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+ '08年01月31日(THU) ... しょうこりもなくダブルパロその9 +

長くなってます。ごめんなさい。

***
騎士〜ヘッドライナー〜は通常の人間ではない。
彼らの生体反応速度は時速180キロ以上で地上を駆け抜け、ハイジャンプひとつで30メートルにも達する超人だ。
反応の早さはもちろん、それのみにあらず。
騎士を構成している肉体、筋力、骨力、生命力においても普通の人間という種とは、到底比較にならない。
そして騎士は己の持つ超人的な力を、MHという星団史上最強の兵器をコントロールする為に存分に奮う。
そもそも何故騎士という種がいるのか?
話は星団史以前にまで遡る。星団史以前の昔、文明は現在よりももっと発達していたのだという。
冨と権力とを追い求め、文明を発展させてきた人々だったが、残念ながら現在の人間よりも強欲だったようだ。
優れた科学力を使い、彼らは戦争に明け暮れる。
殺傷能力の高い兵器を作り、大型の火器を作り、惑星さえふっとばせる武器を作る。
そうして行き着いた先にあったのが、“超人”だ。
あまりにも強い大型の兵器では、全てを滅ぼしてしまうことになる。
戦争に勝利したとしても、残るのは残骸となった星くずのみ。
そこでもっと局地的な戦闘を想定し、敵兵だけを確実に屠っていき、味方にダメージの少ない生物兵器を考えたのだ。
人だ。人を改良して“超人”を生み出せば良い。
リスクも少ない上に、大型兵器を開発するよりもコストがかからない。
各国は遺伝子改良にこぞって着手し始める。
遺伝子の段階から組み替え、超人を生み出す。生み出した超人に薬物や過酷な戦闘訓練を課す。
こうして造り上げられた超人は、戦争の最前線に向かった――と言われているが、その顛末がどうなったのかは、星団史以前の資料はまともに残っていないため、誰も知らない。
ただ超人の遺伝子情報は、現在の人間のDNAの中に残った。
現世に稀に出現する“超人”の末裔が、騎士〜ヘッドライナー〜なのである。
騎士の出生率は極めて低く、約20万分の1。つまり20万人に1人しか生まれないとされている。
その上この低い確率から生まれた騎士の力を持つ子供が、立派に成人し必ず一人前の騎士になれるのかと言うと、それは違う。
現在存在している騎士の確率は、1億人〜2億人に500人。
正しく騎士は奇跡なのだ。
ただ“超人”の遺伝子自体は、5つの星団に暮らす全人類にほぼ平等に存在していると言われている。
父親が騎士だからと言って、子供が騎士になるとは限らない。
騎士の遺伝子は最弱とされ、なかなか遺伝されないのだ。
騎士とは世襲が皆無であるとされるのは、これが理由だ。
ただこれにも例外はある。星団史以前から続いていると言われている、5つの星団にある5つの旧い王家は別なのだ。
王が騎士ならば、嫡子はほぼ騎士として生まれつく。
エアリスも騎士の遺伝子が世襲される旧い王家の姫だ。よって彼女はダイバーでもあり騎士でもあるバイアとなっている。

セフィロスに刀を投げつけた後、クラウドはディグを停止させ光剣〜スパッド〜を引き抜く。
スパッドは刃の部分が光学発生式となっている優れものだ。
鞘もいらずレーザー銃としても使用出来る。重くもなくかさばりもしない。
実剣を持つ騎士もいるが、多くの騎士はスパッドを有している。
そしてこのスパッドを所有出来る者は、限られた人物のみとされており、一種の身分証明も兼ねているのだ。
クラウドは普段は実剣を使うが、彼の剣は成人男性の身体ほどの巨大な質量を誇っている為、今回ゴールドソーサーには持ち込んでいなかった。
星団広しといえども、あんな巨大な剣を扱うのはクラウドのみ。
つまりあの剣を振るうことは、クラウドの正体を大声でアピールしているも同じなのだ。
今回の任務は基本隠密である故、クラウドは実剣ではなく光剣を選んでいた。
手の中でスパッドを回す。
――軽いな。
軽い。本当に軽すぎる。
却ってクラウドにはこの軽さが扱い難い。
そこにレーザーの帯が襲ってくる。
クラウドはレーザーの軌道を捉えると、スパッドの刃を出し、瞬きひとつもない間に、全てのレーザーを切り落とした。
レーザーがクラウドに通用しないのは、予め予想されていたのだろう。
切り落としている最中に、二人の敵がクラウドの斜め後方と頭上から、同時に襲いかかってくる。
この動き。普通の人間ではないが…
――騎士!?ではないな。
騎士にしては動き方が違う。
それに騎士のレベルにしては、新米よりもお粗末だろう。
全体にスピードもパワーもそれなりにはあるようだが、統制がとれていない。
クラウドの脳裏に過ぎるのは、
――薬物か?
脳に直接刺激を与え、異常なパワーをださせるという薬物は確かに存在している。
しかし普通の人間がいくら薬物の助けを借りようとも、騎士に比べれば段違いに劣っていた。
おまけにこの薬物は副作用が酷くて、一度使用すれば、異常なパワーをだす反動で身体はボロボロとなり、数度使用すれば脳が完全にヤラれてしまう。
よって星団法で禁止されているものなのだ。
だが完全に禁止される筈などなく。闇で改良品が出回っているとは聞いていたが。
クラウドは斜め後方から襲いかかってくる敵に、まず狙いをつける。
スパッドの刃を引っ込めてから、自ら敵に向かっていく。
騎士の走力は時速180キロと言われている。これはあくまでも騎士一般の数字だ。
クラウドは腰を落としバネをたわめて、一気にダッシュをする。
このダッシュは時速180キロを有に超えていただろう。
いきなり目の前に現れたクラウドに、斜め後方から襲ってきた敵の全身に怯えが走る。
そこからのクラウドの攻撃はむしろシンプルだ。
彼は敵に両肩と両太股、それぞれの関節をスパッドで砕いてしまう。
最後とばかりに頸骨を砕かないように軽く撫でて、脳からの伝達機能を麻痺させてしまう。
そうやって身動き出来なくなった敵の身体を片手で掴むと、頭上から襲いかかろうとしている敵に向かって無造作に投げつけたのだ。
無造作に投げつけた、といえどもクラウドは騎士だ。
投げられた敵は人の形をした凶器となって、味方に向かって飛んでいく。
うぎゃ、とも。あぎゃ、とも。なんとも形容しがたい叫び声と共に、ぐしゃりと肉が激しくぶつかる音がした。
何せ頭上から襲ってきていたのだ。当たり前にある重力によって、加速していた敵は、いきなり飛んできた仲間の身体から避けることも出来ず、クラウドの目論見通り激しくぶつかってしまう。
もつれ合いながら地面に落ちてきた二人の敵は、もがこうとしても身体のダメージを受けすぎていてどうにもならない。
おまけに投げられた敵に至っては、脳からの伝達回路がクラウドによって切られているのだ。
意識はあっても手も足も、それどころか首から下はどこも動かない。感覚すらないだろう。
もがく仲間の上に乗り上がったまま、血走った目でクラウドを睨み付けるのが精一杯のところ。
クラウドは歩きながら近寄ると、まだ動ける敵の身体も同じように砕く。
――あまりにも弱すぎるな。
コイツらが本当に、これまで騎士を攫ってきた犯人なのだろうか。
それにしては弱すぎる。
いくら隙をつかれたと言えども、こんな弱い敵に倒される騎士などいるまい。
――まあ、それは後で考えることにするか。
そうして敵二人の行動を完全に沈黙させてしまってから、クラウドは自分のファティマへと感心を向けた。

***
今回はここまで。


+ '08年01月30日(WED) ... しょうこりもなくダブルパロその8 +

数時間後二人は首尾良く今夜の宿を決めた後、バレットに連絡をとった。
アルテマの整備に入っているというバレットのいる工場に訪れる約束をする。
工場はゴールドソーサーのメインエリアから少し離れた郊外にあった。
一日中煌めくネオンと絶対に途切れない人波ばかりの、ごちゃごちゃと猥雑なメインエリアから小一時間ほど離れるだけで、そこは驚くほど殺風景な場所となる。
工場ばかりが建ち並ぶその区画は、鉄の匂いと煙で充満していた。
ここもゴールドソーサーなのだとは、信じられないくらいに違いすぎる。
工場の建ち並ぶエリアは、大きな十字道路により4ブロックに別れていた。
クラウドが運転するバイクタイプのディグは、十字道路の端に備え付けてある表示板の前で止まる。
表示板にはびっしりと細かい文字で、それぞれの工場の場所が記してあった。
セフィロスは素早く表示板を読みとる。そしてインプットされてある工場を探し出した。
その間0.2秒。
「クラウド。このまま右に折れろ」
「わかった、右だな」
セフィロスの指示通り、クラウドはディグを進める。
右折してそこからは細かい路地へと。2つ目の角を今度は左に折れて、突き当たりまで走ったそこで、クラウドは総毛立つ。
――殺気だ。
そこからクラウドの身体は反射で動く。
彼は自分の身体より巨大なディグを、減速しないままで強引に寝かせる。
ディグは減速しないままでの無茶な動きによって、僅かに浮き上がる。地面と平行になった。これでは倒れる寸前だ。
いきなりのGに苛まれながらも、さすがは星団最高のファティマ、セフィロスも異変に気づく。
セフィロスはクラウドの意図を察すると、クラウドの背中を庇おうとするが、行動に移るよりも先に命令が飛ぶ。
「セフィロス。行け!」
マスターの命令には逆らえない。
セフィロスは浮き上がったままのディグから跳びだす。
一般のファティマの能力の数値は、握力200キロ以上。背筋500キロ以上。反応速度は騎士の平均値の85%とされているが、セフィロスの数値はこれを遙かに超えている。
彼は騎士よりも優れているのだ。
跳んだセフィロスは近くの建物の外壁に行き着く。垂直の外壁に両足で着地したそのわずかの間に、ファティマはマスターを襲った敵を見定めた。
――あそこか。
あそこにも。あそこも、いる。
敵は全部で5名。
――クラウドを襲うなど、後悔させてやる。
セフィロスは一番近い場所にいる敵に向かって、更に跳んだ。

セフィロスが敵を見定めているその時、地面と平行になっているディグすれすれにレーザーが通っていく。
クラウドがディグを平行にまで倒さなければ、確実にあたっていたであろう角度だ。
レーザーの軌道を追いかけるようにして、今度はディグを真っ直ぐに立てた。地面に垂直にする。
背筋を真っ直ぐに伸ばして、クラウドはセフィロスの姿を認める。
工場の垂直の壁を踏み台にしたセフィロスが、一番近い襲撃者に向かっていくのを見た。
ディグの側面に備え付けられてあるホルダーを空ける。
シュウッ。と空気の擦過音がすると共に、ホルダー内部から押し出されてきたのは、一振りの刀だ。
かなりの長さのある黒い鞘の刀をクラウドは掴むと、一声、
「セフィロス!」
よく通る声で叫ぶと刀を振り上げ、セフィロスの向かっている地点めがけて投げつける。
助走もなく無造作に投げつけただけなのに、刀は弾丸のように飛ぶ。
普通の人間ならば目で捉えることすらも出来ない。

***
今日は短いけどここまで

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+ '08年01月29日(TUE) ... しょうこりもなくダブルパロその7 +

