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+ '08年01月31日(THU) ... しょうこりもなくダブルパロその9 +

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長くなってます。ごめんなさい。

***
騎士〜ヘッドライナー〜は通常の人間ではない。
彼らの生体反応速度は時速180キロ以上で地上を駆け抜け、ハイジャンプひとつで30メートルにも達する超人だ。
反応の早さはもちろん、それのみにあらず。
騎士を構成している肉体、筋力、骨力、生命力においても普通の人間という種とは、到底比較にならない。
そして騎士は己の持つ超人的な力を、MHという星団史上最強の兵器をコントロールする為に存分に奮う。
そもそも何故騎士という種がいるのか?
話は星団史以前にまで遡る。星団史以前の昔、文明は現在よりももっと発達していたのだという。
冨と権力とを追い求め、文明を発展させてきた人々だったが、残念ながら現在の人間よりも強欲だったようだ。
優れた科学力を使い、彼らは戦争に明け暮れる。
殺傷能力の高い兵器を作り、大型の火器を作り、惑星さえふっとばせる武器を作る。
そうして行き着いた先にあったのが、“超人”だ。
あまりにも強い大型の兵器では、全てを滅ぼしてしまうことになる。
戦争に勝利したとしても、残るのは残骸となった星くずのみ。
そこでもっと局地的な戦闘を想定し、敵兵だけを確実に屠っていき、味方にダメージの少ない生物兵器を考えたのだ。
人だ。人を改良して“超人”を生み出せば良い。
リスクも少ない上に、大型兵器を開発するよりもコストがかからない。
各国は遺伝子改良にこぞって着手し始める。
遺伝子の段階から組み替え、超人を生み出す。生み出した超人に薬物や過酷な戦闘訓練を課す。
こうして造り上げられた超人は、戦争の最前線に向かった――と言われているが、その顛末がどうなったのかは、星団史以前の資料はまともに残っていないため、誰も知らない。
ただ超人の遺伝子情報は、現在の人間のDNAの中に残った。
現世に稀に出現する“超人”の末裔が、騎士〜ヘッドライナー〜なのである。
騎士の出生率は極めて低く、約20万分の1。つまり20万人に1人しか生まれないとされている。
その上この低い確率から生まれた騎士の力を持つ子供が、立派に成人し必ず一人前の騎士になれるのかと言うと、それは違う。
現在存在している騎士の確率は、1億人〜2億人に500人。
正しく騎士は奇跡なのだ。
ただ“超人”の遺伝子自体は、5つの星団に暮らす全人類にほぼ平等に存在していると言われている。
父親が騎士だからと言って、子供が騎士になるとは限らない。
騎士の遺伝子は最弱とされ、なかなか遺伝されないのだ。
騎士とは世襲が皆無であるとされるのは、これが理由だ。
ただこれにも例外はある。星団史以前から続いていると言われている、5つの星団にある5つの旧い王家は別なのだ。
王が騎士ならば、嫡子はほぼ騎士として生まれつく。
エアリスも騎士の遺伝子が世襲される旧い王家の姫だ。よって彼女はダイバーでもあり騎士でもあるバイアとなっている。

セフィロスに刀を投げつけた後、クラウドはディグを停止させ光剣〜スパッド〜を引き抜く。
スパッドは刃の部分が光学発生式となっている優れものだ。
鞘もいらずレーザー銃としても使用出来る。重くもなくかさばりもしない。
実剣を持つ騎士もいるが、多くの騎士はスパッドを有している。
そしてこのスパッドを所有出来る者は、限られた人物のみとされており、一種の身分証明も兼ねているのだ。
クラウドは普段は実剣を使うが、彼の剣は成人男性の身体ほどの巨大な質量を誇っている為、今回ゴールドソーサーには持ち込んでいなかった。
星団広しといえども、あんな巨大な剣を扱うのはクラウドのみ。
つまりあの剣を振るうことは、クラウドの正体を大声でアピールしているも同じなのだ。
今回の任務は基本隠密である故、クラウドは実剣ではなく光剣を選んでいた。
手の中でスパッドを回す。
――軽いな。
軽い。本当に軽すぎる。
却ってクラウドにはこの軽さが扱い難い。
そこにレーザーの帯が襲ってくる。
クラウドはレーザーの軌道を捉えると、スパッドの刃を出し、瞬きひとつもない間に、全てのレーザーを切り落とした。
レーザーがクラウドに通用しないのは、予め予想されていたのだろう。
切り落としている最中に、二人の敵がクラウドの斜め後方と頭上から、同時に襲いかかってくる。
この動き。普通の人間ではないが…
――騎士!?ではないな。
騎士にしては動き方が違う。
それに騎士のレベルにしては、新米よりもお粗末だろう。
全体にスピードもパワーもそれなりにはあるようだが、統制がとれていない。
クラウドの脳裏に過ぎるのは、
――薬物か?
脳に直接刺激を与え、異常なパワーをださせるという薬物は確かに存在している。
しかし普通の人間がいくら薬物の助けを借りようとも、騎士に比べれば段違いに劣っていた。
おまけにこの薬物は副作用が酷くて、一度使用すれば、異常なパワーをだす反動で身体はボロボロとなり、数度使用すれば脳が完全にヤラれてしまう。
よって星団法で禁止されているものなのだ。
だが完全に禁止される筈などなく。闇で改良品が出回っているとは聞いていたが。
クラウドは斜め後方から襲いかかってくる敵に、まず狙いをつける。
スパッドの刃を引っ込めてから、自ら敵に向かっていく。
騎士の走力は時速180キロと言われている。これはあくまでも騎士一般の数字だ。
クラウドは腰を落としバネをたわめて、一気にダッシュをする。
このダッシュは時速180キロを有に超えていただろう。
いきなり目の前に現れたクラウドに、斜め後方から襲ってきた敵の全身に怯えが走る。
そこからのクラウドの攻撃はむしろシンプルだ。
彼は敵に両肩と両太股、それぞれの関節をスパッドで砕いてしまう。
最後とばかりに頸骨を砕かないように軽く撫でて、脳からの伝達機能を麻痺させてしまう。
そうやって身動き出来なくなった敵の身体を片手で掴むと、頭上から襲いかかろうとしている敵に向かって無造作に投げつけたのだ。
無造作に投げつけた、といえどもクラウドは騎士だ。
投げられた敵は人の形をした凶器となって、味方に向かって飛んでいく。
うぎゃ、とも。あぎゃ、とも。なんとも形容しがたい叫び声と共に、ぐしゃりと肉が激しくぶつかる音がした。
何せ頭上から襲ってきていたのだ。当たり前にある重力によって、加速していた敵は、いきなり飛んできた仲間の身体から避けることも出来ず、クラウドの目論見通り激しくぶつかってしまう。
もつれ合いながら地面に落ちてきた二人の敵は、もがこうとしても身体のダメージを受けすぎていてどうにもならない。
おまけに投げられた敵に至っては、脳からの伝達回路がクラウドによって切られているのだ。
意識はあっても手も足も、それどころか首から下はどこも動かない。感覚すらないだろう。
もがく仲間の上に乗り上がったまま、血走った目でクラウドを睨み付けるのが精一杯のところ。
クラウドは歩きながら近寄ると、まだ動ける敵の身体も同じように砕く。
――あまりにも弱すぎるな。
コイツらが本当に、これまで騎士を攫ってきた犯人なのだろうか。
それにしては弱すぎる。
いくら隙をつかれたと言えども、こんな弱い敵に倒される騎士などいるまい。
――まあ、それは後で考えることにするか。
そうして敵二人の行動を完全に沈黙させてしまってから、クラウドは自分のファティマへと感心を向けた。

