都会ミッドガルの薄汚れた大気でも、日の光はさしてくるのだ。
乾燥機を使うよりも、やはり日の光で乾かした方が、乾き具合が断然違う。
少なくともクラウドはそう信じている。
もっともその考えがどこからもたらされたものであるのか、クラウド自身にもよくはわからないままなのだが。

クラウドは今年14歳になる。
家族は父親だけ。姉が一人いるが、10歳の頃から離れて暮らしているために、年に一度か二度顔を合わせるくらいだ。
実は父も姉も義理なので、本当の血縁ではない。
だから血縁という意味での家族は、たぶん誰もいないのだろう。

一番ふるい記憶を遡ってみると、すでにそこには一つ違いの姉エアリスの姿があった。
広い部屋の片隅にエアリスと二人でくっついている。
目の前には大きな画面のテレビ。そこから流れてくる音の記憶はすでに忘れてしまっていたから無声で無音。
たぶん今から考えると何かのニュース番組をやっていたのだと思う。
画面は小刻みに切り替わり、そこに一人の男性の姿が現れた。
男性と言ってもまだ若い。成人したばかりくらいの青年だろう。ただしその外見、容姿は信じられないほど類い希であったが。
エアリスが小さな声を上げる。
「クラウド。――アレ、お父さんだヨ」
長い銀髪。幼心にでもはっきりとわかる、端麗な容姿。
初めて目にする“父親”の姿は、クラウドの頭に観念としてインプットされている父親像とはかけ離れているではないか。
第一、 目の色も髪の色もクラウドのともエアリスのとも全然違っている。
不安げなクラウドなどエアリスにはお見通しだったのだろう。
彼女はとても大人びた表情で、
「戸籍の上でのお父さんなのヨ」
このときクラウドは初めて義父という言葉を知ったのだ。
血の繋がりはない書類上だけの関係。第一クラウドはこの“父親”とまだ会ったこともないのだ。
困惑するクラウドの前でエアリスは淡々と続ける。
「それにネ。わたしとクラウドも義理の姉弟なんだし」
義理の姉弟――この意味はこのときには解らなかった。
クラウドはずっとエアリスと一緒に暮らしてきた。厳密に言えば、エアリス以外の誰とも一緒にいなかったのだ。
だから家族という言葉が一番しっくりくるのは、エアリスしかいなかったのに。
――エアリスは、僕のお姉さんじゃないのかなあ…
それならば、もう一緒には暮らせないのだろうか。
幼い金色の頭でクラウドが必死に考えている様子に、エアリスはただ優しく微笑みかける。
そう言えば、記憶にあるエアリスは、一つしか年の差がないなんて信じられないくらい、大人びたところがあった。
今ではむしろ子供っぽいくらいなのに、当時のエアリスはクラウドの実質の保護者だったのだ。
「わたし、クラウド大好きだヨ」
「僕も…エアリスが好き」
「わたしたち、ずっと姉弟だからネ」
「――うん」
手を握りあって互いの体温を感じる。
当時たぶんクラウドは五歳くらいだっただろうか。
こうした二人きりの世界はクラウドが10歳になるまで続き、唐突に途切れることになる。
エアリスと切り離されて一人きりになったクラウドは、それまで会ったことすらもない義父と暮らすようになった。

すっかりと乾ききった洗濯物を取り入れるのは、本当に気持ちがよい。
皺を伸ばして丁寧に取り込むと、次はアイロンだ。簡単にプレス出来る機械があるので、そう手間はかからない。
義父と暮らすようになってから早4年。
この四年間、クラウドはハウスキーパーの腕をめきめきと上達させてきた。
料理を筆頭に掃除や洗濯物、細々な雑用に至るまで、この家を切り盛りさせているのは、クラウドなのだ。
神羅という会社の軍隊に所属している義父は、ある意味生活無能力者だった。
軍人としては際だって有能であるが、日常においては無頓着すぎる。
彼がクラウドを引き取ってくれたのは幸運だったが、滅多に帰ってこない彼の元でクラウドが健全に生活していくためには、家事を覚えるしかなかったのだ。
クラウドが来る前は相当酷い生活を送っていたのだろう。
家はだだっ広いだけで、食料もなければ生活用品すらも揃っていない。
服さえもまともにないのには困り果てた。
人見知りが激しかったクラウドだったが、生き抜くためには自己主張を通すしかなく、常識離れした義父に様々な要求を通したのだ。
――だって服の畳み方も知らなかったんだもんなあ。
昔を思い出しながらもスムーズにプレスしていくクラウドの視界を、いきなり銀色の輝きが覆う。
すぐに耳元で、
「何を笑っている――」
はっきりと通る大人の声。
「ひゃあっ」
耳朶に直接響く音声に、クラウドは首をすくめる。
振り返らなくとも解っている。この家に暮らすのはクラウドとあと一人、義父だけなのだ。
「もうっ」
驚きで火照る頬を押さえながら、クラウドは振り向く。
「いきなり話しかけてくるなって何度も言ってるだろっ」
一般人がソルジャーの気配など、そう容易く読めるはずがないのだ。
しかもただのソルジャーではない。ソルジャーの中のソルジャー1st。神羅の英雄と言われているセフィロス相手に、子供でしかないクラウドが勝てる訳がないだろうに。
そうだと解っていて、この義父はこういう悪戯を繰り返してくる。
驚き怒るクラウドの反応で楽しんでいるのだ。
まったくタチが悪い。

