音のない夢

AC後

夢――夢を見ていた。ここ数日見ている夢だ。
暗闇の中、目をこらすと深い森にいる。下草は水を含んだにおいを発していた。
クラウドは一人でこの光のない深い森に立っている。
バスタードソードは身に帯びていない。服は着ている。いつもの服だ。
耳をすます。感覚を研ぎすませる。肌に感じる大気は澄んでいた。風はない。嗅覚に触れてくるのは水を含んだ植物のにおいだけ。だが生き物の気配はなかった。昆虫の気配も小動物の気配さえもなにもない。視界に映るのも木や草、植物のみしかない。
立ち尽くしていても仕方がない。ここが夢なのだという思いも手伝いクラウドは歩き始める。
愛用のブーツが下草を踏む。不思議と音はしない。ここは、この夢は音のない夢なのかも知れない。
それでも豊かな下草を踏む感覚はクラウドを安らかにさせる。
楽しみながらしばらく歩くと視界が開けてきた。小さな湖だった。そして光が――月があった。この世界に月が生まれたのだ。

月は完璧な真円を描いている。表面にクレーターは認められない。本物の月とは違っていた。やや考えてすぐ気が付く。
この月は単純に真円を描いているだけではなく、球体〜たぶんこれも完全な〜なのだ。

――やはりこれは夢なんだな。
第一、月光の質が違う。光は届くもの全てを平等に照らしているのではない。ただ湖面のみに向かって射し込んでいるのだ。スポットライトのように。
しかも湖面には月はその姿を映して等いない。
湖の傍に近づく。わずかに身体を傾けて覗き込んでみると、己の顔が映っていた。湖は藍色の鏡となっていたのだ。月は映さないがクラウドは映す。
そこにあるのは見慣れた顔だ。クセのある金髪と目尻が切れ上がった目の色は青。
湖面に映し出されているからなのか、空の青ではなく海の青に近いように思えた。
男にしては細い眉。筋の通った鼻梁に摘んだような鼻先。唇はストイックに薄い。
造形はかなり整っているが、これまでクラウドはまともに他人から容姿について褒められたことなどない。
クラウドには社会生活を営むのに決定的なモノが欠けていたからだ。愛嬌、人なつこさがないのだ。
よってその姿はよくできたマネキンのよう。マネキンを褒め称える人間などいない。
これはクラウドの記憶にある生い立ちが原因なのだが、余程親しくならない限り、赤の他人がいちいちそこまで理解してやる必要などない。これが社会というものだ。
幼い頃よりクラウドは他人に媚びない道を歩んできた。己だけの力で生きていける為、力を求めてその象徴たるソルジャーを目指す。
ソルジャー……
――セフィロス…
普段は深く押し込めている記憶が解かれていく。


セフィロス。初めてキスした相手。初めてセックスをした、彼と。
初めて、失うのならば殺してやろうと決めた。互いに頭から貪りあった相手。
全部全部、初めてだった。
セフィロスと別れてから幾人もの人間と知り合ったが、その誰もがセフィロスほどにクラウドを満たしてはくれなかった。
今でもクラウドはセフィロス以外の相手とセックスをしてはいない。
男だろうが女だろうが、セフィロス相手以外には性衝動が起こらないのだ。
自分が彼のコピーなのだからか。それはわからないけど。

ふと湖面に映る己に、幼い当時の顔が重なった。ちょうどセフィロスと初めて会った頃のクラウドだ。
今よりずっと丸い柔らかい頬。大きく丸い目。それは男の子には見えなかった。だが少女の甘ったるさはない。中性ではなく無性と形容した方がピッタリだろう。
懐かしい顔だ。この顔でクラウドはセフィロスと出会った。
心のどこかがセフィロスを求める。初対面からそんな風に感じたのを忘れられない。そしてそれはセフィロスも同じだった。
形振り構わず求めあい、身体の関係もすぐに持った。激しく手加減のない欲望をぶつけあう。
二人の間に偽りはなかった。それは――原始本能。
セックスでも殺し合いでも、セフィロスはクラウドを虜にして酔わせてくれる。甘い甘いチョコレートのような陶酔ではない。セフィロスがくれたのは血を吐くような極限のエクスタシーそのもの。