***
今回はここまで。


+ '08年01月30日(WED) ... しょうこりもなくダブルパロその8 +

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数時間後二人は首尾良く今夜の宿を決めた後、バレットに連絡をとった。
アルテマの整備に入っているというバレットのいる工場に訪れる約束をする。
工場はゴールドソーサーのメインエリアから少し離れた郊外にあった。
一日中煌めくネオンと絶対に途切れない人波ばかりの、ごちゃごちゃと猥雑なメインエリアから小一時間ほど離れるだけで、そこは驚くほど殺風景な場所となる。
工場ばかりが建ち並ぶその区画は、鉄の匂いと煙で充満していた。
ここもゴールドソーサーなのだとは、信じられないくらいに違いすぎる。
工場の建ち並ぶエリアは、大きな十字道路により4ブロックに別れていた。
クラウドが運転するバイクタイプのディグは、十字道路の端に備え付けてある表示板の前で止まる。
表示板にはびっしりと細かい文字で、それぞれの工場の場所が記してあった。
セフィロスは素早く表示板を読みとる。そしてインプットされてある工場を探し出した。
その間0.2秒。
「クラウド。このまま右に折れろ」
「わかった、右だな」
セフィロスの指示通り、クラウドはディグを進める。
右折してそこからは細かい路地へと。2つ目の角を今度は左に折れて、突き当たりまで走ったそこで、クラウドは総毛立つ。
――殺気だ。
そこからクラウドの身体は反射で動く。
彼は自分の身体より巨大なディグを、減速しないままで強引に寝かせる。
ディグは減速しないままでの無茶な動きによって、僅かに浮き上がる。地面と平行になった。これでは倒れる寸前だ。
いきなりのGに苛まれながらも、さすがは星団最高のファティマ、セフィロスも異変に気づく。
セフィロスはクラウドの意図を察すると、クラウドの背中を庇おうとするが、行動に移るよりも先に命令が飛ぶ。
「セフィロス。行け!」
マスターの命令には逆らえない。
セフィロスは浮き上がったままのディグから跳びだす。
一般のファティマの能力の数値は、握力200キロ以上。背筋500キロ以上。反応速度は騎士の平均値の85%とされているが、セフィロスの数値はこれを遙かに超えている。
彼は騎士よりも優れているのだ。
跳んだセフィロスは近くの建物の外壁に行き着く。垂直の外壁に両足で着地したそのわずかの間に、ファティマはマスターを襲った敵を見定めた。
――あそこか。
あそこにも。あそこも、いる。
敵は全部で5名。
――クラウドを襲うなど、後悔させてやる。
セフィロスは一番近い場所にいる敵に向かって、更に跳んだ。

セフィロスが敵を見定めているその時、地面と平行になっているディグすれすれにレーザーが通っていく。
クラウドがディグを平行にまで倒さなければ、確実にあたっていたであろう角度だ。
レーザーの軌道を追いかけるようにして、今度はディグを真っ直ぐに立てた。地面に垂直にする。
背筋を真っ直ぐに伸ばして、クラウドはセフィロスの姿を認める。
工場の垂直の壁を踏み台にしたセフィロスが、一番近い襲撃者に向かっていくのを見た。
ディグの側面に備え付けられてあるホルダーを空ける。
シュウッ。と空気の擦過音がすると共に、ホルダー内部から押し出されてきたのは、一振りの刀だ。
かなりの長さのある黒い鞘の刀をクラウドは掴むと、一声、
「セフィロス!」
よく通る声で叫ぶと刀を振り上げ、セフィロスの向かっている地点めがけて投げつける。
助走もなく無造作に投げつけただけなのに、刀は弾丸のように飛ぶ。
普通の人間ならば目で捉えることすらも出来ない。

***
今日は短いけどここまで

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+ '08年01月29日(TUE) ... しょうこりもなくダブルパロその7 +

