クラウドは己のペニスを握るセフィロスの手を外そうと試みながら、この急激な展開に驚くしか出来ない。 ファティマが、マスターを襲うだなんて。 マスターの命令ならば、己の死すらも易々と受け入れてみせるのが、ファティマだ。 それが――このファティマは… ギリリとクラウドの眦がつり上がる。 ――この野郎! クラウドは普段は隠し通している己の力を解放した。 シェルの大気がいきなり圧をあげて、セフィロスだけを押し潰す。 さしものセフィロスもこれには動きを止めるしかなく、結果彼はクラウドの股間から手を放すしかなくなってしまう。 股間が解放された所で、クラウドは拳できれいな顔を殴りつけた。 ゴギ、という骨が歪む音がして、非の打ち所のない美貌が歪む。 「馬鹿野郎!」 ――まったく、何とち狂っていやがる。 「ここはそんな場所じゃないっ」 「セックスしたいなら他のヤツ探せ」 騎士の力で頬を殴られても顔もしかめなかったセフィロスが、この一言では見事に形相を変えた。 「俺を――見捨てるというのか…」 「クソ馬鹿野郎!!」 今度は頭の天辺に拳骨を落としてやった。 これは手加減はした。さすがに頭蓋骨が折れては完治までに時間がかかる。 「ちゃんと人の話を聞け」 「お前は星団で最も優れたファティマのくせに、人の話も聞けないのか!」 ――いいか。 「セフィロス。経緯はどうであれ、オレはお前を選んだんだ」 「お前が、オレのファティマだ」 「オレはセックスの為に、お前をファティマに選んだんじゃない」 「だが…」 「前のファティマとは寝たのだろう」 「そうだ――」 「オレはティファを愛していた」 でもな、 「愛しているから寝たんだ」 「寝るためにティファをファティマにしたんじゃない」 わかるか?この違いが。
セフィロスは酷く真面目な顔で考え込んでいる。 その僅かの間にも頬がだんだんと腫れてきた。 ――頬骨をヤったか… 自己再生するだろうが、しばらくは腫れたままだろう。 だがセフィロスはやはり美麗だ。本当の“美”というものは、このような醜い痕まで美貌のスパイスにしかならないらしい。 充分考えてから、セフィロスは解答をする。 「俺を前のファティマほど愛していないから、抱かないということか」 その時、セフィロスが全身で訴えていたのは絶望だった。 セフィロスは、自分が以前のファティマ、ティファほどに愛されていない現実に絶望しているのだ。 ――星団一の頭脳が共同で造ったファティマはバカなのか!? もう「バカ」と言うのすらも疲れてしまう。 それよりももっと虚しいのは、自分がこのファティマの愚かさを、嫌いではないというところか。 クラウドは今度は殴りつける為ではなく、優しくするべく手を伸ばす。 変色して形の変わってしまった頬を癒すように撫でた。 自分は嫌われているのだと思いこんでいるセフィロスには、このクラウドの行動が唐突で理解出来ない。 ただクラウドを見つめるしかない。 「――お前、ホントにバカだなあ」 「ティファにヤキモチを妬いてどうする」 ヤキモチ――? 「俺は、前のファティマに嫉妬しているのか?」 「ああ、たぶんな」 「だから、シェルに残っていたティファの匂いが気になったんだろう」 ――そうか。 「お披露目の場で、俺はお前の姿を誰にも見せたくないと思っていた」 「もしかして――これも嫉妬なのか?」 「いいや。それは独占欲だな」 嫉妬も独占欲も、セフィロスの知識には確かにある言葉だ。 意味も無論知っているが、実体験でその本当のところを経験したのは、初めて。 こうしてクラウドに己の行動を指摘され、呆然と理解しているセフィロスは、まるで子供だ。
*** セフィロス、忠実なる子犬への道。
Y子さんがこのダブルパロを読んで、FSSが読みたくなったと言ってくれました。 とても嬉しかったです。 読んでいただいている方にもそう思っていただければ、光栄です。
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