苦笑を浮かべもう一度湖の己を見る。ああ、そうだ。あの頃よりオレはずっと成長している。


少年の入り口にいた子供はもういない。今の己は青年だ。初めて出会った当時のセフィロスと、ほぼ変わらない年齢になったのだから。
当時は丸味帯びていたラインはぐっとシャープに研ぎ澄まされている。首も腕も腰も胸も、厚味がつき逞しくなった。
もうすっかり成長した姿。子供だったクラウドはどこにもいないのに――
――セフィロス……
だって覚えてるんだ。何もかも覚えている。
セフィロスのこと。二人でやったこと。殺し合った剣の太刀筋までをも。
会いたい――寂しいとか哀しいからとかではなく、セフィロスに飢えている。
数ヶ月前カダージュの件で、思念体を依代にしたセフィロスと剣を交えてから、余計に。


愛なんていう居心地の良い生ぬるいものではない。
これが愛ならば――狂いすぎてるんだ。こんなにもセフィロスに飢えているなんて。

音ではなく波がクラウドを呼んだ。聴覚ではない。触覚で聞こえる。
『兄さん』
湖面に人間が立っている。
「カダージュ…」
セフィロスと同じ刃色の髪。同じ魔晄の尖った瞳。
セフィロス思念体。セフィロスの依代。
カダージュは一人ではなかった。影が三つに別れる。ヤズーとロッズ。
(ライフストリームに還った三人がどうしてここにいるのだろう)
――オレのせいか。
セフィロスに飢えるあまりに呼んだのか。
『会いたかったよ――兄さん』
カダージュはその台詞を裏付けるように、湖面を駆け寄ってくる。
遅れまいとロッズが。やや遅れてヤズーもやってきた。
あの事件の時にはこの三人と戦ったというのに、どうしてだか今目の前にいる思念体たちはやけに幼い。敵意もない。むしろ好意を感じる。
『怒ってる?』
すぐ目の前でカダージュが止まった。触れようとしたのだろうか。肩の位置まであがった手が躊躇で止まる。
空気を掴むような中途半端な動作に、クラウドは初めてこの三人を"弟"だと噛みしめた。
「いや――怒ってないよ」
『ホント!?』
「ああ、オレはお前達が嫌いじゃない」
三人にあった緊張が解けていった。
一番感情が豊かなのか、ロッズの目に涙があって、クラウドは驚く。
『泣くなよ、ロッズ』
『泣いてねぇよ』
そんな遣り取りはまるで子供みたいだ。あの時殺意剥き出しで立ちはだかった奴らには思えない。
クラウドよりも小柄で線の細いカダージュ。
筋骨逞しいロッズは思念体とは思えないくらい野性味剥き出しだ。
体型としてはヤズーが一番セフィロスに近いのだろうか。それでもまだすらりとしすぎだ。セフィロスはもっと線がしっかりとしてもっと長身だった。研ぎ澄まされた刃先のように。
この三人を前にするとどうしてもセフィロスを思い出してしまう。思念体なのだから仕方がないことなのだろうが、それでもたまらなくなってしまう。
ほとんど感情を露わにしないクラウドの瞳の青がふっと緩んだ。
そんな眼差しをカダージュは見上げこう言った。
『兄さん――セフィロスに会いたくない』

『僕はあの時セフィロスとリユニオンした』
『それは僅かな間だったけど、それでもあの時僕はセフィロスの一部だったんだ』
カダージュはセフィロスと共有した。過去に何があったのか。これからはどうしたいのか。
だから伝わってきた。セフィロスという男の核(コア)が。
セフィロスというパーソナリティの核(コア)には一人の男しかいなかった。
クラウド・ストライフ。正の感情も負の感情も含めて、セフィロスをセフィロスたらしめているのはクラウドなのだ。
クラウドがコピーだからなのか、そこまではカダージュにもわからない。
だがこれだけは断言出来る。セフィロスはこの世の誰よりもクラウドを憎み引き裂き――愛している。
『僕達三人ならば、兄さんとセフィロスを会わせてあげられるかも知れない』
会わせてあげられるという可能性があるだけで、それは確実ではないが。
「ありがとう――」
『兄さん?』
「お前達はオレとセフィロスを会わせる為だけに、わざわざこうやって夢の中までやってきてくれたんだな」
「オレは、セフィロスに会いたい」
「例え殺し合うことになってもそれでもいい」
――会いたいんだ。
躊躇されていたカダージュの手がクラウドの頬に伸びる。
二人の身長差はわずかだ。わずかにクラウドが高い。カダージュはそのまま背伸びしてクラウドに口づける。
カダージュにとって初めてのキス。
『僕たちは兄さんが好きだ』
殺し合ってもクラウドならば自分たちを受け入れてくれる。
しっかりと逃げずに受け止めてくれるだろう。
刃物を向けているときもそんな不思議な確信があったのだ。
セフィロスの思念体だから同じ人間に惹かれるのか、そんな事はどうでもいい。
カダージュの次にはロッズが。そしてヤズーが、口づけてきた。
そのどれもをクラウドは受け止める。
『兄さん…』
ヤズーがおずおずと抱きしめてくる。長い腕が背中に回るのを知ってクラウドはこれから何をするのか悟る。
『俺…俺達と……』
「わかってる、ヤズー」
青の瞳を魔晄にしっかりと合わせて
「これからオレ達で、オレ達のリユニオンをするんだろ」
――いいよ。お前達相手ならばそれでいい。