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「――わかった。ゴールドソーサーはすぐ隣だ。これから向かう」
『クラウド…あたし……』
「オレの心配はいらない」
ちらりと蒼い眼差しをじっと観賞しているセフィロスに向けて、
「優秀なファティマもいるんだ。問題ないよ」
『そだね――』
次に顔を上げた時、エアリスからは友人を案じる不安さは消え、一国の女王としての威厳があった。
『騎士クラウド。ゴールドソーサーでの探索を命じます』
『騎士の消息不明の原因を突き止めて、出来ることならば騎士を救い出してください』
『ゴールドソーサーへは民間船を使ってください。手配をしておきます』
エアリスの命令だとはバレないほうが良い。
『アルテマはバレットにお願いして、ゴールドソーサーに持ち込めるようにします』
「わかりました」
「騎士クラウド。エアリス女王の命を歓んでお受けいたします」
『くれぐれも――気を付けて』
通信が切れた時、クラウドは戦闘に臨む騎士の顔になっていた。
「セフィロス――」
「ああ…」
「聞こえたな」
「これからすぐゴールドソーサーに向かう」
「わかった」
クラウドはそのままシャワーブースへと向かう。
その背中を見送りながら、セフィロスはすでに切れてしまっているモニターに呟いた。
「心配など必要ないぞ、女王」
「クラウドは、俺が護ってみせる」
その為のファティマなのだから。

エアリスが手配してくれた民間船でゴールドソーサーに入った。
アルテマはバレット自らが工場のシャトルで運び込んでくれた。そのままバレット懇意の工場に置いてもらうことになっている。
ゴールドソーサーに来たのは初めてではない。だが降り立つ前からクラウドは不思議な緊張感を受けている。
確かに騎士は希少な存在だ。セフィロスのような美麗なファティマも、人目を惹くのに充分すぎるが…だが決して初めて目の当たりにするものでもない。
ましてやゴールドソーサーは中立地帯という場所故、お忍びの騎士がファティマを伴い訪れるのなど、珍しくもないのだ。
前にゴールドソーサーに降り立った時は、その通りだった。
ティファを連れているクラウドは、それなりの好奇心を向けられはしたものの、それだけだったのに。
今回向けられている視線とは明らかに違う。
皆が騎士であろうクラウドとそのファティマに、異常な関心を向けつつも視線は合わせようとはしない。
遠巻きにして、顔を背けながら二人を観察しているのだ。
騎士というだけで注目されることは常であるクラウドにとっても、この感じは苛立たしい。ましてや娶られたばかりの新米ファティマであるセフィロスには、不愉快以外の何物でもなかった。
彼はクラウドの背後にいつも以上に貼り付いて、周囲を牽制している。
クラウドに近寄ることは許さない。と剥き出しにしたセフィロスにより、ますます二人は周囲から観察され、存在が浮くのだ。
最初酒場や人の出入りの多い場所で探りをいれてみようと計画していたクラウドだが、早々に諦める。
これだけおかしな注目を浴びているのだ。誰もクラウドに気安い話などしてはくれないだろう。
何より、セフィロスがこれだけ威嚇しているのだ。
――宿を探すか…
その前に、
――バレットにそれとなく聞き込んで貰うか…
バレットならばマイスター仲間がゴールドソーサーにもいる。
マイスターはその仕事柄、騎士に関しての情報が入りやすい。
騎士であるクラウドには喋らなくとも、同じマイスターのバレットならば、口も軽くなるだろうし。
「…セフィロス。今晩の宿を探そう」
愛しのマスターを不躾な視線にこれ以上晒したくないセフィロスは、クラウドの提案をすぐに了承する。

***
明日に続きます。


+ '08年01月28日(MON) ... しょうこりもなくダブルパロその6 +

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続きです。

***
コレルにあるバレットの工場にやってきて、もうすぐ二週間となる。
夜が明けてきた。白くあけていく外の風景を頭に描きながら、セフィロスはすぐ隣に眠る愛しいマスターの背中にそっと耳をあてた。
トクン。トクン。トクン。
規則正しい鼓動を耳だけではなく全身で聞きながら、セフィロスは目を閉じる。
クラウドと共に過ごすようになり、セフィロスにとって世界はやっと意味を成すものとなっていった。
充実しているというのは、こういうのを指すのだろうと。
クラウドと共に過ごす時間は、どんな些細なことも歓びだが、その中でも特にベッドの中でのこの時間が、セフィロスは一番気に入っている。
ファティマの皮膚に負けない美しい肌は、透き通るようだ。病的に白いのではない。生きている肌は滑らかで、幾度ふれても飽きが来ない。
動くたびに皮膚の下から現れてくる筋肉のうねりに、やはり彼が騎士なのだと実感はするが、セフィロスにとってクラウドはすでに愛しい存在だ。
目を覚ますタイムリミットまであと少し。
その間まどろんでいようと睡魔に委ねかけたその時、無粋な電子音が鳴る。
――誰だ。
セフィロスがこの不愉快な電子音に眉を顰めている間に、白い腕が伸びる。
寝間着代わりのシャツの間から伸びる腕は、クラウドのものだ。
さすがに騎士と言うところか。この一瞬に覚醒しきったらしい。
セフィロスの腕と比べても遜色のない筋肉のついた腕は、迷うことなく呼び出しに応える。
『――クラウド。早くからすまねぇ』
バレットの野太い声がする間に、クラウドはベッドから身を起こして、ちゃんと応対出来る体勢をとっていた。
ついさっきまでセフィロスがくっついていた背中は、すでにしゃんと伸びている。
「どうした?なにかあったのか?」
ただし声は、まだ寝起きのままだ。
『エアリスから通信だ。繋ぐぞ』
「わかった」
オフとなっていたモニターが繋がる。
そこには栗色の髪を柔らかく巻いた、いつものエアリスがあった。
セフィロスはこの女が気に入らない。クラウドの側近くにいて、自分よりも付き合いが長いだけでも腹立たしいのに、エアリスはクラウドがセフィロスを娶ったのに反対なのだ。
その上まるで自分のことのように、クラウドを支配しようとしている。
この女にクラウドが仕えているというのも、大いに気に入らない。
今もそうだ。起きる前の幸せなまどろみを、まんまと奪い去っているではないか。
セフィロスも仕方なく起きあがると、モニターの可視範囲から外れた場所から、マスターの横顔を観賞した。
――クラウドは、きれいだな。
寝起きだからいつもより更に奔放な金髪も良ければ、目尻まできれいに生えそろった金の睫毛の長さも丁度良い。
髭など見あたらない滑らかな頬のラインも、鼻梁の角度も丁度良い。
身体のサイズも丁度頃合いだ。これ以上小さければ長身のセフィロスにとって物足りないだろうし、かと言って自分と代わらないほどゴツイ身体も遠慮したい。
腕の中にしっくりと収まる。思いの丈を込めて抱きしめても、壊れない強さ。
セフィロスという明らかに規格外のファティマを娶ってくれる、強靱でしなかやな精神と。いつまで経っても物慣れない不器用さと。
そのどれもがきれいだ。
いつもならばじっくりと観賞できない姿を、セフィロスは堪能する。

