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+ '08年03月18日(TUE) ... ブッダという真理その19〜ラスト +

ラストです。
このメモではハードなシーンはございませんので、
安心してお読みください。

***
暫くの間、この笑いは続いた。
涙まで滲み、腹筋までもが痛くなってきて、ようやく笑いは静まってきた。
いつの間にか二人の距離はかなり近くになっていた。
顔と顔が、やけにくっついている。
クラウドの瞳の青とセフィロスの翠が、見事に合わさった時、ごく自然でさりげない動作でセフィロスの大きく美しい手が、小さく尖ったクラウドの顎に掛かった。
目はどちらも閉じない。呼気、ひとつ分ほどの短い間、非天と人二人の唇が合わせられる。
触れ合って、離れて、再び触れ合って。
どうして?とはどちらも問わない。
蜜蜂が蜜を吸うように、セフィロスはクラウドの薄紅色の唇の合わせ目に吸い付く。
元より半裸の二人。触れ合うのは容易い。
クラウドは武人としての興味もあり、逞しくも完璧な造形美を持つセフィロスに触れていった。
掌で何度も何度もシルエットをなぞるようにしていると、セフィロスが金色の髪の間をぬって、少し尖った耳までしゃぶってきた。
「クラウド――」
しゃぶりながらクラウドの名を吹き込んでくる。
「お前、妻はいるのか」
「いいや…いないが」
「子はいるのか」
「養い子はいる」
こうして会話をしている間にも、二人の手は止まらない。
仰向けに横たわるクラウドの上に、逞しいセフィロスが乗り上がってくる。
これは愛撫と呼ばれるだけのものなのだろうか。セフィロスは額の生え際から順々に下へと、クラウドを舐め回している。
額が終わると眉を。次は目を。青い眼球までもそっと口づける。
つんと尖った鼻の頭を軽く噛むと、次は舌全体で頬を舐め回す。
唇の輪郭線を辿り口内へと。顎、首、喉仏も軽く噛まれた。
肩までいくと、腕を一本一本とられて、指先から腋の下まで。
小指の先ほどの大きさもない小さな乳首を、懸命に吸ってくる。まるで乳を求める赤子のように。
「養い子は男か女か」
「女だ」
「名は」
「舎脂――」
いや、これは阿修羅族の外での呼び名だ。
彼女が生みの母から贈られたのは、
「エアリスと言う」
神王と非天という立場の違いを越えながら、友好関係を結んでいるクラウドとザックスであるが、二人の関係が上手くいっているのには、エアリスの存在も大きい。
どうやらザックスはエアリスに並々ならぬ想いを抱いているらしく、養父であるクラウドとしては、見守るしかないというのが現状なのだ。
そんなことを考えている間にも、セフィロスは行為を進めていく。
背中を舐められた後、裳を解かれた。薄い下着も一緒にとられてしまい、クラウドは身につけている装飾品以外生まれたての裸となる。
人の交わりと天族との交わりは似ているようでやはり異なる。
天族としての格式が高ければ高いほど、人のような肉の交わりは必要なくなるのだ。
最高位の天部ともなると、見つめ合い微笑みを交わすだけで、官能を共有できる。
もちろん人と同じように交合することもあるが、あくまでも精神的な共有を大切にしていくもの。
クラウドも清童というのではないにしろ、人と同じような交合は経験したことがない。
このように全身をまさぐられて舐められるというのは、未知である。
性器を握られて初めての種類の快楽を感じながらも、心は穏やかに開かれていく。
それがセフィロスの経験が豊富だからなのか。
それとも彼が仏陀となるべき者だからなのか。
クラウドには判じられない。
セフィロスとクラウドは、人と非天という全く別の種であるのだから、性別にこだわるのは無意味なのであろうが、それでも同じ男と男の造りをしていながら、男と女のように触れ合っているのは何故なのか――それすらもクラウドには解らない。
目の前にあるセフィロスの逞しい筋肉のうねりに掌を添わせるながら、セフィロスの股間が視界に入ってきた。
猛々しく勃起した性器は、クラウドのものに似ているが、全然別のものに思えてならない。

