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+ '07年12月10日(MON) ... たった一人のお方だけを愛するだなんて4 +

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続きです。

***
最後の旋律の余韻が、大気に震えて溶けていった時、セフィロスが指示を出す前に、無遠慮とも言える拍手が起こる。
拍手の持ち主は上流の特権階級にありがちな性質の持ち主らしい。
彼らは常に傅かれてきた。よって自分が場にそぐわないからと言って遠慮することもない。周囲こそが自分に合わせるべきだと信じ込んでいる。
拍手の主は無作法な己の態度に気づくことなく、そのまま舞台へと近づいてくる。
「相変わらず、君はミューズに愛されているね」
褒め言葉ではあるが、真意は見えない。
相手の出方を窺い、対応する。そんな謎かけのような言い回しが、彼なのだ。
「ルーファウス、まだ練習中だ」
冷たいセフィロスの態度さえも気に留めない。
彼はある意味正しい特権階級人なのだ。
ルーファウス・神羅というこの青年とセフィロスの付き合いは長い。
金髪碧眼というセフィロスの大切な恋人と同じ色味の持ち主でありながらも、ルーファウスとクラウドには決定的な違いだらけだ。
ルーファウスは髪の一筋から、駆け引きで出来ている。少なくともセフィロスはそう思っていた。
幼い頃からそうだった。父親同士がビジネスパートナーであり、ヨーロッパの上流階級にはありがちな数代前は縁続きであったこともあって、セフィロスとルーファウスは物心つく頃にはすでに見知っていた。
己よりも年下のルーファウスだが、セフィロスは一度たりとも親愛をもって見たことはない。
嫌いではないが、好意もない。
セフィロスにとってのルーファウスとは、何重にも囲ったビロードのカーテンの奥から外界を窺っている、そんな閉鎖的なイメージしかないのだから。
ルーファウスは言葉で、会話で、そして端正な容貌で、己の真意を隠す。
そんなルーファウスだが、ビジネスパートナーでもありまたパトロンの一人でもある為、これからも関わりは切れないのだろう。
今だってそうだ。自分が練習中に乱入してきたのにも関わらず、ルーファウスは当然のように空いていたソファのひとつに座り込み、すっかりと居座る気でいる。
明確な声にこそしないが、楽団員から諦めのため息が漏れた。
ここで「後にしてくれ」とルーファウスを追い返してみても、なんにもならないだろうというのは、セフィロスだって承知済みだ。
かといってルーファウスの前での練習など、すでに楽団員は彼のおかげで集中を切らしているし。
「休憩にしよう」
セフィロスはあっさりと無駄な苦労を放棄する。
直ぐさまセフィロスの意を受けたマネージャーが飛んできて、少し早いが一時間の休憩を伝えた。
セフィロスは式台から降りると、タオルを手に取った。
洗い立てのタオルは高価な品ではないが、清潔な匂いがする。
そこにクラウドの匂いを嗅ぎ取って、セフィロスは気を取り直す。
タオルを口元にあてて、家で帰りを待っていてくれているであろう恋人を思いだしていると、ルーファウスがこちらをじっと観察しているのに気づく。
「なんだ?」
「いいや…」
フッと下品になるかならないかギリギリの冷笑を浮かべ、
「そのタオルが随分とお気に入りなのかなあ、って」
まったく、人の気を逆撫でする男だ。セフィロスは冷たく見下ろして、
「そんなくだらない話の為に練習を中断させたのか」
「中断なんてとんでもない。適度な休憩だろう、セフィロス」
足を組み替え肘をつく。
優雅な仕草だがセフィロスにとっては嫌味でしかない。
「用がないのならば帰れ」
「用ならあるよ。セフィロス、君の顔を見に来たのさ」
「バカらしい。それは用とは言わん」
やれやれ。
「セフィロス。君はいつも即物的だねえ」
「付き合っている人間の影響かな」
暗にクラウドを嘲る物言いに、セフィロスは容赦しない。
怒りのオーラが立ち上る。機敏に感じ取った周囲は、そそくさと別の部屋へと移動をしていった。
が、当のルーファウスは平然としたもの。
その様子が余計に苛立たしい。
「言いたいことがあるのならば、はっきりと言え」
「じゃあ、言わせてもらおうか−−」
「ビビアン・リード嬢のお誘いを断ったんだって?」
「…」
いきなり登場してきた女の名前に、セフィロスは己の記憶を探った。
ああ、
「そんな女、確かにいたな」
「いたなじゃないよ。誘われたんだろ」
「くだらない誘いだ」
「君にとってはくだらなくても、リード嬢にとってはくだらなくなかったんだよ」
「くだらないに決まっているだろう−−」
「俺には恋人がいる」
「恋人がいる男にパートナーになって欲しいなど」
「セフィロス。パートナーの申し出なんてよくある話じゃないか」
「エスコートしてやって一曲でもダンスをしてやればいいだけだろう」
「それだけでないことはお前だって承知している筈だ。ルーファウス」
まあ、確かに。とルーファウスは気障な仕草で肩を竦めてみせる。
「リード嬢は君と親密な交際がしたかったのは確かだしね」
「はっきり言え−−」
「あの女は俺を連れ歩きたかったんだ」
パーティた遊びだけではなく、ベッドの中までも。
社会的地位や血統、見た目が良い男と寝るのがステイタスだと、勘違いしているバカ女の一人だった。
以前なら退屈しのぎで相手をした可能性もあるが、今のセフィロスにとってステイタスだけを求めて言い寄ってくる女はくだらなさすぎる。
まともに対応などしていられないくらいに。
「良いじゃないか。別に」
ルーファウスの価値観ではそういう事は極当たり前なのだ。
「リード嬢は少なくとも若いし独身だ」
「家柄も良いし、縁続きになっても不足のない相手だよ」
もちろん、遊び相手にも。
「お前がそう思うのならば、お前が相手になってやるといい」
「彼女は君が良いそうだよ、セフィロス−−」
ちらり、とルーファウスは練習の楽譜を見た。
「へえ、ロッシーニかい?」
楽譜を手にとってぱらりと捲りながら、
「そう言えば『イタリアのトルコ人』にはこんな歌があったよね」
「『たった一人のお方だけを愛するだなんて』」
第一幕目、イタリア人妻が歌うのだ。

 たった一人のお方を愛するほど馬鹿げたことはありませんわ
 退屈をもたらしこそすれ、楽しみをもたらしはいたしません
 日常の日々の満足は。
 蜜蜂も、そよ風も、小川も、いつも一本の花だけを愛してはいませんわ。
 持ち前の才と移り気で私はそういう風に恋をしたいの、
 私はそういう風に気を変えたいの。
 
「同じだよ、セフィロス」
「蜜蜂もそよ風も小川も、たった一本の花だけの為に存在しているのではない」
「君はもっと多くの花も知るべきだ」
「君にはそれだけの価値がある」
「そうは思わないかい−−クラウド」
クラウド−−の呼びかけに、セフィロスはハッと身を固くする。
右手の扉が開く。開けたのはクラウドだった。

***
ここまで

Y子 おおおおおお。
B子さん、B子さん、B子さん(煩いね)
すげ〜〜〜クラウドキターーー。
つか、出会いって人形だったの?クラウド?
ひ〜〜〜っ(色々興奮中)
出会い編も気になるよぉ。
ルーファス来たよぉ。
楽しみ。

ようやく来れて感激中です。
続き楽しみ。

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