湖面に立ったままで裸にされる。三人は思念体らしくそれぞれの役割を分担して進めていった。
『兄さん。本当にきれいだ』
湖面に潜った足の指をロッズが舐める。
キャンディのように、口に含んで舌で吸って転がして。
『セフィロスの記憶にあったのより、兄さんの裸はとてもきれいだ』
普段は血の通わないマネキン。無表情で押し通すのに、一旦火が点くと淫らに乱れる。

セフィロスの上で下で、ベッドシーツの上で、クラウドはセックスという海を溺れながら泳ぐのだ。
小さな薄紅の乳首にカダージュが吸い付く。音を立てて赤ん坊のように。
唇を尖らせて無心に吸うその仕草。セフィロスそっくりの刃物に似た蒼銀の髪の間からふせられた睫毛が覗く。
セックスの淫靡さとはかけ離れていて、むしろ微笑ましい。
自然とカダージュの髪を撫でた。指の間をスルリと抜けていく感触はセフィロスそっくりだ。
ヤズーが背後から口を吸ってきた。舌がそのまま滑り込んでくる。クラウドも舌を絡めて応じてやった。
ヤズーの舌は冷たい。これもセフィロスと同じだ。
キスはやけに丁寧だ。まるで知識を確認しているかのように。
実際そうだったのだろう。思念体たちはセックスの知識はあれども、実践はこれが初めてなのだろうから。
歯の裏側から表まで。歯茎から一本一本、ヤズーは丁寧に探索する。
歯が終わると舌を。吸って噛んで舐めて、味わうように。
それが終わると口蓋の中をくまなくなめ回した。
存分に確認してからやっとヤズーの唇が離れる。伝わる唾液を吸ってから襟足へと舌を這わせていく。
――セフィロスも初めての時はこんなのだったのだろうか…
クラウドが会った時、すでにセフィロスは性体験を済ませていた。むしろ豊富だっただろう。
男にも女にも全く無垢だったクラウドの硬く幼い身体を、セフィロスは悠々と開いて慣らしていったのだ。
クラウドの知らない若いセフィロスが、思念体としてここにいる。ここにいてクラウドを抱こうとしている。
こう考えるだけで、たまらなく思念体たちが愛おしい。
「カダージュ、ロッズ、ヤズー…」
三人の名を初めて口にして呼ぶ。
三人の反応は顕著だった。又泣いているのだろう。ロッズがしゃくりあげる声が聞こえる。
乳首を吸っていたカダージュは顔をあげた。
「兄さん。初めて名前を呼んでくれたね」
とても幸せそうに微笑んだのだ。
「兄さん――」
足の指から舐めていたロッズがペニスにむしゃぶりつく。
「…――兄さん」
ヤズーの長い手が尻を揉んだ。そのまままだ硬いアナルの口を撫でる。
本格的な前戯へと入ったのだ。