「――わかった。ゴールドソーサーはすぐ隣だ。これから向かう」
『クラウド…あたし……』
「オレの心配はいらない」
ちらりと蒼い眼差しをじっと観賞しているセフィロスに向けて、
「優秀なファティマもいるんだ。問題ないよ」
『そだね――』
次に顔を上げた時、エアリスからは友人を案じる不安さは消え、一国の女王としての威厳があった。
『騎士クラウド。ゴールドソーサーでの探索を命じます』
『騎士の消息不明の原因を突き止めて、出来ることならば騎士を救い出してください』
『ゴールドソーサーへは民間船を使ってください。手配をしておきます』
エアリスの命令だとはバレないほうが良い。
『アルテマはバレットにお願いして、ゴールドソーサーに持ち込めるようにします』
「わかりました」
「騎士クラウド。エアリス女王の命を歓んでお受けいたします」
『くれぐれも――気を付けて』
通信が切れた時、クラウドは戦闘に臨む騎士の顔になっていた。
「セフィロス――」
「ああ…」
「聞こえたな」
「これからすぐゴールドソーサーに向かう」
「わかった」
クラウドはそのままシャワーブースへと向かう。
その背中を見送りながら、セフィロスはすでに切れてしまっているモニターに呟いた。
「心配など必要ないぞ、女王」
「クラウドは、俺が護ってみせる」
その為のファティマなのだから。

エアリスが手配してくれた民間船でゴールドソーサーに入った。
アルテマはバレット自らが工場のシャトルで運び込んでくれた。そのままバレット懇意の工場に置いてもらうことになっている。
ゴールドソーサーに来たのは初めてではない。だが降り立つ前からクラウドは不思議な緊張感を受けている。
確かに騎士は希少な存在だ。セフィロスのような美麗なファティマも、人目を惹くのに充分すぎるが…だが決して初めて目の当たりにするものでもない。
ましてやゴールドソーサーは中立地帯という場所故、お忍びの騎士がファティマを伴い訪れるのなど、珍しくもないのだ。
前にゴールドソーサーに降り立った時は、その通りだった。
ティファを連れているクラウドは、それなりの好奇心を向けられはしたものの、それだけだったのに。
今回向けられている視線とは明らかに違う。
皆が騎士であろうクラウドとそのファティマに、異常な関心を向けつつも視線は合わせようとはしない。
遠巻きにして、顔を背けながら二人を観察しているのだ。
騎士というだけで注目されることは常であるクラウドにとっても、この感じは苛立たしい。ましてや娶られたばかりの新米ファティマであるセフィロスには、不愉快以外の何物でもなかった。
彼はクラウドの背後にいつも以上に貼り付いて、周囲を牽制している。
クラウドに近寄ることは許さない。と剥き出しにしたセフィロスにより、ますます二人は周囲から観察され、存在が浮くのだ。
最初酒場や人の出入りの多い場所で探りをいれてみようと計画していたクラウドだが、早々に諦める。
これだけおかしな注目を浴びているのだ。誰もクラウドに気安い話などしてはくれないだろう。
何より、セフィロスがこれだけ威嚇しているのだ。
――宿を探すか…
その前に、
――バレットにそれとなく聞き込んで貰うか…
バレットならばマイスター仲間がゴールドソーサーにもいる。
マイスターはその仕事柄、騎士に関しての情報が入りやすい。
騎士であるクラウドには喋らなくとも、同じマイスターのバレットならば、口も軽くなるだろうし。
「…セフィロス。今晩の宿を探そう」
愛しのマスターを不躾な視線にこれ以上晒したくないセフィロスは、クラウドの提案をすぐに了承する。

***
明日に続きます。


+ '08年01月28日(MON) ... しょうこりもなくダブルパロその6 +

続きです。

***
コレルにあるバレットの工場にやってきて、もうすぐ二週間となる。
夜が明けてきた。白くあけていく外の風景を頭に描きながら、セフィロスはすぐ隣に眠る愛しいマスターの背中にそっと耳をあてた。
トクン。トクン。トクン。
規則正しい鼓動を耳だけではなく全身で聞きながら、セフィロスは目を閉じる。
クラウドと共に過ごすようになり、セフィロスにとって世界はやっと意味を成すものとなっていった。
充実しているというのは、こういうのを指すのだろうと。
クラウドと共に過ごす時間は、どんな些細なことも歓びだが、その中でも特にベッドの中でのこの時間が、セフィロスは一番気に入っている。
ファティマの皮膚に負けない美しい肌は、透き通るようだ。病的に白いのではない。生きている肌は滑らかで、幾度ふれても飽きが来ない。
動くたびに皮膚の下から現れてくる筋肉のうねりに、やはり彼が騎士なのだと実感はするが、セフィロスにとってクラウドはすでに愛しい存在だ。
目を覚ますタイムリミットまであと少し。
その間まどろんでいようと睡魔に委ねかけたその時、無粋な電子音が鳴る。
――誰だ。
セフィロスがこの不愉快な電子音に眉を顰めている間に、白い腕が伸びる。
寝間着代わりのシャツの間から伸びる腕は、クラウドのものだ。
さすがに騎士と言うところか。この一瞬に覚醒しきったらしい。
セフィロスの腕と比べても遜色のない筋肉のついた腕は、迷うことなく呼び出しに応える。
『――クラウド。早くからすまねぇ』
バレットの野太い声がする間に、クラウドはベッドから身を起こして、ちゃんと応対出来る体勢をとっていた。
ついさっきまでセフィロスがくっついていた背中は、すでにしゃんと伸びている。
「どうした?なにかあったのか?」
ただし声は、まだ寝起きのままだ。
『エアリスから通信だ。繋ぐぞ』
「わかった」
オフとなっていたモニターが繋がる。
そこには栗色の髪を柔らかく巻いた、いつものエアリスがあった。
セフィロスはこの女が気に入らない。クラウドの側近くにいて、自分よりも付き合いが長いだけでも腹立たしいのに、エアリスはクラウドがセフィロスを娶ったのに反対なのだ。
その上まるで自分のことのように、クラウドを支配しようとしている。
この女にクラウドが仕えているというのも、大いに気に入らない。
今もそうだ。起きる前の幸せなまどろみを、まんまと奪い去っているではないか。
セフィロスも仕方なく起きあがると、モニターの可視範囲から外れた場所から、マスターの横顔を観賞した。
――クラウドは、きれいだな。
寝起きだからいつもより更に奔放な金髪も良ければ、目尻まできれいに生えそろった金の睫毛の長さも丁度良い。
髭など見あたらない滑らかな頬のラインも、鼻梁の角度も丁度良い。
身体のサイズも丁度頃合いだ。これ以上小さければ長身のセフィロスにとって物足りないだろうし、かと言って自分と代わらないほどゴツイ身体も遠慮したい。
腕の中にしっくりと収まる。思いの丈を込めて抱きしめても、壊れない強さ。
セフィロスという明らかに規格外のファティマを娶ってくれる、強靱でしなかやな精神と。いつまで経っても物慣れない不器用さと。
そのどれもがきれいだ。
いつもならばじっくりと観賞できない姿を、セフィロスは堪能する。

一方、モニターが繋がったエアリスは、クラウドの姿を認めると緊張で強張らせた頬を少し緩めた。
『ゴメン。こんな朝早く』
「いいよ。それよりどうしたんだ?」
エアリスの背後にはザックスの姿があった。モニターには映っていないが、ザックスはエアリスの背後かなり近い位置にいる。
エアリスを気遣ってのことだと、すぐにわかった。
『ゴールドソーサーで騎士の一人が消息を絶ったの』
ゴールドソーサー。星団の中にある中立地帯のひとつだ。クラウド達が滞在しているコレルにほど近い。
中立地帯故に様々な国籍の人間が出入りし、活発な交流が盛んに行われている。
何よりゴールドソーサーの売りは、娯楽だ。
大きなテーマパークが建ち並び、大人から子供まで楽しめる娯楽を提供している。
エアリス配下の騎士がゴールドソーサーで消息を絶つ。
確かに騎士が主との連絡を絶つのは珍しいが、エアリスが早朝からクラウドをたたき起こすまでのことでもあるまい。
つまりもっと深い核心があるということ。
そうと察したクラウドは、余計な口を挟まずに、エアリスが話し出すのを待つ。
『クラウド。知らないかな』
『半年くらい前から、ゴールドソーサーエリアで、いろんな国の騎士が消息不明になっているのヨ』
「騎士が!?」
まさか――といぶかしむクラウドに、
『ホントなの!』
エアリスの説明によると、仕事プライベート関わらずに、ゴールドソーサーに入った騎士の数名が、原因不明で消息を絶っているのだという。
戦闘でも、もちろんない。生死すら定かではなく、かといって中立地帯故にこちらから公に捜索することも出来ない。
そこで神羅以外のそれぞれの星団のトップが秘密裏に話し合い、互いに行方不明者をだしていることを確認。合同で秘密裏に捜査をしようということになったのだが。
『捜査に向かわせた騎士とも、連絡とれなくなって』
ついにはエアリス配下の騎士も連絡を絶ったのだと。
ここまで話を聞いて、クラウドはわかった。
エアリスが自分に何をさせたいのか。彼女はクラウドの身を案じて、言い出しにくそうだが。

***
コメントや拍手♪ありがとうございます。
返信可能なコメントは、後でまとめてお返しさせていただきます。


+ '08年01月26日(SAT) その02 ... 更新しました +

jin_08_01_25.jpg

再生への光三話更新です。
週末のお供に楽しんでいただけたらと思います。
そしてお詫びですが、目次が再生の光になっていました。
またやってしまったうっかりです。
B子さんごめんなさい。
修正しておきました。

そしてFSS〜〜〜。
ノリノリのB子さん。
続き、続きっと楽しみに追っかけています。
こねたの域は出ている気がします。
ここだと読みにくいので、
いずれちゃんと校正していただいた後サイトに収納したいって思います。
本でもいいかなぁ。


拍手
沢山のぱちありがとうございます。
待ってる方がいると思うと更新作業も楽しいものに変わるので不思議です。
お返事の方はB子さんから改めてはいると思います。


●本気でラクガキですが・・・。まったく衣装の感じを忘れてました。マンガ貸してください(超私信)


+ '08年01月26日(SAT) ... しょうこりもなくダブルパロその5 +

念のため改めて注意書き。
*五つの星の物語のダブルパロです。
*設定いい加減にやりやすいように弄くっている部分もあります。
*ダブルパロというのを頭に置いて、お読みください。
*ダメな人は読まないでください。

***
あの時の出来事をバレットは忘れない。
クラウドが操られたようにアルテマへと近づく。
「…アルテマウェポン――」
小さく呟かれた声に、動力も入っていないアルテマが応じる。
ブイィィィィィ。
作動音が地鳴りのようだった。
そして、アルテマの目が開く。いや正確に言うと、動力が入った為、目の部分のカメラが作動を始めたのだが、どう見てもアルテマが自分の意志で目を開いたかのように見えたのだ。
目を開けただけではない。
クラウドがアルテマへと手を伸ばすと、アルテマもそれに応える。
固定してあった拘束具のボルトを飛ばしながら、アルテマの左手が動いたのだ。
クラウドへ向かって。