クラウドが振り向ききる前に、逞しい腕がクラウドを背後から抱いた。
「何を笑っていた」
また耳元に囁かれる。
クラウドは動揺を必死で押さえながら、
「なんでもない」
「父親に言えないことか?」
「あんたは父親じゃない。義理の父だろう」
「戸籍上では立派な父親だ」
明らかに拗ねている口調に、クラウドに怒りは静まっていく。
このところ、そうクラウドが神羅軍に入隊すると決めてから、ずっとこうなのだ。
セフィロスはあくまでもクラウドの入隊に反対の立場をとってきた。
結局はクラウドの意志が尊重されて、セフィロスもしぶしぶではあるが納得してくれたのだが、やはりどうにも割り切れないままでいるらしい。
一回り年下の義理の息子であるクラウドをここまで大切に想ってくれているのは、素直に有り難いのだが、クラウドにはクラウドの考えがある。
「セフィロス――オレ、あんたの力になりたいんだ」
そう。庇護されているだけの子供ではいたくない。
エアリスの次に家族になってくれたセフィロスの役に立ちたい。
そのためにクラウドは入隊を志したのだ。
「わかっている…――」
だが、
「理解したくはない」
クラウドを拘束する腕の力が強まった。
お気に入りのおもちゃを手放さない、まるで子供みたいだ。
「入隊すれば新兵は寮住まいだ」
「セフィロス、週末には帰ってくるから」
「俺がミッドガルにいるとは限らない。離ればなれになるだろう」
「一年くらいだけだよ。そうセフィロスも言ったじゃないか」
「一般兵までは俺の目は届かない」
「オレももう14だ。自分のことは自分で出来る」
それは解っている――こう囁く声はため息だ。
「お前はしっかりしている。どんな困難でもうち破るだろう」
だが、
「耐えられないのは俺だ…」
クラウドがやってくる前は、一人でいるのが日常だったのに。
今ではこの家にクラウドがいないなんて、想像もしたくない。
「…しばらくの間だけだから。オレ、絶対ここに帰ってくるから」
「当然だ。俺から離れるなんて言ったら、永遠に閉じこめてやるからな」
「セフィロス…あんた、子供みたいだなあ」
「寮の部屋が決まったらすぐに教えろ」
「教えないって言ったら?」
「俺の権限ですぐに解ることだ」
あ〜あ。きっと寮までセフィロスはやってくるのだろう。
神羅の英雄の義理の息子だって、隠していてもすぐにバレるんだろうなあ。
――でも嬉しい。
オレと離れて寂しいって言ってくれて。
オレを家族だって言ってくれて。
「寮に来てもいいよ、セフィロス」
「本当か?」
「訓練の邪魔さえしなければ、いつでも来ればいい」
素直には言えないけれど、セフィロス、オレもあんたと離れるのは寂しいから。
身体を素直に預けると、頬にセフィロスのキスが落ちてきた。

セフィロス――神羅の英雄と呼ばれる彼には、ほかにも様々な呼び名がある。
敵からは冷酷な銀鬼とも、死に神とも呼ばれ。
比類のない強さ故に、味方からも一目置かれる圧倒的な存在である。
だがセフィロス自身は他人から押しつけられた価値観など認めてはいない。
彼が認めているのは、クラウドの義父であるという自身だけなのだ。
***

とりあえず、おしまい。


+ '08年04月11日(FRI) ... 更新しました +

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おひさしぶりのY子です。
五星落涙2話〜7話まで更新しました。あと残りは2話ほどです。

更新がぱったりの中拍手や♪の方での励ましや、見てくださった合図を送ってくださりありがとうございます。
嬉しく思っています。



+ '08年04月08日(TUE) ... +

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お久しぶりの拍手レスです。

5日13時のRさま>
こんにちは、ようこそいらっしゃいました。
裏側クラウドをお気に入りくださいまして、ありがとうございます。
これからもいろいろと妄想していきますが、
お付き合いくださいますとありがたいです。
コメントありがとうございました。

そのほかにも拍手、ありがとうございます。
またよろしくお願いいたします。

びーこ 書き忘れ。
↑びーこでした。
04/08(TUE)11:16:51  [236-3539]


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