全裸の思念体三人をまとわりつかせながら、クラウドは久方ぶりに感じる快楽を享受している。
どんな愛撫にもクラウドは奔放に応えた。セフィロスとのセックスと同じように。
本当に同じように感じたのだ。こうするのが、こうなるのが当然なのだと。
セフィロスに初めて貫かれ交わった時と同様に、この三人の"弟"たちにも貫かれ交わる事こそが真理なのだ、と。
艶やかな掠れ声を発する。ソコがいいのだとはっきりと教える為に。
足を大きく開き性器を晒す。そうしてクラウドは誰よりも優しく微笑んだ。
金色の陰毛から勃ちあがっている赤味の強い白いペニス。その下でふっくらと息づいている睾丸。
汗と唾液で濡れた無垢な金髪碧眼の天使。この上なく淫靡なのに、この上なく清浄。
そんなクラウドに三人は魅せられるしかない。
「きれいだ。兄さんは本当にきれいなんだな――」
ロッズはさっきからずっと泣きっぱなしだ。
褒めてくれたご褒美に、クラウドはすっかり猛っているロッズのペニスを扱く。
クラウドの前にある三本のペニスはどれも形が違っている。
クラウドは順に触れてやった。優しく触れて戯れる。上下に扱いて亀頭を親指で擽った。

放たれた精液は全部呑んでやった。
ペニスの形はセフィロスと違うのに、精液の味はやけに似ている。
湖面はただの水ではない。すでに心地よい最高のベッドとなっていた。
横たわったクラウドに三人が群がる。
一本しかないクラウドの白いペニスをなめ回し、ほぐれてきたアナルに指を突き入れた。

順番に指を入れるだけでは物足りなくなったのか、三人は一本づつ指をいれてそれぞれの方向へと引っ張る。
大きくアナルの口が開いた。現れた鮮やかな肉壁までをも三人は交代で舐めた。
そうして最初に挿入してきたのはカダージュ。まだ少年の形のままのペニスは、違和感なくクラウドの体内に挿ってくる。
きゅっと締めて歓迎してやっただけで、カダージュは限界を訴えてくる。
『兄さん…僕、僕…』
泣きそうに快感を訴えてくるカダージュをクラウドは許す。
「いいぞ。中で出してくれ」
歯を食いしばってカダージュは射精した。初めてのエクスタシーの中こぼれていった涙をクラウドは繋がったまま拭ってやる。
カダージュが出ていくと次はロッズだ。太くてずんぐりとしたペニスは、カダージュの時よりも充足感がある。
「あっ!ああ」
思わず仰け反った首筋を悔しそうにカダージュが噛んだ。
『僕の時よりも気持ちいいの』
可愛いヤキモチだ。
「お前も良かったよ」
『本当に!?』
「オレは嘘は吐かない」
さっき放ったばかりなのに、カダージュのペニスはもう勃起している。クラウドは手招きすると自ら口づけた。
音を立てて口づけてから、頬張ってやる。
クラウドよりも小さいカダージュの尻が快感に震える。
この光景にたまらなくなったのはヤズー。
『兄さん――』
己のペニスを両手で押さえクラウドに訴えてくる。
ロッズのよりは細身だが、長さは一番だ。物欲しげに揺れるヤズーのペニスはとても可愛らしい。
クラウドは足をさらに大きく開くと腰を突き出して
「おいで。ヤズー」
『でも…』
ロッズがすでに挿入しているのに。
「ロッズも一緒に二人でおいで」
『大丈夫なのか!?』
「いいよ。二人でおいで」
二人は兄の誘惑には抗えない。抗うにはこのシチュエーションはあまりにも扇情的であったし、第一兄は美しすぎる。
ヤズーは回り込むとクラウドの太股を抱えた。腰の位置を合わせる。
ロッズが半分だけ抜いた狭間を狙い、ヤズーは一気に突き入れた。
――セフィロス!
この圧迫感。セフィロスのペニスを挿入されているのと似ている。
ロッズとヤズーの動きはぎこちなかったが、それでも充分だ。
嬉しくて嬉しくて、どうしようもなかった飢えがやっと満たされるのだ。
カダージュのペニスを歓びのままにしゃぶった。


――あんたが三人いればいいのに。
昔、そう言ったのはクラウド。
セフィロスとのセックスを楽しんだ後の時間だった。
汗ばんだ銀の髪を掻き上げセフィロスが笑う。唇の端を引き上げた彼独特の、でもクラウド以外には見せない笑顔だ。
――どうしてだ、クラウド?
気怠げに横たわるクラウドの、浮き上がっている腰骨を軽く噛んで、
――俺とのセックスは物足りないのか。
一人じゃ足りないと思わせるほどに。
――ううん。違う。
オレは欲張りなんだ。
お返しとばかりにセフィロスの乳首を吸う。
――アソコいっぱいにあんたがいるだけじゃ勿体ないんだよ。
――オレは欲張りだから、アソコにも口にも同時に欲しい時があるんだ。
でもそれだけだと手が寂しくて。
――両手でもあんたを感じたいんだ。
三人のあんたにヤラれたい。同時に手酷く犯されたい。
セックスで息の根を止めて欲しい――あんたに。
生まれるのも死ぬのも、あんたの手でやってくれ。