アルテマはクラウドを選んだ。
クラウドもアルテマを選んだ。
だが残念ながら、アルテマはティファは選ばなかった。
ファティマシェルにティファは乗せたが、支配はさせなかった。
クラウドのファティマだから、ティファの存在を許しはしたが。

それがどうだ。アルテマはセフィロスを選んでいる。
ティファの性能ではアルテマの真の力を引き出すことが出来ないままだったが、セフィロスは違う。
彼はクラウドのサポートを完璧にこなし、アルテマをねじ伏せ、その力を的確に存分に発揮させているのだ。
試乗や簡単な模擬戦でさえそう思わせるのだ。
これが実戦となるとどうなるのか――バレットは戦慄する。
すでに“金の騎士”という二つ名で呼ばれているクラウドだが、このファティマをパートナーとした今、この先更に強くなるのは間違いない。
ティファとでは辿り着けない境地まで至るだろう。
もしかしたら“剣聖”の域までも。
その上なにより、
――このファティマ、本気でクラウドに惚れてんだな。
始めエアリスから話を聞いた時には、とんでもないファティマだと思った。
禍々しい存在だと。絶対にクラウドの側に置いて良い筈はないと。
今はいないティファの為にも、セフィロスなどクラウドの側から引き剥がしてやろうとさえ考えていたのだ。
――まったく、呆れるぜ。
そんな事を考えていた自分にも呆れるが…

バレットは試乗を終えて戻ってきたアルテマを見上げる。
まずファティマシェルからセフィロスが飛びだしてきた。正しく“飛びだしてきた”という形容がピッタリくるくらい素早い行動だが、セフィロスがやると優雅に見えるから不思議だ。
セフィロスは飛びだして、クラウドが出てくるのを待つ。
その様子は恋する姫君に忠誠を誓う騎士そのものだ。騎士はクラウドだと言うのに。
コクピットから出てきたクラウドにセフィロスは当然のように手を差し出す。
クラウドは苦笑しながらも、セフィロスに付き合ってやった。
セフィロスはクラウドの手をそっと握ると、エスコートをする。
二人の身体は腕一本のところで寄り添う。
――あ〜あ。ファティマのくせに、嬉しそうなツラしやがるぜ。
大きく表情を作っているのではないが、傍目から見ても充分にセフィロスの歓びは伝わってくる。
このファティマは、本気でクラウドに惚れているのだ。
バレットは全身全霊という古い言葉を思い出す。
人工生命体、ファティマセフィロスは、己の全身全霊を傾けてクラウドだけを追いかけている。
クラウドもそのことを理解しているようだ。
不器用ではあるものの、クラウドは彼なりの方法でセフィロスを受け入れようとしている。
こんな二人の様子は、なぜかしら微笑ましい。
ぎこちなくて不器用で、顔を見て手を取るだけであんなに歓んでいるのだ。
淡い初恋のようで、見ているこっちが呆れてしまう。
バレットは別々に用意していた部屋を、二人一緒にするのを決めた。

***
次回から話が動き出します。
でも明日はお休みになります(予定)。
次に貼るのはたぶん月曜日かと。

返信不要分も含めまして、コメントありがとうございます。


+ '08年01月25日(FRI) ... しょうこりもなくダブルパロその5 +

いざ改造を始め、試乗ともなると、バレットはセフィロスを認めるしかなかった。
なによりマイスターとして、セフィロスの素晴らしさを見せつけられるのだ。
いくら気に入らないからと言え、これだけの性能を持つファティマは他にはいないだろう。
マイスターとしては素直に認めるしかない。

数千年前と推定される地層から偶然発見されたマルテマウェポンは、全く未知のMHだった。
土と泥を落としきれいにした状態でバレットの元に持ち込まれてきたのが、アルテマとの出会いとなる。
一目見て、これは現在の科学力では有り得ないMHだと気づく。
バレットはマイスターとして携わるMHには、どれも敬意を払ってきた。
MHとは不思議な機械だ。装甲を肉とし、オイルを血とし、最先端のメモリーを脳として、彼らは生きているのだ。
生きて、何より自分の意志というものがある、と。
バレットの考えを裏付けるかのように、数多くの騎士やファティマ、マイト、マイスター達も、同じようにMHの意志に遭遇してきたのだ。
だが特にアルテマの意志は強固であった。整備はかろうじてさせてはくれるものの、誰にも操縦させようとはしない。
完璧な整備がしてあるというのに、誰かがコクピットやファティマシェルに整備目的以外で乗り込もうとすると、彼は動かなくなるのだ。
この変わったMHの噂は、すぐに広まる。バレットの元に多くの騎士がやってきた。
麗しいファティマを従えた著名な騎士も、幾人もいた。
だがアルテマは全く動かず、反応さえしない。
これはただの骨董品なのだと、アルテマの存在が忘れ去られようとした頃に、クラウドがやってきたのだ。

当時のクラウドはまだ騎士になったばかりの子供でしかなかった。
娶ったばかりのティファと揃って現れたクラウドは、バレットの目からみれば、頼りないとしか思えなかったものだ。
(どっちがファティマなんだよ)
まだ未発達のほっそりとした肢体。濁りのない見事な金髪。深く澄んだ蒼い瞳と。
身長もまだなく、ティファよりもかろうじて高いくらいでしかなかった。
腕は良いが偏屈者のマイトダンカンは、バレットの友人である。
そのダンカンが久しぶりに製作したファティマ、それがティファだった。
それ以来ダンカンはファティマを作っていない為、ティファはダンカン最後のファティマである。
カプセルに入る前、まだ幼い頃からティファを知っていたバレットは、彼女をとても可愛がっていたものだ。
本当の人間の娘のように、バレットはダンカンと共にティファに接してきた。
ティファもバレットの親切に応え、彼を慕っていたのだ。
自分が選んだ騎士をバレットに合わせたかったのだろう。クラウドがバレットの元を訪れたのは、ティファが言い出したからだった。
クラウドはまだほんの駆け出しの騎士でしかなく、所有のMHを持ってはいない。
出来立てほやほやの騎士とファティマは、クラウドでも持てるようなMHはないか、とバレットの工場のあちこちを見て回り、そしてアルテマを見つける。

漆黒の巨体。威風堂々とした佇まい。
気圧されてしまうティファと違い、クラウドはアルテマに魅入られる。
そして――アルテマも。

***
返信不要のコメント、ありがとうございます。
事実上はセフィクラですが、クラウドはみんなに関心をもたれております。
一種のアイドル状態かな?


+ '08年01月24日(THU) ... しょうこりもなくダブルパロその4 +

バレットとしてはティファのようなファティマを娶るべきだと考えてくれていたのだろう。
そしてティファの時と同じように、甘く優しい結びつきを作るべきだ、と。
それがどうだ。セフィロスは同じファティマでありながらも、ティファとはまるで違う。
あれではクラウドの幸せは望めない。そうバレットは案じてくれているのだ。
クラウドを案じる気持ちが、セフィロスへの嫌悪となっている。
案じてくれる気持ちはありがたいが、クラウドはセフィロスと別れる気はない。
こんなに感嘆に別れてしまうのならば、そもそも最初から娶りはしなかったのだから。
「バレット――」
「セフィロスはマインドコントロールを受けていないようだ」
「まさか!?」
本当に、ファティマなのにマインドコントロールされていないだなんて、有り得ないのだが。
「それでも、オレはセフィロスを娶った」
「解消する気はないよ」
「しかし…マインドコントロールされていないなんて、大丈夫なのか?」
ああ、
「セフィロスは見かけよりもずっと素直だ」
「今のところ上手くやっていると思う」
さっぱりと言い切ったクラウドに、バレットは密かに面食らう。
クラウドはいつも心のどこかに重い憂鬱を抱え込んでいた。この憂鬱は心の深淵にいつもあって、いくらティファが解きほぐそうとしても、ムリだったのに。
――なかなか良いツラしてやがるぜ。
クラウドは安定している。少なくとも安定しているように見える。
ティファと共にいる時よりも。
「ヤツはアルテマに乗れたんだな」
「セフィロスはちゃんと操縦出来るよ」
「ならば、俺が口を出すことはねえな」
アルテマが許したのだ。バレットも認めるしかないのだろう。
「ティファとかなり体型が違うから、改造が必要だな」
シートの位置も変えなければならないし、ファティマシェル全体を見直すべきだろう。
「改造が終わったら試乗して見せてくれよ」
あのファティマをパートナーとしたクラウドが、どんな風にアルテマを駆るのか、是非見てみたい。マイスターとしてのバレットの本能が擽られる。
「是非見てくれ」
クラウドがバレットの肩を軽く叩く。
それから二人は肩を並べて、セフィロスが待っているゲージへと向かった。

***
今回はここまで


+ '08年01月23日(WED) ... しょうこりもなくダブルパロその3 +

セフィロスという存在が、誰かに譲歩することなどないのだと覚悟していたが、バレットもあまり気安い男ではないと理解しているが、どうして初対面でここまで険悪になれるのかについては、はっきりと解らない。
それでもとりあえず紹介をと、クラウドは自分よりも20センチほど高い二人の間に立ち、まず、
「バレット――これがセフィロス」
「先日のミッドガルのお披露目で娶ったファティマだ」
「セフィロス――彼はバレット・ウォーレス」
「コレルのMHマイスターだ。アルテマも彼の世話になっている」
クラウドの紹介を受けた両者は、言葉も社交辞令もなく、互いに睨み合っている。
こうして並んでみると、セフィロスとバレットの外見は、見事に正反対だ。
身長の高さは、だいたい同じくらい。だが肉の量はまるで違う。整備士であるバレットだが、筋骨逞しい肉の厚い体躯をしている。
対するセフィロスも、逞しい身体をしているものの、これみよがしな筋肉の塊はない。
人工生命体にも関わらず、野性のしなやかな筋肉を持っているのだ。
ただファティマの基準から考えると、セフィロスもなかなか筋骨隆々の範囲なのだが。
バレットの浅黒い肌に対して、セフィロスの白皙。
生々しい傷跡が残る容貌と、欠点のない完全なる美貌と。
いや。例えセフィロスの容姿が自分と正反対だからと言って、バレットが最初から悪意を持つ筈などなく。
考えられるのはひとつだけ。
――ティファか…
バレットはティファをとても可愛がっていた。
ティファのマイトダンカンと親交があったバレットは、クラウドよりもずっとティファとの付き合いが長いのだ。
そのティファが死に、バレットは気落ちするクラウドに次のファティマを娶るのを勧めてはいたものの、やはり現実となり目の前に立たれると良い感じはしないのだろう。
二人の間がこれ以上険悪になる前に、クラウドは先制することにした。
「セフィロス――」
クラウドは己のファティマに命じる。
「アルテマの乗ったキャリアを移動させてくれ」
「バレット――アルテマに用意してくれたゲージは何番だ?」
不審を訴えかけてくるセフィロスを黙殺して、クラウドは話をバレットに振る。
「…25番だ」
ここから一番遠いゲージのナンバーだ。
「そうか。セフィロス、25番ゲージにアルテマをセットアップさせておいてくれ。オレもバレットと打ち合わせしてからすぐに行くから」
言いたいことはたくさんあるだろうが、この場はセフィロスは引いてくれた。
「…――わかった。移動させてセットアップさせておく」
「頼む」
長い銀髪を揺らせながら、セフィロスはモーターヘッド・キャリアに乗り込んだ。
工場の表示を確認してから、25番ゲージへと移動させた。