一方、モニターが繋がったエアリスは、クラウドの姿を認めると緊張で強張らせた頬を少し緩めた。
『ゴメン。こんな朝早く』
「いいよ。それよりどうしたんだ?」
エアリスの背後にはザックスの姿があった。モニターには映っていないが、ザックスはエアリスの背後かなり近い位置にいる。
エアリスを気遣ってのことだと、すぐにわかった。
『ゴールドソーサーで騎士の一人が消息を絶ったの』
ゴールドソーサー。星団の中にある中立地帯のひとつだ。クラウド達が滞在しているコレルにほど近い。
中立地帯故に様々な国籍の人間が出入りし、活発な交流が盛んに行われている。
何よりゴールドソーサーの売りは、娯楽だ。
大きなテーマパークが建ち並び、大人から子供まで楽しめる娯楽を提供している。
エアリス配下の騎士がゴールドソーサーで消息を絶つ。
確かに騎士が主との連絡を絶つのは珍しいが、エアリスが早朝からクラウドをたたき起こすまでのことでもあるまい。
つまりもっと深い核心があるということ。
そうと察したクラウドは、余計な口を挟まずに、エアリスが話し出すのを待つ。
『クラウド。知らないかな』
『半年くらい前から、ゴールドソーサーエリアで、いろんな国の騎士が消息不明になっているのヨ』
「騎士が!?」
まさか――といぶかしむクラウドに、
『ホントなの!』
エアリスの説明によると、仕事プライベート関わらずに、ゴールドソーサーに入った騎士の数名が、原因不明で消息を絶っているのだという。
戦闘でも、もちろんない。生死すら定かではなく、かといって中立地帯故にこちらから公に捜索することも出来ない。
そこで神羅以外のそれぞれの星団のトップが秘密裏に話し合い、互いに行方不明者をだしていることを確認。合同で秘密裏に捜査をしようということになったのだが。
『捜査に向かわせた騎士とも、連絡とれなくなって』
ついにはエアリス配下の騎士も連絡を絶ったのだと。
ここまで話を聞いて、クラウドはわかった。
エアリスが自分に何をさせたいのか。彼女はクラウドの身を案じて、言い出しにくそうだが。

***
コメントや拍手♪ありがとうございます。
返信可能なコメントは、後でまとめてお返しさせていただきます。


+ '08年01月26日(SAT) その02 ... 更新しました +

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再生への光三話更新です。
週末のお供に楽しんでいただけたらと思います。
そしてお詫びですが、目次が再生の光になっていました。
またやってしまったうっかりです。
B子さんごめんなさい。
修正しておきました。

そしてFSS〜〜〜。
ノリノリのB子さん。
続き、続きっと楽しみに追っかけています。
こねたの域は出ている気がします。
ここだと読みにくいので、
いずれちゃんと校正していただいた後サイトに収納したいって思います。
本でもいいかなぁ。


拍手
沢山のぱちありがとうございます。
待ってる方がいると思うと更新作業も楽しいものに変わるので不思議です。
お返事の方はB子さんから改めてはいると思います。


●本気でラクガキですが・・・。まったく衣装の感じを忘れてました。マンガ貸してください(超私信)


+ '08年01月26日(SAT) ... しょうこりもなくダブルパロその5 +

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念のため改めて注意書き。
*五つの星の物語のダブルパロです。
*設定いい加減にやりやすいように弄くっている部分もあります。
*ダブルパロというのを頭に置いて、お読みください。
*ダメな人は読まないでください。

***
あの時の出来事をバレットは忘れない。
クラウドが操られたようにアルテマへと近づく。
「…アルテマウェポン――」
小さく呟かれた声に、動力も入っていないアルテマが応じる。
ブイィィィィィ。
作動音が地鳴りのようだった。
そして、アルテマの目が開く。いや正確に言うと、動力が入った為、目の部分のカメラが作動を始めたのだが、どう見てもアルテマが自分の意志で目を開いたかのように見えたのだ。
目を開けただけではない。
クラウドがアルテマへと手を伸ばすと、アルテマもそれに応える。
固定してあった拘束具のボルトを飛ばしながら、アルテマの左手が動いたのだ。
クラウドへ向かって。

アルテマはクラウドを選んだ。
クラウドもアルテマを選んだ。
だが残念ながら、アルテマはティファは選ばなかった。
ファティマシェルにティファは乗せたが、支配はさせなかった。
クラウドのファティマだから、ティファの存在を許しはしたが。

