あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いいたします。
では続きです。
*** 金髪碧眼、北国特有の白い透ける肌を持つクラウドに、この衣装はぴったりだった。 クラウドこそが王家の一員にさえ思える。 実際クラウドは自身にどのような血が流れているのかは知らない。 物心ついた時には、身内といえば母しかいなかったのだ。母は騎士ではなかったから、きっと父親が騎士だったのだろう。 だが母は父の名前を明かさずに死んでしまったから、クラウドは己のルーツを知らないままでいるのだ。 白いマントを羽織ると完成となる。 白と金のみの衣装。その中にある明度の高い青と。 「まあ!やっぱり、よく似合うヨ」 想像以上の姿にエアリスは上機嫌だ。 ホテルから直にお披露目の会場へと向かう。会場となっているのは、ミッドガルで一番格式のあるホテルだった。 これが他の星ならば、国賓待遇とのレセプションで使用する迎賓館やら王宮などになるのだが、さすがに神羅は企業。 お披露目さえも営利目的の、華やかなイベントとなる。 ただホテルと謂えども、宿泊施設にはあらず。辺境の星の迎賓館などに比べると格段にこちらの方が贅沢だ。 床と壁は蒼に着色された天然の大理石。蒼と言っても白い大理石に淡く蒼いライトがあたっているような、そんな上品な色味で統一されていた。 そこに鮮やかな朱の絨毯が引かれている。絨毯の縁取りは白金。本物のプラチナを糸にして織り上げた最上級品であった。 まず先頭をエアリスが進む。クラウドと同じ色使いのドレスは、肌の露出が控えられており、エアリスの清楚な高貴さを存分に引き立てていた。 ティアラから滑り出るベールは、これまた手縫いの総レース。長さは3メートル以上はあり、付き従うクラウドとザックスは踏まないように気を付けていなければならなかった。 エアリスの右隣にはクラウド。エスコート役だ。 左の背後にはザックス。マスターエアリスに忠誠を誓うファティマの姿がある。 一行が今回のお披露目の会場に入ると、そこはすでに多くの人々で埋め尽くされていた。 右を見ても左を見ても、5つの星団で著名な人物ばかり。 統治者。王侯貴族。名のある騎士。天位を持つ者も数名いた。もちろんファティマも数多くいる。 皆エアリスを認めて、礼をもって迎え入れる。 エアリスは王族らしい鷹揚さで向けられる礼に応えると、まずは今回のお披露目の主催者、神羅の社長の下へと向かう。 5つの星団に暮らす者ならば、みなその顔を知っていよう。 プレジデント神羅は、でっぷりと肉のついた身体を窮屈そうにスーツの中に収めていた。 エアリスはほんの一瞬だけ、その緑の眼差しをきつくする。 だがすぐに上品な微笑みに変え、プレジデントの前に進み出た。 「これはこれはエアリス様にお出まし頂けるとは、光栄に存じます」 脂ぎった手をだして握手を求めてくるが、エアリスは絶妙にこれを避ける。 彼女は握手に応じる変わりに、ドレスの裾を引き、正式な礼をとってみせたのだ。 「お久しぶりでございますわ。プレジデント様」 「今回はこのような盛大なお披露目にお招き頂きまして、とても嬉しゅうございます」 にこやかに微笑むエアリスに、プレジデントも握手に応じられなかったことなど忘れ去ってしまったようだ。 「今回は何せあの天才二大マイト、ガスト博士と宝条博士が共同で作ったファティマのお披露目ですからな」 「是非エアリス様にも立ち会っていただかねばと思いましてな」 「まあ、お気遣い痛み入りまする」 ところで、とエアリスは視線をプレジデントの隣へと向ける。 そこに立ってさっきから二人の遣り取りを聞いているのは、 「ご紹介が遅れましたな――」 プレジデントは隣の青年を促しながら、 「息子のルーファウスにございます。どうぞお見知り置きを」 本当に遺伝子が繋がっているのかと、問い質したくなるほどに、息子と紹介されたルーファウスの見目は整っている。 クラウドとは質の違う金髪と碧眼。引き締まっているが男として充分な体躯。 長い手足にも広い肩幅にも、引き締まった腰にも、スーツがよく似合っている。 そして何より目を惹くのが、ルーファウスの背後には、一人の騎士が控えていた。その黒髪の騎士の関心はずっとクラウドに注がれている。 「ルーファウスと申します。女王様」 「エアリスです。よろしく」 見目の良いルーファウスと、エアリスとの遣り取りは、本物のおとぎ話の再現だ。 ただし両者共に、腹のさぐり合いではあるが。
*** 明日でラストです。
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