キャリアが小さくなっていくのを見送っていると、バレットが気まずそうに口を開く。
「…すまねぇな」
「良いよ…バレットの気持ちは、解るから」
「だが、クラウド――どうしてアイツを選んだ?」
これを一番問いたかったのだ。
ティファとよく似たファティマならば、バレットも納得出来ただろうに…
「お披露目の場で、マスターを抱き上げたっていうのを聞いた」
「それは、本当か?」
さすがは星団に名を轟かせるマイスターだ。情報は早くて正確。
だがその情報源に心当たりがあるすぎるクラウドは、事実あったこととはいえ、やや耳が痛い。
「エアリスだな――」
エアリスとバレットの間も親交があった。
「そうだ。エアリスがお前がファティマを娶ったと教えてくれたんだ」
「他にエアリスは何を言ってた?」
不愉快そうにバレットは表情を変えて、
「Dr、ガスト。Dr、宝条。この二大天才マイトの共同作品。信じられないほど禍々しい男のファティマが、クラウドをかっさらって行ったと聞いたぞ」
禍々しい――この言葉に、クラウドは形の良い眉を顰める。
「こうとも言ってたな」
「あれは普通のファティマではない、と」
「俺もそう思うぜ。お前さんが娶ったファティマは、ファティマの形はしているがファティマじゃねえ」
バレットは心配しているのだ。そうクラウドは悟る。

***
ここまで。

返信不要のコメント、ありがとうございます。
大切にさせていただきます。


+ '08年01月22日(TUE) ... しょうこりもなくダブルパロその2 +

その夜から、毎夜の共寝は習慣となった。
セフィロスは夜ごとやってくるし、クラウドはそんなセフィロスの為にベッドに居場所をつくってやる。
一ヶ月も経つ頃になると、クラウドもセフィロスもくだらない建前をとるのはやめにした。
一回り以上大きなサイズのベッドを買い、二人は本格的にベッドを共にするようになる。
ただし、肉体関係はないままであったが。


クラウドがセフィロスを娶ってから二ヶ月が過ぎた頃、二人の姿はコレルにあった。
惑星コレル。鉱物資源が豊かである為、MHに関わる人々の中継点ともなっている。多くのヘッドライナーやMH整備士であるマイスター。優秀なMHを求める者たちが集まる場所なのだ。
二人はすぐにバレットの元へと向かう。
バレット・ウォーレス。星団に名を轟かせるMHマイスターの一人だ。
彼はコレルに己の工場を持ち、ずっとここに住んでいる。
腕はピカ一だが、なかなかに癖のある性格の持ち主で、クラウドも知り合った当初はかなりぶつかり合ったものだ。
バレットとしては、騎士なのにどこか頼りないクラウドを案じてのことであったが、自分の容姿が幼いのを気にしていた当時のクラウドにとっては、バレットの忠言は不必要な干渉でしかなかった。
もっとも付き合いが長くなるにつれ、バレットが本当は気の優しい男であると理解出来たのだが。
ティファが亡くなってからも、バレットにはアルテマのメンテナンスで世話になっている。
エトラムルをアルテマにつけてくれたのも、バレットだった。
そのこともあり、娶ったセフィロスをバレットに紹介をかねて、アルテマとセフィロスとの調整を頼もうとコレルにやってきたのだが、クラウドが予想していた通り、バレットとセフィロスの対面はあまり心地の良いものではなかったのだ。

予め連絡をいれておいた為、工場に到着した二人を出迎えてくれたのが、バレット本人であった。
浅黒い肌に刺青。頬には生々しい傷跡。何よりもその逞しい巨体。
バレットは外見だけで言えばマイスターには見えない。おまけに彼の片腕はギミックなのだ。
バレットは両腕を組んで、二人を待っていた。
アルテマを乗せているモーダーヘッド・キャリアから二人が出てくるのをじっと眺めている。
まずセフィロスがキャリアから現れた。彼は辺りを睥睨すると、いつものようにクラウドをエスコートしようと、手を差し出す。
これがまず、どうにも気に入らなかったらしい。バレットのただでさえ厳つい顔が、一層険しくなる。
クラウドは、と言うと、彼はセフィロスのエスコートを苦笑混じりに断って、ひらりと重さを感じさせない動きで地面に立つ。
そして、蒼い双眸はすぐに旧知の人物を捉え、
「バレットっ」
小走りに駆け寄った。
クラウドはその育ちからか、人見知りする方だ。対人関係には不器用で、哀しいくらいに素直になれないところがある。
そのクラウドが向けてくれる親愛に、バレットの険しい顔も一気に解れた。
「久しぶりだなあ、クラウド」
「連絡もせずに、すまなかった」
「いいや。お前さんが元気なら良いってことよ」
ギミックでない方の手が、クラウドの肩に置かれようとしたその瞬間、絶好のタイミングでその手を遮った者がいる。
言うまでもない、セフィロスだった。
セフィロスはバレットの手がクラウドの肩に届く寸前で、愛しいマスターの腰を引いて、位置をズラせたのだ。
空振りしそうになるバレットの手に向かって、フフンと冷笑を与えてから、これみよがしにクラウドの耳元に囁く。
「紹介してくれないか」
「あっ…ああ、そうだな」
と、空振りに終わったバレットもただで済ませるつもりはない。
売られたケンカは買う。出来れば倍返しだ。これがバレットの遣り方。
「クラウド――俺にも紹介してくれ」
セフィロスとバレットとの間に流れる不穏な空気が読めないほど、クラウドはバカではない。

***
今回はここまで


+ '08年01月21日(MON) ... しょうこりもなくダブルパロその1 +

年末から書いていますFSSダブルパロの続きです。
時系列も前回の続きっぽいです。
誤字脱字変換ミスは、各自脳内で補完してくださいませ。

***
夜明け前、まだベッドから起きあがるには早すぎる時間帯。
クラウドはある気配を感知する。
半分まどろみながらも、近づいてくる気配に意識を向けた。
彼を娶ってからこの気配がやってくるのは、ほぼ毎晩のこと。そろそろ馴染んできた気配に、クラウドは応じるように寝返りを打って、いつもの通りベッドの半分をあけてやる。
気配の持ち主はそっとクラウドを窺うと、なるべく静かにあいたベッドの半分に身体を滑り込ませてきた。
普通のシングルよりは大きめのサイズであるとはいえ、並はずれて長身の彼には狭い空間だろうに、むしろ狭いことを歓迎しているようだ。
クラウドの隣へと滑り込んだ彼はなるべく密着してくる。かなりの至近距離だ。吐息すら感じられるくらいに。
そうやってから彼はクラウドを観賞し始めるのだ。

それにしても、やはり
――おかしなファティマだなあ。
クラウドよりも彼自身のほうが、遙かに観賞に値する美貌だというのに。
そもそもファティマが騎士に捧げるのは、ただの純真な献身などではない。
ファティマとしての己の能力を存分にふるえるだけの騎士を冷静に判断して、自分が認めた騎士をある意味利用するのだ。
一度認めた騎士だろうが、実力が劣ればまた別のマスターを選ぶファティマも多い。
それがどうしたことか。星団一、二を争う天才マイト二人がつくったファティマセフィロスは、マインドコントロールを受けていないせいなのか、マスターと選んだクラウドだけを一心に求めてくる。
その様子は痛々しいくらいに真摯である。
また幼子が必死に親を求めているようで、つい絆されてしまうこともしばしば。
これだってそうだ。
クラウドはいくら見目麗しいからといって、セフィロスをセックスのパートナーにするつもりなど考えもしなかった。
以前のファティマ、ティファとは確かに肉体関係があったが、それはあくまでも恋人同士としての関係が二人の間で自然と構築されていたからこそ。
セフィロスは男性型であることだし、いくら美麗だといえどもクラウドは性欲さえ押さえられないような獣ではない。
性欲を処理する方法ならばいくらでもある。かえって男同士なのだから、肉体を介在しない関係をつくるべきなのだ、と…そう考えていたのだが、セフィロスは違っていた。
彼は最初からクラウドを求めてきたのだ。
心も、もちろん身体さえも。
独占欲を剥き出しにして、クラウドに迫ってきたのだ。

セックスを拒否したクラウドに、表面上セフィロスは落ち着いて見えた。
それ以上の無理強いはせずに、クラウドのファティマになるべく、精進しているように見えたのだが、そのうちに夜中眠っているクラウドをこっそりと窺うようになっていく。
クラウドが寝入った時間帯を見計らい、寝室の扉越しにそっと様子を窺ってくる。
暫くはそれが続いたが、そのうち様子を窺うだけでは物足りなくなったのだろう。
他のファティマはともかく、少なくともセフィロスは強欲だ。
彼は寝室の扉を開け、クラウドが眠るベッドの側までやってくるようになる。
かと言って手はださない。どこにも触れない。
ひたすらに気配を殺して、クラウドの寝姿を観賞するだけなのだ。
いくらどうであれクラウドは騎士だ。どれだけセフィロスが己の気配を殺そうとも、気が付かない筈がない。
ただじっと寝姿を魅入り、そしてクラウドが目覚める前には、自室へと帰っていく。
正直、そんなセフィロスに絆されたのだろう。
ある夜、クラウドは態とらしい寝返りをうって、ベッドの半分を空けてやる。
クラウドのこの行動で、セフィロスは己が許されているのを悟った。
彼は迷うことなくベッドの空いた空間へと潜り込んでくる。
不埒なことでもするのかと思えば〜そんな行動を許すつもりはないが〜セフィロスは身体をずらせて、頭をクラウドの背中へと高さを合うようにした。
そしてそのままそっとクラウドの背中に頭を押しつけてくる。
何をしているのか――クラウドは軽いデジャヴに襲われた。
――鼓動を聞いてるんだな…
ティファも同じことをよくやっていた。
彼女はいつもクラウドの鼓動を聞きたがっていたのだ。
何故そんなことをするのかと問うと、彼女はこう言ってたものだ。
(落ち着くの――クラウドの音を聞いていると)
心音だけではなく血流の音も、聞きたいのだと言う。
どうやらそれはセフィロスも同じということなのだろうか。
寝間着代わりの薄手のシャツ越しに、セフィロスはクラウドの生きている音にじっと聞き入り、己を委ねているようだ。
そうして――眠った。
強引で美麗すぎるファティマの眠りにしては、とても健やかな寝息にクラウドは考える。
――そう言えば…
母親の腹にいる胎児は、様々な音を聞いているのだという。
外界の物音。人の声。母親の腹越しに妊娠期間中ずっと聞いているのだと。
だが胎児が一番よく聞いているのは、もちろん母親の胎内の音だ。
母親の心音。自分の周りを流れる血流の音。
ファティマは人の手によって造られる人工生命体だ。
無論胎生ではない。ファティマは母親の胎内ではなく、カプセルの中で育つのだ。
母親の胎内を知らない筈のファティマが、生きている音を求めてくるこの行為を、ティファだけではなく、この尊大で傲慢で美麗なファティマも求めてくるなんて。
ティファもセフィロスも、別にクラウドに“母親”を求めているのではない。
それでも、やはり彼らも生きている音が恋しいのだ。
――寂しがりやで甘えん坊なファティマか。
どうやら、自分はそんなファティマと縁があるらしい。
クラウドは投げ出されたセフィロスの大きな手を、そっと握ってやった。

