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+ '08年02月26日(TUE) ... ブッダという真理その5 +

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続きです。

***
文句を苦い表情でググッと呑み込んでいくルーファウスを前にして、クラウドが耐えきれずに小さく笑う。
そんなあくまでも傍観者であるクラウドに対し、ザックスへの憤りも込めて、ルーファウスは鋭く睨み付けた。
だが怖気震え上がらせるほど眼差しが冷徹になれないのは、クラウドの笑顔を好ましいと感じているからだ。
皮肉以外で微笑むクラウドは、阿修羅という鬼とは思えないほど、可憐となる。
ルーファウスが気を悪くしているのを見取ったクラウドは、ザックスへの助け船というよりも、むしろルーファウスの為に、話の進行を手助けすることにした。
「それで大梵天はオレ達に何をさせたいのだ?」
ザックスだけとの遣り取りではどうしようもないと手詰まりだったルーファウスは、交渉相手をクラウドへと切り替え、
「クラウド――確か阿修羅族は夢に干渉出来たな?」
普通神王も含め天部は、人に夢による暗示を与えることは出来た。
それはあくまでも暗示のみ。摩耶夫人の胎内にザックスの六本牙の白象が入る夢も、ルーファウスによる暗示のひとつである。
阿修羅族はそれ以上のことが出来るのだ。
夢に直接入り込み、夢の中で実際に対面も出来る。
それどころか触れ合うことさえも可能。現実に邂逅しているのとほぼ遜色ない。
人の夢というものは、往々にして普段隠し通している本音がこぼれ落ちる場所だ。
「仏陀となるべき王子の夢に入り込み、王子の本心を読みとってもらいたい――」
そして出来るならば、
「王子に仏陀となるように、促してもらいたい」
いぶかしげに目を細めるクラウドに代わり、ザックスが反論を上げた。
「ちょっと待てよ」
「それってプログラムの倫理に抵触してないか?」
人界におけるプログラムを遂行する際、厳格な倫理が要求されるものだ。
特に神王や天部が人界に干渉するには、多くの制約が設けられている。
人より優れた存在である神王や天部が、自分たちの思いのままにプログラムを進行させるのを“強制”させないためだった。
つまり緻密で完璧なプログラムでも、現実に実行出来るかどうかに偶然という名の不確定要素も盛り込まれているのだ。
この場合白象を使った仏陀誕生の暗示は許される。
ルーファウスがザックスとクラウドを呼びつけるまでに打った手も、この制約範囲内のものだった。
だが実際に天部が仏陀と対面して、強引に覚醒させるのはかえってプログラムの円滑な進行の妨げになるとされており、仏陀覚醒はあくまでも本人の自主性が基本とされている筈なのに…
ザックスの反論など、ルーファウスの予想内のものだ。
「抵触はしない――」
現実世界で出会えば、ザックスの言うように制約に引っかかるが、
「だから夢だ」
「現実には会わせない」
あくまでも夢の中だけで止めるのだ。
「クラウド。どうだ?やってくれないか?」
大梵天ルーファウスの願いに、阿修羅王クラウドは首を緩く振ってシニカルな笑みで応じた。
「いいや――断る」
「第一、オレは天部ではない。非天だ。ルーファウス、あんたの命令に従ういわれなどない」
それに、
「いくらプログラムが予定通りに進行していないからと言って、仏陀となるのを強制する言われはないな」
果たしてそれが完全なる覚醒者に相応しいのか。
それに――興味ない。
素っ気ないクラウドにルーファウスは動じなかった。
この反応さえも、ルーファウスの想定範囲内なのだ。
「いいや、クラウド――お前は私の願いを聞かねばならない理由があるのだ」
「?」
「兜率天に攻め入ってくるほどお前が欲しがっていた“普遍の真理”――」
――いいか、クラウド。
「仏陀とは“普遍の真理”を我々に示してくれる唯一の存在なのだからな」
仏陀への覚醒なくして、クラウドの求める真理は得られない。
だからこそ――私に力を貸すのだ。

***
始め頭で考えていた時は、短い小話程度の予定だったのですが、
本当に予定は未定ですね。
セフィクラがまだ出会ってもいないなんて。
最後まで飽きずにお付き合い頂けますと有り難いです。


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