それがどうだ。アルテマはセフィロスを選んでいる。
ティファの性能ではアルテマの真の力を引き出すことが出来ないままだったが、セフィロスは違う。
彼はクラウドのサポートを完璧にこなし、アルテマをねじ伏せ、その力を的確に存分に発揮させているのだ。
試乗や簡単な模擬戦でさえそう思わせるのだ。
これが実戦となるとどうなるのか――バレットは戦慄する。
すでに“金の騎士”という二つ名で呼ばれているクラウドだが、このファティマをパートナーとした今、この先更に強くなるのは間違いない。
ティファとでは辿り着けない境地まで至るだろう。
もしかしたら“剣聖”の域までも。
その上なにより、
――このファティマ、本気でクラウドに惚れてんだな。
始めエアリスから話を聞いた時には、とんでもないファティマだと思った。
禍々しい存在だと。絶対にクラウドの側に置いて良い筈はないと。
今はいないティファの為にも、セフィロスなどクラウドの側から引き剥がしてやろうとさえ考えていたのだ。
――まったく、呆れるぜ。
そんな事を考えていた自分にも呆れるが…

バレットは試乗を終えて戻ってきたアルテマを見上げる。
まずファティマシェルからセフィロスが飛びだしてきた。正しく“飛びだしてきた”という形容がピッタリくるくらい素早い行動だが、セフィロスがやると優雅に見えるから不思議だ。
セフィロスは飛びだして、クラウドが出てくるのを待つ。
その様子は恋する姫君に忠誠を誓う騎士そのものだ。騎士はクラウドだと言うのに。
コクピットから出てきたクラウドにセフィロスは当然のように手を差し出す。
クラウドは苦笑しながらも、セフィロスに付き合ってやった。
セフィロスはクラウドの手をそっと握ると、エスコートをする。
二人の身体は腕一本のところで寄り添う。
――あ〜あ。ファティマのくせに、嬉しそうなツラしやがるぜ。
大きく表情を作っているのではないが、傍目から見ても充分にセフィロスの歓びは伝わってくる。
このファティマは、本気でクラウドに惚れているのだ。
バレットは全身全霊という古い言葉を思い出す。
人工生命体、ファティマセフィロスは、己の全身全霊を傾けてクラウドだけを追いかけている。
クラウドもそのことを理解しているようだ。
不器用ではあるものの、クラウドは彼なりの方法でセフィロスを受け入れようとしている。
こんな二人の様子は、なぜかしら微笑ましい。
ぎこちなくて不器用で、顔を見て手を取るだけであんなに歓んでいるのだ。
淡い初恋のようで、見ているこっちが呆れてしまう。
バレットは別々に用意していた部屋を、二人一緒にするのを決めた。

***
次回から話が動き出します。
でも明日はお休みになります(予定)。
次に貼るのはたぶん月曜日かと。

返信不要分も含めまして、コメントありがとうございます。


+ '08年01月25日(FRI) ... しょうこりもなくダブルパロその5 +

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いざ改造を始め、試乗ともなると、バレットはセフィロスを認めるしかなかった。
なによりマイスターとして、セフィロスの素晴らしさを見せつけられるのだ。
いくら気に入らないからと言え、これだけの性能を持つファティマは他にはいないだろう。
マイスターとしては素直に認めるしかない。

数千年前と推定される地層から偶然発見されたマルテマウェポンは、全く未知のMHだった。
土と泥を落としきれいにした状態でバレットの元に持ち込まれてきたのが、アルテマとの出会いとなる。
一目見て、これは現在の科学力では有り得ないMHだと気づく。
バレットはマイスターとして携わるMHには、どれも敬意を払ってきた。
MHとは不思議な機械だ。装甲を肉とし、オイルを血とし、最先端のメモリーを脳として、彼らは生きているのだ。
生きて、何より自分の意志というものがある、と。
バレットの考えを裏付けるかのように、数多くの騎士やファティマ、マイト、マイスター達も、同じようにMHの意志に遭遇してきたのだ。
だが特にアルテマの意志は強固であった。整備はかろうじてさせてはくれるものの、誰にも操縦させようとはしない。
完璧な整備がしてあるというのに、誰かがコクピットやファティマシェルに整備目的以外で乗り込もうとすると、彼は動かなくなるのだ。
この変わったMHの噂は、すぐに広まる。バレットの元に多くの騎士がやってきた。
麗しいファティマを従えた著名な騎士も、幾人もいた。
だがアルテマは全く動かず、反応さえしない。
これはただの骨董品なのだと、アルテマの存在が忘れ去られようとした頃に、クラウドがやってきたのだ。

当時のクラウドはまだ騎士になったばかりの子供でしかなかった。
娶ったばかりのティファと揃って現れたクラウドは、バレットの目からみれば、頼りないとしか思えなかったものだ。
(どっちがファティマなんだよ)
まだ未発達のほっそりとした肢体。濁りのない見事な金髪。深く澄んだ蒼い瞳と。
身長もまだなく、ティファよりもかろうじて高いくらいでしかなかった。
腕は良いが偏屈者のマイトダンカンは、バレットの友人である。
そのダンカンが久しぶりに製作したファティマ、それがティファだった。
それ以来ダンカンはファティマを作っていない為、ティファはダンカン最後のファティマである。
カプセルに入る前、まだ幼い頃からティファを知っていたバレットは、彼女をとても可愛がっていたものだ。
本当の人間の娘のように、バレットはダンカンと共にティファに接してきた。
ティファもバレットの親切に応え、彼を慕っていたのだ。
自分が選んだ騎士をバレットに合わせたかったのだろう。クラウドがバレットの元を訪れたのは、ティファが言い出したからだった。
クラウドはまだほんの駆け出しの騎士でしかなく、所有のMHを持ってはいない。
出来立てほやほやの騎士とファティマは、クラウドでも持てるようなMHはないか、とバレットの工場のあちこちを見て回り、そしてアルテマを見つける。