***
しばらくお付き合い願います。


+ '08年01月18日(FRI) ... 連載再開です +

pero.jpg

こんにちはvY子です。
B子さんからファイルが届きましたので、シリーズ連載再開です。
再生の光2話になります。
FFSの方も続きもあるよ〜〜ってことで、楽しみです。
それでは週末寒いようですがおうちでぬくぬくのお供にしていただけたら嬉しいです。

■オフのこと
羽化シリーズの方はなんとなく連作になっているせいか再版して欲しいというありがたいお言葉をちょうだいしています。
ですが再版はコピーですしちょっと無理そうで方法を考えていました。
サイトにアップも考えたのですがご購入していただいた方には申し訳ありません。
そこで、次回羽化シリーズをまた作成する時に過去のシリーズを期間限定でDL販売しようということになりました。
次回配本から検討してみようかと思います。
どうぞよろしくお願いします。

追記:毎日パチとかありがとうございます。ありがたいです。


+ '08年01月15日(TUE) ... イベント御礼&拍手レス +

こんにちは、びーこです。

13日大阪インテでのイベントが無事終了いたしました。
予想以上に多くの方に足をお運びいただきまして、
ありがとうございました。
サイトへのご感想。
メモでのダブルパロにつきましても、有り難いお言葉を複数の方から頂きました。
あとせっかく来ていただきましたのに、売り切れとなってしまっていた方、申し訳ありませんでした。
今回は持ち込んだ物がほとんど売り切れてしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。
もしご興味がある方は、購入の有無に関係なく、
一声くだされば取り置きしておきますので、
よろしくお願いいたします。

メモへの拍手、♪、コメントありがとうございます。

8日19時、続きが読めて幸せです、の方>
ありがとうございます。
私も続きが書けて、とても幸せです。

9日1時のS様>
ファティマセフィロスは、まだ生まれたての幼犬のようなものなのです。
お手、おすわりから始まる、クラウドの躾物語。
と言ったところでしょうか。

10日2時のF姫様>
お考えの通り、クラウドは自分自身ではただの田舎騎士でしかないと考えていますが、
何事も自己評価が下手な彼のこと。
本当は星団でも注目の騎士である。
と、少なくとも私の脳内設定ではそうなっています。
あと通り名もありがとうございます。
拝借させていただくかも、です。
その時はよろしくお願いします。

12日1時、世界で一番可愛い俺様、の方>
セフィロスは愛すべき愚かな俺様だと思っています。
ファティマセフィロスは、美麗なんだけど、
可愛らしい俺様路線を貫くつもりです。

その他返信不要のコメントもありがとうございました。
どれも大切にさせて頂きます。


+ '08年01月14日(MON) ... ありがとうございました +

jin_08_01_14.jpg

イベントありがとうございました&おつかれさまでした。
オフの方更新しました。

拍手&♪も毎回ありがとうございます。
コメント返信&イベント感想(?)は↓にてのちほどB子さんからあります。

私信:萌え本お使いありがとうでしたぁ〜〜届くのが楽しみです。


+ '08年01月12日(SAT) ... いわゆるダブルパロその続きのラスト +

――やはり、マインドコントロールされていないな。
ガストと宝条両博士が何を意図してこうしたのかは解りかねるが、たまにはこんな変わり者のファティマがいても良いだろう。
「――セフィロス」
名を呼べばすぐに反応してくる様子は、まるで忠実な猟犬のようだ。
「オレにもお前にも時間はたっぷりとある」
「まだ知り合ったばかりだ。これからゆっくりやっていこう」
それにな、
「オレはティファしか抱いたことはない」
「男相手は初めてなんだ――出来るだけゆっくりと優しくしてくれないか」
セフィロスは今回初お披露目のファティマだった。
クラウドよりも性体験はない筈。つまり彼はまだ無垢なのだ。
知識はあっても実体験はない。
そんな自分を充分に理解しているのだろう。セフィロスは重々しく、
「わかった。善処する」
でも、
「キスまでは許可してくれないか」
これから先、きっと自分はセフィロスと恋人になるのだろう。
それはティファとの時のように、ただ楽しいだけの関係にはならないかも知れないが、それでもこのファティマを選んで選ばれたのはクラウドだ。
少しずつでも前向きに、セフィロスとの関係を構築していかなければならない。
――今度犬の躾の本でも読むか…
頭の片隅でこんなことを考えながら、クラウドは了解した。
「いいよ。スキンシップの範囲内ならばオッケーだ」
「スキンシップの範囲内とはどこまでだ?」
「オレが教えてやるよ」
時間をかけて、じっくりと。
そうして、クラウドは初めて自ら口づけてやった。

ファティマシェルから降りる時、一足先に着地したセフィロスは、まるで姫君でも迎えるようにクラウドに手を差し伸べてきた。
クラウドはその手を拒まずに、そっと触れる。
「そういえば――」
「クラウド。さっきお前が使ったあの技は騎士のものではなかったな」
「あれは――ダイバー(魔導士)の技だった」
3Aランクのファティマが見逃すはずもない。
「そうだ。オレはバイアだ」
「騎士と魔導士、両方の能力を持ち合わせている」
騎士、ヘッドライナーが“天を取る者”という意味を持つのに対し、魔導士、ダイバーは“つらぬく者”という意味で呼ばれている。
ダイバーの能力は二種類に分けられている。この二種類の能力を同時に有するダイバーはいない。
ひとつは魔法。三次元以上の時間の力、生死の世界の力をこの次元において物理的エネルギーに変換するのだ。
変換された物理的エネルギーは、炎や雷撃、ショックや克空などとなり、魔導士の思うままに対象を攻撃する。
もうひとつはもっと霊的なものだ。預言や霊力と呼ばれるもので、その偉大な精神力で様々な現象をコントロールするのだ。
魔法が攻撃的な能力なのに対し、預言や霊力は防御的な性質を持っている。
その為か、前者が恐れられるのに対して、後者の魔導士は尊ばれ敬われることが多い。
天文学的な確率になるが、時折騎士と魔導士両方の能力を持って生まれる者がいる。この者をバイアと呼ぶ。
バイアは5星団合わせても10名もいないだろう。それ程までに希有の存在なのだ。
有名なバイアがエアリス。そしてクラウドもそう。
エアリスがセトラの巫女であり預言者であるのに対して、クラウドは魔法を使うのだ。
どうしてバイアが生まれてくるのか――
バイアは遺伝子操作では生まれてこない。故に考えられるとするならば、原因はひとつのみ。その“血の濃さ”だ。
アバランチの女王エアリスは、この世界で今や最も古い血セトラの末裔である為、バイアであるのも至極当然とされている。
だが、クラウドは――
少なくともクラウドの母は騎士でもダイバーではなかった。
彼女はクラウドを愛してくれたが、秘して語らずに死んでしまった為、母の血の成り立ちも知らず、ましてや父に至っては顔も名前さえも知らないクラウドは、自身のルーツを知らない。
どうして自分がバイアなのかも知らない。
「――バイアだと知って驚いたか?」
騎士とは違いダイバーは嫌悪の対象となる場合もある。
セフィロスは素直に認めた。
「驚いた。バイアに遭遇出来る確率は皆無に近いからな」
だが、
「これでどうして俺がお前をマスターに選んだのか、その理由がはっきりと解った」
「理由?」
「マスターを選んだこと。独占欲、嫉妬心、奇妙なMH、口づけ、そしてバイア――」
「クラウド、お前は俺にいつでも初めてをくれる」
「お前とならば、何年経とうが、どこでどう生きていこうが、きっと退屈すまい」
ひょっとしたら――
「クラウド。こういう感覚を人は恋愛感情と呼ぶのか?」
透き通るクラウドの肌に朱が走った。
「そんなの、自分で考えろ!」
馬鹿野郎、と言い捨ててクラウドは先にカーゴベースから出ていってしまう。
星団一の高い能力を誇るセフィロスを、バカ呼ばわり出来るのもクラウドだけだろう。
――出来れば、あの口から睦言を聞きたいものだがな。
今は無理でも時間はたっぷりとある。
クラウドがそう言ったのだ。
「――クラウドは俺のモノだ」
背筋が凍り付く美麗な笑みの目撃者は、アルテマウェポンのみである。

***
これにておしまい。
続きは…きっと書くんだろうなあ。

たくさんの拍手&♪&コメント、ありがとうございました。
もろもろについてはまた後日お返しさせていただきたいです。
明日はインテの日。
参加される方、良かったらお立ち寄りくださいませ。

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+ '08年01月11日(FRI) ... いわゆるダブルパロその続きの5 +

クラウドは己のペニスを握るセフィロスの手を外そうと試みながら、この急激な展開に驚くしか出来ない。
ファティマが、マスターを襲うだなんて。
マスターの命令ならば、己の死すらも易々と受け入れてみせるのが、ファティマだ。
それが――このファティマは…
ギリリとクラウドの眦がつり上がる。
――この野郎!
クラウドは普段は隠し通している己の力を解放した。
シェルの大気がいきなり圧をあげて、セフィロスだけを押し潰す。
さしものセフィロスもこれには動きを止めるしかなく、結果彼はクラウドの股間から手を放すしかなくなってしまう。
股間が解放された所で、クラウドは拳できれいな顔を殴りつけた。
ゴギ、という骨が歪む音がして、非の打ち所のない美貌が歪む。
「馬鹿野郎!」
――まったく、何とち狂っていやがる。
「ここはそんな場所じゃないっ」
「セックスしたいなら他のヤツ探せ」
騎士の力で頬を殴られても顔もしかめなかったセフィロスが、この一言では見事に形相を変えた。
「俺を――見捨てるというのか…」
「クソ馬鹿野郎!!」
今度は頭の天辺に拳骨を落としてやった。
これは手加減はした。さすがに頭蓋骨が折れては完治までに時間がかかる。
「ちゃんと人の話を聞け」
「お前は星団で最も優れたファティマのくせに、人の話も聞けないのか!」
――いいか。
「セフィロス。経緯はどうであれ、オレはお前を選んだんだ」
「お前が、オレのファティマだ」
「オレはセックスの為に、お前をファティマに選んだんじゃない」
「だが…」
「前のファティマとは寝たのだろう」
「そうだ――」
「オレはティファを愛していた」
でもな、
「愛しているから寝たんだ」
「寝るためにティファをファティマにしたんじゃない」
わかるか?この違いが。

