二桁になってしまいましたが、あともうちよっとです。
*** 「クラウドっ!」 二人目の敵も倒したセフィロスが、急に叫んだ。 クラウドは叫ばれる自分の名の中に、警告を覚え、感覚を四方に走らせる。 フッと頭上から熱を感じた。 大きな熱だ。 ――チっ。 首をめぐらせた先には、不思議な色味の石を掲げている敵の姿があった。 石は内側から蠢くように輝く。そこから火炎が生まれた。 「ファイラ」 声と共に炎はクラウドへと襲いかかってくる。 あっという間に、クラウドの姿は炎へと呑み込まれてしまった。
炎がマテリアを中心に発生し、襲いかかっていく。 愛する人の金のシルエットが、炎に呑み込まれていくのをセフィロスは直視してしまった。「クラウドーっ!」 殺してやる。 殺してやる。殺してやる。 ――俺からクラウドを取り上げる者は、殺してやる。 あれしきのことで騎士であるクラウドが死ぬとは思わないが、あの愛しいマスターが傷つくだなんて。 しかもセフィロスの目の前で。 クラウドは敵がソルジャーとは知らなかった。そもそもソルジャーというモノを知らなかったのだ。 セフィロスはいち早く、クラウドに警告して、正しい知識を伝えるべきだったのだ。 セフィロスが一番に大切にしなければならないのは、クラウドだというのに。 焼けこげた金髪を想像するだけで、血が凍り付く。 額のクリスタルが点滅を始める。 セフィロスの視界が怒りで染まった。
と、不意に炎がかき消えた。 ――クラウド!? 貧弱に萎んでいく炎が燃えていた場所から現れたのは、金髪に一筋の焦げさえないクラウドだ。 彼は恨めしそうにまとわりつく残りの炎を、軽く手を振って押さえてしまう。 ――そうか! クラウドはただの騎士ではない。 彼はダイバーでもあるバイアなのだ。クラウドの魔法の力は利かない。 「クラウドっ」 駆け寄ってくるセフィロスに、クラウドは少し意地の悪い笑みで応じる。 そして身振りで、セフィロスが側に来るのを止めた。 自分に炎の魔法を浴びせた最後の敵に向かい合う。 「騎士が簡単にヤラれた理由がこれで解ったな」 「お前――騎士ではない。もちろんダイバーでもない。それなのに魔法を使うとは…何者だ?」 「何の目的で騎士を攫う?」 「………」 クラウドの問いに男は答えられない。 まさか自分の魔法が消されてしまうとは、思いもしなかったのだろう。 敵の異常な驚愕ぶりに、クラウドは首を傾げて考えを巡らして、すぐに思い当たる。 「ああ、オレはバイアなんだ」 バイアに会うのは初めてなのか? 「だからオレに魔法の類は効果がない」 答えようとしない敵に、クラウドはそれ以上求めない。 彼はこれまでと同じく、両肩両足を砕くと喉も潰しておいた。 敵が持っていた不思議な色合いの石を手に取ると、じっくりと観察をする。 クラウドに与えられた仕事のひとつ、騎士失踪の原因はこれで突き止めることが出来た。 後は失踪した騎士達の行方だが―― 音もなくセフィロスが近づいてくる。 「クラウド――」 「俺は、その男達の正体に心当たりがある」 「コイツらを知っているのか?」 セフィロスはクラウドの手にある石を食い入るように見つめている。 まだセフィロスを娶ってから日が浅く、この美麗なファティマのことを知り尽くしているとは言えないものの、それでも今のセフィロスはおかしかった。 動揺しすぎている。 「まあ、詳しい話は後にしよう」 まずは、 「バレットに連絡だ。そしてコイツらをどうするのか、エアリスと相談しよう」 血の気など感じさせない蒼白なままで、それでもセフィロスはマスターの命令に従った。
バレット懇意の工場に男共を運び込んでから、クラウドはエアリスと連絡をとった。 驚いていたエアリスだが、すぐに男達の身柄を引き受けると言ってくれた。 エアリスの言葉は本当だった。 一時間もしないうちに、見てくれは一般人のようだが、明らかに軍人であろう一団がやってきて、瀕死の男達をどこかへと連れていってしまう。 それを見送ってから、二人は宿へととって返し、そうやってやっと二人きりとなったのだ。
*** 今回はここまで。 あとたぶん2回くらいでおしまいです。 出来れば最後までお付き合いをお願いします。
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