漆黒の巨体。威風堂々とした佇まい。
気圧されてしまうティファと違い、クラウドはアルテマに魅入られる。
そして――アルテマも。

***
返信不要のコメント、ありがとうございます。
事実上はセフィクラですが、クラウドはみんなに関心をもたれております。
一種のアイドル状態かな?


+ '08年01月24日(THU) ... しょうこりもなくダブルパロその4 +

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バレットとしてはティファのようなファティマを娶るべきだと考えてくれていたのだろう。
そしてティファの時と同じように、甘く優しい結びつきを作るべきだ、と。
それがどうだ。セフィロスは同じファティマでありながらも、ティファとはまるで違う。
あれではクラウドの幸せは望めない。そうバレットは案じてくれているのだ。
クラウドを案じる気持ちが、セフィロスへの嫌悪となっている。
案じてくれる気持ちはありがたいが、クラウドはセフィロスと別れる気はない。
こんなに感嘆に別れてしまうのならば、そもそも最初から娶りはしなかったのだから。
「バレット――」
「セフィロスはマインドコントロールを受けていないようだ」
「まさか!?」
本当に、ファティマなのにマインドコントロールされていないだなんて、有り得ないのだが。
「それでも、オレはセフィロスを娶った」
「解消する気はないよ」
「しかし…マインドコントロールされていないなんて、大丈夫なのか?」
ああ、
「セフィロスは見かけよりもずっと素直だ」
「今のところ上手くやっていると思う」
さっぱりと言い切ったクラウドに、バレットは密かに面食らう。
クラウドはいつも心のどこかに重い憂鬱を抱え込んでいた。この憂鬱は心の深淵にいつもあって、いくらティファが解きほぐそうとしても、ムリだったのに。
――なかなか良いツラしてやがるぜ。
クラウドは安定している。少なくとも安定しているように見える。
ティファと共にいる時よりも。
「ヤツはアルテマに乗れたんだな」
「セフィロスはちゃんと操縦出来るよ」
「ならば、俺が口を出すことはねえな」
アルテマが許したのだ。バレットも認めるしかないのだろう。
「ティファとかなり体型が違うから、改造が必要だな」
シートの位置も変えなければならないし、ファティマシェル全体を見直すべきだろう。
「改造が終わったら試乗して見せてくれよ」
あのファティマをパートナーとしたクラウドが、どんな風にアルテマを駆るのか、是非見てみたい。マイスターとしてのバレットの本能が擽られる。
「是非見てくれ」
クラウドがバレットの肩を軽く叩く。
それから二人は肩を並べて、セフィロスが待っているゲージへと向かった。

***
今回はここまで


+ '08年01月23日(WED) ... しょうこりもなくダブルパロその3 +

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セフィロスという存在が、誰かに譲歩することなどないのだと覚悟していたが、バレットもあまり気安い男ではないと理解しているが、どうして初対面でここまで険悪になれるのかについては、はっきりと解らない。
それでもとりあえず紹介をと、クラウドは自分よりも20センチほど高い二人の間に立ち、まず、
「バレット――これがセフィロス」
「先日のミッドガルのお披露目で娶ったファティマだ」
「セフィロス――彼はバレット・ウォーレス」
「コレルのMHマイスターだ。アルテマも彼の世話になっている」
クラウドの紹介を受けた両者は、言葉も社交辞令もなく、互いに睨み合っている。
こうして並んでみると、セフィロスとバレットの外見は、見事に正反対だ。
身長の高さは、だいたい同じくらい。だが肉の量はまるで違う。整備士であるバレットだが、筋骨逞しい肉の厚い体躯をしている。
対するセフィロスも、逞しい身体をしているものの、これみよがしな筋肉の塊はない。
人工生命体にも関わらず、野性のしなやかな筋肉を持っているのだ。
ただファティマの基準から考えると、セフィロスもなかなか筋骨隆々の範囲なのだが。
バレットの浅黒い肌に対して、セフィロスの白皙。
生々しい傷跡が残る容貌と、欠点のない完全なる美貌と。
いや。例えセフィロスの容姿が自分と正反対だからと言って、バレットが最初から悪意を持つ筈などなく。
考えられるのはひとつだけ。
――ティファか…
バレットはティファをとても可愛がっていた。
ティファのマイトダンカンと親交があったバレットは、クラウドよりもずっとティファとの付き合いが長いのだ。
そのティファが死に、バレットは気落ちするクラウドに次のファティマを娶るのを勧めてはいたものの、やはり現実となり目の前に立たれると良い感じはしないのだろう。
二人の間がこれ以上険悪になる前に、クラウドは先制することにした。
「セフィロス――」
クラウドは己のファティマに命じる。
「アルテマの乗ったキャリアを移動させてくれ」
「バレット――アルテマに用意してくれたゲージは何番だ?」
不審を訴えかけてくるセフィロスを黙殺して、クラウドは話をバレットに振る。
「…25番だ」
ここから一番遠いゲージのナンバーだ。
「そうか。セフィロス、25番ゲージにアルテマをセットアップさせておいてくれ。オレもバレットと打ち合わせしてからすぐに行くから」
言いたいことはたくさんあるだろうが、この場はセフィロスは引いてくれた。
「…――わかった。移動させてセットアップさせておく」
「頼む」
長い銀髪を揺らせながら、セフィロスはモーターヘッド・キャリアに乗り込んだ。
工場の表示を確認してから、25番ゲージへと移動させた。