セフィロスは酷く真面目な顔で考え込んでいる。
その僅かの間にも頬がだんだんと腫れてきた。
――頬骨をヤったか…
自己再生するだろうが、しばらくは腫れたままだろう。
だがセフィロスはやはり美麗だ。本当の“美”というものは、このような醜い痕まで美貌のスパイスにしかならないらしい。
充分考えてから、セフィロスは解答をする。
「俺を前のファティマほど愛していないから、抱かないということか」
その時、セフィロスが全身で訴えていたのは絶望だった。
セフィロスは、自分が以前のファティマ、ティファほどに愛されていない現実に絶望しているのだ。
――星団一の頭脳が共同で造ったファティマはバカなのか!?
もう「バカ」と言うのすらも疲れてしまう。
それよりももっと虚しいのは、自分がこのファティマの愚かさを、嫌いではないというところか。
クラウドは今度は殴りつける為ではなく、優しくするべく手を伸ばす。
変色して形の変わってしまった頬を癒すように撫でた。
自分は嫌われているのだと思いこんでいるセフィロスには、このクラウドの行動が唐突で理解出来ない。
ただクラウドを見つめるしかない。
「――お前、ホントにバカだなあ」
「ティファにヤキモチを妬いてどうする」
ヤキモチ――?
「俺は、前のファティマに嫉妬しているのか?」
「ああ、たぶんな」
「だから、シェルに残っていたティファの匂いが気になったんだろう」
――そうか。
「お披露目の場で、俺はお前の姿を誰にも見せたくないと思っていた」
「もしかして――これも嫉妬なのか?」
「いいや。それは独占欲だな」
嫉妬も独占欲も、セフィロスの知識には確かにある言葉だ。
意味も無論知っているが、実体験でその本当のところを経験したのは、初めて。
こうしてクラウドに己の行動を指摘され、呆然と理解しているセフィロスは、まるで子供だ。

***
セフィロス、忠実なる子犬への道。

Y子さんがこのダブルパロを読んで、FSSが読みたくなったと言ってくれました。
とても嬉しかったです。
読んでいただいている方にもそう思っていただければ、光栄です。

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02/19(TUE)15:56:55 [home]  [186-1725]

emeline_aron https://www.blogger.com/comment.g?blogID=3799927115181925125&postID=4748861479159311400 >viagra online
https://www.blogger.com/comment.g?blogID=3799927115181925125&postID=4748861479159311400 >online viagra
02/28(THU)15:42:02 [home]  [186-1827]

Monroe Nolan factionist stellated pambanmanche unaccelerated sthenochire vaccina beetlehead buskle
http://www.whitehouse.gov/kids/presidents/thomasjefferson.html >US Presidents - Thomas Jefferson
http://www.dbu.edu/library/

メモ
03/25(TUE)04:11:18 [home]  [186-2964]

Robbie Padilla factionist stellated pambanmanche unaccelerated sthenochire vaccina beetlehead buskle
http://www.piratelove.com/ >Pirates Cove
http://www.nationalwiper.com/

メモ
04/17(THU)20:42:39 [home]  [186-122]

Valeria Townsend factionist stellated pambanmanche unaccelerated sthenochire vaccina beetlehead buskle
http://music.dartmouth.edu/~mfrengel/index.html >Frengel, Mike
http://www.wappingfair.org/

メモ
04/22(TUE)11:24:20 [home]  [186-1014]

Mik http://abacate.info/map.html
http://aaronitic.info/map.html
http://ababdeh.info/map.html
online
online1
online2
http://abacay.info/codien-cough-surup.html
codien cough surup
credit plus solutions
[URL=http://aaronitic.info/cwu.html]cwu[/URL]
[URL=http://aaronitic.info]online6[/URL]
04/24(THU)09:08:27 [home]  [186-355]


+ '08年01月10日(THU) その02 ... いわゆるダブルパロその続きの4 +

拍手&♪&コメント、ありがとうございます。
もうちょっとでダブルパロが終わりますので、最後にまとめて改めて御礼させていただきたいです。

***
セフィロスがファティマシェルに収まってしまってから、暫くの時間が過ぎた。
中で何をやっているのかは、想像出来る。
さっきからずっとアルテマが稼働しているのだから。
どうやらセフィロスはアルテマに、ファティマとして認められたらしい。
気むずかしいアルテマだが、バカではない。
きっと気に入らなくてもクラウドが選んだファティマを認めてくれるだろうとは予想していたものの、ここまでスムーズにいくとは意外だった。
これもセフィロスだからこそなのだろうか。
――そう言えば、ユニットは固定だったよなあ。
位置を変えるべく修理しなくてはならないだろう。
ティファサイズではセフィロスにはきつすぎる。
それにいつまでも以前のファティマの匂いを残しておくのは、セフィロスに失礼すぎるだろう。
クラウドは修理の段取りをつけるべく、一旦アルテマから離れようとしたが、その時呼ぶ声がした。
「――クラウド」
「どうした?」
「来てくれないか」
きっとユニットのことだな、そうクラウドは見当をつけると、身軽にファティマシェルまで辿り着く。
身体を半分いれてセフィロスを見つけると、苦笑を浮かべてしまった。
案の定、足部のユニットが合っていない。セフィロスのほれぼれする長い足は、芸術的なバランスで投げ出されているのだ。
足を投げ出し、腰の位置をずらして、そうしてやっと頭部ユニットを使うことが出来モニターを覗けるのだ。
「すまなかったな…すぐにユニットの位置を変える」
「ああ、そうしてくれると助かる」
――だが、呼んだのはそれじゃない。
セフィロスの長い腕が伸びてきた。無防備でファティマシェルを覗き込んでいた、クラウドの身体を捉えてしまう。
そのまま狭いシェルの中で、クラウドはセフィロスの膝に乗り上げる格好となった。
間近で視線が合う。縦に裂けた翠の瞳とは、ファティマでも珍しい。
クラウドは見惚れた。だって本当に――美しい色合いなのだ。
セフィロスの大きな手はクラウドの後頭部をすっぽりと包み込む。
そうしてこの美麗なファティマは、新しいマスターに囁く。
「――匂いがする」
「前のファティマの匂いだな」
「ティファの!?」
そうだ。
「俺はこの匂いが嫌いではない」
「だが――我慢は出来ないな」
「セフィロス…?」
「この匂い。消してやる」
美麗すぎるこのファティマは、やはりとびきりヘンなのだ。
セフィロスはそのままクラウドをしっかりと抱き寄せ、強引に唇を合わせて、吸った。
クラウドは慌てて藻掻こうと試みるが、セフィロスは上手に動きを押さえる。
「このシェルで前のファティマと口づけたことはあるか?」
キスの合間の、この台詞で。
クラウドの反応は素直だ。絡めた舌の動きから、ウソかホントかすぐにわかる。
この場合の答えはイエス。
この答えを受け、セフィロスは更に先へと進めるべく、片手でいきなりクラウドの股間を撫でた。
エアリスがクラウドの為に誂えた白いシルクが、セフィロスの手によって乱されてしまう。
「…っ」
息を呑むクラウドの耳朶に、直接次の台詞を送り込む。
「ならば、抱いたことはあるか?」
「――!」
どうやらこれは、ノー。
だとすれば、セフィロスが取るべき方法は決まっている。
「そうか…ならばこれからクラウド、お前をここで抱く」
セフィロスはあくまでも強引で直接的だった。クラウドの股間を握り、服の上から愛撫を加えようとする。

***

びーこ Y子さんのオフお知らせの上にどどんとごめんなさい。
オフのお知らせがあります。
↓をご覧ください。
01/10(THU)16:32:44  [185-642]

gennick[KEKEZKZKZKZF] About 50 area police officers are involved in the search for the man and the weapon, Sgt. T.J. Grady said Sunday.
http://free-online-cross.bedleg.info/index.html
The town that had only one reported murder between 1999 and 2006 is taking the horrific
http://free-online-cross.bedleg.info/sitemap.html
incident particularly hard, The Associated Press reported.
http://free-online-cross.bedleg.info/sitemap.xml
Calling the killings a "sad commentary on our society,
free online cross
The women were found shot in a back room of a Lane
sitemap
Cindy Sorenson brought red roses to Lane Bryant on Sunday
sitemap
"Your job is your home," 34-year-old Sorenson
free online cross
The parent company of Lane Bryant, Charming Shoppes, In
sitemap
The company said its Chicago-area Lane Bryant
sitemap
O'Connell said the company was offering a $50,000 reward for information "leading to the arrest
02/07(THU)06:35:23 [home]  [185-1547]

Utithtaug http://www.dealslist.com/forum/profile.php?mode=viewprofile&u=18036&sid=71438c27cd154b5308b2a8848f71cc49
http://www.lucasgrabeel.org/board/profile.php?mode=viewprofile&u=12098&sid=05f6253c8149e6514b5cb6891f48f546
http://www.ihatedell.net/forum/phpBB2/profile,mode,viewprofile,u,21596.html
http://www.technobrains.com/phpbb2/profile.php?mode=viewprofile&u=6418&sid=59e515e3999264918b1f0362b560ce89
1930s dresses
alexis rhodes hentai
alexandria towntalk
alexandre despatie bulge
Thanks )
02/09(SAT)15:18:04 [home]  [185-1552]


+ '08年01月10日(THU) ... イベント@お知らせ +

jin_08_01_10.jpg

せっぱ詰まりつつギリギリで間に合いました。
最悪自力(新幹線)搬入になるかとドキドキしました。

■販売物
新刊
Pro-choice(B6コピー)
※羽化シリーズ続編ですが単品でも読めます300円
既刊
Personal Jesus(A5コピー)
※羽化シリーズ続編ですが単品でも読めます 300円
金と銀(A5オフ)500円
※吸血パラレル

↑となります。
新刊の方は普段よりサイズが小さ目のB6です。
そして、製本ミスをしてしまい。修正したので、のり付けされている箇所があります。
(しかも紙が違う)
すみませんでした。


では後はB子さんよろしくお願いします。
↓FSSの上にごめんなさい。


+ '08年01月09日(WED) ... いわゆるダブルパロその続きの3 +

少なくとも、意志があるとしか考えられない不思議な出来事が続き、そのおかげでどんな騎士もアルテマに乗ることなど出来なかったのだ。
ティファのマイトダンカンとバレットは縁が深く、以前より親交があった。
その関係で騎士となったばかりのクラウドはMHを求めバレットの元をティファと共に訪れ、そこでアルテマと邂逅する。
アルテマは選んだのだ。若い少年騎士、クラウドを。
「――それからアルテマはオレと一緒に戦ってくれているのさ」
「そうか…――」
不思議な話だが、信じない理由もなかった。
セフィロスははっきりと感じていたからだ。アルテマがセフィロスを観察している、鋭い意志を。
――このMHはただの機械ではない。
アルテマはクラウドだからこそ、動くのだろう。
そして今、新たなファティマとなったセフィロスを観察して、自分に相応しいかどうかを推し量っている。
つまり名実共にクラウドのファティマとなれるのかは、このMHの意志にかかっているのだとも言えよう。
「ファティマシェルを見せてくれ」
だからと言って媚びるつもりなどない。
セフィロスはあくまでも己の意志でクラウドと共にいるのだ。
アルテマがセフィロスを気に入らないと拒絶するのならば、力ずくで認めさせてやるだけだ。
「そこだ――」
クラウドが指したのは胸部分の赤いシェル。
セフィロスは跳ぶと直にシェルまで辿り着く。
スイッチを押すと従順にシェルのハッチは開いた。中にいるのはエトラムル。無形態ファティマである。
ティファを失ってから、クラウドはファティマを乗せてはいない。
セフィロスはアルテマとエトラムルを繋ぐ配線に手を伸ばす。
「マスター。もうコレはいらぬよな」
セフィロスというファティマがいる今、エトラムルは必要ない。
「そうだな…」
「ならば、俺の好きなようにして良いな」
セフィロスはアルテマとの配線を素手で千切ると、エトラムルの記憶に干渉を始める。
これまでの戦闘データーを収集、分析するためだ。
こういえば聞こえが良いが、要するにセフィロスはエトラムルの脳を吸い出しているのだ。
エトラムルが記憶しているクラウドに関する全てを消し去る。
突き詰めてみれば、これがセフィロスの本音だ。
メモリーの吸い出しはすぐに終了した。セフィロスはエトラムルをファティマシェルから排除する。
エトラムルを押しのけて、そうしてセフィロスは初めてアルテマのファティマシェルに座ったのだ。
――匂いがする。
クラウドの匂いではない。微かに薄れてしまっているが、セフィロスにははっきりとかぎ取れた。
――以前のファティマの匂いか…
確か、名はティファと言ったか。
クラウドが最初に娶ったファティマだ。
彼女が死んだ後も、クラウドは次のファティマを選ばなかった。セフィロスに会うまでは。
足部と頭部のユニットは固定されている為、セフィロスのサイズには合わない。それが余計に苛立たせるのだ。
足をユニットに入れないで、シートから投げだして座り、かろうじて頭部だけはヘルメットに頭を突っ込む。
――アルテマウェポン…聞こえるか。
MHは確かに機械だ。鉄とボルトとナットとオイルが複雑に絡み合った集合体でしかない。
だがMHに携わる者ならば知っている。これは生き物なのだ、と。
特にファティマは、自分が操るMHと深く交流しなければならない。
――俺はセフィロス。
――クラウドのファティマだ。
良いか。
――俺はクラウドを選んだ。これは絶対に変更のない現実だ。
だから、
――お前もクラウドと共に戦いたいのならば、俺を受け入れるんだ。
そうでなければ、
――クラウドをお前から取り上げてやる。
ヴヴゥィーン。
足下からわき上がってくるモーター音がはっきりと聞こえた。
セフィロスはこれをアルテマウェポンからの了解だと捉える。どうやらこのMHは愚か者ではなかったらしい。
――よし。これからお前と俺はクラウドの両腕となるのだ。
その為にまずは、
――お前の能力を俺に示せ。
モニターを下ろして、セフィロスは本格的にアルテマウェポンとひとつになる。

