「――わかった。ゴールドソーサーはすぐ隣だ。これから向かう」 『クラウド…あたし……』 「オレの心配はいらない」 ちらりと蒼い眼差しをじっと観賞しているセフィロスに向けて、 「優秀なファティマもいるんだ。問題ないよ」 『そだね――』 次に顔を上げた時、エアリスからは友人を案じる不安さは消え、一国の女王としての威厳があった。 『騎士クラウド。ゴールドソーサーでの探索を命じます』 『騎士の消息不明の原因を突き止めて、出来ることならば騎士を救い出してください』 『ゴールドソーサーへは民間船を使ってください。手配をしておきます』 エアリスの命令だとはバレないほうが良い。 『アルテマはバレットにお願いして、ゴールドソーサーに持ち込めるようにします』 「わかりました」 「騎士クラウド。エアリス女王の命を歓んでお受けいたします」 『くれぐれも――気を付けて』 通信が切れた時、クラウドは戦闘に臨む騎士の顔になっていた。 「セフィロス――」 「ああ…」 「聞こえたな」 「これからすぐゴールドソーサーに向かう」 「わかった」 クラウドはそのままシャワーブースへと向かう。 その背中を見送りながら、セフィロスはすでに切れてしまっているモニターに呟いた。 「心配など必要ないぞ、女王」 「クラウドは、俺が護ってみせる」 その為のファティマなのだから。
エアリスが手配してくれた民間船でゴールドソーサーに入った。 アルテマはバレット自らが工場のシャトルで運び込んでくれた。そのままバレット懇意の工場に置いてもらうことになっている。 ゴールドソーサーに来たのは初めてではない。だが降り立つ前からクラウドは不思議な緊張感を受けている。 確かに騎士は希少な存在だ。セフィロスのような美麗なファティマも、人目を惹くのに充分すぎるが…だが決して初めて目の当たりにするものでもない。 ましてやゴールドソーサーは中立地帯という場所故、お忍びの騎士がファティマを伴い訪れるのなど、珍しくもないのだ。 前にゴールドソーサーに降り立った時は、その通りだった。 ティファを連れているクラウドは、それなりの好奇心を向けられはしたものの、それだけだったのに。 今回向けられている視線とは明らかに違う。 皆が騎士であろうクラウドとそのファティマに、異常な関心を向けつつも視線は合わせようとはしない。 遠巻きにして、顔を背けながら二人を観察しているのだ。 騎士というだけで注目されることは常であるクラウドにとっても、この感じは苛立たしい。ましてや娶られたばかりの新米ファティマであるセフィロスには、不愉快以外の何物でもなかった。 彼はクラウドの背後にいつも以上に貼り付いて、周囲を牽制している。 クラウドに近寄ることは許さない。と剥き出しにしたセフィロスにより、ますます二人は周囲から観察され、存在が浮くのだ。 最初酒場や人の出入りの多い場所で探りをいれてみようと計画していたクラウドだが、早々に諦める。 これだけおかしな注目を浴びているのだ。誰もクラウドに気安い話などしてはくれないだろう。 何より、セフィロスがこれだけ威嚇しているのだ。 ――宿を探すか… その前に、 ――バレットにそれとなく聞き込んで貰うか… バレットならばマイスター仲間がゴールドソーサーにもいる。 マイスターはその仕事柄、騎士に関しての情報が入りやすい。 騎士であるクラウドには喋らなくとも、同じマイスターのバレットならば、口も軽くなるだろうし。 「…セフィロス。今晩の宿を探そう」 愛しのマスターを不躾な視線にこれ以上晒したくないセフィロスは、クラウドの提案をすぐに了承する。
*** 明日に続きます。
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