キャリアが小さくなっていくのを見送っていると、バレットが気まずそうに口を開く。
「…すまねぇな」
「良いよ…バレットの気持ちは、解るから」
「だが、クラウド――どうしてアイツを選んだ?」
これを一番問いたかったのだ。
ティファとよく似たファティマならば、バレットも納得出来ただろうに…
「お披露目の場で、マスターを抱き上げたっていうのを聞いた」
「それは、本当か?」
さすがは星団に名を轟かせるマイスターだ。情報は早くて正確。
だがその情報源に心当たりがあるすぎるクラウドは、事実あったこととはいえ、やや耳が痛い。
「エアリスだな――」
エアリスとバレットの間も親交があった。
「そうだ。エアリスがお前がファティマを娶ったと教えてくれたんだ」
「他にエアリスは何を言ってた?」
不愉快そうにバレットは表情を変えて、
「Dr、ガスト。Dr、宝条。この二大天才マイトの共同作品。信じられないほど禍々しい男のファティマが、クラウドをかっさらって行ったと聞いたぞ」
禍々しい――この言葉に、クラウドは形の良い眉を顰める。
「こうとも言ってたな」
「あれは普通のファティマではない、と」
「俺もそう思うぜ。お前さんが娶ったファティマは、ファティマの形はしているがファティマじゃねえ」
バレットは心配しているのだ。そうクラウドは悟る。

***
ここまで。

返信不要のコメント、ありがとうございます。
大切にさせていただきます。


+ '08年01月22日(TUE) ... しょうこりもなくダブルパロその2 +

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その夜から、毎夜の共寝は習慣となった。
セフィロスは夜ごとやってくるし、クラウドはそんなセフィロスの為にベッドに居場所をつくってやる。
一ヶ月も経つ頃になると、クラウドもセフィロスもくだらない建前をとるのはやめにした。
一回り以上大きなサイズのベッドを買い、二人は本格的にベッドを共にするようになる。
ただし、肉体関係はないままであったが。


クラウドがセフィロスを娶ってから二ヶ月が過ぎた頃、二人の姿はコレルにあった。
惑星コレル。鉱物資源が豊かである為、MHに関わる人々の中継点ともなっている。多くのヘッドライナーやMH整備士であるマイスター。優秀なMHを求める者たちが集まる場所なのだ。
二人はすぐにバレットの元へと向かう。
バレット・ウォーレス。星団に名を轟かせるMHマイスターの一人だ。
彼はコレルに己の工場を持ち、ずっとここに住んでいる。
腕はピカ一だが、なかなかに癖のある性格の持ち主で、クラウドも知り合った当初はかなりぶつかり合ったものだ。
バレットとしては、騎士なのにどこか頼りないクラウドを案じてのことであったが、自分の容姿が幼いのを気にしていた当時のクラウドにとっては、バレットの忠言は不必要な干渉でしかなかった。
もっとも付き合いが長くなるにつれ、バレットが本当は気の優しい男であると理解出来たのだが。
ティファが亡くなってからも、バレットにはアルテマのメンテナンスで世話になっている。
エトラムルをアルテマにつけてくれたのも、バレットだった。
そのこともあり、娶ったセフィロスをバレットに紹介をかねて、アルテマとセフィロスとの調整を頼もうとコレルにやってきたのだが、クラウドが予想していた通り、バレットとセフィロスの対面はあまり心地の良いものではなかったのだ。

予め連絡をいれておいた為、工場に到着した二人を出迎えてくれたのが、バレット本人であった。
浅黒い肌に刺青。頬には生々しい傷跡。何よりもその逞しい巨体。
バレットは外見だけで言えばマイスターには見えない。おまけに彼の片腕はギミックなのだ。
バレットは両腕を組んで、二人を待っていた。
アルテマを乗せているモーダーヘッド・キャリアから二人が出てくるのをじっと眺めている。
まずセフィロスがキャリアから現れた。彼は辺りを睥睨すると、いつものようにクラウドをエスコートしようと、手を差し出す。
これがまず、どうにも気に入らなかったらしい。バレットのただでさえ厳つい顔が、一層険しくなる。
クラウドは、と言うと、彼はセフィロスのエスコートを苦笑混じりに断って、ひらりと重さを感じさせない動きで地面に立つ。
そして、蒼い双眸はすぐに旧知の人物を捉え、
「バレットっ」
小走りに駆け寄った。
クラウドはその育ちからか、人見知りする方だ。対人関係には不器用で、哀しいくらいに素直になれないところがある。
そのクラウドが向けてくれる親愛に、バレットの険しい顔も一気に解れた。
「久しぶりだなあ、クラウド」
「連絡もせずに、すまなかった」
「いいや。お前さんが元気なら良いってことよ」
ギミックでない方の手が、クラウドの肩に置かれようとしたその瞬間、絶好のタイミングでその手を遮った者がいる。
言うまでもない、セフィロスだった。
セフィロスはバレットの手がクラウドの肩に届く寸前で、愛しいマスターの腰を引いて、位置をズラせたのだ。
空振りしそうになるバレットの手に向かって、フフンと冷笑を与えてから、これみよがしにクラウドの耳元に囁く。
「紹介してくれないか」
「あっ…ああ、そうだな」
と、空振りに終わったバレットもただで済ませるつもりはない。
売られたケンカは買う。出来れば倍返しだ。これがバレットの遣り方。
「クラウド――俺にも紹介してくれ」
セフィロスとバレットとの間に流れる不穏な空気が読めないほど、クラウドはバカではない。

***
今回はここまで


+ '08年01月21日(MON) ... しょうこりもなくダブルパロその1 +

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年末から書いていますFSSダブルパロの続きです。
時系列も前回の続きっぽいです。
誤字脱字変換ミスは、各自脳内で補完してくださいませ。

***
夜明け前、まだベッドから起きあがるには早すぎる時間帯。
クラウドはある気配を感知する。
半分まどろみながらも、近づいてくる気配に意識を向けた。
彼を娶ってからこの気配がやってくるのは、ほぼ毎晩のこと。そろそろ馴染んできた気配に、クラウドは応じるように寝返りを打って、いつもの通りベッドの半分をあけてやる。
気配の持ち主はそっとクラウドを窺うと、なるべく静かにあいたベッドの半分に身体を滑り込ませてきた。
普通のシングルよりは大きめのサイズであるとはいえ、並はずれて長身の彼には狭い空間だろうに、むしろ狭いことを歓迎しているようだ。
クラウドの隣へと滑り込んだ彼はなるべく密着してくる。かなりの至近距離だ。吐息すら感じられるくらいに。
そうやってから彼はクラウドを観賞し始めるのだ。