***


+ '08年01月08日(TUE) ... いわゆるダブルパロその続きの2 +

大広間を出て、廊下にまで至って、やっとセフィロスは口を開いた。
腕にあるマスターに、
「宿はどこだ?」
と問う。
何せ早く二人きりになりたい。どこも人目がありすぎる。
セフィロスの問いにクラウドは別の提案をした。
「それよりもオレのアルテマに会いたくはないか?」
ファティマとMHは文字通り一心同体となるべき間柄だ。
クラウドも早く愛機に会わせてやりたかった。
アルテマもセフィロスを歓迎するだろう。なにせこのファティマは、おかしなファティマではあるが、性能はとびきりなのだから。
クラウドの提案にセフィロスは心囚われた。
クラウドと早く二人きりにもなりたいが、クラウドのMHにも会いたい。
別に部屋でなくとも良いのだ。カーゴベースでも二人きりになれる。
こう考えると、クラウドの提案は素晴らしい。
「会いたい――会わせてくれ」
よし。
「預けてあるカーゴルームに行こう」
だが、その前に、
「頼むから、下ろしてくれないか」
「この状態に何か問題でもあるのか?」
問い返すセフィロスは大いに不服そうだ。
クラウドは苦笑で肩を振るわせながら、
「男が男を抱いて運んでいるなんて、目立つだろう」
恥ずかしいなどと言っても、絶対にこのファティマには通用しない。
だからクラウドはあえて、こういう言い方を選ぶ。
そしてこの選択は的確であったようだ。
「目立つのか?」
「ああ、とてもよく目立つ」
「――わかった」
セフィロスは腰を屈めて、そっと下ろした。
まるで深窓の姫君に対する態度に、クラウドは大声をあげて笑いたくなった。
――オレは騎士だぞ…
騎士はファティマよりも強い。いや、セフィロスならば騎士以上の性能を持っているのだろうが、それでも騎士は騎士。
クラウドが騎士だということを。果たしてセフィロスは理解しているのだろうか。
――お前さっきマスターって呼んだだろう。
からかいたくなってしまう衝動を、クラウドは首を緩く振って耐えた。
その様子をセフィロスは察知して、
「どうした――」
本当に、主思いのファティマなこと。
きっとティファよりも。
「いや…なんでもない」
「さあ、行こう」
クラウドは先に大股で歩いていった。
セフィロスもそれに続く。

エアリスの用意してくれたカーゴベースは、かなり立派なものだ。
そこにクラウドの愛機、アルテマウェポンは静かにあった。
漆黒のボディを見上げ、セフィロスは翠の瞳を見開く。コンタクトグラスを外しているのだろう。瞳と虹彩との間が妖しく煌めく。
二足歩行型のアルテマはどちらかというとスリムだ。余計な装甲は一切無く、すっきりとシンプルな外見をしていた。
MHの素人ならば、アルテマの真の能力を見抜くことなど出来ない。
ただヘッドライナーならば、MHマイスターならば、アルテマの性能に脅威を感じるだろう。
クラウドはアルテマの装甲に手をかけて、軽く叩く。
漆黒の装甲は見た目よりも遙かに重い音がした。
「どうだ。これがお前の相棒になるアルテマウェポンだ」
どうだ、と言われてもセフィロスは声もでない。
一目見て、セフィロスにはわかったのだ。アルテマの性能の凄まじさを。
「これは…」
「――マイスターは誰だ」
「さあ、オレも知らない」
「知らない!?」
「クラウド。お前の愛機なのだろう?」
「ああ、そうだ」
それでも、
「知らないものは知らない」
「説明してくれ」
「アルテマは造られたんじゃない。発掘されたのさ」
コレルという星がある。そこでアルテマは発掘されたのだ。
鉱山事故で露わになった地層から出てきたMH。それがアルテマウェポンなのだ。
「コレルのMHマイスターにバレットというヤツがいる」
バレット・ウォーレス。マイスターとしては星団屈指の腕前を持つ。
ただしかなり気むずかしい気分屋であり、金で仕事は請け負わない。
「アルテマは発掘された後、バレットの元へ運び込まれた」
そして、騎士が乗りこなせるように改良されたのだが、十年以上誰も乗りこなせないままでいたのだ。
なぜならば、アルテマには意志があったから。

***


+ '08年01月07日(MON) ... いわゆるダブルパロその続きの1 +

調子にのりました。
すみません。ボクがやりました。反省しています。

前回のその後というか、すぐの続きの時間軸です。
誤字脱字細かい設定など、全ておかしな点はスルーしてください。

***
生まれてこの方、これ程恥ずかしい思いをしたことはない。
きっとこれからも、ない筈――と、ここまで考えて、クラウドは考え直す。
――いや…
たぶん、
――このとびきり綺麗でおかしなファティマといる限りは、続くのかも。
諦観というよりも達観した気分のまま、クラウドは今自ら選んだ〜その実はおしかけに近いのだが〜ファティマに抱かれながら、お披露目の会場となっている大広間を移動中であった。

クラウドは騎士である。
通常の人よりも遙かに優れた能力を持ち、MHを自らの身体のように使いこなす、選ばれた戦士。
――それがこのザマはどうだ…
自らの状況に苦笑しつつ、クラウドは力を抜き、身を委ねた。
大柄ではないクラウドの身体は、逞しい腕によりほとんど傍目からは見えないだろう。
クラウドを軽々と抱き上げているファティマの名はセフィロス。
3Aという最上級の性能を持つ。また彼を製作したマイトも凄い。
5つの星団で1,2を争う天才、ガスト博士と宝条博士の共同開発なのである。
つまり現水準で最高の英知が結晶して生み出されたファティマ、それがセフィロスなのだ。
年齢設定にもよるが、小柄で針金のように細いのがファティマのスタンダードであるのに、セフィロスは違っていた。
自身こそが騎士のような長身と、広い肩幅、長い手足と。
何よりその美貌だ。ファティマは美形なものであるが、ここまでの美麗さは他のファティマにはない。
どれだけ美しかろうとも、どれだけ人以上の性能を備えていようとも、所詮ファティマは人形でしかなかった。
騎士にそして星団法に、人に従属すべき存在でしかなかったのだ。
それがセフィロスは別だ。彼は支配者であった。
彼の行動は彼が決める。彼の意志決定は誰にも邪魔出来ない。
「イエス・マスター」
とクラウドに忠誠を誓った瞬間、セフィロスはクラウドを抱きしめる。
その時耳が痛くなるような喚声によって、彼は初めて自分の周囲を認めたのだ。
興味津々で見守るギャラリーたち。今回のお披露目に招待された、各星団の有名ゲスト達ではあるが、セフィロスにとってはただのピーピングトムでしかない。
絡みつく視線も、剥き出しの好奇心も煩わしくてならない。
早くクラウドと二人きりになりたいのに。
第一、
――下素な視線でクラウドを見るとは、許さん。
やっと手に入れた、大切なマスターなのだ。
セフィロスの決断は迷い無く早い。
彼は自分よりも小柄なクラウドを横抱きにすると、そのまま肩に置いた手を滑らせて深く抱き込んで、マスターの整った顔をギャラリー達から隠してしまう。
セフィロスにはそういう意味の羞恥などない。
彼はクラウドの顔を隠しつつも、自身は毅然と顔を上げて、大広間の衆人の中央を真っ直ぐに進んでいった。
騎士とファティマが公私ともにパートナーとなるのは、珍しくはない。
己の娶ったファティマを公然と恋人として扱う騎士も多い。
だがその逆。ファティマから騎士を、こうして愛おしむのは、とても珍しいのだ。
ファティマのほとんどが女性型であることもあるが、やはりファティマとはどれだけよく出来ていても人形でしかないからだ。
こうして誰はばかることなく、マスターへの独占欲を露わにするなど、まずは出来ないこと。
セフィロスが二大天才マイトの作品だからなのか。
どう見ても、彼は人形には思えない。

***
ファティマセフィロス、忠犬への道。
という感じで話は進んでいきます。


+ '08年01月06日(SUN) ... ありがとうございます&拍手レス +

おはようございます。びーこです。
忙しない年末年始の連載であったのにも関わらず、
ダブルパロへ多くの反応をいただきましてありがとうございます。

以前にも書きましたがFSSはファンが多いため、
やったらおしかりを受けるんじゃないかと危惧していたのですが、
この設定がお気に入りな方が多くいらっしゃったようで、
とても嬉しいです。

2日9時、12巻一気読みをされた方>
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
騎士クラウドが死んでしまったら、ファティマセフィロスは、復讐をきっちりとやり遂げた後に、
クラウドの後を追いかけると思います。
でもたぶん、アマテラスエアリス(!?)がライフストリームの力で、二人を復活させるのに一票。

2日20時、銀のファティマと金の騎士の方>
素敵なフレーズをありがとうございます。
これ、次に書く時に作中で使わせてもらっても良いですか?
きっとこれからもこのペアは、セフィロスがにじり寄り、クラウドが譲歩していって、互いの居場所を確固たるものにしていくのでしょう。

3日0時、楽しく拝見させていただきました、の方>
もろもろの絆の中でも、私が個人的に気掛かりなのは、
初エッチですね。
セフィロスはどうやってそこにもっていくのでしょうか?
ちなみにクラウドは女性経験はありますが、
男性経験はないです。