勃起をじっと凝視するクラウドの関心を、セフィロスが逸れさせる。
「俺には正妃も妾妃もいる」
「子もいる」
セフィロスに妻も子もいることはクラウドも知っている。
「どんな美姫も、どの子にも、俺は触れたいと思ったことはなかった――」
女とは数え切れないくらい交わってきた。
可憐な処女とも。妖艶な娼婦とも。駆け引きを身体で申し出てきた女も抱いてきた。
あくまでもセフィロスにとっての交わりとは、肉体のみの刹那であり、情など感じたことはない。そもそも妻も子もどうでも良かったのだ。だが、
「クラウド。お前には触れたいと感じるのは何故なのだろうな」
――さあ…
――オレがお前に触れられるのが心地よいのは、何故なのだろうな。
「クラウド。教えてくれ」
「非天であるお前と夢以外でどこで会えるのだ?」
「神々が住むという兜率天ならば会えるのか」
尻の狭間が押し開かれていく。
熱く硬い肉の塊が、じわりじわりと体内に押し入ってくる。
無垢の場所に強引に押し入ってくるのだ。痛みを感じないのではないが、痛みだけではなく不思議な充足感があった。
「解脱すれば会えるのか?」
「会えるだろう…」
「解脱すれば人の身でも兜率天に辿り着けるだろうか?」
「辿り着けるだろうな」
汗ばんでいくセフィロスの背中に手を回す。
広い背中も濡れていた。
「王子よ――オレはずっと求めているものがある」
「それは、お前にしか探せないと聞いた」
「俺だけ…」
「そうだ。王子、オレが欲しいのは“普遍の真理”」
「それはたぶんとても近い所にあるのだと思う」
「誰でも持っているのだと思う」
「だが、オレには探せない」
「兜率天まで探しに行ったが、そこにもなかった」
大梵天ルーファウスも、帝釈天ザックスも知らなかったし、持っていなかったのだ。
「王子、お前ならば答えを探し出せる」
「探し出した答えをオレに差し出すことが出来る」
身体をひとつに繋げながら、ゆっくりとセフィロスが笑う。
「わかった、約束しよう。クラウド」
セフィロスがする、これは初めての約束だった。
「俺がもしお前が求める真理を手に入れることが出来たならば、迷わずお前に差し出してやろう」
「ありがとう――セフィロス」
口づけを交わしながら、セフィロスの動きが更に熱を帯びていく。
頭の中で何かが弾けたのを見ながら、クラウドはこの王子は必ず仏陀となるであろうと確信する。
動きが頂点になって、そして止まった。
クラウドは己の体内にじわりと広がっていく熱を感じていた。
それはどこか遠く懐かしい甘い感覚であった。


阿修羅王クラウドが夢に訪ねてこなくなってから数ヶ月後、12月8日の夜半、セフィロスは王宮を抜け出し、悟りへの長い長い旅路に出た。
セフィロスの現世での旅路の終わりは紀元前386年ヒランニャバッティ河のほとりである。河のほとりにあったサーラの林の中で入滅。
その遺骸は火葬されて舎利は8つに分けられたと伝えられている。

セフィロスは悟りを得て仏陀と呼ばれるようになったが、彼が兜率天に到達出来たのか、何よりも非天阿修羅王クラウドに再び出会えたのかは、どの文献を探してもどこにも記されてはいない。

***
これにておしまいです。
最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。


びーこ 17日22時、終わっちゃうのが残念な方>
続きを読みたいけど、ラストは寂しいという気持ちは、
私にもよく解ります。
ブッダは終わってしまいましたが、終わりがあるから始まりがあるということで、
また次を楽しみにしていただければ嬉しいです。
ありがとうございました。
03/18(TUE)11:21:14  [234-2391]


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