続きです。
*** 元よりクラウドとて、求める答えが簡単に手にはいるとは思っていなかった。 天部や非天には人と同じ意味での寿命はない。 死も老いもあるが、時間はいくらでもある。 それにクラウドは待つのは嫌いではない。 「――解った。待とう」 素っ気なく返答だけをすると、クラウドは玉座にいるルーファウスに背中を向ける。 要件は終わったのだ。兜率宮にもう用はない。 足下にいた鵞鳥たちが名残惜しそうに啼きながら、羽根を広げて見送る。 ザックスも何か一言、と行動に移すよりも先に、ルーファウスが呼び止めた。 「阿修羅王よ――」 「いちいち答えを問いにくる度に、兜率天に攻め込まれては私が困る」 「お前は今日より天部となるが良い」 「神籍を用意しておこう」 意外な申し出にクラウドは足を止めて、玉座を振り仰ぐ。 聞いているザックスもかなり驚いてくらいの、それは破格の申し出であった。 阿修羅族は非天だ。そして地上では悪神と呼ばれる存在だ。 本来ならば兜率天に参上するのでさえ、厳しく規制されるのだ。 理と知の神王ルーファウスは、支配する者の傲慢さそのままに、何より規律を重んじる。 こうやって非天と直答するのでさえ、稀なのに――自ら然るべき神籍を与え天部の列に加えるとは。 ――ナンか考えてんな。 ザックスのように好悪のみで動くルーファウスではない。 かれだけにしか解らない、きっと何かがあるに違いないが、残念ながらそれが何なのかザックスには不明だ。 ――喰えねぇヤツだぜ、大梵天ってのは。 自分の対であるにも関わらず、ザックスはルーファウスの本性を知らない。 ザックスは真一文字に口を引き結ぶと、ルーファウスとクラウド双方を推し量った。 クラウドもクラウドなりに感じ取っているのだろう。 考えの足りない者ならば大喜びで受けるこの申し出にも、心を動かされているような様子はない。 全てを見通す青い瞳で、ルーファウスを見定めようとしている。 鋭いクラウドの眼差しにも、ルーファウスは動じていない。 足をゆっくりと組んで、クラウドに微笑みかけるのだ。 これでは拉致が空かないと悟ったのだろう。 「――オレは阿修羅王。非天だ」 この言葉を言い残して、クラウドは今度こそ足を止めることなく、兜率宮から去っていったのだ。 阿修羅王クラウドとの会見を終えたルーファウスは、自らの神王の権利を行使した。 よって阿修羅王は非天でありながら天部の籍を持つという、例外的な存在として兜率天では遇されることとなったのだ。
*** 短いけどきりが良いのでここまで。
ホントに長くなってごめんなさい。 もうちょいで(次の次くらいで)セフィロスが登場します。
|