3日11時、完結しちゃいましたね、の方>
連載もSWもFSSも、私の中では同じくらいの比重を締めております。
ダブルパロのふたつは、連載の平行して進めていければなあ、と考えております。

3日11時、SWについてコメントをくださった方>
気に入っていただけて良かったです。
マスターがパダワンを見いだすお話は、Y子さんにもせっつかれているのですが、
しっくりくるのが思い浮かばないので、
じっくりと考えてみたいと思っています。

他返信不要の方も含めまして、皆様コメントをありがとうございました。
どれも大切にさせて頂きます。


Y子 せっつき係のY子です(笑)
B子さんのシリーズが増えるとせっつく数が増えます。
でもB子さんは一人なので順番があるのが切ないです。
次回作も期待しています。

では潜って作業してきま〜〜す
01/06(SUN)14:57:55  [180-575]


+ '08年01月02日(WED) ... いわゆるダブルパロラスト +

これにて最後です。
お付き合い頂きましてありがとうございました。

***
長くてくだらない一通りの挨拶を終えると、クラウドはすぐにエアリスの側から退散する。
一応エスコートの役目は終えたのだと言わんばかりに、クラウドは会場の中心から離れ、グラスを片手にバルコニーへと出た。
バルコニーからはミッドガルの夜景が一望出来る。
色とりどりの灯りは、まるでおもちゃ箱のようだ。ごちゃごちゃしていてどこか猥雑。
その時大きな喚声が会場から漏れ出てくる。
きっとお披露目が始まったのだろう。だがそれはクラウドには関係のないこと。
人に溢れた場所にいたため、疲弊した神経を休めるべく、クラウドはグラスを煽った。
爽快な喉越しがすっと溶けてしまうこの味わいは、酒に弱いクラウドでも美味だと素直に感じられる。
無論これも神羅マークの製品なのだろう。
――神羅はいただけないが、酒は美味だな。
収まりの悪い金髪を風が掻き上げていく。
少し目を閉じて、クラウドは体内に入ったアルコールを感じた。
会場からは頻繁に喚声が起こっているようだ。
騎士とファティマ。様々な思惑があろうとも、星団法に縛られるファティマにとって、このお披露目は唯一の自由を行使出来る場なのだ。

ティファとクラウドがあったのは、お披露目の場ではない。
ティファがクラウドを見初めてくれて、追いかけてきてくれたのだ。
騎士である変化を遂げたばかりのクラウドを、彼女は愛してくれた。未熟な騎士に誠心誠意仕えてくれたのだ。
死んだ者は戻らない。500年の寿命があると言われているファティマでも、死ぬ時は死ぬし、壊れる時は壊れてしまう。
失った者をずっと未練し続けるのは、ティファの為にも良くないのだとはわかっているのだが…

フッと、先日あの教会であったファティマを思い出す。
(クラウド――俺の騎士)
(俺のマスター)
ファティマだと言い切ってしまうには、あまりにも絶対だった。
あのファティマは、どういうつもりでクラウドをマスターだと思ったのだろうか。
彼はクラウドに、何を見たのか。
――まあ、いいさ。もう会うこともない。
グラスのお代わりをもらおうと、考えたその時、悲鳴そのものである一際大きな喚声が会場から溢れてくる。
自分には無関係であると信じているクラウドは、空になったグラスを片手に、会場へと戻ろうとした。
締めていた両開きの扉に手をかけた時、会場側から勝手に開く。
自然の流れで顔を上げると、そこにいたのは――
――!
「クラウド。やはり会えたな」
教会の花畑であった、あのファティマではないか。
今回はマント姿ではない。首から手足の先まで、きっちりと覆い隠した革製のファテイマスーツを身につけている。
黒のファテイマスーツの光沢が銀髪に映えて、妖しいほどに美しい。
「――お前は…」
「俺の名はセフィロス」
「ガストと宝条によってつくられたファティマだ」
つまり彼は、今回のお披露目での目玉だったファティマなのだ。
「俺のゲージは3Aを超える」
本当は高すぎて測定不能なのだが。
「騎士以上の働きもするぞ」
「何より――俺は絶対にお前を裏切らない」
哀しませもしない。
「お前だけを護り支えよう」
「俺の忠誠はお前だけに捧げられる」
クラウドが先に死ねば、後を追ってやろう。
「どうだ――ここまで誓うファティマは他にはおるまい」
だから、クラウド。
「俺のマスターになってくれ」
「俺にお前をくれ」
セフィロスはここまでを一気に言い切ると、跪き、クラウドの右手を取る。
そして手の甲に口づけたのだ。
まるで騎士が姫君に、永遠の忠誠を誓うように。

このワンシーンにため息が起こる。
やっとお披露目に現れたものの、「こいつらではない」と言い捨てて、会場中を探し回っていたセフィロスを追ってやってきた人々からわき上がったものだ。
皆この美麗すぎる最高級のファティマが選ぶ騎士を見たかったのだ。
わき上がったため息で、クラウドは我に返る。
手を引こうとするが、セフィロスは放さない。
顔をあげて、ニヤリとタチの良くない笑いを浮かべ、
「今回は立ち会いの騎士も大勢いるしな」
教会の花畑でクラウドが言った言葉を忘れてはいないのだ。
――なんてヤツだ!
どうしようかと頭を働かせるクラウドの視野に、心配そうに見守っているエアリスの顔を認める。その背後によりそうザックスも。
その時不意に湧いてきた感情は、不器用な自分の本音だ。
―― 一人は嫌だな。
寂しいのも嫌だ。ずっと一人で行動するのも。MHを一人で操縦するのにも厭きた。
こうやって周りからファティマを失った騎士なのだと、気遣われるのにもうんざりだ。
それに、このとびきりきれいだがちょっと行動がおかしいファティマほど、クラウドに忠誠を誓ってくれる者は、この先ももういないだろう。
ティファを忘れるんじゃない。彼女は永遠に忘れない。
でももうそろそろティファを解放してやるべきなのかも。
じいっと見上げてくるセフィロスの眼差し。翠の美しい色合いに不安が混じっているのを、クラウドは見逃さない。
「――…解ったよ」
――オレの負けだ。
「セフィロス。オレのファティマになってくれ」
「イエス・マスター」
セフィロスはそのまま手を引いて、クラウドを己の腕に抱きしめてしまう。
わーっとまたわき上がった喚声を、クラウドは逞しいファティマの胸の中で聞いた。
お披露目の場でマスターを抱擁したファティマは前代未聞である。

***

という感じで二人の始まりでした。

Y子 あけましておめでとうございます。


おつかれさまでしたぁ〜〜。
いやん。
どきどきしました。
隙間見てログまとめますね。


そして拍手や♪もありがとうございました。


私信B子さんへ:週明けましたら大阪用のコピー作成に入ります。毎度ギリギリでごめんなさいっ。
01/05(SAT)00:17:51  [179-571]


+ '08年01月01日(TUE) ... いわゆるダブルパロ6 +

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

では続きです。

***
金髪碧眼、北国特有の白い透ける肌を持つクラウドに、この衣装はぴったりだった。
クラウドこそが王家の一員にさえ思える。
実際クラウドは自身にどのような血が流れているのかは知らない。
物心ついた時には、身内といえば母しかいなかったのだ。母は騎士ではなかったから、きっと父親が騎士だったのだろう。
だが母は父の名前を明かさずに死んでしまったから、クラウドは己のルーツを知らないままでいるのだ。
白いマントを羽織ると完成となる。
白と金のみの衣装。その中にある明度の高い青と。
「まあ!やっぱり、よく似合うヨ」
想像以上の姿にエアリスは上機嫌だ。
ホテルから直にお披露目の会場へと向かう。会場となっているのは、ミッドガルで一番格式のあるホテルだった。
これが他の星ならば、国賓待遇とのレセプションで使用する迎賓館やら王宮などになるのだが、さすがに神羅は企業。
お披露目さえも営利目的の、華やかなイベントとなる。
ただホテルと謂えども、宿泊施設にはあらず。辺境の星の迎賓館などに比べると格段にこちらの方が贅沢だ。
床と壁は蒼に着色された天然の大理石。蒼と言っても白い大理石に淡く蒼いライトがあたっているような、そんな上品な色味で統一されていた。
そこに鮮やかな朱の絨毯が引かれている。絨毯の縁取りは白金。本物のプラチナを糸にして織り上げた最上級品であった。
まず先頭をエアリスが進む。クラウドと同じ色使いのドレスは、肌の露出が控えられており、エアリスの清楚な高貴さを存分に引き立てていた。
ティアラから滑り出るベールは、これまた手縫いの総レース。長さは3メートル以上はあり、付き従うクラウドとザックスは踏まないように気を付けていなければならなかった。
エアリスの右隣にはクラウド。エスコート役だ。
左の背後にはザックス。マスターエアリスに忠誠を誓うファティマの姿がある。
一行が今回のお披露目の会場に入ると、そこはすでに多くの人々で埋め尽くされていた。
右を見ても左を見ても、5つの星団で著名な人物ばかり。
統治者。王侯貴族。名のある騎士。天位を持つ者も数名いた。もちろんファティマも数多くいる。
皆エアリスを認めて、礼をもって迎え入れる。
エアリスは王族らしい鷹揚さで向けられる礼に応えると、まずは今回のお披露目の主催者、神羅の社長の下へと向かう。
5つの星団に暮らす者ならば、みなその顔を知っていよう。
プレジデント神羅は、でっぷりと肉のついた身体を窮屈そうにスーツの中に収めていた。
エアリスはほんの一瞬だけ、その緑の眼差しをきつくする。
だがすぐに上品な微笑みに変え、プレジデントの前に進み出た。
「これはこれはエアリス様にお出まし頂けるとは、光栄に存じます」
脂ぎった手をだして握手を求めてくるが、エアリスは絶妙にこれを避ける。
彼女は握手に応じる変わりに、ドレスの裾を引き、正式な礼をとってみせたのだ。
「お久しぶりでございますわ。プレジデント様」
「今回はこのような盛大なお披露目にお招き頂きまして、とても嬉しゅうございます」
にこやかに微笑むエアリスに、プレジデントも握手に応じられなかったことなど忘れ去ってしまったようだ。
「今回は何せあの天才二大マイト、ガスト博士と宝条博士が共同で作ったファティマのお披露目ですからな」
「是非エアリス様にも立ち会っていただかねばと思いましてな」
「まあ、お気遣い痛み入りまする」
ところで、とエアリスは視線をプレジデントの隣へと向ける。
そこに立ってさっきから二人の遣り取りを聞いているのは、
「ご紹介が遅れましたな――」
プレジデントは隣の青年を促しながら、
「息子のルーファウスにございます。どうぞお見知り置きを」
本当に遺伝子が繋がっているのかと、問い質したくなるほどに、息子と紹介されたルーファウスの見目は整っている。
クラウドとは質の違う金髪と碧眼。引き締まっているが男として充分な体躯。
長い手足にも広い肩幅にも、引き締まった腰にも、スーツがよく似合っている。
そして何より目を惹くのが、ルーファウスの背後には、一人の騎士が控えていた。その黒髪の騎士の関心はずっとクラウドに注がれている。
「ルーファウスと申します。女王様」
「エアリスです。よろしく」
見目の良いルーファウスと、エアリスとの遣り取りは、本物のおとぎ話の再現だ。
ただし両者共に、腹のさぐり合いではあるが。

***
明日でラストです。


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