――望みが叶ったのかな。
カダージュもロッズもヤズーも、セフィロスなのだ。
今正にクラウドは三人に別れたセフィロスに犯されている。
――イく!
エクスタシーが手に届く。
――セフィロス!
目を瞑りこの世で一番愛しくて殺したい名を叫んだ。

フッと光が舞い降りてくる。月光以外の何かの光。
(クラウド――)
――まさか!?
「……セフィ、ロス…」
クラウドを犯しているのは三人の思念体ではない。
セフィロスだった。右の肩胛骨から生えている蒼黒い羽根がさわさわと揺れながらクラウドを抱きしめるように覆う。
瞬間アナルに収まっているペニスの質量が膨れあがった。
内臓まで届く長さ。腸を突き破る太さ。灼熱の圧迫感。どれもこれも記憶にあるセフィロスに間違いない。
「セフィロス!戻ってきたのか」
(お前は俺だけのモノだ)
「そうだよ。そしてあんたもオレだけのモノだ」
貫かれ快感に身もだえしながらも、クラウドは両手でセフィロスを引き寄せる。
唇に噛みつきながら逞しい首を締め上げた。
クラウドの両手でも回りきらない逞しい首。くっきりと浮かび上がった喉仏の感触。徐々に力を込めていくと、はっきりとした脈動が伝わってくるのが、狂いそうに嬉しい。
クラウドの青い瞳から涙が零れた。うれし泣きだ。
(そんなに俺に飢えていたのか。クラウド)
かなりの力で締め上げているのに、セフィロスはむしろ満足そうだ。
あの独特の笑みを口野はしに乗せながら、さも愛おしげにクラウドを犯す。
「わかってんだろ!あんた」
(ああ。解っていた)
――だからこそ、ここに来た。
(お前に俺をくれてやろう)
「ホントか!?」
涙をこぼす眼球の青を直にセフィロスは舐め上げる。涙を吸い出すのだ。
(俺はまだ完全に復活は出来ない)
(時が必要だ)
(復活までの間、お前が飢えないようにしてやろう)
――こうやって。
セフィロスの腰の動きが激しくなる。クラウドを内側からかき混ぜペニスを打ち込む。声もなくクラウドは仰け反った。
「もうっ――セフィっ」
(イけ。クラウド)
セフィロスの許しを得てから、うねっていたアナルが一気に収縮する。
立て続けでクラウドは射精した。白い精液を吹き上げる。胸と腹だけでは収まらず、止まらない射精はクラウドの頬をも汚す。
飢えた獣のようにペニスを食いつぶすクラウドの体内にセフィロスは放った。
――セフィロスだ……
セフィロスが入ってくる。
感じた瞬間又達してしまう。クラウドのペニスから再び精液が吹き上がり、セフィロスの顔にまで飛び散った。
壮絶にまで神々しいセフィロスの美貌を、クラウドの精液が白く彩る。
(わかるか――クラウド)
「セフィロスだ。セフィロスがオレの中にいる」
(そうだ。お前の中に俺は入った)
本体に取り込まれ小さなピースになってしまうリユニオンではない。
クラウドの中にセフィロスの存在が生まれたのだ。
単純な思い出として存在しているのではない。例えるならば子宮に着床した胎児のようなものか。体内に、確かに、いるのだ。
――セフィロス。
これでもう、飢えなくていい。
己の精液で体中を汚しながら、クラウドは満たされたまま意識を閉じた。

目が覚める。クラウドはあの湖の真ん中にいて、月を見上げていた。
カダージュもロッズもヤズーも、ましてやセフィロスもいない。静かな音のない世界が広がっているだけ。
だがあれは夢ではない。クラウドには確信があった。
――ここにセフィロスがいる。
クラウドは下腹をそっと撫でる。セフィロスという眩い魂がそこにはあった。
クラウドは立ち上がり歩き出す。
現実世界へと戻る為に湖を背にして離れていく。

そうして音のない夢も閉じていった。








END


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