いざ改造を始め、試乗ともなると、バレットはセフィロスを認めるしかなかった。 なによりマイスターとして、セフィロスの素晴らしさを見せつけられるのだ。 いくら気に入らないからと言え、これだけの性能を持つファティマは他にはいないだろう。 マイスターとしては素直に認めるしかない。
数千年前と推定される地層から偶然発見されたマルテマウェポンは、全く未知のMHだった。 土と泥を落としきれいにした状態でバレットの元に持ち込まれてきたのが、アルテマとの出会いとなる。 一目見て、これは現在の科学力では有り得ないMHだと気づく。 バレットはマイスターとして携わるMHには、どれも敬意を払ってきた。 MHとは不思議な機械だ。装甲を肉とし、オイルを血とし、最先端のメモリーを脳として、彼らは生きているのだ。 生きて、何より自分の意志というものがある、と。 バレットの考えを裏付けるかのように、数多くの騎士やファティマ、マイト、マイスター達も、同じようにMHの意志に遭遇してきたのだ。 だが特にアルテマの意志は強固であった。整備はかろうじてさせてはくれるものの、誰にも操縦させようとはしない。 完璧な整備がしてあるというのに、誰かがコクピットやファティマシェルに整備目的以外で乗り込もうとすると、彼は動かなくなるのだ。 この変わったMHの噂は、すぐに広まる。バレットの元に多くの騎士がやってきた。 麗しいファティマを従えた著名な騎士も、幾人もいた。 だがアルテマは全く動かず、反応さえしない。 これはただの骨董品なのだと、アルテマの存在が忘れ去られようとした頃に、クラウドがやってきたのだ。
当時のクラウドはまだ騎士になったばかりの子供でしかなかった。 娶ったばかりのティファと揃って現れたクラウドは、バレットの目からみれば、頼りないとしか思えなかったものだ。 (どっちがファティマなんだよ) まだ未発達のほっそりとした肢体。濁りのない見事な金髪。深く澄んだ蒼い瞳と。 身長もまだなく、ティファよりもかろうじて高いくらいでしかなかった。 腕は良いが偏屈者のマイトダンカンは、バレットの友人である。 そのダンカンが久しぶりに製作したファティマ、それがティファだった。 それ以来ダンカンはファティマを作っていない為、ティファはダンカン最後のファティマである。 カプセルに入る前、まだ幼い頃からティファを知っていたバレットは、彼女をとても可愛がっていたものだ。 本当の人間の娘のように、バレットはダンカンと共にティファに接してきた。 ティファもバレットの親切に応え、彼を慕っていたのだ。 自分が選んだ騎士をバレットに合わせたかったのだろう。クラウドがバレットの元を訪れたのは、ティファが言い出したからだった。 クラウドはまだほんの駆け出しの騎士でしかなく、所有のMHを持ってはいない。 出来立てほやほやの騎士とファティマは、クラウドでも持てるようなMHはないか、とバレットの工場のあちこちを見て回り、そしてアルテマを見つける。
漆黒の巨体。威風堂々とした佇まい。 気圧されてしまうティファと違い、クラウドはアルテマに魅入られる。 そして――アルテマも。
*** 返信不要のコメント、ありがとうございます。 事実上はセフィクラですが、クラウドはみんなに関心をもたれております。 一種のアイドル状態かな?
|