それにしても、やはり
――おかしなファティマだなあ。
クラウドよりも彼自身のほうが、遙かに観賞に値する美貌だというのに。
そもそもファティマが騎士に捧げるのは、ただの純真な献身などではない。
ファティマとしての己の能力を存分にふるえるだけの騎士を冷静に判断して、自分が認めた騎士をある意味利用するのだ。
一度認めた騎士だろうが、実力が劣ればまた別のマスターを選ぶファティマも多い。
それがどうしたことか。星団一、二を争う天才マイト二人がつくったファティマセフィロスは、マインドコントロールを受けていないせいなのか、マスターと選んだクラウドだけを一心に求めてくる。
その様子は痛々しいくらいに真摯である。
また幼子が必死に親を求めているようで、つい絆されてしまうこともしばしば。
これだってそうだ。
クラウドはいくら見目麗しいからといって、セフィロスをセックスのパートナーにするつもりなど考えもしなかった。
以前のファティマ、ティファとは確かに肉体関係があったが、それはあくまでも恋人同士としての関係が二人の間で自然と構築されていたからこそ。
セフィロスは男性型であることだし、いくら美麗だといえどもクラウドは性欲さえ押さえられないような獣ではない。
性欲を処理する方法ならばいくらでもある。かえって男同士なのだから、肉体を介在しない関係をつくるべきなのだ、と…そう考えていたのだが、セフィロスは違っていた。
彼は最初からクラウドを求めてきたのだ。
心も、もちろん身体さえも。
独占欲を剥き出しにして、クラウドに迫ってきたのだ。

セックスを拒否したクラウドに、表面上セフィロスは落ち着いて見えた。
それ以上の無理強いはせずに、クラウドのファティマになるべく、精進しているように見えたのだが、そのうちに夜中眠っているクラウドをこっそりと窺うようになっていく。
クラウドが寝入った時間帯を見計らい、寝室の扉越しにそっと様子を窺ってくる。
暫くはそれが続いたが、そのうち様子を窺うだけでは物足りなくなったのだろう。
他のファティマはともかく、少なくともセフィロスは強欲だ。
彼は寝室の扉を開け、クラウドが眠るベッドの側までやってくるようになる。
かと言って手はださない。どこにも触れない。
ひたすらに気配を殺して、クラウドの寝姿を観賞するだけなのだ。
いくらどうであれクラウドは騎士だ。どれだけセフィロスが己の気配を殺そうとも、気が付かない筈がない。
ただじっと寝姿を魅入り、そしてクラウドが目覚める前には、自室へと帰っていく。
正直、そんなセフィロスに絆されたのだろう。
ある夜、クラウドは態とらしい寝返りをうって、ベッドの半分を空けてやる。
クラウドのこの行動で、セフィロスは己が許されているのを悟った。
彼は迷うことなくベッドの空いた空間へと潜り込んでくる。
不埒なことでもするのかと思えば〜そんな行動を許すつもりはないが〜セフィロスは身体をずらせて、頭をクラウドの背中へと高さを合うようにした。
そしてそのままそっとクラウドの背中に頭を押しつけてくる。
何をしているのか――クラウドは軽いデジャヴに襲われた。
――鼓動を聞いてるんだな…
ティファも同じことをよくやっていた。
彼女はいつもクラウドの鼓動を聞きたがっていたのだ。
何故そんなことをするのかと問うと、彼女はこう言ってたものだ。
(落ち着くの――クラウドの音を聞いていると)
心音だけではなく血流の音も、聞きたいのだと言う。
どうやらそれはセフィロスも同じということなのだろうか。
寝間着代わりの薄手のシャツ越しに、セフィロスはクラウドの生きている音にじっと聞き入り、己を委ねているようだ。
そうして――眠った。
強引で美麗すぎるファティマの眠りにしては、とても健やかな寝息にクラウドは考える。
――そう言えば…
母親の腹にいる胎児は、様々な音を聞いているのだという。
外界の物音。人の声。母親の腹越しに妊娠期間中ずっと聞いているのだと。
だが胎児が一番よく聞いているのは、もちろん母親の胎内の音だ。
母親の心音。自分の周りを流れる血流の音。
ファティマは人の手によって造られる人工生命体だ。
無論胎生ではない。ファティマは母親の胎内ではなく、カプセルの中で育つのだ。
母親の胎内を知らない筈のファティマが、生きている音を求めてくるこの行為を、ティファだけではなく、この尊大で傲慢で美麗なファティマも求めてくるなんて。
ティファもセフィロスも、別にクラウドに“母親”を求めているのではない。
それでも、やはり彼らも生きている音が恋しいのだ。
――寂しがりやで甘えん坊なファティマか。
どうやら、自分はそんなファティマと縁があるらしい。
クラウドは投げ出されたセフィロスの大きな手を、そっと握ってやった。

***
しばらくお付き合い願います。


+ '08年01月18日(FRI) ... 連載再開です +

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こんにちはvY子です。
B子さんからファイルが届きましたので、シリーズ連載再開です。
再生の光2話になります。
FFSの方も続きもあるよ〜〜ってことで、楽しみです。
それでは週末寒いようですがおうちでぬくぬくのお供にしていただけたら嬉しいです。

■オフのこと
羽化シリーズの方はなんとなく連作になっているせいか再版して欲しいというありがたいお言葉をちょうだいしています。
ですが再版はコピーですしちょっと無理そうで方法を考えていました。
サイトにアップも考えたのですがご購入していただいた方には申し訳ありません。
そこで、次回羽化シリーズをまた作成する時に過去のシリーズを期間限定でDL販売しようということになりました。
次回配本から検討してみようかと思います。
どうぞよろしくお願いします。

追記:毎日パチとかありがとうございます。ありがたいです。


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